来館・成約

見学予約の自由記入欄は、月1回二人の言葉のまま分類する

見学予約のフォームに「ご要望・ご質問がありましたらご記入ください」という自由記入欄を置いている式場は多いと思います。そこに届いた文章は、予約が入った時点で担当者が目を通して、当日の接客に使われて、それで終わりになっていないでしょうか。

僕は、この欄は一件ずつ読んで終わりにするより、月に1回まとめて分類するほうが、はるかに使い道が広がると考えています。理由は単純で、自由記入欄は、二人が式場に聞きたいことを、式場が用意した選択肢に邪魔されずに書いてくれる、ほとんど唯一の場所だからです。

この記事では、自由記入欄を月1回どう分類するか、分類した結果を公式サイトとフェアの説明にどう戻すか、どこまでを数えてどこから先は読み取らないか、を整理します。出典のある数字は出てきません。数字はすべて、手順を見るための仮の想定です。実際の件数は、それぞれの会場のフォームで数えてみてください。

自由記入欄は、二人の「聞きたいこと」がそのまま残る場所

見学予約フォームの項目は、式場が決めた質問でできています。希望日、人数、来館人数、連絡先。これらは式場が知りたいことです。二人が知りたいことは、フォームの項目には並んでいません。

自由記入欄だけが、その逆向きになっています。二人が自分の言葉で、聞きたいこと、不安なこと、先に伝えておきたいことを書ける場所です。「親が遠方なので、アクセスが心配です」「予算は少なめですが、見学していいですか」「彼の両親が高齢で、階段が気になります」。こういう文章は、アンケートの選択肢からは出てきません。

ここで大事なのは、自由記入欄に何かを書く人は、全体の一部だということです。仮に月に60件の見学予約があって、そのうち4割の24件が自由記入欄を埋めるとします(この4割は想定です。会場ごとに違うので、自分のフォームで数えてください)。24件は、選択肢の回答より重い意味を持ちます。わざわざ文章を書くほど気になっている、ということだからです。

多くの式場では、この24件は担当者が予約を受けた日に読まれます。そして当日の接客で触れられたら、役目は終わります。ここで止めてしまうと、二人が書いてくれたことが、その二人1組にしか使われません。

月1回まとめて読むと、見えるものが変わる

一件ずつ読んでいると、それぞれが個別の事情に見えます。「この二人は親が遠方」「この二人は予算が心配」。どれも担当者が当日に気をつければ済む話に見えます。

ところが、1か月分をまとめて並べると、同じことを聞いている二人が何組もいる、と分かることがあります。個別の事情に見えていたものが、公式サイトや予約ページに答えがないから、みんなが同じことを書いてくる、という構造だと気づく。これが月1回まとめて読む意味です。

仮に、24件を分類した結果が次のようになったとします。これも想定の数字です。

  • 料金・予算に関すること:9件
  • 日取り・時期に関すること:5件
  • 親・親族に関すること:4件
  • 人数・ゲストに関すること:3件
  • その他:3件

合計は24件です。割合にすると、料金が37.5%、日取りが20.8%、親・親族が16.7%、人数が12.5%、その他が12.5%です。

この想定が実際に近いかどうかは、重要ではありません。見てほしいのは、分類すると「料金について一番多く書いてくる」と分かる、という仕組みです。そして、料金の質問が一番多いと分かったら、次にやることがはっきりします。公式サイトの料金の見せ方を見直す。フェアの案内に、料金の話をする時間を入れる。見学予約の完了メールに、料金の考え方を一文足す。

月に9件ずつ同じ質問が来ているなら、年間では単純計算で約108件です(9件×12か月)。これも想定ですが、「年に100件以上、同じ疑問を二人が自分の言葉で書いてくる」と考えると、答えを先に出しておく意味が見えてくると思います。

分類するときの4つの手順

やることは、そんなに多くありません。月に1回、30分くらいで終わる作業です。

1. 先月1か月分を、そのまま一覧にする

フォームの回答を、予約日、二人の記入内容の順で一覧にします。個人名や連絡先は外します。ここでは、記入内容を一字一句そのまま残すのが大事です。要約したり、言い換えたりすると、二人の言葉が消えます。

2. 付箋のように、似たものを寄せる

一覧を上から読んで、似たことを書いている行を寄せていきます。最初から「料金」「日取り」のように大きな箱を決めておくより、読みながら寄せたほうが、思いがけない束が見つかります。たとえば「料金」と一括りにしていたものが、実は「総額が分からない」と「追加費用が怖い」の2つに分かれる、というような発見です。

束の名前は、二人の言葉に近いものにします。「料金」ではなく「最終的にいくらかかるのか」。この名前は、そのまま公式サイトの見出しや、フェアの案内に使えるからです。

3. 束ごとに、今どこに答えがあるかを書く

各束の横に、その疑問への答えが今どこに書いてあるかを書きます。公式サイトのこのページ、予約完了メール、フェア当日の説明、どこにもない、のどれかです。

「どこにもない」束が見つかったら、それが次の月にやることです。答えが「どこかにはあるが、探さないと見つからない」ものも同じです。二人が自由記入欄に書いてくるのは、答えが見つからなかったからです。

4. 次の月にやることを1つだけ決める

束が3つも4つも見つかっても、次の月に直すのは1つだけにします。公式サイトの該当ページに一段落足す、予約完了メールに一文足す、のように、手間が小さいものから選びます。1つ直したら、翌月の分類で、その束の件数が減ったかを見ます。

数えるのは件数だけ。気持ちは読み取らない

自由記入欄を分類するとき、やりすぎないための線引きもあります。

数えていいのは、同じ話題に触れている件数です。「親に関する記入が4件」は事実です。一方で、「この二人は不安が強い」「この二人は買う気が低い」という気持ちや成約の見込みは、記入した文章から読み取らないほうが安全です。文章が短い二人が、迷っていないとは限りません。長く書く二人が、不安だとも限りません。

もう一つ、分類の結果から「この束の二人は成約しやすい」「しにくい」と言い切らないことです。成約との関係を見たいなら、予約の記録と、その後の来館・成約の記録を突き合わせる必要があります。そして、それは件数が少ないうちは偶然に左右されます。月24件程度の分類から、成約との関係を断定するのは無理があります。

この記事で勧めているのは、あくまで「二人が聞きたいことの一覧を作って、答えを先に出す」ことまでです。成約率を上げるための手順ではなく、答えがない場所を見つけるための手順です。

個人情報の扱いで、気をつけること

自由記入欄には、予算、家族の事情、健康のこと、妊娠の報告など、デリケートな内容が書かれることがあります。月1回の分類で、これを扱う場合に気をつけたいことがあります。

分類の一覧では、名前と連絡先を外します。束の名前を付けるとき、特定の二人が分かる書き方をしません。公式サイトに載せる文章は、個人の事情ではなく、「こういう疑問をお持ちの方が多い」という書き方にします。「先月、妊娠中の方から質問がありました」のような書き方は、書いた本人が読んだら分かってしまう可能性があります。

また、二人の文章をそのまま公式サイトに引用するのは避けます。分類の段階では二人の言葉のまま残し、公開する段階では、疑問の形に直します。「親が遠方なので、アクセスが心配です」は、サイトでは「遠方のご家族が来られる場合のアクセス案内」という見出しに変わります。

個人情報の取り扱いは、会場ごとのプライバシーポリシーに沿って、社内の責任者が決めてください。この記事は、そのルールを作る代わりにはなりません。

分類の結果を、公式サイトとフェアに戻す

分類が終わったら、結果を二つの場所に戻します。

公式サイト

束の名前を、そのまま見出しやよくある質問の項目にします。「最終的にいくらかかるのか」という束なら、料金のページに「総額の考え方」という見出しを足す。「親が遠方」という束なら、アクセスのページに「遠方からお越しのご家族へ」を足す。

大きなページを作る必要はありません。既存のページに一段落足すだけでも、二人が自由記入欄に書かなくて済む場所ができます。

フェアの案内

フェア当日の説明の順番も、束の件数を参考に決められます。料金について聞きたい二人が一番多いなら、フェアの前半に料金の考え方を入れる。後半に回すと、二人は聞きたいことを聞けないまま、会場の説明を聞くことになります。

どちらの場合も、戻したあとの確認が欠かせません。翌月の分類で、その束の件数が減ったか、同じか、増えたか。減っていれば、答えは届いています。変わらなければ、答えは出したけれど、二人の目に留まる場所になかったのかもしれません。その場合は、置き場所を変えます。

向かない会場、まだ早い会場

この作業が向かない場合もあります。

見学予約が月に数件しかない会場では、自由記入欄が埋まる件数も少なく、分類しても束ができません。その場合は、一件ずつ読んで当日に活かすほうが、手間に見合います。目安として、記入が月に10件に届かないうちは、無理に分類せず、半年分をまとめて読むほうが現実的だと僕は思います。この10件は想定の目安で、根拠のある数字ではありません。

もう一つは、そもそも自由記入欄を置いていないフォームです。この場合は、欄を足すところから始めます。ただし、欄を足すと予約を完了するまでの手間が少し増えます。必須にはしないこと、「任意」と明記することを守ってください。項目の数を減らす話は、別の記事で整理しています。

まとめ

  • 見学予約フォームの自由記入欄は、二人が聞きたいことを自分の言葉で書いてくれる、ほとんど唯一の場所です
  • 一件ずつ読むと個別の事情に見えますが、月1回まとめて並べると、同じ疑問に答えがない場所が見えてきます
  • 分類は、記入内容をそのまま一覧にして、似たものを寄せ、束を二人の言葉で名付け、答えがどこにあるかを書く、の順で進めます
  • 次の月に直すのは1つだけにして、翌月の件数が減ったかで効いたかを見ます
  • 数えるのは件数まで。二人の気持ちや成約の見込みは、文章から読み取りません
  • 個人が特定できる形にしないこと。公開するときは、疑問の形に直します
  • 月の記入が10件に届かないうちは、半年分をまとめて読むほうが現実的です(この10件は想定の目安です)