式場の媒体写真の1枚目は、クリック率を2週間ずつ交代で測って決める
結婚情報サイトで式場を探す二人は、まず一覧を見ます。一覧に並ぶのは、会場名と、写真が1枚と、数行の紹介文です。詳細ページに入ってもらえるかどうかは、この小さな写真1枚でほとんど決まります。
この写真を、どの1枚にするか。挙式のチャペルなのか、会場の外観なのか、料理なのか、ゲストが笑っている披露宴なのか。社内で意見を出し合うと、たいてい声の大きい人の好みか、プランナーの「うちはこれが売りだから」で決まります。
この記事の結論は1つです。媒体の一覧写真は、2週間ずつ交代で入れ替えて、クリック率を並べて決めます。ただし、差が出たからといって、すぐに採用してはいけません。差が偶然の範囲に収まっていないかを、先に計算しておく必要があります。
この記事の数字はすべて、僕が置いた仮のものです。調査の数字は使っていません。月に何回表示されるか、クリック率がいくつか、どれも自分の会場の管理画面の数字に置き換えて読んでください。
一覧写真は、売りたいものではなく、選ばれる理由で決める
社内で決めると偏る理由は、2つあります。
1つ目は、見ている人が違うことです。写真を選ぶ式場側の人は、会場の魅力を知り尽くしています。チャペルの天井の高さも、バージンロードの長さも、庭の季節の変化も知っています。一覧を流し見している二人は、何も知りません。知らない人は、1枚の写真から「ここは自分たちの結婚式のイメージに合うか」を一瞬で判断します。
2つ目は、売りたいものと、最初に見たいものが違うことです。式場にとって売りは、たとえば自慢の料理かもしれません。でも、一覧を眺めている二人が最初に確かめたいのは、「どんな雰囲気の式場なのか」です。料理の写真は、雰囲気を一目で伝えにくい。会場全景や挙式の場面のほうが、雰囲気は早く伝わります。ここまでは仮説で、確かめるまで正解は分かりません。
だから、写真は意見で決めずに、測って決めます。測るといっても、難しい道具は要りません。媒体の管理画面には、多くの場合、掲載ページの表示回数と、詳細ページに入られた回数が出ています。この2つを割ったものがクリック率です。これを写真ごとに並べます。
まず、クリック率の差が偶然かどうかを計算する
写真を入れ替えて、クリック率が3.0%から3.6%に上がった。これを見て「新しい写真のほうが良い」と言ってよいでしょうか。
仮の式場で計算します。
- 一覧での表示は月に2万回
- クリック率は3.0%(月に600回、詳細ページに入られる)
- 詳細ページから資料請求または見学予約に進むのは8%
- 予約した組のうち来館は70%
- 来館した組のうち成約は25%
- 成約1組の粗利は100万円
この式場の月の流れは、600回→48件→33.6組→8.4組です。粗利にして月840万円。
ここでクリック率が3.6%になったとします。詳細ページに入られるのが720回、予約が57.6件、来館が40.3組、成約が10.1組。差は月に約1.7組で、粗利にして約170万円です。表示回数が同じでも、写真1枚でこれだけ変わりえます。もちろん、本当に3.6%が写真の力ならです。
次に、クリック率3.0%が偶然どれくらい揺れるかを見ます。2万回の表示で、クリック率3.0%の場合、偶然の揺れ(標準偏差)は約0.12ポイントです。2つの期間を比べると、揺れは約0.17ポイントになります。
- 差が0.3ポイント(3.0%と3.3%)なら、揺れの約1.8個分。偶然でも起こりえる範囲に近い
- 差が0.6ポイント(3.0%と3.6%)なら、揺れの約3.5個分。偶然ではほぼ起こらない
- 差が0.9ポイント(3.0%と3.9%)なら、揺れの約5.3個分。写真の差とみてよい
揺れの2個分が、差が偶然かどうかを分ける線の目安です。0.3ポイントの差は、この線にぎりぎり届きません。0.6ポイントの差なら、はっきり超えます。
見極めに必要な表示回数も計算できます。0.6ポイントの差を見分けたいなら、1つの写真あたり約6,500回の表示で足ります。月2万回の式場なら、数日から1週間で届く数です。0.3ポイントの差まで見分けたいなら、1つの写真あたり約2万6,000回、つまり1か月以上かかります。
この計算が教えてくれるのは、「小さな差を追いかけすぎない」ことです。0.3ポイントの差に2か月かけるより、0.6ポイント以上の差が出る写真の種類を先に見つけるほうが、早く効きます。
交代で測る理由は、季節と曜日が混ざるから
一番やりがちなのは、先月は写真A、今月は写真Bにして、2つの月のクリック率を比べるやり方です。これは危ない。理由は、月が変わると、見ている二人も変わるからです。
結婚式場探しには、波があります。新年度の前、秋の挙式シーズンの前、年末年始。式場を探す人の数も、探し方の本気度も、時期で違います。月ごとに比べると、写真の差ではなく、時期の差を測ってしまいます。
さらに、媒体側の事情も混ざります。媒体が特集を組んだ月、広告枠の並び順が変わった月、他の式場が掲載を増やした月。どれも、クリック率を動かします。
そこで、期間を短く切って交代で入れ替えます。
- 第1・2週:写真A
- 第3・4週:写真B
- 第5・6週:写真A
- 第7・8週:写真B
こうすると、写真Aの表示も写真Bの表示も、時期の波を半分ずつ受けます。波の影響は完全には消えませんが、片方だけが良い時期に当たるのは避けられます。2週間ずつ切るのは、週末と平日を両方の写真に同じ数だけ当てるためです。週の途中で切り替えると、片方の写真だけ週末が多くなることがあります。
入れ替える日は、同じ曜日に揃えます。たとえば毎回、月曜の朝に切り替える。月曜の朝は管理画面の数字を取る日にもなるので、運用の手間が増えません。
計算の面では、交代を4回(合計8週間)繰り返すと、写真ごとの表示は月2万回の式場でおよそ4万回ずつになります。0.3ポイントの差でも、揺れの約2.5個分まで届きます。0.6ポイント以上の差なら、4週間で結論が出ます。
測るときに守ること
交代で測るときに、結果を台無しにする落とし穴が3つあります。
1つ目は、写真以外を同時に変えないことです。写真を入れ替える週に、紹介文も、プランの名前も、料金の表示も変えると、クリック率が動いたとき、何が効いたのか分かりません。写真だけ変えます。
2つ目は、写真の種類を揃えて比べることです。たとえば、Aは挙式の場面、Bは会場全景、と種類を変えて比べるのは良いのですが、Aの写真だけ画質が低い、明るさが違う、という差が混ざると、種類の差ではなく画質の差を測ってしまいます。同じ撮影日、同じ明るさで揃えます。
3つ目は、人の写っている写真を使うときに、許諾を確認することです。ゲストや新郎新婦が写った写真を媒体の一覧に使うなら、契約時の掲載許諾の範囲に入っているかを見ます。許諾の取り方は、会場ごとに違います。範囲が曖昧なら、人が写っていない写真だけで試します。
見るのは、クリック率だけでは足りない
クリック率が上がっても、詳細ページに入った人が、そのあと予約しなければ意味がありません。
起こりやすいのは、こんな状態です。会場全景の写真に変えたら、クリック率は上がった。でも、詳細ページを開いた二人が、思っていた雰囲気と違うと感じて、すぐ戻る。この場合、クリックは増えて、予約は増えていません。クリックの質が下がっただけです。
そのため、管理画面で取れる範囲で、次の3つを並べて見ます。
- 一覧から詳細ページへのクリック率
- 詳細ページから資料請求・見学予約への率
- 見学予約の件数そのもの
3つのうち、最後の予約件数が、本当に見たい数字です。ただ、予約件数は月に数十件の規模だと、偶然の揺れが大きく、2週間では差が見えません。そのため、クリック率で写真の候補を絞り、予約への率が落ちていないかを確認する、という順番にします。
仮の式場なら、詳細ページから予約への率が8%から7%に落ちたとします。クリック率が3.6%に上がった分を打ち消すかを計算します。720回×7%=50.4件で、元の48件より多い。まだ得です。もしクリック率3.3%で予約率が7%なら、660回×7%=46.2件で、元の48件より少ない。クリックは増えたのに、予約は減っています。
つまり、クリック率の上がり幅と、予約率の下がり幅は、掛け算で見ます。どちらか一方だけを見ると、判断を誤ります。
一覧写真のテストが向かない式場
この測り方は、どの式場にも向くわけではありません。向かないのは、次のような式場です。
- 媒体経由の表示が少ない式場。月に数千回の表示だと、交代を重ねても揺れが大きく、結論が出ません。この場合は、見学に来た二人に「一覧でこの写真を見て、どう思ったか」と聞くほうが早いです
- 掲載の写真を自由に入れ替えられない媒体。入れ替えに媒体への依頼と数日の待ちがあると、交代の間隔を揃えられません
- 季節ごとに会場の姿が大きく変わる式場。春の桜と秋の紅葉を同じ枠に入れ替えて比べると、写真の種類ではなく、季節の人気を測ってしまいます
当てはまる場合は、無理に測らず、他のやり方に切り替えます。測ることが目的ではなく、一覧写真を意見ではなく根拠で決めることが目的だからです。
結果の使い方:勝った写真を固定する
2か月たって、写真Bが勝ったとします。その後の使い方は2つです。
1つ目は、勝った写真を固定して、次の候補を別の軸で試すことです。たとえば、勝ったのが「会場全景」だったなら、次は「同じ全景でも、昼の写真と夕方の写真」を試します。種類から、種類の中の違いへ、と絞っていきます。
2つ目は、勝った写真を他の媒体にも使うことです。ただし、媒体ごとに一覧の見え方が違います。写真の大きさ、枠の形、隣に並ぶ他の式場の写真の傾向。1つの媒体で勝った写真が、別の媒体でも勝つとは限りません。他の媒体に持っていくときは、最初の1か月を様子見の期間にして、クリック率が元を割っていないかを確かめます。
どちらの場合も、1年に1回は見直すのがよいと思います。季節で二人の探し方が変わるのと同様に、世の中の結婚式のイメージも少しずつ変わります。去年勝った写真が今年も勝つとは限りません。
まとめ
- 媒体の一覧写真は、社内の意見ではなく、クリック率で決めます
- 差が偶然の範囲に収まっていないかを、先に計算します。月2万回表示される仮の式場なら、0.6ポイントの差は約6,500回の表示で見分けられ、0.3ポイントの差は約2万6,000回が必要です
- 月ごとに比べず、2週間ずつ交代で入れ替えて、時期の波を両方の写真で半分ずつ受けます
- 写真だけを変えます。紹介文・プラン名・料金表示は、測っている間は動かしません
- クリック率と、詳細ページから予約への率は、掛け算で見ます。クリックが増えても予約が減る写真があります
- 表示回数が少ない式場や、写真を自由に入れ替えられない媒体は、この測り方に向きません
- 勝った写真は固定して、次は種類の中の違いを試します。年に1回は見直します
