来館・成約

プロポーズ前の下見の問い合わせは、見積もりより連絡手段を先に決める

プロポーズをする前に、式場を下見したいという問い合わせが入ることがあります。多くは男性一人で、「まだ相手には言っていないのですが」という書き出しです。この問い合わせは、普通の見学予約と同じ流れで受けると、かなりの確率でうまくいきません。

結論から書きます。プロポーズ前の下見は、見積もりも空き日も出す前に、最初の返信で「連絡手段」を決めたほうがいいです。電話番号、メールアドレス、LINE、郵送物のどれを使うか。二人で使っているものに通知や履歴が残る形だと、サプライズごと崩れます。この問い合わせは、式場の接客より先に、連絡の取り方で成否が分かれます。

この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均値でも、どこかの式場の実績でもありません。式場ごとに入る件数は違うので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。

プロポーズ前の下見は、普通の見学と何が違うのか

普通の見学予約は、二人で来る前提で組まれています。予約フォームに入るのは二人のうちどちらか一人の連絡先で、確認メールも、前日のリマインドも、見学後のお礼も、その連絡先に届きます。受け取った側が相手に「この日、見学行こう」と伝えれば済みます。

プロポーズ前の下見では、この前提が逆になります。相手に知られないことが、最初の条件です。ここで起きやすいことを、仕組みの面から並べます。

  • 共有のタブレットやパソコンで予約すると、ブラウザの履歴や自動入力に残る
  • 夫婦でなくても、同棲している二人は郵便受けを共有している。資料の郵送は避けたい
  • 電話は、画面に式場名が出る。着信が相手の目に入る位置にスマホが置かれていることがある
  • LINEは、通知のプレビューに式場名が出る設定のままだと、画面に出る

どれも、式場の側が悪いわけではありません。ただ、予約の確認メールや前日リマインドが当たり前に届く仕組みを持っているほど、それが事故の原因になります。

もう一つの違いは、決まる順番です。普通の見学では、会場・日程・見積もりの順で話が進みます。下見の人は、まず「プロポーズが成功してから、どれくらいで挙式できるか」を知りたい。日取りは相手の希望も聞いてから決めるので、この時点では決まりません。見積もりを出しても、相手の意見が入る前の数字なので、確定はしません。

つまり下見の人にとって、見学は「契約の入口」ではなく、「プロポーズの後に自信を持って動くための準備」です。ここを取り違えると、接客の中身がずれます。

最初の返信で決める3つのこと

問い合わせの文面に「プロポーズの前に」「サプライズで」「まだ相手には伝えていなくて」といった言葉があれば、通常の返信テンプレートは使いません。最初の返信で決めるのは、次の3つだけにします。

1. 連絡手段を、相手に見られない形に確認する

「今後のご連絡は、どちらがよろしいでしょうか」と、選択肢を並べて聞きます。メール、電話、LINEのうちから選んでもらい、さらに「件名や通知に式場名を出さないほうがよいですか」まで確認します。

聞き方で気をつけるのは、理由を詮索しないことです。「パートナーの方に知られたくないのですか」とまで書く必要はありません。連絡手段の希望として淡々と聞くだけで、相手には十分伝わります。

式場名を出さない件名の例を、あらかじめ用意しておくと早いです。たとえば「ご来館日程のご案内」のように、式場名もブライダルという言葉も入らない件名です。通知に出ても、相手が見て不審に思いにくい形にします。

2. 見学の日時は、一人で来られる枠から出す

プロポーズ前の人は、相手の予定を知っていて、相手が忙しい日や外出する日を選んで来ます。式場の側で「いつものフェアの日」を勧めると、その日が相手と一緒の予定だった、ということが起きえます。

出すのは、少人数の個別見学の枠です。フェア開催日の混雑した時間は避けたほうがいいです。ほかの来館者と顔を合わせると、会場内で知人に会うリスクもあります。下見の人は、その点を気にしています。

見学の時間も、普段の2時間ではなく、短めの枠を用意します。一人で来る人は、長時間の外出を相手に説明しにくいからです。仮に普段のフェアが2時間なら、下見は60分前後で区切れる内容を用意します。

3. 見積もりは「出す」と「出さない」を最初に伝える

下見の人に、その場で見積もりを出すかどうか。ここは式場の方針が分かれるところですが、僕は「出す条件を先に伝える」ほうがいいと考えています。理由は2つあります。

1つ目は、相手の希望が入っていない数字は、ほぼ確実に変わるからです。人数も、日取りも、プランも未確定で、出した見積もりが一人歩きしやすい。2つ目は、見積もりの紙は物として残ることです。持ち帰った紙が、相手に見つかる可能性があります。

そこで、見学の前に「当日は概算の目安までお伝えします。書面は、プロポーズ後に二人でいらしたときにお出しします」と伝えます。書面を出さないことが、サプライズを守る配慮として受け取られます。

当日の接客で守ること

当日の接客は、普通の見学の簡略版ではありません。話す順番を変えます。

最初に聞くのは、「いつごろ、どんな形でプロポーズをする予定か」ではありません。それは二人の大事な場面なので、式場の側から聞く必要はありません。聞いてよいのは、「プロポーズのあと、どれくらいの時期に挙式したいかのイメージはありますか」くらいです。これも、答えたくなければ答えなくていい聞き方にします。

次に、プロポーズ後に何を決めるのかを、時系列で見せます。

  • 返事をもらった後、最初の1か月で決めること(日取りの候補、おおよその人数、両家への報告)
  • 見学に二人で来る時期の目安
  • 人気の日取りは、いつごろまでに押さえる必要があるか

これを一枚の紙にして渡す、のはやめておきます。持ち帰ると見つかるからです。説明は口頭で行い、本人が手元のメモに残したいと言うなら、それは本人に任せます。

もう一つ守りたいのは、写真の扱いです。会場の写真を撮りたいという人は多いです。プロポーズの場所に使えないか、考えている人もいます。会場内で撮ってよい場所を先に伝え、撮影の許可を取っておきます。

下見の人を、二人目の来館につなげる

下見に来た人が、本当に価値を持つのは、プロポーズが成功したあとです。その瞬間に、「あの式場の人は話しやすかった」と思い出してもらえるかどうかで、二人の最初の来館先が決まります。

ここで式場ができることは、多くありません。やってはいけないのは、追客です。連絡手段を決めていても、後から式場の側からメールを送り続ければ、事故の確率が上がります。見学後のお礼は、最初に決めた連絡手段で1通だけ送ります。内容は、見学のお礼と、「プロポーズ後に連絡をいただければ、日程の調整をすぐにします」という一文だけです。

プロポーズの後に二人で来るときのために、次の準備をしておきます。

  • 下見の人の来館記録に、「二人での来館は、プロポーズ後に本人から連絡がある」と書き、担当者が変わっても同じ対応ができるようにする
  • 二人での来館の予約のときは、下見の際に話した内容をいったんリセットして、二人の希望から聞き直す
  • 下見のときの概算は、二人が望んだときにだけ口にする。覚えていても、先に話さない

二人目の来館で、前に下見の人がいたと分かるのは、式場の側だけです。相手の女性は、何も知りません。「先日、一度いらしていただいて」と口にすると、プロポーズの前の動きがそこで明かされます。これは、サプライズを守る最後の関門です。本人が自分から話すまで、式場の側からは触れません。

仮の数字で見る、取りこぼしの大きさ

ここからは、僕が置いた仮の数字です。ある式場に、プロポーズ前の下見の問い合わせが、年に20件入るとします。通常の見学予約からの成約率を30%、下見からプロポーズ成功後の二人での来館に進む割合を、対応の仕方で変わるものとして次のように置きます。

  • 通常のテンプレートで受けた場合:30%
  • 連絡手段を決めて受けた場合:50%

どちらも、根拠のある数字ではありません。この差があるとしたときの、年間の違いを計算します。

通常の受け方   : 20件 × 30% = 6件の二人目来館
連絡手段を決める: 20件 × 50% = 10件の二人目来館
差             : 4件

二人目の来館から成約まで進む割合を、同じ30%と置くと、差は年に1.2組です。件数としては大きくありません。ただ、この問い合わせは、そもそも成約の見込みが高い層に入っています。プロポーズの前から式場を探している人は、挙式を具体的に考えているからです。件数が少なくても、1組あたりの意味は重い、ということは言えそうです。

それより大きいのは、失敗したときのことです。連絡の事故で、サプライズが崩れた場合、その二人はその式場に好意を持ちません。口コミにも出ます。仮に、事故が20件のうち2件起きたとすると、その2件が、悪い印象と共に記憶される。数字では見えないコストです。

予約フォームと運用を、下見の人が使える形にする

下見の人を毎回、問い合わせの文面から拾うのは手間です。予約フォームの側に、少しだけ入口を作っておくと、取りこぼしが減ります。

  • 予約フォームの連絡手段を「メール・電話・LINE」から選べるようにし、「通知に式場名を出さない」のチェックを置く
  • フォームの備考欄の例文に、「サプライズの準備で来館する場合はご記入ください」と書く。妊娠のような個人的な事情と違って、サプライズは本人が書きたい情報です
  • 確認メールの件名を、式場名を伏せたものにするかどうかを、予約時に選べるようにする

フォームに「サプライズ」の入口を置くと、それを見た別のお客様が「サプライズで下見ができる式場」と受け取ることがあります。入口の文言は、控えめにします。目立たせるほど、広告に見えてしまいます。

運用の側では、下見の人の来館記録に、普通の予約とは別の印をつけます。担当者が変わっても、電話もメールもLINEも、連絡手段を間違えない。この一点だけを守る印です。

まとめ

  • プロポーズ前の下見は、見積もりや空き日より先に、連絡手段を決める問い合わせです
  • 最初の返信で、連絡手段、見学の枠、見積もりの出し方の3つを決めます
  • 確認メールの件名、前日のリマインド、郵送物が、サプライズを崩す主な原因になります
  • 当日は、プロポーズ後の1か月で決めることを口頭で見せ、書面は残しません
  • 見学後の連絡は1通までにして、二人での来館のときに下見のことは式場から言いません
  • 仮の数字では、連絡手段を決めるかどうかで、年に1組前後の違いが出ます。差が小さくても、事故の印象は口コミに残ります