集客

予約の出どころが分からないなら、名前で検索された回数を数える

SNSに予算を割くかどうかを決める会議で、最後に必ず出てくる質問があります。「で、それで何件予約が取れたの?」です。

この質問に、今の計測の仕組みでは正確に答えられません。Instagramで会場を知った人が、アプリ内のブラウザから外に出たり、何日か経ってから式場名を検索し直したりすると、その予約は解析ツール上で「ダイレクト」や「自然検索」に化けます。SNSで気持ちが決まった予約ほど、SNSの成果として数えられないんですよね。

経路の数字が当てにならないなら、何を見ればいいのか。僕は、式場の名前で検索された回数を見るのがいちばん筋がいいと考えてます。今回はその理由と、具体的な見方を書きます。

指名検索で、集客の総量を把握する

新郎新婦が式場を知るきっかけはばらばらです。Instagramのリール、ポータルサイトの特集、友人の結婚式、Googleマップの口コミ。ただ、どこで知った人も、予約の前にほぼ必ずやることが1つあります。式場の名前を検索することです。

経路のデータは、アプリをまたいだ瞬間に途切れます。でも、名前で検索されたという事実は途切れません。どの経路から来たかは分からなくても、「名前を覚えて、わざわざ調べた人がどれだけいたか」は数えられます。

これが指名検索です。式場名、式場名+口コミ、式場名+料金のように、名前を含む検索のことを指します。

指名検索は、媒体ごとの手柄を分けてはくれません。Instagramが効いたのか、ポータルが効いたのかは混ざったままです。そのかわり、全部の媒体を合わせて「認知がどれだけ積み上がったか」の総量は分かります。媒体ごとの成果を正確に分けることはあきらめて、全媒体を合わせた集客の総量を追う、という考え方に切り替えるわけです。

Search Consoleで、式場名を含む検索だけを切り出す

指名検索を数える道具は、これまで少し使いにくかったです。Googleが2025年11月に、Search Consoleの検索パフォーマンスのレポートに「ブランドクエリ」のフィルタを追加して、状況が変わりました。

このフィルタを使うと、検索の表示回数やクリック数、掲載順位を、ブランド名を含む検索と含まない検索に分けて見られます。判定はGoogleのAIを使った仕組みで行われ、表記揺れや打ち間違いも拾います。式場の名前は英字とカタカナ、略称が混ざりやすいので、ここを自動でまとめてくれるのは助かります。

ただし、使えるサイトには条件があります。サイトのトップの単位で登録したプロパティでしか使えず、サブディレクトリやサブドメインの単位では出ません。さらに、検索の量が一定以上あるサイトに限られます。量の基準は公開されていません。

フィルタが出てこない場合は、昔からある正規表現のフィルタで代わりができます。手順はこうです。

  1. 検索パフォーマンスのレポートを開き、上の「+新規」から「検索キーワード」を選ぶ
  2. 絞り込みの種類で「カスタム(正規表現)」を選ぶ
  3. 式場名の表記を | でつないで入れる

3で入れる表記は、正式名称だけでは足りません。新郎新婦は、正式名称を正確に覚えて検索してくれるとは限らないからです。漢字の正式名称、ひらがなやカタカナの読み、英字の表記、地元で呼ばれている略称、よくある打ち間違い。これを全部 | でつなぎます。GoogleのAIのフィルタが自動でやってくれることを、手で再現するわけです。

洗い出しのコツは、いったん絞り込みをかけずにクエリの一覧を表示回数の多い順に並べて、上から目で見ていくことです。自分たちでは思いつかなかった呼び方が、意外と上のほうに出てきます。

Googleビジネスプロフィールのパフォーマンス画面も併せて見ておくと良いです。会場のプロフィールがどんな語句で検索されて表示されたかが、月ごとに出ます。Googleマップから式場を探す人の指名検索は、こちらに出ます。この数字は月の初めに前月分がまとめて更新され、反映まで5日ほどかかることがあります。月初の会議に間に合わせたいなら、資料を作る日を少し後ろにずらしておくのが無難です。

式場名と一緒に検索された言葉で、検討の段階が分かる

指名検索は、総量だけでなく中身も読めます。式場名の後ろに、どんな言葉が付いて検索されているかです。

式場名+口コミ、式場名+料金、式場名+見積もり。こういう検索は、ほかの式場と比べている段階の人が多いと考えられます。名前はもう候補に入っていて、決め手を探しているところです。

式場名+フェア、式場名+予約、式場名+アクセス。こちらは、来館が近い人の検索です。実際に足を運ぶつもりで、日程や行き方を調べています。

式場名だけの検索は、どちらとも言えません。まだ知ったばかりの人も、何度も見に来ている人も混ざります。

この比率が動くと、打ち手が変わります。口コミや料金の検索が増えているのに予約が増えないなら、比べられた末に落ちている可能性があります。口コミへの返信や、料金の見せ方を見直す番です。フェアや予約の検索が増えているのに来館が増えないなら、予約の画面や電話のつながりやすさといった、最後の一歩に詰まりがあるかもしれません。

総量だけを追っていると、この違いは見えません。月に一度、後ろに付く言葉の上位を並べておくだけでも、次に手を入れる場所の当たりが付きます。

クリック数ではなく表示回数を、前年同月と比べる

指名検索を指標にするとき、見る数字と比べ方を間違えると判断を誤ります。押さえどころは2つです。

1つ目は、クリック数ではなく表示回数を見ることです。式場名で検索すると、検索結果の上のほうにポータルサイトの会場ページやGoogleマップが並びます。公式サイトがクリックされなくても、検索された事実は変わりません。クリック数は検索結果の並び方に左右されますが、表示回数は「検索された回数」にほぼ素直に連動します。

2つ目は、前月ではなく前年同月と比べることです。結婚式場の検索には季節の波があります。前月比で見ると、この波を施策の効果と見間違えます。Search Consoleはデータを16か月分残すので、前年同月との比較はそのまま画面上でできます。

予算会議でSNSを評価する指標にする

この数字は、マーケ担当のレポートの中に置いておくだけだと意味がないです。予算を決める人が見る表に載せて、初めて効きます。

たとえば、SNSの評価を「今月の予約件数」から「指名検索の表示回数の前年同月比」に切り替える。そう決めるだけで、SNSの担当者は予約に直結しないけれど名前を覚えてもらう投稿を、堂々と続けられるようになります。逆に、半年続けても指名検索が前年を超えないなら、その運用は見直す、という撤退の基準にもなります。

注意点もあります。指名検索はポータルの広告でも増えます。ポータルへの出稿を増やした月に指名検索が伸びても、それはSNSの成果とは言えません。広告費の増減と並べて見て、広告費が横ばいなのに指名検索が伸びている月を探すのが、SNSや口コミの効き目に一番近づける読み方です。

会議の資料に載せるなら、1枚の表で十分です。行に月、列に「指名検索の表示回数」「前年同月比」「ポータルへの広告費」「SNSの投稿本数」「予約数」を並べます。読み方は3通りです。

  • 広告費が横ばいで、指名検索が伸びている:SNSや口コミ、紹介が効いている可能性が高い
  • 広告費を増やした月に、指名検索も伸びている:広告の効果と区別できない。SNSの手柄にはしない
  • 指名検索が前年を割っている:広告費を増やす前に、名前が覚えられなくなった理由を探す

3つ目のとき、確かめたいことがいくつかあります。Googleマップの口コミに低い評価が続いていないか。リニューアルや名称変更で、検索される名前が変わっていないか。それから、Search Consoleのブランドクエリのフィルタ自体の判定です。Googleも、文脈によっては誤って分類されるクエリがあると説明しています。正規表現の一覧と突き合わせて、数え漏れがないかを一度見ておくと安心です。

もう1つ、これから効いてくる話があります。式場探しにAIの検索を使う人が増えると、検索エンジンを通らずに候補を絞る人が出てきます。ChatGPTに「この地域で、少人数で、料理がおいしい式場は」と聞いて、返ってきた名前を見る。こうした会話の中身は、Search Consoleには一切残りません。

ただ、AIの回答で名前を知った人も、最後はその名前で検索して公式サイトや口コミを確かめることが多いはずです。AIに名前を挙げてもらえたかどうかは、その後の指名検索の伸びとして間接的に現れます。経路が見えなくなるほど、名前を数えるやり方の価値は上がっていきます。

ここまでやっても、指名検索は予約件数そのものではありません。ただ、途切れた経路データで「SNS経由の予約はゼロ件」と結論を出すよりは、ずっと実態に近い判断ができます。

まとめ

指名検索を集客の指標に置く話を、最後に短く並べます。

  • SNSで気持ちが決まった予約ほど、解析ツールでは「ダイレクト」や「自然検索」に化けて、SNSの成果として数えられない
  • どの経路で知った人も、予約の前に式場名を検索する。経路のデータが途切れても、式場名で検索された回数は残る
  • 2025年11月から、Search Consoleでブランド名を含む検索だけを切り出せるようになった。使えない場合は正規表現のフィルタで代わりができる
  • 式場名の後ろに付く言葉で、比べている人と来館が近い人を分けて読める
  • 見るのはクリック数ではなく表示回数、比べるのは前月ではなく前年同月
  • AIの検索で候補を絞る人が増えるほど経路は見えなくなり、名前を数えるやり方の価値が上がる
  • ポータル広告でも指名検索は増える。広告費が横ばいの月に伸びているかを見ると、SNSや口コミの効き目に近づける