経営・組織

式場の館内サインは、披露宴ゲストが迷う3か所から置く

披露宴のゲストの多くは、その式場に来るのが初めてです。新郎新婦は見学で何度も歩いていますが、友人や親戚は当日が初来館になります。そのゲストが開宴前の30分で迷うと、スタッフが道案内に手を取られ、受付の列も伸びます。

だからといって、館内の壁にサインを増やせばよいわけではありません。サインは多いほど見づらくなりますし、貼り替えの手間も増えます。僕は、サインは「ゲストが初めて迷う3か所」から置くのがいいと考えています。この記事では、その3か所の選び方と、枚数を決める計算の仕方を書きます。

なお、この記事に出てくる数字は、調査の結果ではありません。考え方を見せるために僕が置いた仮の数字です。自社の式場に当てはめるときは、必ず自社で数えた値に差し替えてください。

サインが足りないと、困るのはゲストよりスタッフです

道に迷ったゲストは、たいていその場で人に聞きます。聞かれる相手は、受付に立つスタッフ、通りかかった配膳スタッフ、ドアマンです。聞かれたスタッフは、そのとき手元でやっていた仕事を止めて案内します。

ここで困るのは、案内そのものよりも、その間に止まる仕事のほうです。開宴前の30分は、受付の準備、席次表の配置、ウェルカムドリンクの提供、親族控室への誘導が重なる時間帯です。その時間帯に1人ずつ案内が入ると、細かい遅れが積み上がります。

サインの役目は、ゲストをおしゃれに迎えることではなく、スタッフに聞かなくても済む人を増やすことです。経営の指標で言えば、当日の人件費の使い方と、開宴の定刻を守れるかどうかに効きます。

仮の数字で、迷いのコストを数えてみる

次のような式場を想定します。数字はすべて仮定です。

  • 披露宴のゲストは60人
  • そのうち初めて来館する人が8割
  • 初来館の人のうち、迷ってスタッフに道を聞く人が3割
  • 1回の案内にかかるスタッフの時間は1.5分

この前提で計算すると、初来館は60人×0.8で48人、迷って聞く人は48人×0.3で14.4人、スタッフが使う時間は14.4人×1.5分で21.6分です。1組の披露宴で、スタッフが約22分を道案内に使う計算になります。

年に150組の披露宴を行う式場なら、22分×150組で3,300分弱、およそ54時間です。時給を仮に1,500円とすれば、約8万円分の時間になります。

この金額は、それ自体はそれほど大きくありません。大事なのは金額よりも、その22分が開宴前の忙しい時間に集中しているという点です。同じ22分でも、午前の空き時間と開宴前の30分では重みが違います。

一方で、サイン1枚の費用を仮に1.5万円とすると、3枚で4.5万円です。8万円分の時間を減らせるなら、3枚置く判断は成り立ちます。ただし、これは「迷う人が3割」という仮定が当たっていればの話です。自社の数字が違えば、結論も変わります。

迷う場所は、動線の「切り替わり」にあります

ゲストが迷うのは、館内のどこでも均等ではありません。迷いやすいのは、動線の「切り替わり」の場所です。

切り替わりとは、次のような場所のことです。

  • 敷地や建物に入る場所(どこから入ればいいか分からない)
  • 階が変わる、フロアが変わる場所(エレベーターか階段か分からない)
  • 目的が変わる場所(受付を済ませたあと、次に控室へ行くのか、ロビーで待つのか分からない)

まっすぐな廊下の途中に迷う理由はありません。分かれ道と、役割が変わる場所に、サインを集中させます。

1か所目:建物の入口

最初に迷うのは、建物の入口です。式場の建物は、ホテルのように正面玄関がはっきりしている場所もあれば、ゲスト用の入口とスタッフ用の入口が近くにある場所もあります。ゲストハウス型で、敷地が広く、駐車場から入口までが離れている場合は特に迷いやすくなります。

ここでのサインは、「本日の披露宴はこちら」と分かることが目的です。新郎新婦の名前を入れたウェルカムボードを入口に置く式場は多いのですが、そのボードがゲストにとっての道しるべにもなっているかどうかを確かめてください。名前だけで矢印がないと、「ここで合っているのか」の不安は消えません。

置く場所は、駐車場から歩いてきたゲストが最初に目に入る位置です。入口の真上に高く掲げるより、視線の高さで、駐車場から見える向きに置くほうが読まれます。

2か所目:受付の前と後

次に迷うのは、受付です。受付が1か所でも、ゲストは「どこに並ぶのか」「受付のあとはどちらへ行くのか」で迷います。

ここで効くのは、受付の手前と奥の両方にサインを置くことです。手前は「ご祝儀のお預かり・芳名帳はこちら」のように、受付の場所を示すサイン。奥は「親族控室は右」「ご友人・会社の方はウェルカムスペースへ」のように、次の行き先を示すサインです。

奥側のサインを置いていない式場がよくあります。受付の手前にはしっかり案内があるのに、受付を済ませたあと、ゲストが立ち尽くしている。その場面を作らないために、受付の後ろ姿が向いている先にもサインを置きます。

あわせて、受付が混む時間は開宴の30〜45分前に集まりやすいです。サインを見て自分で動ける人が増えれば、受付の前で止まる人が減り、列が短くなります。

3か所目:化粧室と喫煙所

3か所目は、化粧室と、喫煙所を設ける式場では喫煙所です。ゲストは、受付の前後や乾杯のあと、お色直しの中座のときに、かなりの確率で化粧室を探します。

化粧室を探す人は、スタッフに聞くのをためらいがちです。聞きにくいので、見つからないまま歩き回り、結果として宴会場に戻るのが遅れます。そのため、化粧室のサインは、聞かなくても見つけられることを目標に置きます。

置き方のコツは、宴会場の出口と、廊下の曲がり角の2つです。宴会場の扉を開けて出たところから見える位置に1枚、曲がり角の手前に1枚。2枚で足ります。

「全部置く」より、「置かない場所」を決める

サインを増やすと、見落としも増えます。壁に5枚も6枚もサインがあると、ゲストはどれも読まなくなります。そこで、枚数を決める前に、置かない場所を決めておくと整理しやすくなります。

置かない場所の目安は次のとおりです。

  • 一本道の廊下の途中(迷う理由がない)
  • すでに受付スタッフが立っていて、声をかけられる場所
  • 当日、新郎新婦のウェルカムボードや装花で視線が埋まる場所

3つ目は意外かもしれません。装花やボードで華やかになっている場所に、さらにサインを足すと、どちらも目立たなくなります。サインを置くなら、装飾の少ない壁か、足元です。

当日の運用では、サインを「立てる人」を決める

サインは、置いたら終わりではありません。式場では、披露宴ごとに館内の使い方が変わります。同じ日に2組の披露宴があれば、ゲストの行き先も2通りに分かれます。固定のサインだけでは足りず、組ごとのサインを当日に立てる必要が出ます。

ここで決めておきたいのは、次の2つです。

  1. 誰が立てるのか。たいていは受付準備を担当するスタッフですが、準備の時間が足りなくなりがちです。立てる担当を、配膳ではなくプランナー側かアシスタント側に決めておくと、抜けが減ります
  2. いつまでに立てるのか。開場の30分前を締め切りにするなら、前日のうちに立てるものと、当日に立てるものを分けておきます

前日に立てられるものを当日に回すと、開宴前の忙しさが増えます。逆に、組ごとに変わるものを前日に立てると、間違えたときに直す手間が出ます。固定のものは常設、組ごとに変わるものは当日、と分けるのが基本です。

同日に2組あるときは、色か向きで分ける

同じ日に2組の披露宴があるときは、ゲストが別の組の会場へ入ってしまう事故が起きやすくなります。サインは、名前だけで分けるより、色か向きで分けたほうが間違いに気づきやすくなります。

たとえば、1組目は白いサイン、2組目は別の色のサインを使う。あるいは、1組目の会場は入口から右、2組目は左と、向きで分ける。名前は小さくても、色と向きで先に判断できるようにしておきます。

細かな運用ですが、別の組の会場に入ってしまったゲストを誘導し直す手間は、スタッフにとっても、ゲストにとっても気まずいものです。その場面を減らすために、サインの色と向きを使います。

枚数を決める手順

ここまでを、枚数の決め方としてまとめます。

  1. 動線の切り替わりの場所を、図面か実際の館内で書き出す。階の変わり目、受付、化粧室、宴会場の出口が中心になります
  2. 切り替わりの場所ごとに、直近の披露宴で「そこで道を聞かれた回数」をスタッフに聞いて数える。記録がなければ、次の1か月、受付担当に印をつけてもらいます
  3. 聞かれた回数が多い場所から、サインを置く。1か所に置く枚数は、まず1〜2枚にする
  4. 1か月置いたあと、同じ場所で聞かれた回数が減ったかを確かめる。減らなければ、サインの位置や向きを直す

ポイントは、はじめから全部を揃えず、聞かれた回数が多い場所から順に置くことです。回数が分かれば、「迷う人が3割」のような仮定ではなく、自社の数字で判断できます。

見落としがちなのは、見学のときの目線です

最後に、見学のときの目線にも触れておきます。ブライダルフェアや見学の案内では、スタッフが二人を連れて歩くので、サインがなくても迷いません。そのため、館内のサインの分かりにくさは、スタッフにはなかなか見えません。

確かめる方法は、サインの確認だけのために、館内を初めて歩く人に一度歩いてもらうことです。社内の別部署の人でも、近所のお店の人でも構いません。入口から宴会場、化粧室、出口までを、スタッフの案内なしで歩いてもらい、止まった場所をメモします。止まった場所が、そのまま3か所の候補になります。

まとめ

  • 披露宴のゲストの多くは初来館なので、迷うと開宴前の30分にスタッフの時間が取られる
  • サインは全部に貼らず、動線の切り替わりから置く。まずは建物の入口、受付の前後、化粧室の3か所
  • 受付は手前だけでなく、受付を済ませたあとの行き先にもサインを置く
  • 一本道の廊下や、スタッフが立つ場所、装花で視線が埋まる場所には置かない
  • 固定のサインは常設し、組ごとに変わるものは立てる担当と時刻を決める
  • 同日に2組あるときは、名前より色か向きで分ける
  • 枚数は、道を聞かれた回数を数えて、多い場所から決める