契約した新郎新婦の半数は、最初に見学した式場で決めている
結婚式場を決めたカップルに、最初に見学した会場で契約したかどうかを聞くと、約半数が「そうです」と答えます。
2022年5月にTAIANが実施した「結婚式場の成約プロセスに関するアンケート」の結果です。対象は、直近で結婚式を挙げた579組と、今後挙げる予定で式場を契約済みの221組、合わせて800組。同社のレポートでは、全体の50%が、最初に見学またはフェアに行った式場で最終的に契約していました。
ブライダルフェアの集客というと、「何組来館してもらうか」の話になりがちです。でもこの数字を見ると、見るべき場所が少しずれてきます。比較の土俵に乗る前に、勝負の半分がついているかもしれないからです。今回はこの調査を材料に、1社目に選ばれる条件と、自分の会場の数字の置き方を書きます。
契約者の半数は、最初に見学した式場で契約している
まず調査の中身を、数字のまま並べます。
- 調査:TAIAN「結婚式場の成約プロセスに関するアンケート調査結果(2022年5月)」
- 実施:2022年5月18日〜19日、インターネット調査
- 対象:直近で挙式した579組、式場契約済みで挙式予定の221組、計800組
- 検討時に見学・フェア参加した会場数:1〜3会場が約8割。最も多い回答は「2会場」で29.8%
- 最初に見学・フェアに行った会場で契約した人:全体の約50%
ここから分かるのは、新郎新婦の多くが、思われているほど式場を回っていないということです。「何軒も見比べて決める」というイメージが業界にはありますが、3会場以内で済ませる人が約8割。しかも半数は、最初の1社目で終わっています。
読み方で気をつけたい点が2つあります。
1つ目は、この調査が「契約した人」に聞いている点です。800組は全員が、どこかの式場と契約したカップルです。「最初に来館した人の半分が契約する」という意味ではありません。1社目に来館して、契約に至らず別の会場へ移った人は、この母集団にはそもそも含まれていません。ですから、この50%を自社の成約率のように読むと間違います。正しくは、「契約した人の側から振り返ると、半数は1社目の会場に決めていた」です。
2つ目は、調査の時期です。2022年5月は、コロナ禍で式の延期や規模縮小が続いたあとの時期でした。今の新郎新婦の動きとは、違う部分があるはずです。僕はこの数字を「今年の実態」として使うつもりはありません。使うのは、「1社目の重みが大きい」という構造のほうです。1社目の印象が残りやすく、そのまま進めやすいという力学は、時期が変わっても急には消えないと見ています。
来館を決める決め手の1位は、雰囲気がわかる写真の34.6%
では、1社目に選ばれるかどうかは何で決まるのか。同じ調査に、来館やフェア参加を決めた理由の数字があります。
- 雰囲気のわかる写真:34.6%
- アクセス:8.3%
- 総額の費用:7.9%
写真がアクセスの約4.2倍、総額の約4.4倍です。僕が計算したので、元の調査にこの倍率が載っているわけではありません。ただ、34.6÷8.3と34.6÷7.9を割っただけの数字ですから、差の大きさは確かです。
上位3つを足しても50.8%です。残りの約半分は、これ以外の細かい理由に散っています。その中で、1つの理由が3割を超えている。写真ひとつで、これだけ票が集まっています。
ここで押さえたいのは、写真の中身です。選択肢の言葉は「雰囲気のわかる写真」でした。きれいな写真ではなく、雰囲気がわかる写真です。チャペルの正面から撮った一枚より、そこに立った新郎新婦が見るであろう景色、ゲストが座ったときの目線の写真のほうが、「ここで式を挙げる自分たち」を想像させます。
写真が見られる場所は、会場ごとに決まっています。
- 結婚情報サイトの会場ページ
- 公式サイトのトップと、会場紹介のページ
- Instagramのフィードやハイライト
- Googleマップに載っている写真
どこで最初に見られても、見た人が「雰囲気がわかった」と感じるかどうか。この一点が、1社目の入口の条件になっています。
アクセスと総額が、それぞれ8%前後にとどまっている点も見落とせません。駅からの距離や総額が気になる人は、もちろんいます。ただ、それは来館を決める理由としては、写真に比べて小さい。総額の表示を細かく整える作業より前に、写真の見直しのほうが票を取れる可能性が高い、という読み方ができます。
契約の決め手は外観内観の19.4%、他を選ばなかった理由は料金の20.6%
来館したあと、契約はどう決まるのか。TAIANの調査には、契約の決め手の数字もあります。
- 外観・内観の雰囲気:19.4%
- 料金・予算:15.5%
- 料理:13.3%
1位は、来館前の決め手と同じ「雰囲気」でした。来館前は写真で雰囲気を想像し、来館後は実物で雰囲気を確かめている。入口も出口も、同じ軸が1位ということになります。
もう1つ、数字があります。複数の会場を見比べたけれど、その会場を選ばなかった人に、選ばなかった理由を聞いた結果です。
- 料金・予算:20.6%
- 外観・内観の雰囲気:13.4%
こちらは、料金が1位でした。
この2つの質問は、聞いていることが違います。「契約した理由」と「選ばなかった理由」を単純に並べて、「雰囲気で選んで、料金で落とす」と言い切るのは雑です。ただ、形としては見えるものがあります。雰囲気は、選ぶときにも落とすときにも上位に出てくる。料金は、落とすときのほうが前に出てくる。
ここから読めるのは、複数の会場を見比べる人たちが、最後に何で線を引くかです。雰囲気が同程度に気に入った会場が並んだら、そこで料金が効いてきます。2社目、3社目として見学される会場は、雰囲気が合格点という前提のうえで、料金で比べられる側に回りやすい。
一方、1社目の会場は、比べる相手がまだいません。比較されずに契約まで進める余地があります。同じ料金でも、1社目で見た人と、他社と並べて見た人では、数字の受け取られ方が違うはずです。
自分の会場の契約を「1社目」と「2社目以降」に分けて数える
ここまでの数字は全部、業界全体の調査です。経営の判断に使うには、自分の会場で同じことを数える必要があります。
数え方は単純です。成約したカップルを、次の2つに分けます。
- 自社が1社目だった組
- 他の会場を見たあとで、自社に来た組
聞く場所は、来館時のアンケートや、最初の打ち合わせでの一言で足ります。「今日、結婚式場の見学は何件目ですか」と聞くだけです。予約フォームに1項目足してもいいでしょう。
数字が貯まれば、自社の1社目比率が出ます。業界全体で約50%という数字がある以上、自社が30%なのか70%なのかで、打つ手が変わります。
考え方を、前提つきの計算で確かめます。年間の成約が60組の会場を例にします。この60組は僕が置いた仮の数字で、実在の会場のものではありません。
| 1社目比率 | 1社目だった組 | 2社目以降の組 |
|---|---|---|
| 30% | 18組 | 42組 |
| 50% | 30組 | 30組 |
| 70% | 42組 | 18組 |
業界平均の50%なら、30組ずつです。仮に自社が70%なら、成約の大半が「最初に選ばれた」ことで生まれています。この会場は、入口の写真と予約導線に投資する価値が高い。反対に30%なら、他社を見たあとで来た組に勝っている会場です。この場合は、来館後の見せ方と料金の説明が効く場所になります。
同じ年間60組でも、効く施策が逆になります。業界の平均値を見て施策を決めるより、自社の比率を1回数えたほうが、意思決定の根拠として強い。
1社目の来館を増やすと、成約がどれだけ増えるかを置いてみる
次に、「1社目として来てくれる組を増やしたら」を計算してみます。
式は短いです。
追加の成約 = 追加の1社目来館数 × 1社目として来館した組の成約率
この成約率は、自社の実績で置く数字です。ここでは3パターンを仮に置きます。
- 1社目来館の成約率が25%
- 同35%
- 同50%
そして、毎月の1社目来館が2組増えたとします。この2組も仮の数字です。
| 1社目来館の成約率 | 月あたりの追加成約 | 年間の追加成約 |
|---|---|---|
| 25% | 0.5組 | 6組 |
| 35% | 0.7組 | 8.4組 |
| 50% | 1.0組 | 12組 |
月に2組なら小さく見えます。でも1年では6〜12組です。年間の成約が60組の会場なら、1割から2割の幅になります。
この計算が教えてくれるのは、来館数を増やす施策の効果は、成約率の置き方で2倍違ってくるということです。だから、自社の「1社目として来た組の成約率」を、先に数えておく必要があります。数えていない会場は、増やす施策の価値を、見積もれません。
入口で見られる4か所の写真を、1社目の目線で並べ直す
ここからは実務です。「雰囲気のわかる写真」が34.6%で1位でした。この写真を、新郎新婦が最初に目にする4か所で点検します。
結婚情報サイトの会場ページ。 最初に出てくる数枚で、雰囲気が伝わるか。設備の説明用の写真ばかり並んでいないか。検索結果の一覧では、1枚目の写真が会場の顔になります。1枚目が外観の引きの写真なのか、挙式の瞬間なのか、ゲスト席からの景色なのかで、同じ会場でも印象は違います。
公式サイトのトップ。 ファーストビューで会場の空気が伝わるか。ここで文字の説明が多いと、写真の力が弱まります。「雰囲気」は、読むものではなく、見て感じるものだからです。
Instagram。 フィードの一覧を引いた状態で、会場の世界観が揃っているか。個別の投稿は良くても、一覧にすると統一感がなくなっている会場は、けっこう見ます。ハイライトに、挙式、披露宴、料理、外観といった見たい順に並んだ入口があるかも確認します。
Googleマップ。 会場名で検索されたとき、最初に表示される写真が何か。ここは自社で撮った写真だけでなく、来館者が投稿した写真も混ざります。意外と、見られている場所です。
4か所とも、確認するのは「この写真を見た人は、ここで式を挙げる自分たちを想像できるか」の一点です。写真の枚数や画質の話ではありません。
写真の次に確認するのは、予約の導線です。写真で来たくなった人が、予約まで迷わず進めるか。ここで離脱すると、せっかく入口で選ばれた1社目の席を、他の会場に譲ることになります。
2社目以降に来る人には、雰囲気を見せるより先に、比較の軸を渡す
1社目の話が長くなりました。2社目以降で来る人については、どう考えるか。
先ほどの数字では、比較して選ばなかった理由の1位が料金・予算で20.6%でした。2社目以降の会場は、比べられる前提で見られます。そこでは、料金の見え方が、他社との比較の中心になりやすい。
僕が考えるのは、見積もりの出し方と、総額の説明の順番です。比較される場面では、総額が分かりにくい会場から、候補を落とされやすいと思います。最終的な総額がどれだけになるのかを、来館の早い段階で説明できる会場は、比較表の上に載りやすい。これは調査の数字から直接出たものではなく、20.6%という数字から僕が組み立てた推論です。ですから、自社の数字で確かめてください。2社目以降で来た組が、どの段階で失注したのかを、見積もりを出した前か後かで分けて数えれば、確かめられます。
1社目向けの施策と2社目以降向けの施策は、予算の置き場所が違う
最後に、判断の分かれ目を整理します。
予算会議で出てくる問いは、だいたいこの形です。「写真や導線の見直しに予算を割くべきか、来館後の接客と見積もりに割くべきか」。
答えは、自社の1社目比率で変わります。
- 1社目比率が高い会場:入口に効く施策が先。写真、サイトのファーストビュー、Instagramの一覧、予約導線
- 1社目比率が低い会場:来館後に効く施策が先。見積もりの出し方、比較の軸の渡し方、料金の説明
- 比率が分からない会場:まず1か月、来館時に「何件目か」を聞く。判断はその数字を見てから
比率が分からないまま、写真に予算を入れるのも、接客に予算を入れるのも、賭けになります。数えるコストは、来館時の1つの質問だけです。
まとめ
調査と計算から言えることを、5つに絞ります。
- TAIANの2022年5月の調査(800組)では、契約者の約50%が、最初に見学した式場で契約していた。これは契約者の側から見た数字であり、1社目来館の成約率ではない
- 検討時に回る会場は1〜3会場が約8割で、最も多いのは2会場(29.8%)。「何軒も見比べて決める」は、多数派ではない
- 来館を決める理由の1位は「雰囲気のわかる写真」の34.6%で、アクセス(8.3%)と総額(7.9%)を大きく上回る。1社目に選ばれる入口は、写真
- 契約の決め手は外観内観の雰囲気(19.4%)、比較したのに選ばれなかった理由は料金・予算(20.6%)が1位。比較される側に回ると、料金が効いてくる
- 業界平均より、自社の「1社目比率」と「1社目来館の成約率」を数えるほうが、施策の優先順位を決める根拠になる
