集客

会場写真が広すぎると、見学で「思ったより狭い」と言われる

式場サイトの会場写真は、ほとんどが「誰もいない、片付いた、広角で撮った」写真です。候補に入れてもらうには、これがいちばん強い。ただ、見学に来た二人が会場に入った瞬間に「写真より狭いですね」と口にする式場は、少なくないはずです。

結論から書きます。会場写真は、広く見せる写真を1枚減らして、「実際の人数が入った状態」が分かる情報を1つ足したほうが、見学の最初の数分で落とす点が減ります。写真を地味にしろ、という話ではありません。写真が約束した広さと、二人が歩いて感じる広さを近づける、という話です。

この記事に出てくる数字は、説明のために僕が置いた仮のものです。業界の平均でも、どこかの式場の実績でもありません。「広角で撮ると広く見える」ことの程度も、会場や機材で変わります。判断の枠組みとして読んでください。

写真で上げた期待は、来館した瞬間に精算される

二人が式場を探すとき、最初に見るのは写真です。比較するのも写真です。何十もの会場を画面の中で見比べて、残す数軒を決めます。

この段階の写真には、役割が二つあります。一つは候補に残ること。もう一つは、会場の「大きさ」「明るさ」「雰囲気」を二人の頭の中に作ること。後者は、見学に来る二人が無意識に持ってくる「期待値」になります。

期待値は、来館した瞬間に実物と照らし合わされます。エントランスを抜けて宴会場に入った数秒で、「写真のとおりだ」か「あれ、思ったより」かが決まる。この判断は言葉にされないまま、その後の説明の聞こえ方を変えます。広さに違和感を持った二人は、料理の説明を聞きながら「この人数で本当に入るのかな」と、別のことを考え続けることになります。

式場の側から見ると、写真は「候補に入る」ための道具で、実物は「選ばれる」ための場所です。この二つが同じ数字(広さ、明るさ)を指していないと、候補に入った分だけ、来館の場で落とす点が増えます。写真が強い式場ほど、この落差が出やすい。

広く見える写真には、仕組みがある

誰かが誤魔化している、という話ではありません。普通に撮ると、こうなるという仕組みの話です。

一つ目は、広角レンズです。会場の写真は、会場全体を1枚に収めたいので、広角で撮ります。広角は、奥行きを実際より遠く、部屋を実際より広く見せます。スマートフォンの標準カメラでも、人の目より広い範囲が写ります。

二つ目は、人も物もない状態です。誰もいない宴会場は、円卓の間に空間がたっぷり見えます。着席した状態の写真は、椅子の背と人の姿で空間が埋まって見えるので、同じ部屋でも狭く感じます。式場が写真を撮るのは、設営がきれいに整った状態か、まだ人が入っていない時間帯が中心です。

三つ目は、撮る位置です。部屋の角の高い位置から、対角線を使って撮ると、部屋がいちばん広く見えます。これは撮影のセオリーなので、プロのカメラマンほど自然にそう撮ります。

四つ目は、明るさの補正です。窓から光が入る時間帯に、露出を足して撮ると、実際より明るい部屋になります。見学の日が曇りや夕方だと、ここでも差が出ます。

この四つは、どれも悪意がなくても起きます。腕のいいカメラマンに頼むほど、会場は広く、明るく、きれいに写ります。写真の出来がいいことと、実物との距離が近いことは、別の話です。

仮の数字で見る、広さの印象のずれ

どのくらい「ずれ」が人数によって変わるか、仮の前提を置いて計算してみます。

仮に、宴会場の面積が120平方メートルだとします。円卓で着席の披露宴を行い、この面積をすべて客席と通路に使うと考えます。人数ごとに、1人あたりの面積を出します。

披露宴の人数 1人あたりの面積
40人 3.0平方メートル
60人 2.0平方メートル
80人 1.5平方メートル

写真に写っているのは、人数ゼロの状態、つまり1人あたりの面積が無限大に近い状態です。二人が頭の中で補っているのは、せいぜい「この部屋に60人くらい入ったらこう見えるだろう」という想像です。

ここで二人が来館して、宴会場を実際に見ます。設営がされていないと、がらんとした部屋が見えるので、写真と近い印象になります。ただ、フェアで模擬の設営がされていると、円卓が並び、テーブルセッティングが置かれ、思ったより席と席の間が詰まって見えます。

仮に、二人が想像していた人数が60人で、実際に当日呼ぶのが80人に増えたとします。1人あたりの面積は2.0から1.5に、つまり25%減ります。写真から想像した広さに対して、実際の当日は4分の3の余裕しかありません。

ここで大切なのは、これが式場の不備ではない、ということです。120平方メートルの部屋に80人が入るのは、普通のことです。問題は、写真が「人が入っていない状態」だけを見せていたせいで、二人の想像が実物より2〜3割広い方に寄っていた、という点です。

来館の後に起きること

広さの違和感は、その場では言葉にされにくい印象です。そのかわり、見学の後に別の言い方で出ます。

「検討します」という返事の理由に、「予算が」と言われても、本当の理由は「写真より狭く感じた」だった、ということがあります。二人も、広さの違和感が決め手になっているとは自覚しないまま、「なんとなくピンとこなかった」と話し合って終わる。

こうなると、式場の側は、見学後の追客で料理や価格の話を足しても、効きません。問題はそこにないからです。記録上は「予算」「他社比較」のような理由で整理されるので、写真が原因だったことには誰も気づきません。

この構造は、見学の冒頭5分で優先順位を聞く、見積もりの1ページ目に総額を置く、といった接客の改善とは別の層にあります。見学が始まる前に、サイトの載せ方で、二人の期待値の方を実物に寄せておく。接客でカバーするより手前の段階で、点を落とさない手当です。

写真を減らさずに、期待をそろえる4つの足し方

広い写真を下げて、暗い写真に差し替える必要はありません。足すものは、4つあります。

一つ目は、「人数が入った状態」の写真を1枚入れることです。実際のパーティーの写真か、模擬設営の写真。着席人数が分かるキャプション(例:「着席60名の設営」)を添えます。載せる場所は、会場ページの最初の写真群の中の、3〜4枚目あたり。1枚目に置くと広さの魅力を損なうので、最初の画面ではなく、少しスクロールしたところに置きます。

二つ目は、人数ごとの「着席可能人数」を表にすることです。着席の最大人数だけでなく、ゆとりを持って過ごせる人数と、いっぱいに詰めた人数を分けて書きます。仮に「最大80名、ゆとりを持つなら60名」と書いてあれば、二人は80人という数字の意味を、自分で理解できます。

三つ目は、平面図に寸法を入れることです。縦と横のメートル数、天井の高さ、柱の位置。部屋の形が分かると、二人は自分たちの人数で、どこにどう座るかをイメージできます。平面図は、会場の写真より優先度が低く扱われがちですが、広さの感覚をそろえるには、写真より確実です。

四つ目は、「撮影時の条件」を1行書くことです。「広角レンズで撮影しています」とまでは書かなくていいのですが、「写真は設営前の状態です」「撮影は午前中の自然光です」のような、条件が分かる1行。二人は、写真が演出された状態であることを知っているので、それが書いてあれば、期待値を自分で補正できます。

来館前の予約確認メールで、もう一手

サイトの載せ方に加えて、見学予約の完了メールにも、一文足せます。

例えば、「当日は〇〇の宴会場を、ご予約のお二人の人数に近い設営でご案内します」のような一文。見学の前に、二人は「設営された状態で見られる」と分かります。写真の広い状態ではなく、実際に近い状態で見るのだと、頭の準備ができる。

これは、見学予約の完了画面で当日の流れを伝える、という既存の話の延長線上にあります。広さについての期待値を整える一文を、その流れの中に入れるだけです。

見学当日には、最初に宴会場に入るとき、案内役が「ここは写真より少しコンパクトに感じるかもしれません。着席60名の設営なら、これくらいのゆとりです」と先に言ってしまうのも手です。先に言われた違和感は、二人にとって「隠されていた欠点」ではなく「説明された特徴」になります。

判断の分かれ目:すべての式場が足すべきか

この対策が効くかどうかは、会場の特性で決まります。足したほうがいい式場と、そうでもない式場が、はっきり分かれます。

足したほうがいいのは、次のような式場です。写真と実物の見え方の差が大きい式場。たとえば、天井が高く、広角で撮ると奥行きが強調される宴会場。柱が多くて、写真では柱を避けて撮っている会場。家具や装飾の有無で印象が大きく変わる会場。

あまり必要ないのは、会場の大きさが人数に対して余裕のある式場、または写真にすでに着席状態が多く出ている式場です。これらの式場は、写真の印象と実物の差が小さいので、足す手間に対して効果が出にくい。

迷ったときの確かめ方は一つです。見学後に、二人が口にした感想や、アンケートの自由記述を見返して、「思ったより狭い」「写真と違う」「写真ほど広くない」のような言葉が一つでも見つかるかどうかを確認します。あれば、足す価値があります。なければ、他のことに時間を使ったほうがいい。

効いたかどうかの見方

足した後に、何を見ればいいか。

見学の予約数ではなく、見学の後の反応を見ます。写真をいじると、見学の予約数は変わらないか、わずかに減るかもしれません。広く見せる写真の魅力を少し抑えるので、クリック率が下がる可能性があるからです。

そのかわり、見学後の「検討します」の割合と、検討期間中の再訪率、そして見学の当日の成約率が、どう動くか。見学に来た二人のうち、広さの違和感で落ちていた分が減れば、成約率が少し上がるはずです。

数字の見方としては、サイトの変更前の見学100組と、変更後の見学100組を並べて比べるのがいちばん簡単です。ただし、時期や媒体の流入が違うと比較がぶれるので、同じ時期の前年と並べたり、変更の影響を受けない他の指標(見学予約の数)も併せて見たりします。数字が変わらなくても、見学後の感想から「狭い」という言葉が減っていれば、方向は合っています。

まとめ

  • 会場写真は、広角・無人・高い位置・明るさの補正で、実物より広く見える。悪意がなくても、うまい写真ほどそうなる
  • 写真が作った期待値は、来館した瞬間に実物と照らし合わされる。写真が強い式場ほど、落差で点を落としやすい
  • 広さの違和感は、見学後に「予算」「他社比較」という別の言葉で出るので、原因に気づきにくい
  • 広い写真は残したまま、着席人数入りの写真を1枚、着席可能人数の表、寸法入りの平面図、撮影条件の1行を足す
  • 予約完了メールで「人数に近い設営で案内する」と伝え、当日は案内役が先に広さの感覚を説明する
  • 足す価値は、見学後の感想に「狭い」「写真と違う」が出るかどうかで判断する
  • 効果は予約数ではなく、見学後の「検討します」の割合と成約率、感想の言葉で見る