式場探しにSNSを使うのは4人に1人か、8割か。2つの調査の数字がずれる理由
式場探しにSNSを使う人は、どれくらいいるのか。ゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国推計では29.1%、つまり3.4人に1人です。ところがハナユメが2020年に出した調査の見出しは、挙式した人の8割以上がInstagramで結婚式の情報を集めていた、でした。
4人に1人と、8割。同じ業界の同じ層を測ったはずなのに、3倍近く離れています。どちらかが間違っているわけではありません。聞いている質問と、聞いている相手が違います。
式場の集客を考えるとき、この種の数字は「SNSに投資するか」「どの媒体にどれだけ予算を置くか」の根拠に使われがちです。物差しの違いを知らないまま引用すると、判断が3倍ぶれます。今回は2つの調査を並べて、どこが違うのか、自社の来館アンケートにどう当てはめるのかを整理します。
ゼクシィの表が測っているもの
まずゼクシィ側です。ゼクシィ結婚トレンド調査2024は、リクルートブライダル総研が2024年10月25日に公表したもので、地域別の詳細版がPDFで公開されています。その161ページに「披露宴・ウエディングパーティー会場を検討する際に利用した情報源」という表があります。
質問の条件を、表の注記から読み取ります。
- 対象は、披露宴・ウエディングパーティーを実施した人です
- 聞いているのは、会場を検討する際に使った情報源です
- 複数回答です。使ったものをすべて選ぶ形です
この表の全国推計値は次のとおりです。
- 結婚情報サイト:57.5%
- 結婚情報誌:47.8%
- 会場の公式ホームページ:36.9%
- SNS:29.1%
- 結婚式場のブライダルイベント:14.8%
- 結婚式場紹介所:11.0%
首都圏(回答394人)に絞ると、結婚情報サイト62.9%、結婚情報誌49.5%、公式ホームページ39.1%、SNS27.2%の順です。SNSは公式ホームページに次いで4番目で、情報サイトの半分以下にとどまります。
ここで見落としやすいのは、これが「会場を決めるために使ったもの」の表だという点です。ドレスやヘアメイクを調べるためのSNS利用は、ここには入りません。
ハナユメの調査が測っているもの
次にハナユメです。エイチームのグループ会社であるエイチームブライズが、「Hanayume(ハナユメ)」を通じて挙式した358名にアンケートを実施し、2020年4月10日に発表しました。調査期間は2020年2月12日から19日です。
発表の見出しは「挙式した人のうち8割以上がInstagramで情報収集していた」です。本文を読むと、質問は次の形になっています。
- 結婚に関することをInstagramで調べたことがありますか
- Instagramのアカウントは約81%が「持っている」と回答し、その中で「結婚に関することをInstagramで調べたことがある」と答えた人は約84%
質問は「結婚に関すること」で、会場に限りません。回答者は、ハナユメの利用者です。
そして、8割以上という見出しの根拠は、アカウントを持っている人の中での84%です。アカウントを持たない人も含めた全体に直すと、0.81×0.84で約68%になります。ただしこれは、公表された丸め後の2つの数字を掛けた僕の計算で、元の回答データは公開されていません。「約68%」は目安として受け取ってください。見出しの8割以上と、全体換算の約7割とでは、読む人の印象がかなり変わります。
同じ発表には、Instagramで調べた内容も出ています。最も調べられたのはヘアメイクで、衣装、アイテム、会場コーディネートなど「どんな結婚式にしたいか」をイメージできるものが選ばれる傾向がある、とされています。式場探しにおける魅力として最も多かったのは「結婚式場の写真が見られるところ」で約63%、次いで「口コミや先輩花嫁の事例を知ることができるところ」が54.0%でした。
数字がずれる理由を並べる
ここまでを表にすると、違いははっきりします。
| 項目 | ゼクシィ結婚トレンド調査2024 | ハナユメ2020 |
|---|---|---|
| 聞いた内容 | 会場を検討する際に使った情報源 | 結婚に関することをInstagramで調べたか |
| 対象 | 披露宴・パーティーを実施した人 | ハナユメで挙式した人 |
| 人数 | 首都圏394人、全国は推計値 | 358人 |
| SNSの範囲 | SNS全般 | |
| 数字 | 全国29.1%、首都圏27.2% | 見出し8割以上、全体換算で約68% |
| 時期 | 2023年4月〜2024年3月に実施した人が中心 | 2020年2月 |
ずれる要因は、大きく4つあります。
1つ目は、質問の範囲です。ゼクシィは会場の検討に限定し、ハナユメは結婚に関すること全般です。会場探しに使わなくても、ヘアメイクの参考で開いていれば後者には入ります。
2つ目は、回答者の集め方です。ハナユメの回答者は、同社のサービスを使った人です。ネットで式場を探し、相談デスクも使った層は、SNSにも慣れている可能性があります。ただ、その差がどれくらいかは、公開された資料からは分かりません。ゼクシィ側も、会員を中心にした調査である点では同じで、どちらが全国の花嫁をそのまま代表しているとは言い切れません。
3つ目は、時期です。2020年2月は、コロナ禍が始まる直前です。ゼクシィの首都圏の推移を見ると、SNSの利用は2018年の12.8%から2020年には22.5%に動いていました。2020年のハナユメの回答者が、いまのSNSの使い方をそのまま映しているとは限りません。
4つ目は、数え方です。見出しは84%を「挙式した人のうち」と言い換えていて、母数が変わっています。
つまり、2つの数字は矛盾していません。「会場を決める材料として使われるSNS」は4人に1人から3人に1人、「結婚準備のどこかでInstagramを開く人」は7割前後、と別のものを見ています。
首都圏の7年間の推移
ゼクシィの表は、首都圏について2018年から2024年まで並んでいます。SNSと結婚情報誌の推移を抜き出します。
| 調査年 | 回答者数 | SNS | 結婚情報誌 | 会場の公式HP |
|---|---|---|---|---|
| 2018 | 744 | 12.8% | 68.0% | 40.1% |
| 2019 | 742 | 15.6% | 58.0% | 34.1% |
| 2020 | 868 | 22.5% | 65.0% | 40.9% |
| 2021 | 579 | 26.3% | 59.6% | 38.5% |
| 2022 | 478 | 27.6% | 56.5% | 38.3% |
| 2023 | 493 | 31.8% | 56.8% | 42.6% |
| 2024 | 394 | 27.2% | 49.5% | 39.1% |
動きをそのまま書くと、SNSは2018年から2023年までほぼ毎年上がり、2024年だけ下がっています。結婚情報誌は68.0%から49.5%へ、18.5ポイント下がりました。公式ホームページは34〜43%の間で上下していて、方向がはっきりしません。
ここで、2024年のSNSの下がり方をどう読むかが問題です。2023年の31.8%から27.2%へ、4.6ポイント減っています。回答者数は493人と394人です。単純無作為抽出を仮定した簡易計算では、27.2%の95%信頼区間はおよそ±4.4ポイント、31.8%は±4.1ポイントです。2つの差の誤差は約±6ポイントになるので、4.6ポイントの低下は誤差の範囲に収まります。「SNSの利用が減り始めた」と読む根拠としては、弱いです。
一方、2018年の12.8%と2024年の27.2%の差は14.4ポイントで、誤差(±5ポイント前後)を大きく超えています。結婚情報誌の18.5ポイント減も同じです。6年という長さで見れば、SNSが増え、情報誌が減ったという方向は確かだと僕は考えています。ただし、ウェイトづけなど調査の設計は簡易計算に入っていないので、あくまで目安の計算です。
地域と属性で見る
SNSの利用率は、地域によって23.6%から33.9%まで動きます。全国の表から拾うと次のとおりです。
- 茨城・栃木・群馬:33.9%
- 東海:32.9%
- 福島:32.3%
- 宮城・山形:30.7%
- 北海道:30.4%
- 関西:29.4%
- 首都圏:27.2%
- 静岡:23.6%
首都圏はSNSの利用率が全国より低い側にいます。大都市のほうがSNSを使われている、というイメージとは逆の数字です。理由は表からは読み取れません。首都圏では情報サイトが62.9%と全国推計(57.5%)より高く、サイトに集まる分、SNSの比率が下がっているのかもしれませんが、これは僕の推測です。
もう1つ地域差が大きいのは、友人・知人の紹介です。首都圏は7.1%ですが、富山・石川・福井では24.0%、四国20.9%、青森・秋田・岩手20.8%でした(全国推計は11.5%)。会場選びを知人の紹介に頼る地域では、媒体やSNSの前に、口コミの輪の中に入っているかどうかが決め手になります。
年代では、妻の年齢別のSNS利用は25〜29歳が27.9%、30〜34歳が24.5%、35歳以上が26.8%で、はっきりした傾斜は見えません(24歳以下は回答20人で30.0%、参考程度です)。式場探しのSNS利用は、年齢で切るより、地域と会場のタイプで切るほうが差が出ます。
自社のアンケートに当てはめる
ここからが、式場の運営側の話です。来館者アンケートで「何で当会場を知りましたか」と聞いて、SNSが何%出たかを、業界の数字と比べる場面は多いと思います。比べる前に、3点を確かめてください。
1つ目は、質問が同じか。ゼクシィの表は「会場を検討する際に利用した情報源」で、複数回答です。自社のアンケートが「最初に知ったきっかけ」を1つだけ選ぶ形なら、同じ物差しではありません。きっかけを1つに絞ると、情報サイトが大きく出て、SNSは小さく出るのが普通です。
2つ目は、対象が同じか。ゼクシィは、披露宴を実施した人に聞いています。自社の来館者には、見学して決めなかった人も入ります。成約者だけで集計し直すと、数字が変わることがあります。
3つ目は、SNSの範囲です。ハナユメの調査はInstagramに限っています。自社のアンケートで「SNS」とだけ聞いていると、Instagram、X、TikTok、LINEが混ざります。
たとえば、月に100組が見学に来て、アンケートの複数回答で27組がSNSを選んだとします。ゼクシィ首都圏の27.2%とほぼ同じです。ただしこの一致は、質問が同じで、対象が成約者だった場合にだけ意味があります。見学者全員に聞いた数字なら、業界値より高いのか低いのかを、この比較では言えません。
判断の分かれ目
SNSに力を入れるかどうかの判断では、次のように考えるのが現実的だと僕は思います。
業界の数字は、「SNSが使われている割合」ではなく、「SNSが会場選びの材料になっている割合」を見ます。ゼクシィの表なら、4人に1人から3人に1人です。ここは、情報サイトの6割弱、情報誌の5割弱、公式ホームページの4割弱の次に来る位置です。
一方で、ハナユメの調査が示す使われ方、つまり会場の写真を見る、先輩花嫁の事例や口コミを知る、という行動は、会場の公式ホームページやパンフレットに載らない写真への期待を表しています。自由回答には「ホームページやパンフレットには載らない場所の写真」「ゲストの方が載せてる投稿」という声も載っていました。SNSの役割は、「会場を探し出す入口」というより、公式の情報を確かめる「裏取りの場」に近いのかもしれません。この読み方は、2020年の1つの調査から出した仮説なので、自社の来館者に聞いて確かめる価値があります。
まとめ
- 式場探しのSNS利用は、ゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国推計で29.1%、首都圏で27.2%でした
- ハナユメ2020の「8割以上」は、結婚全般の情報をInstagramで調べた人で、アカウント保有者の中での割合です。全体に直すと約68%です
- 2つの数字は、質問の範囲、対象、時期が違うので、並べて優劣を付けるものではありません
- 首都圏のSNS利用は2018年の12.8%から2023年の31.8%まで上がり、2024年は27.2%でした。2023年からの4.6ポイント減は誤差の範囲です
- 結婚情報誌は、首都圏で68.0%から49.5%に下がりました
- 自社のアンケートを業界値と比べるときは、質問の形、対象、SNSの範囲の3点を先に揃えます
