日取りを先に決めた二人は、候補の6会場のうち2会場しか空いていない。「第3希望まで聞く」だけで月3.9組が動く計算
「まず日取りを決めて、その日に空いている式場を探す」。二人が式場探しを始めるとき、この順番はごく自然に見えます。親族の予定、仕事の休み、季節、六曜。決めやすい条件から片づけるのは、段取りとして間違っていません。
ただ、この順番には落とし穴があります。人気日は、探し始めた時点でたいてい複数の会場が埋まっています。日取りを1日に絞るほど、見学できる会場は減ります。式場の側から見れば、来館した二人の希望日がすでに埋まっていて、中身の話に入る前に終わる組が出ます。
この記事では、二人が候補にする会場を6つ置き、希望日の空き状況を確率で数えます。その上で、月60組が来館する仮の式場で、日程の聞き方を変えると成約が何組動くかを計算します。先に断っておくと、出てくる数字はすべて僕が置いた前提による計算で、実在の式場や調査の結果ではありません。自分の会場の数字に差し替えて読んでください。
日取りを先に決める二人の探し方
二人が式場を探すときの流れを、仮にこう置きます。
- 日取りを決める(人気の土曜日を1日)
- 気になる会場を6つ選んで見学を申し込む
- 見積もりを比べて1つに絞る
この流れでは、手順2の時点で、6会場すべてが希望日に空いているとは限りません。ブライダルフェアの予約画面で日程を入れると、希望日の枠が埋まっていることがわかります。そこで二人は、会場を替えるか、日取りを変えるかの二択に追い込まれます。
ここで大事なのは、どちらを選んでも二人が比べられる会場の数が減ることです。会場を替えれば、最初に気に入った会場は候補から消えます。日取りを変えれば、親族に連絡し直すことになります。最初から日取りを3つ持っていれば、この二択は起きません。
空いている会場の数を数える
計算に必要な前提は1つだけです。希望日に、ある会場が埋まっている確率をqとします。この確率は、会場と日で大きく違います。繁忙期の人気日なら高く、閑散期の平日なら低くなります。3通りに置きます。
- q=0.5:普通の土日(2会場に1つが埋まっている)
- q=0.7:やや人気の土日
- q=0.9:繁忙期の人気日(10会場に9つが埋まっている)
会場ごとの埋まり方は独立だと仮定します。実際には、同じ日に複数の会場が埋まりやすいので(人気日は全部の会場で人気です)、独立の仮定は空きを多く見積もる側に偏ります。現実はこの表より厳しい、と読んでください。
6会場を見学したい二人が、希望日を1日だけ決めた場合の結果です。
| 希望日の人気 | 空いている会場の期待値 | 1会場も空いていない確率 |
|---|---|---|
| q=0.5 | 3.0会場 | 約1.6% |
| q=0.7 | 1.8会場 | 約11.8% |
| q=0.9 | 0.6会場 | 約53.1% |
q=0.7では、6会場のうち見学できるのは1.8会場です。比べたくて選んだ6つが、実際には2つ弱に減ります。q=0.9になると、半数以上の二人が、6会場のどこにも希望日の空きを見つけられません。
候補日を3つにすると何が変わるか
候補日をk日に増やして、そのうちどれか1日でも空いていれば見学の対象にします。ある会場に空きが見つかる確率は、1−qのk乗で数えられます。
| 希望日の人気 | 1日だけ | 2日 | 3日 | 5日 |
|---|---|---|---|---|
| q=0.5 | 3.00会場 | 4.50会場 | 5.25会場 | 5.81会場 |
| q=0.7 | 1.80会場 | 3.06会場 | 3.94会場 | 4.99会場 |
| q=0.9 | 0.60会場 | 1.14会場 | 1.63会場 | 2.46会場 |
q=0.7の場合、1日だけだと1.8会場、3日に広げると3.9会場です。倍以上に増えます。q=0.9の人気日だけで固めている二人は、5日に広げても2.5会場にしかなりません。
この表から、僕が読み取ったことは2つです。1つは、候補日を2日に増やす効果がいちばん大きいことです。q=0.7では、1日から2日で1.3会場増え、2日から3日で0.9会場増えます。増え方は少しずつ鈍っていきます。もう1つは、人気日だけで固めた二人には、日程を広げても限界があることです。q=0.9では、広げても半分以上の会場が埋まったままです。
式場の側で起きていること:希望日が埋まっている来館者
ここまでは二人の側の話でした。式場の側では、これは来館後の取りこぼしになります。
月60組が来館する仮の式場を置きます。来館者を次のように分けます。
- 日程が固い組(候補日が1日):40%、24組
- 日程に幅がある組(候補日が3日ほどある):60%、36組
式場の人気度はq=0.7(希望日が埋まっている確率が7割)とします。希望日に空きがあれば、成約率は30%とします。この成約率も僕の仮置きです。希望日が埋まっていて代わりの日も出せなければ、成約はゼロとします。
現場の動きを2通り比べます。
- A:予約時に第1希望の日だけ聞く。第1希望が埋まっていれば、そこで案内が終わる
- B:予約時に第3希望まで聞き、空いている日を先に確認してから案内する
Aの成約数は、来館60組すべてが第1希望の1日だけで判定されます。空いている確率は0.3、成約率は0.3なので、60×0.3×0.3=5.4組です。
Bでは、日程が固い組は変わらず24×0.3×0.3=2.16組です。幅のある組は、3日のうち1日でも空いていれば案内できます。空く確率は1−0.7の3乗=0.657なので、36×0.657×0.3=7.1組です。合計は9.26組になります。
差は、9.26−5.4=約3.9組です。月に3.9組、年に換算すると約46組です。同じ数の来館があり、同じ接客をして、日程の聞き方だけが違います。
q=0.5の閑散寄りの式場なら、Aが9.0組、Bが13.05組で、差は約4.0組です。人気度が違っても、差はほぼ同じ大きさになります。
ここまでの計算は、「幅のある組は、聞かれれば実際に候補日を出す」と置いています。そうでなければ差は小さくなります。次の節で、聞き方を考えます。
日程の聞き方
候補日を聞くと言っても、予約画面に「第3希望まで入力してください」と書くだけでは、入力されないことが多いはずです。二人は、まだ日取りを決めきれていない状態で見学に来ます。聞き方を整理すると、次のようになります。
予約の時点では、日にちではなく幅で聞く。「土日のどちらでもよい」「春か秋か」「平日でも相談したい」のような幅なら、二人は答えやすくなります。日にちを3つ出せと言われると、答えられない二人は空欄のまま進みます。
**来館してから、空いている日を先に見せる。**最初に「ご希望の日はいつですか」と聞くより、「この3か月の土日で空いているのは、この日です」と先に出す方が、日取りが固まっていない二人の判断を助けます。空きの一覧を印刷して持ち帰れるようにしておくと、親族との相談に使えます。
埋まっている日は、理由を添えて伝える。「その日は満席です」で終わると、二人は他の会場に行きます。「その日は昼が満席です。夕方なら空いています」「前後の土曜が空いています」まで言えば、会話が続きます。時間帯を変える提案は、日取りを動かすより親族への負担が小さいです。
この3つのうち、すぐに始められるのは2つ目です。空きの一覧は、予約システムから出せるはずだからです。
仮押さえの扱い
もう1つ、数えておく項目があります。仮押さえです。
仮押さえは、二人にとっては日取りを守る手段で、式場にとっては他の二人が入れない時間を作る仕組みです。仮押さえが多いと、実際より日が埋まって見えます。
仮の式場で、人気日20日のうち、仮押さえが常に4日入っているとします。この4日は、他の二人から見ると満席です。仮押さえの二人が契約する確率を5割とすると、残りの5割は、押さえたまま契約せずに期限が来ます。その間に、別の二人が希望日を断られている可能性があります。
数えるべきなのは次の3つです。
- 仮押さえの期限(何日か)。長いほど、見かけ上の満席が増える
- 仮押さえから契約に進む割合。5割を切っているなら、期限を短くする余地がある
- 仮押さえ中に、同じ日を希望して断った二人の数。これが実際の取りこぼしになる
仮押さえの期限は、短くすれば二人の負担が増えます。ここは、二人の判断期間と式場の取りこぼしを天秤にかけるしかありません。ただ、取りこぼしの数を数えずに期限を決めている会場は多いのではないか、と僕は思っています。
計算が当たらなくなる場面
この計算には、外れる条件があります。
日取りが動かせない二人。親族の都合や、記念日の挙式を決めている二人には、候補日を聞いても意味がありません。こういう二人には、その日が空いていることがすべてです。人気日が埋まっていれば、そもそも会場の差は関係なく、早く予約を入れた会場が勝ちます。
会場の埋まり方が相関している場合。繁忙期の人気日は、ほぼ全会場で埋まります。独立の仮定より空きは少なく、候補日を広げても期待値ほど増えません。表の数字は上限と見てください。
成約率が、日程の自由度と関係している場合。日程に幅がある二人は、他の会場も回りやすく、成約率が低い可能性があります。この記事では、成約率を30%で一定にしました。幅のある二人の成約率が20%なら、Aは4.3組、Bは6.9組で、差は約2.6組まで縮みます。自分の会場の「日程が固い組」と「幅のある組」の成約率を、別々に出して差し替えてください。
会場側が数える項目
計算を自分の会場に当てはめるために、数える項目を並べます。
- 来館者のうち、日程が固い組と幅のある組の割合
- 第1希望が埋まっていたために、そこで案内を終えた来館の件数
- その組の、後日の成約の有無(他の会場で決めたのか、日を替えて戻ってきたのか)
- 人気日の仮押さえの件数と、期限切れで解除された件数
2つ目は、記録していなければ取れません。予約システムの備考欄に「第1希望が埋まっていた」と一言入れるだけでも、半年で数えられるようになります。
まとめ
- 二人が日取りを1日に絞ると、候補6会場のうち空いているのは、やや人気の土日(埋まる確率7割)で平均1.8会場です。候補日を3日にすると3.9会場に増えます
- 月60組が来館する仮の式場では、第1希望だけ聞く場合と第3希望まで聞く場合で、月の成約が5.4組と9.3組になる計算です。差は月3.9組、年約46組です
- この差は、日程に幅のある組が実際に候補日を出す前提です。成約率が下がる場合や会場の埋まり方が相関する場合は、差はもっと小さくなります
- 聞き方は、日にちではなく幅で聞く、空いている日を先に見せる、埋まっている日には代案を添える、の順で変えられます
- 仮押さえの期限は、仮押さえから契約に進む割合と、仮押さえ中に断った件数を数えてから決めます
- 日程の聞き方は接客品質の話に見えますが、取りこぼしの数に直すと、成約数の話です
