配膳に高校生を入れるなら、披露宴が押しても22時に触れない線を先に引く。仮の式場では入り12時半・上がり21時半が限度で、守る手間は年4.4万円
配膳のアルバイトに高校生を入れている式場は、多いと思います。人手が足りない土日に、18歳未満の子が3人いるだけで現場はだいぶ楽になります。ただ、18歳未満には大人と違うルールが二つあります。午後10時から午前5時は働かせてはいけないこと、そして1日8時間・週40時間の上限に例外がほとんど使えないことです。披露宴は押すのが普通なので、予定どおりなら問題がなくても、押した日に線を越える可能性があります。
僕が仮に置いた式場で表にしてみると、高校生の入りが12時半より早いと、予定どおりでも1日8時間を超える日が出ます。上がりは21時半までに決めておけば、押しが60分あっても22時に触れません。この記事の数字は、時給も件数も僕が置いた前提による計算です。実在の式場の実績ではありません。
18歳未満に効く条文
先に、法律の側を整理します。出典は労働基準法の条文そのものです(e-Gov法令検索で読める版を確認しました)。
- 第56条:満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終わるまでは、原則として使えません。中学生は、配膳では対象外と考えてよいです
- 第57条:18歳に満たない人については、年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けます
- 第58条・第59条:親が代わりに契約を結ぶことも、賃金を代わりに受け取ることもできません。契約も賃金も本人とです
- 第60条:時間外労働の協定(36協定)や、1年単位などの変形労働時間制は、18歳未満には適用しません。1日8時間・週40時間が上限として残ります
- 第61条:18歳未満を午後10時から午前5時までの間に使ってはいけません
- 第119条:第61条に違反した場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です
ここで一つ、現場でよく混ざる点があります。親の同意書です。条文で同意書を事業場に備えると書かれているのは、第56条第2項で使う児童(13歳以上で行政官庁の許可を受けた場合)だけです。高校生に同意書を求めるのは、式場の運用として置いているものであって、労基法が求めているものではありません。求めるのは構いませんが、「法律で必要だから」と説明すると正確ではなくなります。
もう一つ、第61条には「交替制によつて使用する満16歳以上の男性」は除くという但し書きがあります。条文の上ではそうなっています。ただ、性別と年齢で22時の線を変える運用は、現場の誰もが間違えずに回せるものではありません。僕はこの但し書きに頼らない設計を勧めます。使うかどうかは、労働基準監督署か社労士に個別に確認してからにしてください。
22時までの余裕と、入り時刻
仮の式場を置きます。
- ディナーの披露宴は17時開始。予定どおりなら19時半に終わります(150分)
- 送り出しと撤収に60分かかり、予定の上がりは20時半です
- 披露宴が押す日は、60分までを見ておきます(押す理由は小さな積み重ねなので、30分前後なら普通に起きると僕は見ています)
- 高校生は3人。ディナーの片付けと皿の下げ、撤収を担当します
予定どおりなら20時半、30分押して21時、60分押して21時半です。22時までには30分の余裕があります。ここまでは問題なさそうに見えます。
問題は、入りの時刻です。高校生が日中から入る日は、1日8時間の上限が先に来ます。
入り時刻と上がり時刻の表
休憩は、労基法第34条で、労働時間が6時間を超えるなら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上です。休憩はあくまで最低限として、拘束時間から引いて実働を出します。上限は1日8時間です。
| 入り | 上がり20:30(予定) | 上がり21:30(60分押し) | 上がり22:00 |
|---|---|---|---|
| 10:30 | 実働9時間でNG | 実働10時間でNG | NG |
| 12:30 | 実働7.25時間 | 実働8.0時間(ぎりぎり) | 実働8.5時間でNG |
| 13:00 | 実働6.75時間 | 実働7.5時間 | 実働8.0時間(ぎりぎり) |
| 15:00 | 実働5.5時間 | 実働5.75時間 | 実働6.25時間 |
10時半入りは、ランチの準備から入る想定です。予定どおりに終わる日でも、8時間を1時間超えます。ランチからディナーまで通しで入れる使い方は、18歳未満では成り立たないということです。ここは大人のパートと同じ感覚でシフトを組むと、気づかないうちに違反が続いてしまうところです。
12時半入りは、押しが60分までなら収まります。ただし、実働8.0時間ちょうどで余裕がありません。休憩を45分でなく1時間きっちり取ってもらう前提です。休憩が取れなかった日は、そのまま上限超えです。
13時入りなら、21時半上がりで実働7.5時間です。22時上がりでも8.0時間に収まります。ただし、22時ぴったりに上がる設計は、ほんの数分の遅れで第61条に触れます。上がりの線は21時半に置いて、22時は予備と考えるほうが安全です。
15時入りは、どの上がり時刻でも余裕があります。ディナーの準備から片付けまでを担当する使い方なら、ここが一番扱いやすい帯です。
休憩が取れなかった日
表の実働は、休憩を法定の最低限どおり取ったものとして計算しました。ここに現場の落とし穴があります。
休憩とは、労働から離れることが保障されている時間です(労基法第34条第3項は、休憩を自由に利用させることを求めています)。披露宴の進行中に「何かあったら呼ぶから、控室で待っていて」と言われた時間は、呼ばれる可能性があるので、休憩として数えにくい時間です。
高校生の場合、休憩が休憩にならなかったら、その分は実働に戻ります。たとえば13時入りの子が、披露宴の進行中に呼ばれ続けて休憩を取れなかったとします。21時半上がりなら、拘束8.5時間がそのまま実働になり、1日8時間の上限を超えます。上限が実働時間の上限だからです。
そこで、休憩の時間帯を進行表に入れてしまう方法があります。ゲストの着席が済み、乾杯が終わって歓談に入る頃は、配膳の手が空く時間です。このあたりに45分の休憩を置き、その間は呼ばない人を決めておきます。休憩が実際に取れたかどうかを、上がるときに本人に口頭で確かめて、記録に残します。
押した日の動き方と、その費用
押しが60分を超えそうなとき、現場でどう動くか。仮の式場では、次の三つの順番を決めておきます。
- 押しが30分を超えた時点で、キャプテンが高校生の上がり時刻を21時半と決め、その時刻に撤収が終わらない部分を大人に回す
- 回す大人は、事前にその日の待機として1〜2人決めておく
- 高校生には「21時半になったら、片付けが残っていても上がる」と、入る前に伝えておく
3が一番効きます。その場で「もう少しだけ」と頼んでしまうと、断れない子が多いからです。事前に決まっていれば、現場の判断が要りません。
大人を待機させる費用を計算します。仮に、押しが60分を超える日が年に15回(ディナー150組の10%)あるとします。その日、大人2人に21時半から22時半まで1時間、残ってもらうとします。大人の時給を1,300円、22時以降は深夜の25%割増とします。
- 21時半〜22時:0.5時間 × 2人 × 1,300円 = 1,300円
- 22時〜22時半:0.5時間 × 2人 × 1,300円 × 1.25 = 1,625円
- 1回あたり2,925円、年15回で43,875円
つまり、年4.4万円ほどで、22時の線を守れる設計になります。これは前提の置き方で上下します。押しが60分を超える日が年30回なら約8.8万円です。ただ、罰則の側は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。守るための費用の桁と、守らなかったときの桁が違います。
18歳になる日の台帳
もう一つ、地味ですが効くのが年齢の管理です。高校3年の子は、年度の途中で18歳になります。18歳になれば、第61条の22時の線も、第60条の上限も、大人と同じルールに切り替わります。
切り替わる日を間違えると、逆の失敗が起きます。実際には大人になっているのに、いつまでも「高校生だから21時半上がり」にしていると、人手が足りなくなります。誕生日の前日に満年齢に達すると数える決まりが別の法律(年齢計算ニ関スル法律)にあるので、切り替えの日は、社労士か労働基準監督署に確認してから台帳に書くのがよいと思います。
台帳に必要な列は少ないです。氏名、生年月日、18歳になる日、年齢を証明する書類を確認した日。第57条の備え付けは、この台帳と証明書の写しで足りるかどうかを、一度だけ監督署に確認しておくと安心です。
自治体の青少年健全育成条例に、深夜の外出や就労について別の定めがある場合もあります。ここは条例の名前と時刻を、自分の自治体のものを一度確かめてください。この記事では確認していません。
試験期間のシフト
シフトの組みやすさの話も一つ。高校生は、定期試験の前後と学校行事で、入れない日がまとまって出ます。式場の繁忙期は、秋の連休と3月の土日です。試験期間とぶつかる時期は、人数を見込めません。
仮の式場で、18歳未満が3人、土日の両日に2人ずつ入れるとします。試験期間で全員が1週間抜けると、その週末の配膳が6人日分減ります。これを大人で埋めるなら、1日8時間で6人日 × 8時間 × 1,300円で、約6万円です。年に3回の試験期間があると、約18万円。ここは守るための費用というより、18歳未満に頼る体制そのものの費用です。
高校生を入れる価値は、安い時給だけにはありません。人手が不足する時間帯に、若い子が「ここで働いた」という経験を持って、のちに新郎新婦としてまた来てくれる可能性もあります。ただ、その効果は数字で確かめていません。ここでは費用の側だけを、前提つきで出しました。
まとめ
- 18歳未満には、22時から5時までの就労禁止と、1日8時間・週40時間の上限があります。36協定や1年単位の変形労働時間制は使えません
- 親の同意書は、労基法が求めるのは児童(13歳以上の許可を受けた場合)だけです。高校生に求めるのは式場の運用です
- 仮の式場では、入りが12時半より早い高校生は、予定どおりでも1日8時間を超える日が出ます。上がりは21時半に置くと、押しが60分でも22時に触れません
- 休憩が取れなかった日は、拘束がそのまま実働に戻ります。休憩の時間帯を進行表に入れて、取れたかどうかを記録します
- 押した日のために、大人の待機を事前に決めておきます。仮の前提で年4.4万円です。違反の側は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です
- 18歳になる日と年齢確認の書類の確認日を台帳で持ちます。切り替えの日は監督署か社労士に確認してください
