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式場の貸切は、言葉でなく他の組と重なる場所で伝える

式場の見学で、二人からよく出る質問があります。「当日は、ほかの組と会うことはありますか」「貸切ですか」というものです。

これに「はい、お二人のための貸切です」と答える式場は多いと思います。ただ、1日に複数の組が挙式をする式場で、本当に館内のどこでも一度も重ならない、という運営はまれです。ロビー、エントランス、トイレ、駐車場、お見送りの動線。どこかで、前の組と後の組が同じ場所を通ります。

僕の考えは、「貸切」という言葉で答えるのをやめて、「重なる場所と時間」を先に書いておくほうがいい、というものです。見学で聞かれてから説明するのではなく、公式サイトの段階で書く。この記事では、なぜそのほうが成約に近いのか、どう書けばいいのか、書くと逆効果になるのはどんなときかを、判断の条件として整理します。

なお、出てくる数字と時刻はすべて、説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではありません。自分の式場の進行表に置き換えて使ってください。

「貸切ですか」と聞く二人は、何を心配しているのか

この質問の裏には、二つの心配があります。

一つは、自分たちの時間が雑に扱われないか、という心配です。前の組の披露宴が押して、自分たちの控室入りが遅れるのではないか。お見送りで、次の組の受付と鉢合わせになるのではないか。

もう一つは、ゲストの目です。親族や友人が、他の組の花嫁を見かけたり、他の組のゲストと同じ通路を歩いたりすることを、二人は意外と気にします。特に、高齢の祖父母を呼ぶ二人は、トイレの待ち行列や、エレベーターの混み方を気にします。

つまり、二人が聞いているのは「貸切かどうか」という一語の答えではなく、「当日、自分たちとゲストが、他の組とどこで・どのくらい重なるのか」です。「貸切」はそれを一言にまとめた略語で、聞いた側は「略さずに言ってくれないか」と思っています。

式場側が「基本的には貸切です」と答えると、二人は「基本的には、とは何が例外なのか」と考えます。その場で聞き返す二人は多くありません。聞き返せなかった二人は、「貸切でない部分があるらしい」とだけ持ち帰ります。ここで失われるのは、信用です。

重なりは数えられる:仮の1日3組で見てみる

重なりは、感覚ではなく、進行表から数えられます。仮の例で数えてみます。

1日に3組の挙式がある式場を考えます。館内にいる時間は、受付開始から、お見送りの終わりまでとします。受付は挙式の45分前に始まる、と置きます。

  • 1組目:挙式11:00、お見送りの終わりが14:15
  • 2組目:挙式13:30、お見送りの終わりが16:45
  • 3組目:挙式16:00、お見送りの終わりが19:15

この仮の進行で、館内にいる時間を重ねて数えると、次のようになります(計算は Python で行いました)。

  • 1組目と2組目:館内で重なるのは90分(2組目の受付が12:45に始まり、1組目の終わりが14:15)
  • 2組目と3組目:同じく90分
  • 1組目と3組目:重ならない
  • 2組以上が同時に館内にいる時間:合計で180分
  • 3組が同時に館内にいる時間:なし

ここで大事なのは、重なりが「ゼロか、全部か」ではないことです。この仮の式場では、館内に誰かしらいる朝9時から夜21時までの12時間のうち、2組が同時にいるのは3時間です。そのうち、披露宴の本体どうしが重なるのは、1組目と2組目で45分ずつ、2組目と3組目で45分ずつにとどまります。

この数え方をすると、「貸切です」とも「相席です」とも言えない、という実態が見えてきます。実態は「ほとんどの時間は自分たちだけ。ただし、前の組のお見送りと自分たちの受付が、ロビーで45〜90分重なる」というものです。これをそのまま書いたほうが、二人にとって正確で、しかも安心できる情報になります。

重なる場所は、場所別に書く

次に、重なる場所の書き方です。「重なりがあります」とだけ書くと、二人は最悪の場面を想像します。場所ごとに、重なるか、どう分けているかを書きます。

見るべき場所は、次のように分けられます。

  • エントランスとロビー:受付と、お見送りが同じ場所になる式場が多い
  • 控室・親族控室:組ごとに専用の部屋か、時間でずらした共有か
  • トイレ:ゲスト用が共有か、組ごとに分かれているか
  • チャペルや挙式会場:前の組の挙式のあと、入れ替えにかかる時間
  • 駐車場・送迎の乗り場:入退場の時刻が重なるときの案内

全部を書く必要はありません。二人が心配しやすいのは、エントランス、トイレ、お見送りの三つです。僕なら、この三つを最低限書きます。

書き方の型は、「場所」「重なり方」「式場がしていること」の三点です。たとえば、次のようになります。

エントランス:前の組のお見送りと、次の組の受付が、最大で45分重なる日があります。受付の入口を正面とは別の入口に分けて、お見送りの列と交わらないようにしています。

この書き方なら、「重なる」と正直に書いたうえで、「だから困らない」まで伝わります。重なりを隠して「貸切」と書くより、はるかに安心できる文章になります。

書いて逆効果にならないための条件

重なりを正直に書くと、見学予約が減る、と心配する人もいると思います。確かに、書くと逆効果になる場合があります。

**重なりを減らす運営が先にある場合だけ、書く。**これが一つめの条件です。重なっていることだけを書いて、「分けるための工夫」が何もない状態で公開すると、二人は不安だけを受け取ります。書く前に、動線の分け方か、時間のずらし方を、一つは決めておく必要があります。

**進行表と書いた内容が合っていること。**これが二つめの条件です。サイトに「お見送りと受付は入口を分けています」と書いたのに、繁忙日に実際は同じ入口を使っている、という状態は、貸切と書くよりも悪い結果になります。サイトに書くのは、繁忙日でも守れる内容だけにします。守れない日があるなら、「繁忙日は〇〇になります」と、日の条件を添えます。

**1日の組数が多い式場は、組数そのものを書く。**これが三つめです。1日に4組以上入れる式場で、「ゆったりした時間」と書くのは難しい。組数を隠したままでは、二人は見学で初めて知ります。組数が多い式場は、組数を書いたうえで、「その分、動線を分けている」「進行を時間で区切っている」と、運営の強みとして書くほうが自然です。

見学では、答えを紙にして渡す

サイトに書いたら、見学でも同じ内容を使います。「貸切ですか」と聞かれたとき、口頭で説明するより、重なりの時間表を1枚の紙で見せるほうが伝わります。

紙にするのは、仮の例で言えば、次の三行です。

  • 挙式時刻ごとの、館内にいる時間(受付開始〜お見送り終わり)
  • 前後の組と重なる時間(長い日の例と、短い日の例)
  • 場所ごとに分けている工夫

これを、見積もりと一緒に持ち帰ってもらいます。二人が家で、親に「当日はこうなるらしい」と説明するときの材料になるからです。親が気にしているのは、たいてい「他の組と混ざって、落ち着かないのではないか」という点です。紙があれば、二人が自分の言葉で説明できます。

担当者が口頭で「大丈夫ですよ」と言うだけでは、二人は親に説明できません。説明できない二人は、その場では納得しても、持ち帰ったあとで迷います。

数字で効果を確かめるなら

書き換えの効果は、次の二つで確かめられます。

一つは、見学の予約フォームの自由記入欄や、見学中の質問に「貸切」「他の組」「重なる」という言葉が出る頻度です。サイトに書いたあとで、この質問が減れば、サイトで先に答えられたことになります。

もう一つは、成約の組数です。見学予約の件数は、書いたことで動かないかもしれません。見るべきは、見学から成約までの組の割合です。仮に、見学が月30組で成約が9組なら30%です。書いたあと、同じ条件で見学が月30組、成約が10組になれば、33%です。ただし、これは1か月分の差で、偶然の範囲に入ります。3か月続けて、見学の組数が近い月どうしで比べてください。

書いたあとに成約率が下がったなら、書いた内容が二人の不安を強めた可能性があります。その場合は、書き方を変えるのではなく、運営の側で分ける工夫を足すのが先です。

この記事の前提の限界

最後に、この記事の限界を書いておきます。

この記事で置いた進行表や時間、組数は、すべて仮のものです。重なりの長さは、式場の規模や1日の組数によって大きく変わります。1日1組だけの式場は、そもそもこの話は不要です。逆に、1日5組以上入れる式場では、この記事の書き方では足りないかもしれません。

また、「二人が貸切を気にする」というのは、僕の観察に基づく見立てです。気にする度合いは、二人の人数や、会場のタイプ、地域によって違うはずです。まずは自分の式場で、見学中に「貸切」「他の組」という言葉がどのくらい出ているかを、1か月だけ数えてみるのがいいと思います。その数が少なければ、後回しでかまいません。

まとめ

  • 「貸切ですか」という質問の中身は、貸切かどうかではなく、当日どこで他の組と重なるか
  • 「基本的には貸切です」と答えると、二人は例外を想像する。略さずに、重なる場所と時間を書く
  • 重なりは進行表から数えられる。仮の1日3組なら、館内で2組が重なるのは合計180分で、3組が重なる時間はない
  • 書く場所は、エントランス、トイレ、お見送りの三つを最低限にする。「場所」「重なり方」「式場がしていること」の三点で書く
  • 書く前に、動線か時間で分ける工夫を一つ決めておく。繁忙日でも守れる内容だけを書く
  • 見学では、重なりの時間表を1枚の紙にして渡す。二人が親に説明するための材料になる
  • 効果は、見学中の「貸切」の質問の数と、3か月単位の成約率で見る