挙式まで1年以上ある二人の問い合わせは、日取りより見学を先に勧める
「再来年の春ごろに挙げたいと思っています」。こういう問い合わせが、式場には毎月のように入ります。挙式まで1年以上ある二人です。
この問い合わせへの返信で、空いている日を並べて「お早めの仮押さえをおすすめします」と書いていませんか。親切のつもりで書いた一文が、二人の足を止めていることがあります。
結論から書きます。挙式まで1年以上ある二人には、日取りの話より先に、見学を勧めたほうがいいです。先の二人が決めたいのは日にちではなく、「この会場でいいのか」だからです。日取りは、会場が決まれば後からついてきます。順番を逆にした返信は、二人にとって決める材料のない選択を迫る返信になります。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。業界の平均値でも、どこかの式場の実績でもありません。構造を見るための計算なので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
先の問い合わせは、日取りを動かせる二人
挙式が近い二人と、先の二人では、動かせるものが違います。
半年後に挙げたい二人は、日取りが固い。その日に空いている会場から選ぶしかなく、見学の順番も限られます。だから「この日が空いています」という情報に価値があります。
1年以上先の二人は、日取りが動きます。春でも秋でも、土曜でも日曜でも、会場が気に入れば合わせられる。この二人にとって、空き日の一覧は決め手になりません。どの日も「たぶん空いている」と感じているからです。実際、先の日取りはどの会場もまだ埋まっていないことが多く、空き日を並べても会場ごとの差が出ません。
差が出るのは別のところです。料理の味、チャペルの雰囲気、スタッフの対応、駅からの距離、見積もりの出し方。ネットで見えにくいものが、決め手になります。つまり、先の二人が欲しいのは日取りの情報ではなく、会場を判断する材料です。
日取りを先に押さえさせると何が起きるか
先の問い合わせに、空き日を並べて仮押さえを勧める。この返信で、二人側に起きることを3つ書きます。
1つ目は、圧に感じることです。まだ会場を決めていない二人に「お早めに」と言うと、決めるよう急かされた感覚が残ります。見学に行きたい気持ちより、断りにくくなる不安のほうが先に立つ二人もいます。
2つ目は、返信が「空き日の確認」で終わることです。二人は「空いているんだな」と分かって、それ以上聞くことがなくなります。次の行動が生まれません。他の式場にも同じ問い合わせを送っていれば、見学の予約が取れた式場から先に回ります。
3つ目は、仮押さえが取れても見学に来ないことです。仮押さえは、取ることが目的になりやすい。日だけ押さえて、他の式場と比べているうちに、押さえた日が不要になる二人もいます。式場側には、空いているのに売れない日が一定期間できて、それが何度も繰り返されます。
人気日の仮押さえ期限を決める話は別の記事で書きました。ここで言いたいのは、期限の長さの前に、「そもそも仮押さえを最初の返信で勧める必要があるのか」という順番の話です。
最初の返信に入れるもの
では、何を書くか。先の二人への最初の返信は、3つの要素で組みます。
1. 日取りは急がなくていいと先に伝える。 「ご希望の時期は、まだ余裕を持ってご検討いただけます」と書く。二人が感じている圧を、式場のほうから外します。ここで空き状況の話はしません。聞かれたら答える程度で十分です。
2. 見学で見られるものを、3つ具体的に書く。 「ぜひご見学ください」だけでは、行く理由になりません。たとえば次のように書きます。
- 挙式の会場に、実際に立って見られること
- 試食か、料理の説明がセットになっていること
- 見積もりの内訳を、二人の人数で見られること
見学しないと分からないことを3つに絞って渡します。これで、見学が「会場を判断するための時間」になります。
3. 見学の予約は、日取りと切り離して取る。 「挙式の日が決まっていなくても、見学は大丈夫です」と書く。先の二人は、日取りが決まらないと見学に行けないと思い込んでいることがあります。この一文で、予約のハードルが下がります。
この3つで、返信は短くできます。空き日の一覧を貼るより短いくらいです。
仮の数字で見る、来館数の差
日取りを先に勧める返信と、見学を先に勧める返信で、来館数がどのくらい変わるかを、仮の前提で計算してみます。
前提を置きます。
- 月に、挙式まで1年以上先の問い合わせが20件入る
- 日取りを先に勧めた場合、見学に来る二人は30%とする
- 見学を先に勧めた場合、見学に来る二人は50%とする
- 見学した二人が契約する割合は、どちらも30%とする(見学の質は同じと置く)
この前提で、1か月に見学に来る二人は、日取り先の返信なら6組、見学先の返信なら10組です。契約まで進む二人は、日取り先が約2.1組、見学先が3.0組になります。差は月に約0.9組。1年続けると、約11組の差になります。
見学に来る割合の差を変えて、同じ計算をしてみます。見学先の返信で来館割合が40%にしか届かない場合、契約は月に約2.4組。60%まで届けば約3.6組です。どの場合でも、30%の日取り先(約2.1組)を上回ります。来館割合の差が10ポイント(30%→40%)あれば、見学先の返信のほうが良いことになります。
この計算は、仮の数字を置いた結果なので、どの数字も実際の値ではありません。見てほしいのは、構造のほうです。先の二人の問い合わせは、見学に来るかどうかが分かれ目で、契約率より来館率のほうが、結果に効きます。そして、来館率を上げるために、最初の返信でできることは、日取りの話を後ろに回すことくらいしかありません。
見学のあとの日取りの決め方
見学に来た二人には、日取りの話をしてよい。順番が変わるだけで、日取りを決めないわけではありません。
見学の最後に、二人の希望の時期と、候補になりそうな日を、そのとき初めて並べます。すでに会場を気に入っている二人にとって、空き日は決め手になります。この時点の空き日の情報は、先ほどの「空き日を並べても差が出ない」状態とは違い、決めるための情報です。
ここで、先の二人の場合は、日取りを決めずに帰る場合も多いです。その場合は、仮押さえを無理に勧めず、「候補の日を3つ書いたメモ」を渡すくらいにとどめます。メモには、候補日と、それぞれの日の空き状況の変わり方(週末は先に埋まりやすい、など、その会場の実感で書ける範囲)を書く。二人が持ち帰って、両親や友人と相談できる材料になります。
仮押さえを取る場合は、期限を最初に伝える。これは日取りを先に勧める返信とは違い、すでに会場が決まりかけている二人へのサービスです。
先でも日取りを先に伝えたほうがいい場合
見学を先に勧める判断が、いつも正しいわけではありません。日取りを先に伝えたほうがいい場合を3つ挙げます。
1つ目は、二人が最初から特定の日を指定してきた場合です。「〇年〇月〇日の大安に挙げたい」と書いてあるなら、まず空いているかどうかが知りたい。その日が埋まっていたら、見学に来る理由がなくなります。この場合は、空き状況を最初に返します。
2つ目は、その会場の人気日が特定の季節に集中していて、その季節を希望している場合です。たとえば、秋の週末は1年半前にはほぼ埋まる、という会場は実際にあります。その季節の二人には、「日取りの人気が高い」という事実を、圧にならない形で伝える必要があります。ただし、伝えるのは事実だけにして、「お早めに」とは書きません。
3つ目は、遠方からの二人で、見学が1回しかできない場合です。見学の日に日取りまで決めたい。この場合は、見学の予約を取る時点で、候補日の話も一緒に進めたほうが二人にとって親切です。
この3つのどれにも当てはまらない先の問い合わせは、見学を先に勧める。この線引きで運用できます。判断の分かれ目は、二人が「日取りを決めたいのか、会場を決めたいのか」のどちらにいるかです。問い合わせの文面に日付が書かれていなければ、会場を決めたい側にいると見てほしいです。
運用するときの注意
最初の返信の型を変えるだけなので、導入は軽いです。それでも、やっておくと失敗しにくい点が3つあります。
返信のテンプレートを2種類に分ける。 挙式まで1年未満の二人と、1年以上の二人で、テンプレートを分けます。問い合わせフォームに「挙式予定時期」の項目があれば、それで自動的に分けられます。項目がなければ、返信担当者が文面から判断します。
見学の予約が取れなかった二人に、日取りの情報を後から送る。 見学を先に勧めても、予約に至らない二人はいます。その二人に、1通だけ、候補になりそうな日の空き状況を送る。このとき初めて、日取りの話をします。最初の返信で書かなかった情報を、2通目で使う。これで、先の二人が日取りを知りたくなったときにも対応できます。
1か月ごとに、先の問い合わせの来館率を数える。 問い合わせ件数のうち、見学予約が入った割合を、挙式まで1年以上と1年未満で分けて記録します。1か月分でも傾向が見えます。返信の型を変える前と後で、この割合を比べるのが、効果測定になります。
まとめ
- 挙式まで1年以上ある二人は日取りを動かせるので、空き日の一覧は決め手にならない
- 先の二人が欲しいのは、日取りの情報ではなく、会場を判断する材料
- 最初の返信で仮押さえを勧めると、圧に感じて足が止まる二人がいる
- 返信には、日取りは急がなくていいこと、見学で見られる3つのこと、日取りが未定でも見学できることを入れる
- 仮の前提(月20件・来館30%→50%・契約30%)では、月の契約が約2.1組から3.0組になる。来館割合が40%でも上回る
- 日取りを話すのは見学のあと。候補日のメモを渡し、仮押さえは期限を伝えて取る
- 特定の日の指定がある、人気日が集中する季節を希望している、遠方で見学が1回きり、の場合は日取りを先に返す
- 問い合わせは挙式時期で分けて、来館率を月ごとに数える
