外国人ゲストへの対応は、問い合わせが来る前に公式サイトへ書いておく
「ゲストに外国の方が何人かいるのですが、対応していただけますか」。この一文を問い合わせフォームに書いてくれる二人は、実は少数派だと僕は見ています。留学先の友人、職場の同僚、パートナーの親族。呼びたい人がいても、日本語が通じるか分からない式場に、わざわざ聞く手間をかけずに、候補から外す二人もいるはずです。
聞かれなかった式場は、候補に入ったことにすら気づけません。だから僕は、外国人ゲストへの対応は、問い合わせが来てから返信で答えるものではなく、来る前に公式サイトへ書いておくものだと考えています。二人が知りたいのは「対応可能か」の一言ではなく、友人が当日居心地よく過ごせるかどうかです。その答えが、サイトのどこにも載っていなければ、二人は他の式場に流れます。
この記事では、公式サイトに何を、どの順で書くか、書いたときの効果をどう見積もるかを整理します。扱うのは、見つけてもらった後の「候補に入る」段階です。
なお、この記事に出てくる数字は、説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではありません。自社の数字に置き換えて読んでください。
二人は、聞く前に諦めています
外国人ゲストを呼ぶ二人の頭には、具体的な心配がいくつもあります。
- 挨拶や司会の日本語が分からず、友人が置いていかれないか
- 宗教や食習慣で食べられないものがあるが、事前に伝えていいのか
- 会場までの行き方や、当日の流れを英語などで伝える手段があるか
- 友人の母語を話せる人が、会場にいるのか
どれも「対応可能ですか」の一言には収まりません。式場側が「はい」と答えても、二人は「どこまで?」と不安のままです。逆に「ご要望によります」と答えると、何が要望として通るのか分からず、他の式場に聞き直す手間が増えます。
式場探しの段階の二人は、複数の式場のサイトを見比べています。外国人ゲストの記載がある式場とない式場が並べば、書いてあるほうが先に候補に残ります。
対応は4つの場面に分けて、サイトに書きます
外国人ゲストへの対応は、場面ごとに「できること」が違います。僕は次の4つに分けて、場面ごとに自社の答えを決めておくことを勧めます。
1. 言葉(通訳と進行)
司会の進行や挙式の言葉を、どこまで外国語で補えるか。ここで式場が持てる手段は、おおよそ次のどれかです。
- 式場に外国語を話せるスタッフがいる
- 外部の通訳や司会者を紹介できる
- 進行表や挙式の流れを紙で外国語にして渡せる
- 上のどれもできないが、二人が手配した通訳を会場に入れられる
大事なのは、4つのうち自社がどれにあたるかを正直に書くことです。「通訳はいません。ただ、外部の方を入れていただく場合の動線と、進行表の事前共有はできます」と書いてあれば、二人はそれを前提に動けます。できないことを隠した説明は、見学で露呈して、信用を落とします。
2. 食事(宗教・習慣・アレルギー)
外国人ゲストの食事は、宗教上の理由で食べないもの、菜食、アレルギーなど、確認する項目が日本人ゲストより広がりやすくなります。ここで式場が返せるのは、次の3点です。
- 事前に確認できる項目の一覧(豚、牛、アルコール、魚介、乳製品、卵、ナッツなど)
- その確認を、いつまでに二人から聞けばいいか
- 厨房として対応できる範囲と、できない範囲(完全に別の調理器具で作る、などは難しい式場も多いはずです)
「完全に対応します」と書く必要はありません。むしろ書いてはいけません。調理場の実態を超えた約束は、当日の事故につながります。「できる範囲はここまで、それ以上は代わりの案としてこれを出せます」と書くほうが、二人にとっては信頼できる書き方です。
3. 案内(会場までの道と当日の流れ)
意外と見落とされるのが、会場に着くまでです。外国から来る友人は、日本の鉄道やタクシーに慣れていません。最寄り駅からの道順、タクシーに見せる住所の書き方、駐車場の有無、会場の入口の写真。こういう情報を外国語で一枚にしておくと、二人が自分でゲスト向けの案内を作る手間が減ります。
これは、サイトに載せることも、個別の返信に添付することもできます。見学を決める前の二人に「案内の紙が用意されている式場」だと見せられるのは、小さくない差です。
4. 席と接遇(誰がどこに座り、誰が世話をするか)
日本語が分からないゲストが数人いるなら、席を近くにまとめて、隣に日本語と相手の言葉の両方が分かる人を置くことが多くなります。そのため、式場が聞くべきなのは「外国人ゲストの中に、日本語が分かる人はいますか」と「二人の側に、通訳役をしてくれる友人はいますか」の2点です。
この2点で、席次の組み方も、スタッフが付く人数も変わります。見積もりの前に聞いておくと、後から人件費の追加で揉めにくくなります。
書く場所と順番は、よくある質問の1項目からで足ります
専用ページを作る必要はありません。公式サイトの「よくある質問」に1項目を足し、そこに4場面の答えを書きます。順番は次のとおりです。
- 「外国人のゲストをお招きできます」と、受け入れの姿勢を一文で書く
- できること(通訳の手段、食事の確認、案内の紙)を3行で書く
- できないことと、その代わりの案を1行で書く
- 二人にあらかじめ教えてほしい2点(外国人ゲストの人数と、日本語が分かる人の有無)を書く
できないことを先に書くと、ページ全体が断りの印象になります。できることを先に書き、最後に「ここは難しいので、こうします」と代わりを出す順にします。
全部を断るページにしない
外国語のスタッフがいない式場は、「対応できません」と書きたくなるかもしれません。でも、案内の紙、食事の確認の一覧、外部通訳の動線は、スタッフの語学力がなくても整えられます。「できない」のはあくまで通訳であって、外国人ゲストを迎えること自体ではありません。ここを切り分けて書くだけで、候補に残る確率は変わってくるはずです。
問い合わせフォームにも1行だけ足す
サイトに書いたうえで、問い合わせフォームの自由記入欄の近くに「外国人のゲストがいらっしゃる場合はご記入ください」と1行置きます。ここに書いてもらえれば、担当者は最初の返信から4場面を踏まえて話せます。個別の返信は、サイトに書いた内容の再確認になるので、書く手間も小さくて済みます。
効果は、仮の前提で見積もってみます
サイトに書くと、どのくらい効きそうかを、仮の前提で計算してみます。
前提は次のとおりです。
- 今は、外国人ゲストの記載がある問い合わせが月に3件来る
- サイトに書くと、書いてなければ聞かずに離れていた二人のうち3件が、新しく問い合わせてくる
- 月に増える問い合わせは3件で、そのうち見学予約に進むのは、仮に3件中1件
この場合、月に1件の見学予約が増えます。見学から成約に進む割合を、仮に3割とすると、月に0.3組、年に3.6組です。
ここで大事なのは、数字の精度ではありません。問い合わせが少ない分野でも、サイトに1項目を足すコストは、書く時間(2〜3時間ほど)だけです。一方で、効果は毎月積み上がります。「件数が少ないから後回し」という判断は、この計算だと成り立ちにくくなります。
効果の測り方
自社で確かめるときは、次の2つだけ見れば十分です。
- フォームに外国人ゲストの記載がある問い合わせの件数(書く前と後の比較)
- そのうち、見学予約に進んだ件数
件数が少ないうちは、割合ではなく件数で見ます。半年ほど記録して、予約に進んだ割合が前より上がっているかを、おおまかに比べます。
やりがちな間違いを3つ挙げておきます
1. 翻訳アプリで足りると考える
当日の簡単なやり取りは、アプリでも回ります。ただ、挙式の言葉や司会の進行は、意味だけでなく、間(ま)や雰囲気を伝える必要があります。アプリで済ませるつもりなら、サイトにもそう書いておきます。
2. 外国人ゲストを「特別対応」の扱いにする
「特別対応なので追加料金がかかります」と、最初から書いてしまう式場があります。実際にかかる費用は、通訳の人件費や、特別食の原価などです。最初に金額を出せないなら、「内容によって費用がかかる項目」を一覧で見せて、見積もりのときに具体的に伝えると約束するだけで足ります。
3. 宗教や習慣に踏み込みすぎる
食事の制限を聞くときに、「何教ですか」と聞く必要はありません。聞くのは「食べられないもの」「避けたいもの」だけです。理由は、答えたくなければ答えなくていい、と書き添えます。聞き方ひとつで、二人の印象は変わります。
写真と一文を足すと、もっと伝わります
文章だけのよくある質問より、会場の入口に貼る外国語の案内や、食事の確認シートの写真が載っているほうが、二人は「本当にやっているんだ」と受け取ります。使っていない紙は載せず、実際に使っているものだけを載せます。
担当者が書き換えてよい部分と、固定する部分
サイトの文は、食事と通訳の部分を固定します。担当者によって言い方が変わると、見学や打ち合わせで食い違いが出るからです。二人への一言や、見学で何を見せるかの提案は、担当者が自分の言葉で書いたほうが伝わります。
まとめ
- 外国人ゲストを呼びたい二人のなかには、式場に聞く前に、サイトを見て候補から外す人がいる
- 対応は問い合わせの返信で答えるものにせず、来る前に公式サイトのよくある質問へ書いておく
- 書く内容は「言葉」「食事」「案内」「席と接遇」の4場面で、自社の型を正直に書く
- 順番は「受け入れの姿勢 → できること → できないことと代わりの案 → 二人に教えてほしい2点」
- 外国語のスタッフがいなくても、案内の紙と食事の確認一覧は整えられるので、全部を断る書き方にしない
- 仮の前提で見積もると、書く手間は数時間で、効果は毎月積み上がる
- 効果は、フォームに外国人ゲストの記載がある問い合わせ件数と、見学予約に進んだ件数で見る
