式場の媒体掲載の更新は、通知期限の4か月前までの成約で判断する
結婚情報媒体の掲載を続けるかどうかを、更新の直前に決めている式場は多いと思います。担当の営業から更新の案内が来て、見積もりと一緒に「次の1年はこの条件で」と出される。そこで慌てて直近の成約を数え、「最近あまり取れていないな」と感じて縮小や見送りに傾く。
僕はこの流れに、一つ落とし穴があると考えています。直近の成約は、どの媒体でも実力より少なく出るからです。問い合わせが来てから契約になるまでには時間がかかります。更新を決める時点では、直近の問い合わせはまだ成約になっていません。そこを数えて「効いていない」と読むと、効いている媒体を手放すことになります。
この記事では、更新の判断をいつ、どの期間のデータで行うかを、仮の式場を置いて計算します。数字はすべて僕が置いた前提で、実在の式場や媒体の実績ではありません。自社の台帳に置き換えて使ってください。
更新の判断は満了月ではなく通知期限で締め切られる
掲載契約には、更新しない場合に事前に伝える期限があるのが一般的です。契約書や申込書に「満了の何か月前までに通知」といった書き方で載っていることがあります。具体的な日数や自動更新の有無は、媒体と契約ごとに違います。まず自社の契約書を開いて、通知期限の日付を確認するところから始めてください。
ここで押さえたいのは、判断の締め切りが満了月ではなく、その手前の通知期限にあるということです。以下の例では、満了の2か月前を通知期限と仮に置きます。満了が3月末なら、1月末が判断の締め切りです。
1月末の時点で手元にある成約の数字は、12月まで、あるいは1月の途中までの問い合わせから出たものです。ここに時間差の問題が入り込みます。
問い合わせから成約まで、時間差がある
仮の式場を置きます。
- 媒体経由の問い合わせは月25件
- 問い合わせから最終的に契約になる割合は8%(月2組)
- 媒体掲載費は月80万円
- 1組あたりの粗利は100万円(他の経路に流れる分は考えない単純計算)
問い合わせから成約までの時間は、仮に次のように分布するとします。
| 問い合わせからの経過 | 成約になった割合(累積) |
|---|---|
| 1か月 | 15% |
| 2か月 | 45% |
| 3か月 | 75% |
| 4か月 | 92% |
| 5か月 | 100% |
これは僕の置いた仮の分布です。実際の式場では、見学の予定が先に入るか、日取りが近いか、競合を回っている最中かで大きく変わります。それでも、問い合わせの当月に契約する組は少なく、数か月かけて決まっていく、という形は多くの会場で共通だと思います。会場探しにかける期間が数か月にわたるのは、新郎新婦の動き方から来るものです。
この分布を置くと、1か月前の問い合わせ25件のうち、今の時点で契約になっているのは、最終的な2組のうち0.3組だけです。2か月前の分で0.9組、3か月前で1.5組、4か月前で1.84組。5か月前になってようやく2組に届きます。
直近3か月の成約は、実力の半分以下に見える
通知期限の時点で、直近3か月分の問い合わせを使って媒体を評価するとします。
- 見えている成約は、0.3組+0.9組+1.5組で、合計2.7組
- 最終的に出る成約は、月2組×3か月で6組
- 掲載費は3か月で240万円
見えている成約で計算すると、1成約あたりの掲載費は240万円÷2.7組で約89万円です。粗利が100万円なら、ほぼ手元に残りません。ここで「この媒体は元が取れていない」と判断したくなります。
ところが、最終的な成約で計算すると、240万円÷6組で40万円です。粗利100万円に対して、媒体費は4割で収まっている。実態はそれなりに効いている媒体なのに、時間差のせいで倍以上高く見えているわけです。
期間を伸ばすと、見え方は実態に近づきます。同じ前提で、評価に使う期間ごとに1成約あたりの掲載費を並べます。
| 評価に使う期間 | 見えている成約 | 最終的な成約 | 見かけの1成約あたり掲載費 | 実態 |
|---|---|---|---|---|
| 直近3か月 | 2.7組 | 6組 | 約89万円 | 40万円 |
| 直近4か月 | 4.5組 | 8組 | 約71万円 | 40万円 |
| 直近6か月 | 8.5組 | 12組 | 約56万円 | 40万円 |
| 直近9か月 | 14.5組 | 18組 | 約50万円 | 40万円 |
6か月でも、まだ実態より4割ほど悪く見えます。直近の数か月分が混ざっている限り、この歪みは残ります。
判断に使うのは、成熟した問い合わせだけ
この仮の分布で、問い合わせから成約まで92%が出そろうのは4か月です。通知期限の4か月以上前の問い合わせは、ほぼ結論が出ています。
そこで、判断の材料を2つに分けます。
1つ目は、通知期限の4か月前までの問い合わせです。たとえば通知期限が1月末なら、9月末までの問い合わせ。この分は成約がほぼ出そろっているので、問い合わせ数、来館率、成約率、1成約あたりの掲載費を、そのまま信用して構いません。
2つ目は、直近4か月の問い合わせです。この分は成約率で評価せず、手続きの進み具合で見ます。見学の予約が入っている組、見学済みで検討中の組、日取りが近い組が何組あるか。そこに、成熟した期間で出した、各段階からの成約率を掛けて見込みを作ります。
台帳の項目は、問い合わせ日、来館日、成約日、媒体の4列で足ります。媒体別の成約を出すのに必要なのは、問い合わせ日と成約日の差を見られることです。問い合わせ日が残っていないと、時間差を補正できません。
見込みの置き方
直近4か月の問い合わせは100件です。そのうち、すでに成約したのが4.5組、見学を終えて検討中の組が12組、見学予約済みの組が10組と数えられたとします。
成熟した期間の台帳から、次のような成約率が出ているとします。これも仮の数字です。
- 見学済みで検討中の組が、最終的に契約する割合は25%
- 見学予約済みの組が、最終的に契約する割合は12%
見込みの成約は、12組×25%=3組と、10組×12%=1.2組。合計で4.2組が、これから積み上がる見込みです。すでに成約した4.5組と合わせて8.7組。最終的な8組に近い数字が、通知期限の時点で出せます。
この方法なら、成約が実際に出そろう前に、実態に近い評価ができます。精度は粗いですが、直近3か月の成約だけを数えて「89万円かかっている」と読むよりずっと外れません。
更新の選択肢は3つ以上ある
通知期限の時点で数字が読めたら、次に決めるのは更新するかしないか、の二択ではありません。少なくとも次の3つがあります。
- 現状のまま更新する
- 掲載の枠やプランを下げて更新する
- 更新せずに、時期を改めて掲載し直す
媒体の営業は、通常、現状のまま更新する案を最初に出してきます。枠やプランを下げた条件が書面に載っていなくても、聞けば出てくることはあります。条件の変更ができるかどうかは媒体と契約によるので、通知期限の前に聞くことが前提です。期限を過ぎてからでは、交渉の余地が小さくなります。
プランを下げる場合に見るのは、下げた分で減る問い合わせの数です。掲載順位や写真の枚数、特集枠など、媒体は上位のプランほど露出が増えます。ただ、露出が増える分が問い合わせに結びつくかは、その式場の商圏と競合の数で決まります。ここは媒体の説明をそのまま信じず、自社の台帳で、プランを変えた過去の時期があれば前後を比べます。そうした履歴がなければ、縮小は1段階ずつにして、半年後に数字を見直すのが安全です。
見送るときは、再掲載の立ち上がりを見込む
更新を見送る場合、見落としやすいのが再掲載したときの立ち上がりです。
掲載を止めて何か月かあけた後に再び載せると、掲載が始まった月から問い合わせが元の水準に戻るとは限りません。仮に、再掲載後の2か月は問い合わせが半分になるとします。月25件の半分が減ると、1か月あたり12.5件、2か月で25件が失われます。成約率8%なら2組、粗利100万円で200万円分です。
見送ること自体が悪いわけではありません。ただ、見送って浮く掲載費と、立ち上がりで失う成約を比べてから決める必要があります。80万円×12か月=960万円の掲載費に対し、粗利100万円の組が9.6組取れていれば、掲載費の分は取り返せている計算です。月2組の成約が出ている前提なら、年間で24組。掲載費の960万円を引いても、粗利は十分に残ります。
見送りが合理的になるのは、媒体経由の成約が、損益分岐の年間9.6組を下回る場合です。直近の数字が悪く見えているだけで見送ると、この前提を割っていないのに止めてしまう。それが、更新時期に起きやすい誤判断です。
満了月がずれていると、繁忙期の前に手を打てない
もう一つ、時間の問題があります。満了月が、問い合わせの多い時期とどう並ぶかです。
結婚式場の問い合わせには、季節の波があります。仮に問い合わせが増える時期の直前に満了月が来る契約だと、通知期限は閑散期の真ん中に来ます。閑散期は問い合わせが少ないので、判断に使う母数も小さい。数件の差で成約率が大きく動きます。
逆に、問い合わせが増える時期の最中に満了月が来ると、見送った場合の再掲載が繁忙期に重なります。立ち上がりの2か月が、いちばん問い合わせの欲しい時期に当たるわけです。
契約の更新時に、期間を半年や9か月など中途半端にして満了月をずらせないか、聞いてみる価値はあります。これも媒体次第で、できないと言われるかもしれません。できるのであれば、通知期限を、判断に使える数字が揃う時期に動かせます。
更新の判断にかかる手順
ここまでの内容を、通知期限から逆算した手順にまとめます。
- 自社の契約書で、通知期限の日付と、条件変更の可否を確認する。契約ごとに違うので、媒体別に一覧にしておく
- 通知期限の90日前までに、台帳から4か月以上前の問い合わせの数字を出す。問い合わせ数、来館率、成約率、1成約あたりの掲載費
- 直近4か月の問い合わせは、段階別の組数に、成熟した期間の成約率を掛けて見込みを出す
- 通知期限の60日前までに、更新、縮小、見送りの3案で損益を並べる。見送りには再掲載の立ち上がりを入れる
- 通知期限の30日前までに、担当営業へ条件の変更を聞く。通知期限を過ぎてからでは遅い
台帳が整っていなければ、手順2の前に、問い合わせ日と成約日が同じ行で見られる状態を作る必要があります。これができていないと、どの期間で判断すべきかも分かりません。
まとめ
- 媒体の更新判断は、満了月ではなく通知期限が締め切り。契約書で日付を確認する
- 問い合わせから成約までには時間差がある。通知期限の時点で、直近3か月の成約は実態より少なく見える
- 仮の式場では、実態の1成約あたり40万円が、直近3か月だけで見ると約89万円になる
- 判断には、4か月以上前の問い合わせの数字を使う。直近分は段階別の組数に成約率を掛けて見込む
- 更新は二択ではなく、現状、縮小、見送りの3案以上で並べる。見送りには再掲載の立ち上がりを見込む
- 数字を見るのは通知期限の90日前、条件を聞くのは30日前。期限を過ぎたら交渉の余地は小さくなる
