式場サイトのリターゲティング広告は、予約前に離れた二人だけに絞る
式場の公式サイトを見たあと、別のサイトやSNSを開いたら同じ式場の広告が出てきた。結婚式を探している二人なら、一度は経験していると思います。これがリターゲティング広告(リマーケティングとも呼ばれます)で、公式サイトを訪れた人に、あとから広告を見せる仕組みです。
僕は、式場がこの広告を使うなら、出す相手を「サイトを見たけれど、見学予約までは進まなかった二人」に絞るのがいいと考えています。サイトを見た全員に出すと、すでに見学を予約した二人にも、すでに契約した二人にも広告が出続けます。そこに費用が漏れます。この記事では、誰に出して誰を外すか、どのくらいの期間と金額で始めるか、続けるか止めるかをどこで決めるかを整理します。
先に断っておくと、出てくる数字は説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではありません。自社の訪問数や成約率に置き換えて読んでください。
リターゲティング広告の仕組み
公式サイトに広告会社の計測タグを入れておくと、サイトを訪れたブラウザが「訪問者のリスト」に入ります。広告はこのリストに向けて配信されます。サイトを見てから数日から数週間のあいだ、別のサイトやアプリで同じ式場の広告が表示されるのは、この仕組みのためです。
ここで押さえたいのは、リストは「見た人」の集まりで、「迷っている人」の集まりではないことです。サイトを見た人には、次のような人が混ざっています。
- まだ見学予約を迷っている二人
- 見学を予約して来館を待っている二人
- 見学を終えて、他の式場と比べている二人
- すでに契約した二人
- 親や友人で、式場を探しているのは本人ではない人
- 同業の式場や取引先など、探していない人
広告費をかけて動かしたいのは、いちばん上の「まだ迷っている二人」です。ほかの人に出る広告は、効果がないか、ときには逆効果です。
外すべき3つの相手
見学予約を済ませた二人
予約が入った二人は、すでに見学の日を決めています。この二人に「ブライダルフェア開催中」という広告が出続けると、二人は「予約したのに、まだ勧誘されている」と感じます。しかも、広告をクリックして予約フォームを開けば、同じ二人の予約が二重に数字に載ります。効果測定が歪みます。
外し方は単純です。見学予約が完了したときに表示される完了ページを計測しておき、そのページを見たブラウザは広告のリストから外します。予約の完了ページが無く、メールの案内だけで完了させている場合は、先に完了ページを作ります。計測の土台になるからです。
契約済みの二人
契約した二人にも、広告は出続けます。式場の側が把握している契約者の情報を、広告のリストから外す仕組みを作っていないと、契約後も数週間、見学を勧める広告が表示されます。二人は式場の広告を毎日見ることになります。契約後の二人が一番嫌がる展開のひとつではないでしょうか。
個人情報をどう扱うかには注意が必要です。契約者のメールアドレスを広告会社に渡して外す方法は、規約と二人への同意の取り方を確認してからにします。難しければ、契約者向けのページを別に作り、そのページを見たブラウザを外す方法もあります。それも難しいなら、広告を出す期間を短く区切ることで、契約後に追いかけ続ける期間そのものを短くします。
すぐ閉じた人
サイトを開いてすぐ閉じた人は、探していない人か、間違って開いた人です。リストに入れる条件として「2ページ以上見た」「30秒以上滞在した」のような下限を付けておくと、検討していない人への配信が減ります。この下限は式場の来館経路によって変わるので、最初は緩く始めて、あとで締めるほうが失敗が少ないです。
出す相手の絞り方
外す相手が決まれば、残るのは「予約前に離れた二人」です。この中でもさらに分けられます。
- 料金ページや実例ページまで見て離れた二人:比較の段階に入っている可能性が高く、見学予約への一押しが効きやすい
- トップページだけ見て離れた二人:まだ式場探しの入口にいる可能性が高く、広告で急かしても反応は薄い
予算が限られるなら、前者から出します。後者に出す広告は、見学の勧誘ではなく「この式場で挙げた二人の話」のような読み物のほうが合います。急かさない広告を、急かさない相手に出すという考え方です。
出す内容も変えます。サイトで見た内容と同じ広告が戻ってくるより、二人が迷いそうなことへの答えのほうが受け取られます。たとえば料金ページを見た二人には、含まれるもの・含まれないものの案内を。会場写真を見た二人には、収容人数の目安と、実際に座ったときの広さの案内を。見学予約への誘導は、その先に1つだけ置きます。
小さな会場でも始められるか
リストの人数には下限があります。広告会社の仕様で、リストに最低何人必要かが決まっていて、足りないと配信そのものができません。調べた範囲では、この下限は資料によって書き方が割れていました。Googleの日本語ヘルプでは、検索広告向けのリマーケティングリストに1,000件以上のCookieの関連付けが必要とされています。KWMの解説記事は、ディスプレイが100人以上、検索・YouTube・ファインドが1,000人以上としています。一方、Search Engine Landなど海外の業界メディアは、Googleが最小サイズを100人まで下げたと報じています。
どれが現行の正しい数字かは、広告の管理画面でリストを作ったときに表示される条件で確かめるのがいちばん確実です。ただし、仮に1,000人が必要だとして、公式サイトの訪問者が月に数百人の会場だと、リストが貯まるまで何か月もかかります。その場合、リターゲティングは後回しにして、先に検索や地図での見つけられ方を整えるほうが順番として自然です。
仮の計算で確かめる
仮に、月の公式サイト訪問者が3,000人、見学予約の完了率が2%の会場を考えます。予約は60組、予約前に離れた二人は2,940人です。この2,940人に広告を出して、見学予約が0.1ポイント増えたとします。増えるのは約3組です。0.3ポイントなら約9組、0.5ポイントなら約15組です。
次に、広告費の上限を決めます。仮に、成約1組に使える集客費の上限が15万円、見学に来た二人の成約率が35%だとします。見学1組の価値は、15万円×35%で約5万2,500円です。
広告費を月3万円で始めるなら、見学予約が1組増えれば元が取れます(3万円÷5.25万円で約0.6組)。5万円なら約1組、8万円なら約1.5組が必要です。上の増え方の仮定では、0.1ポイントでも約3組増えるので、3万円から5万円の予算なら採算は合う計算です。ただし、これは「増えた分」が本当に広告のおかげだった場合です。次の節がその見分け方です。
効果の見分け方
リターゲティングで一番ややこしいのは、「広告のおかげで予約した」のか「もともと予約するつもりだった二人が、たまたま広告を見たあとに予約した」のかが区別しにくいことです。広告を見たあとに予約した二人の数をそのまま成果にすると、広告の効果は過大に見えます。
見分ける方法は、リストの一部に広告を出さない群を作ることです。たとえば訪問者を10分の1だけ配信から外し、残りの10分の9との予約率を比べます。外した群の予約率と大差がなければ、広告が予約を増やした証拠は弱いと判断できます。
もう一つの見分け方は、予約フォームの「何を見て知りましたか」の問いです。広告の名前を選択肢に入れておき、選ぶ二人が月に何組いるかを数えます。ただ、二人は広告を見ても「公式サイトで」と答えることが多いので、この数は実際より少なく出る傾向があります。単独で判断せず、配信しない群との比較と併せて見ます。
頻度と期間
同じ広告が毎日何度も出ると、二人は式場の名前に慣れるより、うんざりします。広告会社の管理画面には、1人に表示する回数の上限(フリークエンシーキャップ)を設定する項目があります。最初は1日1〜2回、1週間で数回程度の低めに置き、反応を見て上げるのが安全です。
期間は、式場探しの進み方に合わせます。サイトを見てから見学予約まで平均何日かかっているかを、予約フォームのデータとサイトの計測から出してみてください。その日数の1.5倍程度を配信期間の目安にすると、短すぎも長すぎもしません。日数が分からなければ、最初は14日で区切って始めます。
始める前の点検
- 見学予約の完了ページを計測できているか
- 完了した二人をリストから外せるか
- 契約者を外す方法(または短い期間)を決めたか
- 配信しない群を一部残すか
- 月の広告費の上限と、元が取れる見学予約の増加組数を決めたか
- 二人に見える広告の言葉が、急かす内容になっていないか
まとめ
- リターゲティング広告は、公式サイトを見た人に後から広告を見せる仕組み。リストは「見た人」で、「迷っている人」ではない
- 外すのは、見学予約を済ませた二人、契約済みの二人、すぐ閉じた人
- 出すのは、料金や実例まで見て予約前に離れた二人から。トップだけ見た二人には読み物のように急かさない広告を出す
- リストの最小人数の条件は資料で割れている(100人とする報道と、1,000人とする公式ヘルプ)。管理画面で現行の条件を確かめる
- 予算は「見学1組の価値」から逆算する。仮の前提では、月3万〜5万円なら予約が1組増えれば採算が取れる
- 効果は、配信しない群との予約率の比較で見る。広告を見たあとに予約した数だけでは成果を過大に見る
- 頻度は低めに始め、期間は予約までの日数の1.5倍を目安にする
予約前に離れた二人にだけ、急かさず一度戻ってきてもらう。リターゲティングは、そのための道具として使うのがいちばん安全です。
