二人が会場を探し始めてから決めるまでは平均1.6か月。追客を2か月で切ると、契約する人の3人に1人が対象から外れる
「フェアに来てくれたのに、連絡が途絶えた」。追客の現場でよく聞く話ですが、途絶えた時点で二人がどこにいたのかを数字で押さえている式場は多くありません。二人が会場を探している期間は、思ったより短く、そして思ったより長い。短いのは平均で、長いのは裾のほうです。この2つを分けて見ると、追客を何か月続けるか、契約の入り方をどう読むか、媒体費をいつ使うかの3つが、同じ1枚の数字から決まります。
リクルートブライダル総研のゼクシィ結婚トレンド調査2024(首都圏版の報告書)には、披露宴・ウエディングパーティー会場を探し始めた時期と、決めた時期が載っています。全国の推計値では、探し始めは挙式の平均9.9か月前、決めたのは平均8.3か月前です。差し引くと、探している期間は1.6か月しかありません。この記事では、この数字を仮の式場にあてはめて、追客を2か月で打ち切ると何が起きるかを前提つきで計算します。先に結論を書くと、探している期間の分布は、2か月で切ると契約する人の約33%が追客の対象から外れる形をしています。
調査が示す探し始めと決めた時期
使うのは、同じ報告書の第5章にある「披露宴・ウエディングパーティー会場の検討開始時期と決定時期」と「会場の検討期間」です。対象は、2023年4月から2024年3月に挙式または披露宴・ウエディングパーティーを実施した人のうち、披露宴・ウエディングパーティーを実施して、時期を数字で答えた人です。表には全国の推計値の行があるので、その行を使います。
全国の推計値で、会場の検討期間の分布は次のとおりです。
- 1か月未満 35.7%
- 1か月以上2か月未満 29.9%
- 2か月以上3か月未満 15.6%
- 3か月以上4か月未満 6.7%
- 4か月以上 9.6%(4〜5か月 2.9%、5〜6か月 1.3%、6〜7か月 2.1%、7〜8か月 0.6%、8か月以上 2.7%)
- 無回答 2.4%
平均は1.6か月です。無回答を除いて累計すると、2か月未満で決める人が67.3%、3か月未満で83.3%、4か月未満で90.2%になります。
ここから、僕が読んだことを3つ書きます。
1つ目は、3人に1人は1か月未満で決めていることです。フェアに来た週のうちに、あるいは翌週に決める人が、3分の1いる。2つ目は、2か月を超えて探し続ける人が約33%いることです。平均1.6か月という数字は、この裾に引っ張られたものです。中央値はもっと短いはずで、1か月台前半に収まるでしょう(分布から見た僕の推定です)。3つ目は、8か月以上探している人が2.7%いることです。ここは追客の対象というより、そもそも日程が決まっていない人の可能性があります。
もうひとつ、読み方の注意があります。この分布は、二人が「会場探しを始めてから」決めるまでの時間です。自社への初回来館は、探し始めよりあとに来ます。だから、自社への初回来館から契約までの残り時間は、この分布より短いはずです。以降の計算は、この分布を「いちばん長く見積もった場合」として使います。
年ごとの推移を見る
首都圏の報告書には、2018年から2024年までの平均の推移も載っています。首都圏の数字で並べます。
- 検討開始時期(挙式の何か月前か):10.1、9.6、9.7、12.3、12.3、10.6、10.3(2018年→2024年)
- 決定時期:8.3、8.1、8.1、10.6、10.5、8.8、8.5
- 検討期間(か月):1.8、1.5、1.7、1.7、1.8、1.8、1.7
動いているのは、探し始めと決めた時期のほうです。2021年と2022年の調査だけ、探し始めが12.3か月前、決めたのが10.5か月前前後と、他の年より2か月ほど早くなっています。コロナ期に日程の組み直しや延期が混ざった可能性は考えられますが、この調査から原因までは読み取れません。2023年と2024年は、2018年から2020年とほぼ同じ水準に戻っています。
そしてこの7年、探している期間は1.5か月から1.8か月の間にずっと収まっています。時期が前後に動いても、探し始めてから決めるまでの長さは変わらない。追客の設計は、この長さを軸にすれば、年ごとの動きに振り回されません。
追客を何か月まで続けるか
ここから、調査にない数字を僕が仮に置いて計算します。実在の式場ではありません。
- 年間の契約は120組とする
- 1組の粗利は140万円とする
- 契約する二人の探している期間は、全国推計値の分布どおりとする
- 追客は、二人が探し始めたと同時に始まるとする(実際は、初回来館のほうが遅れるので、これは最大に見積もった場合)
追客を打ち切る時点ごとに、契約する二人のうち、まだ探している人の割合を出します。無回答を除いた累計から引くと、次のようになります。
- 1か月で打ち切る:契約する人の63.4%がまだ探している(約76組)
- 2か月で打ち切る:32.7%(約39組)
- 3か月で打ち切る:16.7%(約20組)
- 4か月で打ち切る:9.8%(約12組)
2か月で打ち切ると、契約する二人の約33%、仮の式場で約39組が、追客が止まったあとにも探し続けていることになります。3か月に延ばせば、これが約20組に減ります。
ただし、追客が止まったからといって、この39組がすべて他社に決まるわけではありません。自分から連絡をくれる人も、再来館してくれる人もいます。ここで分けて考える必要があります。追客を延ばして変わるのは、「追客がなければ他社に決まっていた人」の数だけです。
2か月から3か月に延ばしたときに、新たに追客の対象に入る人は、2か月以上3か月未満で決める15.6%です。無回答を除くと16.0%、仮の式場で約19組になります。この19組のうち、追客を止めていたら他社に決まっていた人の割合をxとして、いくつかの値で粗利を計算します。
- x が 10% なら、1.9組、粗利は約269万円
- x が 25% なら、4.8組、粗利は約672万円
一方、追客を1か月延ばす費用も置いてみます。これも仮の数字です。
- 年間の来館は480組、成約率は25%で、未契約は360組とする
- 2か月の時点でもまだ探している未契約者は、契約する人の割合(32.7%)と同じとすると、約118組
- 延長した1か月は、週に1回、1人あたり10分の連絡をするとして、118組×4回×10分で、年に約79時間
- 人件費は、時給2,500円(社会保険等を含む仮の額)とすると、約19.7万円
追加の費用が約19.7万円で、損益分岐は19.7万円÷(19組×140万円)で0.7%です。追客を1か月延ばして、19組のうち0.14組、つまり7年に1組でも他社に決まるのを防げれば、費用は回収できます。x が10%なら、利益は費用の約14倍です。
この計算には、置いた前提を壊す条件が1つあります。連絡の中身です。同じ文面を何度も送ると、返信率が下がるだけでなく、二人の印象も下がります。延長した1か月の連絡は、候補日が埋まりつつあること、見積もりの見直しができること、家族と一緒に見る枠があることなど、二人の判断に使える材料にする必要があります。材料のない連絡は、費用よりも成約率を下げる可能性のほうが大きいです。
挙式の8か月前に半分が未契約でも普通
次に、決めた時期のほうを見ます。全国推計値で、挙式の何か月前に会場を決めたかの分布は、次のとおりです(無回答を除いた累計)。
- 12か月前までに決めた人:19.2%
- 10か月前までに:34.1%
- 8か月前までに:53.3%
- 6か月前までに:79.6%
- 4か月前までに:93.7%
- 3か月前までに:98.0%
平均の8.3か月前は、累計が半分を超えるあたりです。なお、回答は月単位の数字なので、「8か月前までに」は、おおよその区切りとして読んでください。
もうひとつ見えるのは、12か月前の山です。12か月前に決めた人は10.9%と、前後の月(13か月前が2.0%、11か月前が5.3%)より高くなっています。ちょうど1年前、つまり前年の同じ月に決める人が一定数いるということです。挙式まで1年を切ったところで決める区切りが、二人の側にあります。
これを仮の式場にあてはめます。結婚マーケット調査2025では、挙式月の割合は6月が14.0%です。年120組の式場が市場と同じ偏りなら、6月の挙式は16.8組です。この16.8組が、いつ契約になるかを分布どおりに置くと、次のようになります。
- 前年6月(12か月前)までに:約3.2組
- 前年8月(10か月前)までに:約5.7組
- 前年10月(8か月前)までに:約9.0組
- 前年12月(6か月前)までに:約13.4組
- 当年2月(4か月前)までに:約15.7組
つまり、6月挙式の枠は、前年の10月末の時点で、市場並みでも約8組が未契約です。枠の半分近くが空いている状態は、普通の姿です。ここで「6月の枠が埋まっていない」と値引きに走ると、あとから来る約8組も、その値引きの条件に巻き込まれます。
見るべきは、枠の残り数ではなく、自社の契約が挙式の何か月前に入っているかです。たとえば、自社の6月挙式の契約が、10月末の時点で6組しかなければ、市場の曲線(約9.0組)より約3組遅れています。この遅れは、追客の弱さか、探し始めの二人に届いていないか、のどちらかを疑う材料になります。同じ数字が、市場並みの9組なら、残りの7.8組は急がなくても入ってくる可能性が高い。判断が逆になります。
自社の曲線の作り方は簡単です。過去2〜3年の契約を、挙式日から逆算した月数で並べ直して、累計の割合を出します。市場の曲線と並べて、どこで差が開くかを見ます。
集客の山は契約の山より早い
探し始めの分布も、同じ報告書に載っています。全国推計値で、挙式の何か月前に探し始めたか(無回答を除いた累計)は次のとおりです。
- 12か月前までに:32.8%
- 10か月前までに:48.8%
- 8か月前までに:67.0%
- 6か月前までに:87.7%
探し始めの平均は9.9か月前で、決めた時期の平均8.3か月前より1.6か月早い。この差が検討期間です。
探し始めの山も、12か月前にあります。13.6%と、前後の月(13か月前が3.9%、11か月前が5.3%)より高い。決めた時期と同じく、前年の同じ月が区切りになっています。
媒体費やフェアの増枠を、いつ使うかの考え方もここから出ます。6月挙式の二人は、平均で前年の8月ごろ(9.9か月前)に探し始めて、10月ごろ(8.3か月前)に決めます。6月の枠を埋めたいなら、6月に近づいてから費用を使うのではなく、前年の8月から10月に使う。6月の直前に動く二人は、約4か月前までに決める人の93.7%の外側、残りの6%強です。
挙式の少ない月はどうでしょう。結婚マーケット調査2025で3.0%の8月に挙げたい二人は、前年の10月ごろに探し始めて、12月ごろに決める計算です。閑散月の枠を埋める施策を、閑散月の直前に打っても、二人はもう他の式場で決めています。
ここまでの話をまとめると、媒体費・フェア・追客の3つは、時間軸が違います。
- 媒体費とフェアの増枠は、挙式の約10か月前の二人に向ける
- 追客は、二人が探し始めてからの2〜3か月に重ねる
- 契約の遅れの判断は、挙式の約8か月前を基準に、自社の曲線で見る
客層によって、探している期間は違う
首都圏の報告書には、年代や会場タイプ別の検討期間も載っています。回答数が少ない区分もあるので、参考値として並べます(首都圏、2024年調査)。
- 妻の年齢が25〜29歳(229人):平均1.8か月、1か月未満が36.7%
- 30〜34歳(102人):1.4か月、1か月未満が41.2%
- 35歳以上(41人):1.1か月、1か月未満が48.8%
- 一般の結婚式場(194人):1.7か月
- ホテル(111人):1.6か月
- ハウスウエディング(24人):1.3か月
年齢が上がるほど、探している期間は短くなる傾向があります。35歳以上は回答が41人と少ないので、断定はできません。それでも、年代が高い二人は、決めるまでの期間が短い可能性があります。この客層が多い式場は、追客を3か月ではなく、最初の1か月に重ねるほうが合う場合があります。逆に、20代後半が中心の式場は、2か月以降の追客にも意味があります。
ハウスウエディングの1.3か月は、回答が24人です。差があるかどうかは、この数字からは言えません。
自社で確かめる手順
最後に、今日から自社の数字で確かめる手順を書きます。市場の数字は基準線で、判断は自社の数字でします。
- 過去2年の契約者について、初回来館日と契約日の差を日数で出す(予約システムの来館記録と契約日があればできる)
- 差を30日ごとに区切って、累計の割合を出す。60日で何%、90日で何%が決まっているか
- 市場の曲線(2か月未満で67.3%、3か月未満で83.3%)と並べる。自社の曲線がそれより短ければ、初回来館が探し始めのかなりあとに来ている。長ければ、自社の追客が二人の判断に追いついていない可能性がある
- 契約者の挙式日から、契約が挙式の何か月前かを出して、累計を市場の曲線と比べる
- 追客の終了ルールを、60日などの区切りで決めている場合は、60日を超えて契約になった組数を数える
3番で、自社の初回来館から契約までが、市場の探している期間(1.6か月)より短いのは普通です。初回来館は、探し始めのあとに来るからです。見るのは絶対値ではなく、60日や90日のあたりで、曲線の傾きが急に寝る場所があるかどうかです。そこが、自社の追客が二人の判断から外れる時点になります。
まとめ
- ゼクシィ結婚トレンド調査2024の全国推計値では、二人が会場を探し始めるのは挙式の平均9.9か月前、決めるのは8.3か月前で、探している期間は平均1.6か月
- 探している期間は、1か月未満が35.7%、2か月未満が67.3%、3か月未満が83.3%。2か月で追客を切ると、契約する人の約33%がまだ探している
- 首都圏の2018年から2024年で、探している期間は1.5〜1.8か月に収まり、動いたのは探し始めと決めた時期のほう
- 仮の式場(年120組、粗利140万円)では、追客を2か月から3か月に延ばして新たに対象に入るのは約19組で、そのうち0.14組が他社に決まるのを防げれば費用が回収できる
- 挙式の8か月前までに決める人は53.3%。枠の半分が未契約でも、市場並みの姿
- 契約の遅れは、残り枠ではなく、自社の契約が挙式の何か月前に入っているかの曲線で、市場と並べて判断する
- 媒体費とフェアは挙式の約10か月前の二人に向け、追客は探し始めてからの2〜3か月に重ねる
