式場と結婚相談所の提携は、年数組の紹介でも続ける価値があるか
結婚相談所と提携すると、成婚したカップルを式場に紹介してもらえます。話としては分かりやすい集客ルートです。ただ、実際に動き出す前に確かめておきたいのは、商圏で年に何組が見込めるのかです。
僕の見立てを先に書きます。相談所経由の紹介は、多くの会場で年に数組の規模にとどまります。それでも続ける価値があるかどうかは、組数ではなく、紹介が入ってからの動き方で決まります。
この記事では、全国の数字から相談所経由の比率を出し、前提を置いたモデル計算で年間の組数を見積もります。そのうえで、紹介料より先に決めておく窓口の作り方を整理します。使う出典は1つだけです。それ以外の数字は、すべて仮に置いた前提だと分かるように書きます。
全国の比率は、最大手1社だけで約1.6%です
数字の足場として使うのは、結婚相談所の最大手の1つ、IBJの決算資料です。同社の2024年12月期の通期決算説明資料には、成婚組数の定義を見直したうえで、2024年の成婚組数は7,918組と書かれています。
一方、同じ2024年の婚姻は、厚生労働省の人口動態統計で48.5万組でした。割り算すると、7,918 ÷ 485,063 で約1.6%です。
読み方には注意が要ります。
- これはIBJの会員同士の成婚だけの数字です。他の連盟に加盟する相談所や、小さな相談所の成婚は入っていません
- IBJは決算資料で、成婚組数の定義を見直したと書いています。以前の人数ベースの数字とは比べられません
- 成婚した全員が結婚式を挙げるわけではありません。式を挙げる割合は、この数字からは分かりません
ここから言えるのは、最大手1社でも全国の婚姻の1.6%という規模だ、というところまでです。他社を足して何%になるのかは、僕は確かめられていません。なので、以降の計算では、相談所経由の比率を1.6%と3%の2通りで置きます。3%は「他の相談所を足すと倍近くになるかもしれない」という仮の置き方で、調査の数字ではありません。
年に何組か、モデル計算で見積もります
商圏の年間の婚姻を、仮に3,000組とします。県庁所在地とその周辺くらいの規模のつもりで置いた数字で、実在の地域のデータではありません。自社の商圏に置き換えて使ってください。
次の3つを順にかけます。
- 相談所経由の婚姻の比率(1.6%または3%)
- そのうち、結婚式を挙げる割合(仮に50%)
- 挙げる二人のうち、自社に決める割合(仮に10%、20%、30%)
計算の結果は次のとおりです。
| 相談所経由の比率 | 相談所経由の組数 | 式を挙げる組数 | 自社に決まる割合10% | 20% | 30% |
|---|---|---|---|---|---|
| 1.6% | 48組 | 24組 | 2.4組 | 4.8組 | 7.2組 |
| 3% | 90組 | 45組 | 4.5組 | 9.0組 | 13.5組 |
つまり、商圏の中で相談所経由の二人が全員、式場探しに動いたとしても、自社に決まるのは年に2〜13組です。しかも、この表は「商圏の相談所すべてと提携できた場合」の上限に近い数字です。1つの相談所と組んだだけなら、さらに小さくなります。
自社に決まる割合を30%まで置けるのは、紹介された二人が最初から自社を軸に見てくれる場合だけです。紹介が入っても、他会場と見比べるのは普通に起きます。20%でも強気だと僕は見ています。
年数組で、続ける価値はあるのか
年に5組と置いて、考えてみます。ここで客単価や粗利を僕が決めることはしません。自社の1組あたりの粗利を当てはめて、次の式で見てください。
提携で増える粗利 = 紹介で決まる組数 × 1組あたりの粗利 − 提携にかかる費用
費用には、紹介料や手数料だけでなく、窓口の担当者が使う時間と、相談所向けの案内の準備も入れます。見落としやすいのは、時間のほうです。
提携が割に合うかどうかは、1組あたりの粗利が大きい式場ほど有利になります。逆に、紹介料を成約1組ごとに払う形にしておけば、決まらなかった月に費用が出ていきません。固定の掲載料を求められる場合は、年数組の規模では回収が厳しくなりやすいと考えます。
ここまでをまとめると、続ける価値の分かれ目は2つです。
- 成約1組ごとの成果払いで済むか。固定費を払うなら、年に何組で元が取れるかを先に計算する
- 紹介された二人が、他の経路の二人より成約しやすいか。これは自社の記録を取らないと分からない
後者は、導入から1年は決めつけずに記録だけ取るのがよいと思います。
紹介料より先に決める、窓口の作り方
相談所と話を進めると、最初に出てくるのは紹介料の話です。僕は順番を逆にしたほうがよいと考えています。窓口を先に決めておくと、紹介料の交渉もしやすくなります。
紹介された二人は、結婚の準備を急いでいることが多いです
これは数字では確かめられていませんが、相談所の成婚は、交際から成婚までの期間があらかじめ決まっていることが多く、成婚後に日取りを急ぐ二人が一定数いる、と僕は見ています。もしそうなら、見学の予約が取れる日が遠いと、その間に他会場が先に決まります。
確かめ方は簡単です。紹介された最初の数組について、「紹介から最初の見学までの日数」を記録します。10組ほど溜まれば、自社の傾向が見えます。
窓口は、相談所側の担当者と自社の担当者を1対1にします
相談所のカウンセラーは、成婚した二人から「どこかいい式場はない?」と聞かれる側です。そこで必要なのは、紹介のたびに誰に連絡すればいいかが迷わない状態です。
- 自社側の窓口は1人に決める(不在の日の代理も決める)
- 紹介された二人専用の予約ページか、連絡先を1つ用意する
- 見学の日取りを、紹介を受けてから何日以内に出すかを自社で決めておく
3つ目の日数に、僕が示せる根拠のある数字はありません。返信が遅い会場から他会場に流れる、という仕組みに沿って、まず2〜3営業日以内を置いてみて、自社の体制で守れる日数に直してください。
紹介元の相談所に、結果を返す約束をします
見学に来たか、契約に進んだか。この結果を相談所に返すかどうかは、先に決めておく必要があります。個人情報の扱いがあるので、二人の同意をどう取るかを含めて、契約の前に文書で決めます。結果を返さない提携は、相談所側が紹介を続けにくくなると僕は見ています。
紹介が入った後の二人には、何を見せるか
紹介された二人は、見学の時点で「相談所の紹介で来た」ことを、会場の人に知られたくない場合もあります。相談所経由の二人だと分かっても、話題の中心にしないほうが安全です。
見学で聞くのは、他の二人と同じです。結婚の準備の進み具合、希望の時期、人数、予算の考え方。これらを先に聞いて、その順番に合った見学の組み方をします。見学の最初に予算を聞くかどうかの順番は、別の記事で書きました。
紹介の二人に特別な割引をつける場合は、その割引の根拠も決めておく必要があります。他の経路の二人から「なぜあの人たちだけ」と言われる場面が、後から出てくるためです。値引きの話は、成約率がいくら上がれば元が取れるかを先に計算してから決めます。
相談所の側に、会場から渡せるもの
提携の相談では、会場が受け取る話ばかりしがちです。相談所の側から見れば、成婚した二人に紹介する式場の選択肢が増えるだけで、自分のところの売上は増えません。紹介料があるとしても、それは動機の一部にすぎないと思います。
会場から渡せるのは、たとえば次のようなものです。
- 成婚した二人が相談しやすい、短い見学枠(平日の夜など)
- 相談所のカウンセラー向けの、会場の見学会
- 二人が相談所に戻ってきたときに、会場の感想を伝える窓口
特に2つ目は、カウンセラーが実際に会場を見ていれば、二人に自信をもって薦められるようになります。年数組の紹介を増やすなら、最初に効くのはここだと僕は考えています。
導入前に、3か月で見る数字
提携を始めたあとは、数字を3つだけ記録します。増やしすぎると続かないからです。
- 紹介の件数(相談所別、月別)
- 紹介から最初の見学までの日数
- 見学に来た組のうち、契約に進んだ組数
3か月たっても紹介が0組の場合は、それ自体が情報です。相談所の担当者が、紹介の話を成婚した二人に出していない可能性があります。この場合は、紹介料を上げる前に、カウンセラーに「どの場面で会場の話を出していますか」と聞いてみる価値があります。聞く相手は担当者で、答えは数字ではなく場面です。
紹介が入っているのに契約に進まない場合は、見学の受け方を見直す番です。紹介の二人だけの問題ではなく、他の経路でも同じことが起きていないかを、見学数と契約数の記録から確かめます。
逆に、紹介が少なくても契約に進む割合が高いなら、数を増やす努力に価値があります。たとえば見学が4組で契約が2組なら、母数が小さいので偶然の可能性があります。10組以上たまるまで結論を出さず、記録だけ続けます。
他の集客経路と並べたときの置き場所
年に数組の経路は、広告や媒体のように月ごとの波を作る経路とは役割が違います。毎月の来館数を支えるのは、これまでどおり媒体と公式サイトと検索です。相談所の提携は、そこに足す小さな枠として扱います。
この置き場所を決めずに始めると、担当者の時間が足りなくなります。月に1組来るかどうかの経路に、毎週の定例会議を入れる必要はありません。四半期に1回、紹介の件数と契約の結果を相談所と共有するくらいで足りると考えます。
また、紹介された二人の分だけ別の管理表を作るのも避けます。既存の来館記録に「経路」の列を1つ足し、相談所の名前を入れる。それだけで、先の3つの数字は取れます。
まとめ
- IBJの成婚組数は2024年に7,918組で、全国の婚姻485,063組に対して約1.6%です。最大手1社の規模は、全国の婚姻の1〜2%程度です
- 商圏の婚姻を3,000組と仮に置くと、相談所経由で自社に決まるのは、年に2〜13組のモデル計算になります。商圏の実数に置き換えて見積もってください
- 続ける価値は、成約1組ごとの成果払いで済むか、紹介された二人が他の経路より決まりやすいかで分かれます。後者は記録を取らないと分かりません
- 紹介料の前に、窓口を1人に決め、見学の日取りを出すまでの日数を決め、結果を相談所に返す約束を作ります
- 相談所に渡せるものを考えると、提携は続きやすくなります
