授かり婚の問い合わせには、空き日より先に挙式できる期間を返す
妊娠中の二人から、式場に問い合わせが入ることがあります。いわゆる授かり婚、マタニティ婚と呼ばれる二人です。この問い合わせは、普通の問い合わせと日取りの決まり方がまるで違います。それなのに、返信の文面は普通の問い合わせと同じ、という式場は少なくありません。
結論から書きます。授かり婚の問い合わせには、希望日の空きを並べる前に、「挙式できる期間の幅」を最初の返信で示したほうがいいです。二人が探しているのは「いい日」ではなく、体調と出産予定日の間に収まる「期間」だからです。空き日を1つ2つ並べて返すだけだと、その日が合わなかった瞬間に、二人は次の式場に移ります。
この記事に出てくる数字は、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均値でも、どこかの式場の実績でもありません。妊娠や出産に関する医学的な判断も、この記事は扱いません。挙式してよい時期は、必ず二人と医師が決めることです。式場の側が決めることは何もなく、式場にできるのは「決められた枠の中で、選べる日を早く多く出すこと」だけです。
授かり婚の問い合わせは、日取りの決まり方が違う
普通の問い合わせの二人は、日取りを動かせます。「来年の秋ごろ」と決めて、空いている日から選べばいい。見学を急がなくても、日取りの選択肢は減りません。
授かり婚の二人は違います。日取りの枠を決めるのは、式場の空きではなく、出産予定日です。お腹が大きくなる前に挙げたい、体調が落ち着いている時期に挙げたい、出産のあとに落ち着いてから挙げたい。どの考え方でも、挙式できる期間には前と後ろに端があります。この端は、二人が動かせるものではありません。
端があると、時間の使い方が変わります。普通の問い合わせの二人は、気に入った式場が見つかるまで、半年かけて何軒でも回れます。授かり婚の二人は、見学できる軒数が限られます。問い合わせから決めるまでの期間が短く、返信が遅れた式場、日程の提示が少なかった式場は、検討の土俵に上がる前に外れます。
もう一つの違いは、二人がまだ周りに話していない場合があることです。両親や職場に妊娠を伝える前に、式場だけ先に探している二人もいます。ですから、式場の側から妊娠について尋ねることは、避けなければいけません。聞くのは、二人が自分から書いてくれた情報に対してだけです。この点は後の節で、予約フォームの作り方としても書きます。
最初の返信で、空き日を並べるだけだと何が起きるか
典型的な返信を考えてみます。二人が「出産予定日の関係で、〇月から〇月の間に挙げたい」と問い合わせフォームに書いてきたとします。式場の返信は、こうなりがちです。
「ご希望の期間で、〇月〇日(土)と〇月〇日(日)が空いております。ぜひ一度ご見学にお越しください。」
丁寧な返信です。ただ、二人の側から見ると、期間のうちの2日しか見えません。その2日が、両親の予定や、通院の予定と合わなければ、二人はそこで詰まります。かといって「他の日はありますか」と返すには、もう一度やり取りが必要で、そのあいだに他の式場の返信が来ます。
返信で出す日の数が少ないと、二人は式場に「期間のどこでも対応してもらえるのか」を判断できません。授かり婚の二人にとって、いちばん知りたいのは、自分たちの枠の中で、この式場が受けてくれるのかどうかです。空き日の数は、その答えの根拠になります。
挙式できる期間を、仮の数字で見てみる
どのくらい期間が狭いのかを、仮の前提を置いて計算してみます。この計算は、二人がどの時期に問い合わせても、挙式できる期間が急に短くなる、という構造を見るためのものです。
仮の前提を置きます。
- 挙式してよい時期を、妊娠16週から32週までの間とする(これは計算のための仮置きで、実際は二人と医師が決めます)
- 問い合わせから挙式までの準備に、最短で8週間かかるとする
- 候補になるのは土曜と日曜だけとし、その週末のうち、すでに埋まっている割合を70%と85%の2通りで置く
この前提で、問い合わせた時点の妊娠週ごとに、挙式できる週末の数を計算します。
| 問い合わせた妊娠週 | 挙式できる最短の週 | 挙式できる期間 | 空いている週末(埋まり70%) | 空いている週末(埋まり85%) |
|---|---|---|---|---|
| 6週 | 16週 | 17週間 | 約10日 | 約5日 |
| 10週 | 18週 | 15週間 | 約9日 | 約4.5日 |
| 14週 | 22週 | 11週間 | 約6.6日 | 約3.3日 |
| 18週 | 26週 | 7週間 | 約4.2日 | 約2.1日 |
| 22週 | 30週 | 3週間 | 約1.8日 | 約0.9日 |
見てほしいのは、問い合わせた時期が4週間遅れるごとに、空いている日が3割から4割ずつ減っていくことです。しかも、埋まり具合が85%の繁忙期だと、14週で問い合わせた二人には、期間の中に3日ほどしか選択肢がありません。その3日のうち、両家の都合が合う日は、さらに少なくなります。
ここで分かるのは、授かり婚の二人は、見学を1回目から「日取りを決める見学」として来るということです。普通の見学では、見学の後に日取りの話をします。授かり婚の見学では、見学の前に、日取りの枠の話が終わっていないと、見学の意味が薄れます。
返信で示すのは、日付ではなく「幅」と「締切」
では、最初の返信に何を入れるか。僕は次の3つを入れるのがいいと考えます。
一つ目は、「二人が書いてくれた期間の中で、受けられる日の数と並び」です。「3日あります」と数だけ書くより、「〇月は第2・第4の日曜、△月は第1の土曜と第3の日曜」のように、並びで書きます。並びが見えると、二人は両親の予定と照らし合わせやすくなります。
二つ目は、「その中で、準備の都合上、決めてもらう必要がある日」です。たとえば、衣裳合わせや打ち合わせに必要な期間を逆算して、「〇月〇日までにご契約いただければ、準備が間に合います」と書きます。これは煽りの期限ではなく、準備にかかる日数からの逆算です。「今日決めないと損」という言い方と違い、「この日までに決めると、準備の日程が組める」という事実を伝えるものです。契約当日の割引で追う言い方は、キャンセル相談の元になりやすいことを、以前の記事で書きました。ここでも同じで、期限の根拠は式場の都合ではなく、準備の日数でなければなりません。
三つ目は、「見学の日を、期間の中で最も早い日に置く案」です。見学が早いほど、二人は他の式場と並べて検討する余裕が残ります。同時に、式場の側も、見学のあとに仮押さえを入れる余裕ができます。
この3つが入っていれば、二人は返信を読んで「この式場は、自分たちの枠を分かって返してくれている」と感じます。妊娠の話に踏み込んだ質問を一切しなくても、期間の話だけで、その感覚は作れます。
予約フォームに、任意の欄を一つ足す
授かり婚の二人の問い合わせを、最初の返信で拾えるようにするには、フォームの側の準備も要ります。
足すのは、「挙式を希望する期間」を月で書ける欄です。妊娠については触れません。「いつからいつまでの間に挙げたいか」「その理由があれば書いてください」くらいの、任意の自由記述欄にします。
この欄は、授かり婚の二人専用ではありません。就職や転勤、両親の体調、親族の都合など、期間が決まっている二人はほかにもいます。誰にでも使える欄にしておけば、妊娠を言いたくない二人が、フォームの前で立ち止まることもありません。
書かれた内容に、式場の側から踏み込まないことも、運用のルールとして決めておきます。二人が「出産予定日の関係で」と書いたなら、返信でも「出産予定日の関係で」という言葉をそのまま使います。書いていない二人に「もしかしてご懐妊ですか」と聞くのは、どんな言い方でも避けます。ここを間違えると、問い合わせの数字以前に、式場への信頼が落ちます。
見学の席で、先に確認しておくこと
見学の当日にも、授かり婚の二人に特有の確認事項があります。ただし、これも二人から出た話に対して、式場が用意を説明する形で扱います。
一つは、席と動線です。披露宴の着席時間が長くなること、会場内の移動距離、休める場所の有無を、聞かれる前に見せられるようにしておきます。座席を替えられるか、控室でいつでも休めるかは、体調が不安定な時期の二人には大きな判断材料です。
二つは、試食です。ブライダルフェアの試食は、メニューによって食べられない食材がある二人もいます。事前に食材の確認ができる、代わりのメニューを用意できる、と予約の段階で伝えられると、二人は安心して来館できます。これは授かり婚の二人に限らず、アレルギーのある二人にも効く手当てです。
三つは、衣裳です。体型が変わる前提での衣裳の選び方、サイズ直しの考え方、当日までの間に体型が変わった場合の対応を、衣裳担当が説明できる状態にしておきます。式場ごとに対応は違うので、できることとできないことを、見学の席ではっきり言えることが大切です。「できます」と言い切れないことは、無理に言わなくて構いません。「確認して〇日までに返します」と言って、その日までに返せばいいのです。
四つは、日程変更の規定です。体調によって、挙式の日が動く可能性があります。変更の規定が契約書のどこにあり、どの時期までなら追加費用が発生しないのかを、契約の前に二人が理解できる状態にします。ここは、契約後のトラブルを減らすための説明でもあります。
数え方を分けないと、改善が見えない
最後に、数字の見方です。授かり婚の二人の問い合わせは、普通の問い合わせと混ぜて数えると、成約率の数字がぶれます。
期間が決まっている二人は、返信の速さと日程の提示で、成約するかどうかが大きく変わります。混ぜて数えていると、全体の成約率が少し動いても、どの手当てが効いたのかが分かりません。
具体的には、問い合わせの中で「挙式を希望する期間」が書かれたものに印をつけます。印をつけた問い合わせについて、返信までの時間、返信で出した日の数、見学への進み方、成約までの日数を、別の表で見ます。件数が少ない式場なら、半年分をまとめて見ます。数が少なくても、返信までの時間と日の数の関係は、見れば傾向が分かります。
仮に、期間が決まっている問い合わせが月に5件あって、返信が翌日になる式場と当日中に返す式場で、見学への進み方がどう違うか。式場の中で比べられるのは、こういう数字です。自分の式場の数字で出してみて、初めて「返信の速さ」に手間をかける価値があるかどうかが分かります。
まとめ
- 授かり婚の二人は、式場の空きではなく、出産予定日と体調で日取りの枠が決まっている。枠には前と後ろに端がある
- 最初の返信で空き日を1つ2つ並べるだけだと、その日が合わなかった時点で次の式場に移られる
- 仮の計算では、問い合わせが4週間遅れるごとに、期間の中の空き週末が3割から4割ずつ減る。繁忙期だと選択肢はさらに少ない
- 最初の返信には、期間の中で受けられる日の数と並び、準備の都合から逆算した決める日、最も早い見学日の3つを入れる
- フォームには「挙式を希望する期間」の任意欄を足す。妊娠には触れず、期間が決まっている二人なら誰でも使える欄にする
- 式場の側から妊娠について尋ねない。二人が書いた言葉をそのまま使う
- 見学では席と動線、試食の食材確認、衣裳の考え方、日程変更の規定を、聞かれる前に説明できるようにしておく
- 「挙式を希望する期間」が書かれた問い合わせは別に数え、返信の速さと提示した日の数を見る
