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媒体経由の問い合わせが30件から21件に減った月は、表示・クリック率・問い合わせ率の3つに分ける。同じ3割減でも、手を打つ場所は3通りある

媒体経由の問い合わせが、先月の30件から今月は21件に減った。3割減です。こういう月、会議では「掲載順位が落ちたのでは」「写真を替えようか」「料金の見せ方がまずいのでは」と、原因の仮説が3つ4つ同時に出ます。どれも、もっともらしく聞こえます。

ただ、この3割は、3つの数字の掛け算の結果です。表示された回数、そこからクリックされた割合、クリックした人が問い合わせまで進んだ割合。3つのどれが動いても、結果は同じ「21件」になりえます。そして、動いた数字によって、次の手はまったく別のものになります。

今日は、問い合わせが3割減った月に、仮説を出し合う前に何を分解するかを整理します。仮の式場で計算するので、数字は想定です。実在の式場や媒体の実績ではありません。

問い合わせ件数は3つの掛け算でできている

媒体のページから問い合わせが入るまでの道のりを、いちばん単純に切ると、次の3段になります。

  • 表示:媒体の一覧や検索結果に、自社のページが出た回数
  • クリック率:表示された回数のうち、自社のページを開いた割合
  • 問い合わせ率:ページを開いた人のうち、問い合わせや来館予約まで進んだ割合

仮の式場に、先月の数字を置きます。

  • 表示:10,000回
  • クリック率:3%(300人が開く)
  • 問い合わせ率:10%(30件)

10,000×3%×10%で30件です。掲載費は月40万円とすると、問い合わせ1件あたり約1万3,300円になります。

今月が21件だったとします。3割減です。ここで、3つの数字のうち1つだけが3割減った場合を、3通り並べてみます。

動いた数字 表示 クリック率 問い合わせ率 問い合わせ
先月 10,000回 3.0% 10% 30件
A:表示が減った 7,000回 3.0% 10% 21件
B:クリック率が下がった 10,000回 2.1% 10% 21件
C:問い合わせ率が下がった 10,000回 3.0% 7% 21件

結果は3つとも21件で、1件あたりの費用はどれも約1万9,000円(40万円÷21件)に上がります。件数と費用だけを見ていると、AもBもCも区別がつきません。

動いた場所によって、手が変わる

3つのうち、どこが動いたかで、見に行く場所が変わります。

A:表示が減ったとき

一覧で出る順番が下がった、検索条件に合わなくなった、掲載プランが変わって露出が減った、といった理由が考えられます。この場合、ページの中身をいくら直しても、見てもらえる回数は戻りません。見るべきなのは、掲載順位のルール、プランの契約内容、同じ商圏で競合が増えたか(あるいは広告枠を厚くしたか)です。媒体の担当者に、表示回数が減った理由を聞くのが先になります。

B:クリック率が下がったとき

表示はされているのに、開かれていません。一覧に出る部分、つまり1枚目の写真、タイトル、料金の目安、ひとこと紹介のところが、周りの式場に負けています。この場合に手を入れるのは、ページの中身ではなく、一覧に出る見た目のほうです。写真を替える、料金の書き方を変える、といった作業が効きます。逆に言うと、ページの奥の説明文を書き直しても、クリック率は動きません。

C:問い合わせ率が下がったとき

ページは開かれているのに、問い合わせまで進んでいません。開いた先で、何かがひっかかっています。料金が分かりにくい、希望の日の空きが見えない、フォームの項目が多い、スマホで入力しにくい、といった理由が考えられます。ここで効くのは、ページの中身と、問い合わせフォームです。一覧の写真を替えても、問い合わせ率は変わりません。

つまり、3割減への対策は「写真を替える」「プランを見直す」「フォームを直す」のどれも、当たる月と外れる月があります。外れた月にやった作業は、費用と時間だけがかかって、件数は戻りません。分解する理由はここにあります。

小さな変化が3つ重なると、3割減になる

実際の現場では、1つだけが3割動くことは少ないはずです。僕が気にしているのは、3つがそれぞれ1割ずつ動いた月です。

表示が10%減り、クリック率が10%下がり、問い合わせ率が10%下がったとします。0.9×0.9×0.9=0.729です。約27%の減少、30件が約22件になります。

表示 クリック率 問い合わせ率 問い合わせ
先月 10,000回 3.0% 10% 30件
今月 9,000回 2.7% 9% 約21.9件

どの数字も「1割減」です。1割なら、月ごとの揺れの範囲に見えます。表示が1割減ったのは季節のせい、クリック率が1割下がったのはたまたま、問い合わせ率が1割下がったのは偶然、と1つずつ見ると、全部が揺れとして片づけられます。けれど、掛け合わせると約3割減になります。

この形の怖いところは、犯人がいないことです。会議で「どれが原因か」を探しても、突出した数字がありません。だから、3つを毎月同じ並びで記録して、前月と比べるのが効きます。1つずつの変化は小さくても、3か月続けて同じ向きに動いていたら、揺れではありません。

そもそも、30件が21件に減ったのは「減った」のか

分解の前に、もう1つ確かめておくことがあります。月30件前後の問い合わせは、何も変わらなくても、月ごとにかなり揺れます。

問い合わせが毎月、他と関係なくランダムに入ると仮定すると(ポアソン分布という考え方です)、平均30件の月の揺れは、標準偏差でおよそ5.5件です。平均から±2標準偏差、つまり約±11件の範囲、19件から41件くらいまでは、何も変わっていなくても普通に出ます。

計算してみると、平均30件のときに21件以下になる確率は、約5.4%です。20回に1回は起きます。18件以下になると約1.3%で、これはかなり珍しい。

つまり、30件が21件に減っただけでは、「何かが起きた」と言い切れません。20回に1回の確率で、何も起きなくても起きる幅です。ここが、先に分解する理由のもう1つです。3つの数字を分けて見て、表示、クリック率、問い合わせ率のうち、動いた数字があれば、それは原因の手がかりです。3つとも先月とほぼ同じで、問い合わせ率だけが少し低いなら、それは揺れの可能性が高い。

この計算は、問い合わせがランダムに入るという単純な前提に基づいています。実際には、土日や連休、フェアの開催時期で偏りが出るので、揺れはこれより大きいはずです。ざっくり、月30件規模なら「1〜2割の増減は揺れ」と見ておくくらいが、安全だと僕は思ってます。

毎月の記録は、この3行だけでいい

分解を毎月やるために、記録は増やしません。次の3行です。

  • 表示回数
  • クリック数(またはクリック率)
  • 問い合わせ件数(または問い合わせ率)

媒体によって、管理画面で見える項目は違います。表示回数まで出る媒体もあれば、ページを開かれた数と問い合わせ件数しか出ない媒体もあります。出ない項目は、ここでは分解できないということです。その場合は、見える項目だけで分けます。たとえば、ページを開かれた数と問い合わせ件数しか見えないなら、「開かれた数が減ったのか(AかBかの区別はつかないが、ページを開く前の段階)、開かれたあとの率が下がったのか(C)」の2つに分けるだけでも、見るべき場所が半分に絞れます。

自社の公式サイトからの問い合わせも、同じ形で見られます。アクセス解析で見えるページの閲覧数、予約ボタンのクリック数、フォームの完了数が、そのまま3段になります。

記録するときに、1つだけ決めておくとよいのは、比べる相手です。前月だけだと、季節の影響が入ります。前月と、前の年の同じ月の両方を並べて、どちらも同じ向きに動いていたら、季節ではなく、自社側の要因を疑う根拠が強くなります。

3つのうち、どれから手を付けるか

3つの数字のどれが動いたか分かったら、次は優先順位です。ここも、数字で決められます。

仮の式場で、3つとも1割ずつ改善できる余地があるとします。ただし、手間と費用は違います。

  • 表示を1割増やす:掲載プランを上げる必要があり、月に追加で数万円〜数十万円
  • クリック率を1割上げる(3.0%を3.3%に):一覧の写真と紹介文の差し替え。費用はほぼゼロ、作業は数時間
  • 問い合わせ率を1割上げる(10%を11%に):フォームの項目を減らす、料金の目安を載せる。費用はほぼゼロ、作業は半日

この金額は想定です。大事なのは、掛け算である以上、どの数字を1割上げても、問い合わせは同じ1割増える(30件が33件)という点です。同じ1割なら、費用がかからない順に先にやる。クリック率と問い合わせ率は、お金をかけずに動かせるので、表示を増やすために掲載費を上げる前に、先にやっておく価値があります。

ただし、すでにクリック率が高く、問い合わせ率も高い式場は、その2つにはあまり余地がありません。その場合は、表示を増やすしかなくなります。自社の3つの数字が、同じ商圏の他の式場と比べてどの位置にあるかは、媒体の担当者に聞くと、平均を教えてくれることがあります。教えてもらえるかは媒体次第ですが、聞く価値はあります。

問い合わせ件数を見る前に、運用ルールとして決めておくこと

最後に、僕なら会議の前に決めておくことを3つ書きます。

1つ目は、毎月、3行を同じ並びで記録することです。数字が悪かった月だけ分解すると、良かった月との比較ができません。

2つ目は、1割未満の変化は、原因探しをしないことです。月30件規模なら、揺れの範囲です。原因探しに会議の時間を使うのは、2か月続けて同じ数字が同じ向きに動いたときからにします。

3つ目は、手を打ったあとに、その数字だけを見ることです。クリック率を上げるために写真を替えたなら、次の月に見るのはクリック率です。問い合わせ件数で効果を測ろうとすると、他の数字の揺れが混ざって、効いたのか効かなかったのか分からなくなります。

まとめ

  • 媒体経由の問い合わせは、表示×クリック率×問い合わせ率の掛け算。仮の式場では10,000回×3%×10%で30件
  • 3割減は、表示が3割減っても、クリック率が3割下がっても、問い合わせ率が3割下がっても同じ21件になる。件数だけでは、どこが動いたか分からない
  • 動いた場所で手が変わる。表示なら掲載の条件、クリック率なら一覧の写真と紹介文、問い合わせ率なら料金の見せ方とフォーム
  • 3つがそれぞれ1割ずつ下がると、0.9の3乗で約27%減る。突出した犯人がいないので、3か月続けて同じ向きかどうかで見る
  • 月30件の問い合わせなら、何も変わらなくても21件以下になる確率が約5.4%ある。1〜2割の増減は、まず揺れとして扱う
  • 毎月、表示・クリック・問い合わせの3行を同じ並びで記録する。出ない項目は、見える項目だけで2つに分ける
  • 同じ1割改善なら、費用がかからないクリック率と問い合わせ率を先に、掲載費を上げる表示は後にする