来館・成約

挙式時期が未定の二人には、日取りでなく決める順番を返す

問い合わせフォームの「挙式希望時期」の欄に、「未定」と書いてくる二人がいます。式場の返信担当は、この欄を見て、つい後回しにしがちです。日取りが決まっていない二人は、成約が遠い。そう読んで、優先順位を下げる。現場では、ごく自然な判断です。

僕は、この読み方は半分しか合っていないと思っています。「未定」と書く二人は、日取りを決めていないのではなく、日取りを決める順番が分からないことが多いからです。分からないまま式場に問い合わせてきた、という点では、むしろ動き出しの早い二人です。

この記事では、時期未定の問い合わせに対して、最初の返信で何を返すかを考えます。結論から書くと、日取りを聞き返すのではなく、「何を先に決めると日取りが決まるか」の順番を返すほうが、来館につながりやすいはずです。

先に断っておくと、この記事の数字は出典のある統計ではありません。時期未定の問い合わせが全国で何割あるか、返信の内容で来館率がどれだけ変わるか、僕は調べきれていません。数字は全部、僕が置いた前提です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

「未定」は、決めていないのではなく、決め方を知らない

時期未定と書く二人の頭の中を、少し分けてみます。

一つ目は、本当に何も決まっていない二人です。入籍の時期も、挙式をするかどうかも、まだ話し合っていない。式場を見に行く前の、情報集めの段階です。

二つ目は、決める条件が他にある二人です。たとえば、親族の都合を聞いてから、仕事の繁忙期が終わってから、ボーナスが出てから、という形です。日取りは条件の結果として決まるので、今は書けません。

三つ目は、決め方が分からない二人です。大安の土日がいいのか、平日でもいいのか、季節で値段が変わるのか。何を先に決めればいいかが見えていないので、フォームの欄には「未定」としか書けません。

この三つは、見た目は同じ「未定」です。けれど、最初の返信で渡すべきものは違います。一つ目には情報を、二つ目には条件の整理を、三つ目には順番を渡す必要があります。

ここで、やってはいけない返信があります。「ご希望の挙式時期が決まりましたら、お知らせください」という返信です。これは三つ全部に対して、何も渡していません。二人にとっては、「決まったら連絡して」と言われただけで、次の一歩が見えない。連絡が止まるのは、二人が冷めたからではなく、次にやることが分からないからです。

日取りを聞き返す返信が、止まる理由

時期未定の二人に、返信で「第一希望と第二希望の日程を教えてください」と聞き返す式場があります。空き状況を調べるために、聞くこと自体は正しい。ただ、この聞き方は、二人の側からは宿題に見えます。

宿題は、答えを持っていない二人にとっては重い。答えるためには、親や友人に聞いて、仕事の予定を見て、二人で話し合う必要があります。その作業は、式場を見に行く前にやることではないと、二人は感じています。だから、返信が来ない。

もう一つ、聞き返すと、式場が「日取りが決まるまで動けない」という態度に見えます。二人は、式場に相談したいのであって、式場から質問されたいわけではありません。

聞き返しが悪いのではありません。聞き方の順番が逆なのです。日取りを聞く前に、日取りを決めるための材料を、式場から先に渡します。

最初の返信に入れるもの

時期未定の二人への最初の返信には、次の3つを入れるといいと思います。

1つ目は、日取りが決まる順番です。たとえば、「多くの二人は、①誰を呼ぶかの大まかな人数、②季節の好み、③平日か土日か、の順に絞っていくと、日取りが決まりやすいです」と、式場側の経験として書きます。この順番は、会場によって違っていい。大事なのは、二人に次の一歩が見えることです。

2つ目は、日取りが決まる前でも来館できる、と明言することです。「日程が決まっていなくても、見学は可能です」の一行は、意外と書かれていません。二人は、日取りが決まっていないと見学できないのではないかと、遠慮していることがあります。

3つ目は、見学で決められること、決められないことの線引きです。「見学の場で、日取りまで決める必要はありません。会場の雰囲気と、季節ごとの違いを見ていただくのが目的です」と書く。決めなくていい、と伝えるだけで、来館の心理的なハードルは下がります。

この3つは、どれも二人に何かを求めていません。順番を渡し、来館の入口を開け、決めなくていい範囲を伝えている。返信が来るかどうかより先に、返信を読んだ二人が、一歩進める状態になっているかを見ます。

見学の予約を取る一言

3つを伝えたあと、最後に予約を取る一言を足します。ここで、日取りを聞かずに予約を取れるかどうかが分かれ目です。

おすすめは、「季節の違いを見られる日」を候補日として出すことです。たとえば、「春と秋の庭の違いをお見せできるので、今月の週末で、ご都合のよい日を選んでください」と書く。挙式日ではなく、見学日を聞く。二人が答えるのは、自分たちの予定だけで済みます。親や友人に聞く必要がありません。

見学日が決まれば、そこから先は通常の流れです。見学の場で、日取りを決める順番を実際に一緒に考えれば、時期未定の二人も、日取りの候補を持ち帰れます。

ここまで読んで、「そんなに丁寧に返信する時間はない」と思う方もいるはずです。その場合は、返信の文章をテンプレートにしておけば、手間は増えません。時期未定の二人向けの文面を1通作り、フォームの「未定」を見たら、それを使う。担当者の判断に任せず、式場の決まった型にしておくほうが、返信の質がそろいます。

試算:返信の型を変えると、何組が動くか

ここから先は、仮置きの数字で計算します。繰り返しますが、全部僕が置いた前提です。

式場の問い合わせが年に720件あるとします。そのうち、挙式時期が未定の問い合わせが2割だとすると、144件です。

日取りを聞き返す返信で、二人から返事が来る割合を4割とします。144件のうち、返事が来るのは約58件です。返事が来た二人のうち、来館に進む割合を5割とすると、約29組が来館します。来館した二人の成約率を3割とすると、約8.6組が成約します。

次に、日取りを聞かずに、決める順番と見学の入口を返した場合を考えます。返事が来る割合が6割に上がったとします。144件のうち、返事が来るのは約86件。来館に進む割合は同じ5割で、約43組。成約率も同じ3割で、約13組です。

差は、年に約4組です。1組の売上を仮に350万円とすると、約1,500万円になります。

この計算で見てほしいのは、返事が来る割合を4割から6割に上げただけで、来館率も成約率も変えていない、という点です。返信の型を変えたときの効果は、まず「返事が来るかどうか」の1段目に出る。そこから先の段階は、同じ式場の同じ接客なので、変わらない前提で置けます。

もちろん、実際には、返事が来る割合が4割から6割に上がるかどうかは、やってみないと分かりません。上がらないかもしれないし、もっと上がるかもしれない。この試算は、「返信の型を変えるだけで、年に数組の差が出うる」という規模感を見るためのものです。自分の会場の問い合わせ数と、時期未定の割合を入れて、計算し直してください。

試すときの測り方

返信の型を変えたら、1か月は同じ型で続けて、数字を比べます。見るのは次の3つです。

  • 時期未定の問い合わせのうち、返事が来た割合
  • 返事が来た二人のうち、見学の予約を取った割合
  • 見学した二人のうち、日取りの候補を持ち帰った割合

3つ目は、普通の集計には入っていないかもしれません。見学の最後に、日取りの候補を二人が持ち帰れたかどうかを、接客担当が一言メモに残す。それだけで、時期未定の二人が、見学を経て動いたかどうかが見えます。

もう一つ、変える前の数字を先に取っておくこと。型を変える前の1か月の、返事が来た割合を控えておきます。変える前の数字がないと、変えたあとに数字が上がったのか、季節の波なのかが分かりません。

向かない会場と、向かない二人

この返信の型が、全部の会場に合うわけではありません。

向かないのは、日取りが先に決まらないと、見学の意味が薄い会場です。たとえば、人気日が半年先まで埋まっていて、空き日が少ない会場。この場合は、時期未定の二人に、先に空き状況を見せたほうが、動きが早くなります。順番を渡すより、日取りの現実を見せる返信のほうが合います。

向かない二人もいます。日取りが決まらない理由が、式場を決めること自体への迷いにある二人です。この場合は、順番を渡しても、来館までは進みにくい。無理に押さず、情報をいつでも見られる状態にして、待つ。

見分け方は、フォームの自由記述欄です。「両家の予定を聞いてから」と書いてあれば二つ目、「何から決めればいいか分からない」と書いてあれば三つ目。書いていない二人には、順番を渡す返信が、いちばん外れが少ないです。

時期未定の二人を、優先順位の下に置かない

最後に、冒頭の話に戻ります。問い合わせの優先順位を、挙式希望時期の近さで決めている式場は多いと思います。挙式まで半年の二人は急ぎで、2年先の二人は急がない。この順番は、空き枠を埋める意味では合理的です。

ただ、時期未定の二人は、挙式が近いか遠いかを、本人もまだ知りません。決める順番が分かれば、半年後の挙式を選ぶ二人も、一定数いるはずです。優先順位の下に置いたまま返信が遅れると、順番を渡してくれた別の式場に、先に見学へ行かれます。

見学に来た二人は、そこで日取りの候補を得ます。最初に順番を渡してくれた式場は、二人の頭の中で、「決め方を教えてくれたところ」として残る。この記憶は、他の式場と比べるときの、小さくない差になります。

まとめ

  • 時期未定の問い合わせは、成約が遠い客ではなく、決める順番を知らない客であることが多い
  • 「日取りが決まったら連絡を」は何も渡していない。聞き返しは二人には宿題に見える
  • 最初の返信には、日取りが決まる順番、日取り未定でも見学できること、見学で決めなくていいことの3つを入れる
  • 予約は挙式日でなく、季節の違いを見られる見学日で取る
  • 仮置きの試算では、返事が来る割合が4割から6割に上がるだけで、年に約4組の差になる
  • 返信の型を変える前に、返事が来た割合を1か月分控えておく
  • 人気日が埋まっている会場や、式場選びそのものに迷っている二人には、型を変えて使う