式場の媒体別CPAは、電話予約を足すと順位が入れ替わる
見学やフェアの予約を、媒体別に数えている会場は多いと思います。ポータルサイトから何組、Instagramから何組、検索から何組。その数で媒体費を割って、1組あたりの費用(CPA)を出し、来期の配分を決める。
この数え方に、穴が1つあります。電話で入った予約が、媒体別の数字から抜け落ちやすいことです。
Webの予約フォームには、どのページから来たかが機械的に残ります。電話には残りません。受付が「どちらで当会場をお知りになりましたか」と聞いていなければ、電話の予約は「不明」か「その他」に落ちます。そして「不明」は、媒体費の計算には使われません。
この記事では、電話予約が媒体別の数字から漏れると、CPAの順位がどう変わりうるかを、前提を置いたモデル計算で見ます。そのうえで、電話の受付で聞く1問と、月1回の集計の手順を書きます。
先にお断りしておくと、電話で入る予約が全体の何割か、電話の人がどの媒体を見ているかを示す調査は、この記事を書いた時点で確認できませんでした。以下の数字はすべて、僕が置いた仮の前提です。会場の実数に差し替えて使ってください。
電話の予約は、なぜ「不明」に落ちるのか
Webの予約は、予約フォームの入力が終わった時点で、流入元が記録されます。ポータルサイトのフェア一覧から来たのか、Instagramのプロフィールのリンクから来たのか、検索から来たのか。計測の設定さえしてあれば、勝手に残ります。
電話は違います。二人が媒体で会場を見つけて、気になって、予約フォームではなく電話を選んだ。ここまでの経路は、受話器の向こうで途切れています。
受付の方が経路を聞いていれば、そこで拾えます。ただ、現場ではこういうことが起きがちです。
- 電話は日程の調整が主で、聞く余裕がない
- 聞く項目はあるが、「ネット」「インターネット」としか答えが返ってこない
- 担当が替わるたびに、聞くか聞かないかが変わる
- 聞いた内容が、予約管理の表ではなくメモに残って、集計されない
結果として、電話の予約の多くが「不明」になります。
ここで大事なのは、「不明」は媒体に無関係という意味ではないことです。電話の二人も、どこかで会場を知っています。その「どこか」が、集計表では空欄になっているだけです。
モデル計算:電話を足すと、順位が入れ替わる
次の仮の前提で、計算してみます。
- 月の見学・フェア予約は40組
- 媒体は、ポータルサイト(月の掲載費30万円)、Instagram運用(月の人件費20万円)、検索(費用は計算に入れない)の3つ
- Web予約の流入元は、ポータル8組、Instagram6組、検索10組の計24組
- 電話予約は16組で、受付で経路を聞いていないため、すべて「不明」
- 電話予約の行き先の内訳は、仮にポータル12組、Instagram4組とする。電話をかけるのは、料金や空き日を調べたあとの比較の段階にいる人が多く、ポータルの会場ページを見て電話をする流れが多い、という想定
この前提でCPAを出すと、次のようになります。
| 媒体 | 掲載費・人件費 | Webだけで数えた予約数 | Webだけで数えたCPA | 電話を足した予約数 | 電話を足したCPA |
|---|---|---|---|---|---|
| ポータル | 30万円 | 8組 | 37,500円 | 20組 | 15,000円 |
| 20万円 | 6組 | 約33,300円 | 10組 | 20,000円 |
Webだけで数えると、Instagramのほうが安く見えます。33,300円対37,500円で、差は4,000円ほどです。来期は、ポータルの掲載を減らしてInstagramに回そう、という判断が出てもおかしくありません。
電話を足すと、順位が逆になります。ポータルは15,000円、Instagramは20,000円。ポータルのほうが、1組あたり5,000円安く予約を取れていることになります。
配分を間違えると、どうなるか。ポータルの掲載を減らせば、Webで見える8組だけでなく、電話で入っていた12組も減る可能性があります。減るのは8組ではなく20組です。計算に入っていなかった12組は、掲載を減らしてから初めて、いなくなったことに気づきます。そのときには、「不明」の欄が減った理由は、誰にも説明できません。
もちろん、これは僕が置いた前提の話です。電話の内訳が逆で、Instagramを見て電話する人のほうが多い会場もあるでしょう。大事なのは、どちらが正しいかではありません。電話の内訳が分からないままでは、順位がどちらにも転ぶということです。
順位が転ぶ条件を、式で見る
もう少し一般化して、順位が入れ替わる条件を整理します。
媒体Aと媒体Bがあり、Webで数えた予約数が a と b、掲載費が Ca と Cb だとします。電話の予約のうち、Aを見た人が pa 組、Bを見た人が pb 組いるとします。
Webだけで見たとき、Bのほうが安く見える条件は、Cb / b が Ca / a より小さいことです。電話を足したとき、Aのほうが安くなる条件は、Ca / (a + pa) が Cb / (b + pb) より小さいことです。
この2つが同時に成り立つと、順位が入れ替わります。前の表では、Cb / b = 33,300円が Ca / a = 37,500円より小さい一方で、Ca / (a + pa) = 15,000円が Cb / (b + pb) = 20,000円より小さくなっています。
式は難しく見えますが、言っていることは単純です。Webで見える予約が少ない媒体ほど、電話で入る予約が足されたときの伸びが大きく、CPAが大きく動く。そして、CPAが近い媒体どうしほど、順位が入れ替わりやすい。
前の例では、Webだけのときの差は4,000円ほどでした。この程度の差は、電話の内訳が少し動くだけで消えます。CPAの差が小さいときに、「こちらが安い」と言い切って配分を動かすのは、危ないということです。
電話の受付で、1問だけ聞く
電話の経路を拾う方法はいくつかあります。通話計測のサービスを入れて、媒体ごとに別の電話番号を載せる方法もあります。ただ、費用も手間もかかるので、まずは受付で聞く1問から始めるのが現実的だと僕は考えています。
聞き方は、これだけです。
「差し支えなければ、当会場を最初に知ったきっかけを教えていただけますか」
ポイントは3つあります。
1. 「最初に知ったきっかけ」を聞く。 「どこで知りましたか」だけだと、直前に見たもの(検索や公式サイト)が返ってきます。最初の接点を聞くと、ポータルやInstagramのような、集客費をかけた媒体が出てきやすくなります。前に書いた成約者アンケートの話と同じで、最初の接点と予約の入口は分けて聞くのが基本です。
2. 選択肢を読み上げない。 選択肢を読み上げると、聞かれた側は、その中から選んでしまいます。自由に答えてもらって、受付が記録の側で分類します。分類の候補は、5つで足りると思います。
- ポータルサイト・情報誌
- Instagram・SNS
- 検索(公式サイトを含む)
- 紹介・口コミ
- その他・覚えていない
3. 「覚えていない」を、堂々と記録する。 答えが返ってこない電話は、必ずあります。無理に聞き出さず、「覚えていない」として残す。空欄と「覚えていない」は違います。空欄は聞かなかった数、「覚えていない」は聞いて返ってこなかった数です。この2つを分けておくと、あとで「聞けている割合」が分かります。
聞くことで予約の電話が嫌がられないか、と心配する方もいると思います。日程が決まったあとに、一言添える形なら、通話の流れを壊しません。予約を受けてから、最後に聞くのがよいと思います。
月1回の集計のしかた
聞いた内容は、予約管理の表の1列に入れます。専用のシステムは要りません。既存の表に「入口(Web・電話・来館)」と「最初の接点」の2列を足すだけです。
月末に、次の順で集計します。
- 予約を、Web・電話・その他の3つに分けて数える
- 電話の予約のうち、最初の接点が記録されている割合を出す(聞けている割合)
- 記録されている電話の予約を、5つの分類で数える
- Webの予約の流入元と、電話の最初の接点を、媒体ごとに足す
- 媒体費を、足した予約数で割る
2の「聞けている割合」が、とくに大事です。たとえば電話16組のうち聞けたのが4組だけなら、その4組の内訳を残りの12組に当てはめるのは乱暴です。僕は、聞けている割合が半分に届かないうちは、電話の内訳を媒体のCPAに使わないほうがよいと考えています。使う代わりに、「電話を足すと、順位が動く可能性がある」という注記を付けて、判断を保留にします。
聞けている割合が半分を超えたら、聞けた分の内訳の比率を、聞けなかった分に当てはめて、電話の予約を媒体に振り分けます。この振り分けは推定なので、CPAは1点ではなく幅で見ます。たとえば聞けた分の比率で振り分けた場合と、すべて「不明」のまま除いた場合の2つを並べて、順位が変わらなければ、その判断は安全です。変わるなら、保留です。
来館後の数字にも、同じ穴がある
ここまでは予約の入口の話でした。同じことは、成約まで追うときにも起きます。
電話で予約した二人は、Webで予約した二人と、成約率が違う可能性があります。電話を選ぶ人は、疑問を直接聞きたい人かもしれませんし、フォームの入力が面倒な人かもしれません。理由は分かりません。ただ、違うかもしれないものを一緒にして、媒体別の成約率を出すと、媒体の差ではなく入口の差を見てしまう恐れがあります。
だから、集計表には「入口」の列を残しておきます。そして、半年ほど貯まったら、Webと電話で成約率に差があるかを一度見る。差がなければ、安心して合算できます。差があれば、媒体別の数字は、入口別に分けて読む必要があります。
これも、数字が揃ってから考えればいい話です。最初の1か月は、聞いて、記録する。それだけで十分です。
媒体費の判断を急ぐ前に、確認すること
媒体を減らす、増やす、止める。こうした判断の前に、僕は次の3つを確かめています。
- 予約の何割が電話か(割合が1割を切るなら、この記事の話はほとんど効きません)
- 電話の最初の接点が、どれくらい記録されているか
- 順位が変わる可能性のある媒体どうしのCPAの差は、どれくらいか
1つめの割合は、会場ごとに大きく違うはずです。Web予約が中心の会場なら、電話の穴は小さい。逆に、年配の親世代が窓口になりやすい会場や、電話でないと空き日を確認できない運用の会場は、電話の穴が大きくなります。
3つめの差が、前の例のように1割程度なら、電話の内訳が分かるまで配分は動かさない。差が2倍も3倍もあるなら、電話の内訳が多少ずれても順位は変わらないので、判断してかまいません。
まとめ
- Webの予約フォームは流入元が機械的に残るが、電話の予約は、受付が聞かなければ「不明」に落ちる
- 「不明」は媒体費の計算に使われないので、電話で入った予約が多い媒体ほど、CPAが高く見える
- 仮の前提のモデル計算では、Webだけだとインスタグラムのほうが安く見えたCPAが、電話を足すとポータルのほうが安くなり、順位が入れ替わった
- CPAの差が小さい媒体どうしほど、電話の内訳で順位が入れ替わりやすい
- 電話の受付では、「当会場を最初に知ったきっかけ」を1問だけ聞き、選択肢は読み上げない。答えが返らない電話は「覚えていない」と残し、空欄と分ける
- 月末に、聞けている割合を確認する。半分に届かないうちは電話の内訳をCPAに使わず、判断を保留にする
- 電話の内訳が不確かなときは、電話を除いた場合と振り分けた場合の2つを並べて、順位が変わらなければ判断し、変わるなら保留にする
