国際結婚の二人の問い合わせには、挙式日より先に手続きの進み具合を聞く
問い合わせフォームの備考欄に「主人はアメリカ国籍です」「彼女は韓国から来ています」と書いてある。式場の人なら、一度は見たことがあると思います。
結論から書きます。夫婦の一方が外国籍の二人から問い合わせが来たら、希望の挙式日より先に「入籍はいつ頃の予定か」「必要な書類はどこまで進んでいるか」を聞いたほうがいいです。日取りの相談はそのあとです。理由は、日取りを先に決めてしまうと、書類の都合で日程がずれたときに、二人も式場も、仮押さえと見学の手間をまとめて失うからです。
この記事で扱うのは、手続きの中身ではありません。国ごとに必要な書類も、かかる期間も違います。僕はそこを断定できませんし、式場の人が答える場面でもありません。式場がやることは、二人の見通しを聞いて、その見通しに日程を合わせる順番をつくることです。
国際結婚は、思っているより少なくない
まず規模から見ます。国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集(表12-38)に、夫妻の国籍の組み合わせ別の婚姻割合が出ています。2022年は、夫婦とも日本人の組が約96.5%、夫が日本人で妻が外国籍の組が約2.2%、妻が日本人で夫が外国籍の組が約1.3%でした。足すと、夫婦の一方が外国籍の組は約3.5%です。
3.5%という数字は、そのまま問い合わせの3.5%にはなりません。式場に来る二人は、全国の婚姻の平均とは違う偏りを持っています。地域によっても違います。それでも「100組に3〜4組はこの形」という目安は、頭に置いておく価値があります。
仮の計算をします。数字は全部、僕が置いた前提です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。
- 年間の新規問い合わせが1,200組
- そのうち国際結婚の二人の割合が、統計と同じ3.5%
- 見学に進む割合は全体と同じ
この前提だと、年間で約42組です。月にならすと3〜4組になります。月に3〜4組という数字は、毎月どこかで必ず来る数です。かといって、専用の窓口や専任の担当者をつくるほど多くはありません。だから、来たときの聞く順番だけを決めておくのがちょうどいい、というのが僕の考えです。
日取りを先に聞くと、何が起きるか
普通の問い合わせの流れは、希望の時期を聞く、空き日を出す、見学を入れる、仮押さえをする、の順です。国際結婚の二人にこの流れをそのまま当てると、止まりやすい場所があります。
書類の進み具合で、入籍の時期が動くことがあるからです。入籍が動けば、挙式を入籍の前にするのか後にするのかも動きます。海外から家族を呼ぶ二人なら、渡航の準備もこの日程にぶら下がります。
つまり、挙式日は二人の中で決まっているように見えて、実は一番動きやすい項目の一つです。そこを最初に固定すると、次の連鎖が起きます。
- 人気日を仮押さえしたのに、二人の都合で外れる
- 外れた日を、別の組に出せたはずの期間が空く
- 二人は「式場に迷惑をかけた」と感じて、連絡が遠くなる
3つ目が、一番大きいと僕は見ています。手続きが思うように進まない二人は、ただでさえ気持ちに余裕がありません。そこに式場への申し訳なさが乗ると、予約のキャンセルや連絡の途絶えにつながります。式場側の損は、枠の空きだけではありません。
先に聞く3つのこと
では、何を聞くか。僕なら次の3つを、この順番で聞きます。
- 入籍の予定は決まっているか(済み、日付が決まっている、これから)
- 必要な書類の手配は、どこまで進んでいるか(二人の言葉でよい)
- 挙式の日取りは、手続きの進み具合に合わせて動かせる余地があるか
1つ目は、二人の現在地を知るための質問です。入籍済みなら、挙式の日取りは普通の組と同じ扱いでかまいません。
2つ目は、書類の名前や必要な通数を式場が把握するための質問ではありません。「順調です」「まだ何を出せばいいか調べている段階です」という、二人の感触を聞くための質問です。式場が書類の中身に踏み込むと、間違った案内をしたときの責任が式場に残ります。「手続きは役所や大使館などで必ず確認してください」と書いて、案内は手続きの窓口に任せます。
3つ目が、日程の動かし方の話です。「動かせない日があるなら教えてください」と聞きます。家族の来日の日が決まっている、休暇が取れる週が決まっている、といった固定の条件は、ここで出てきます。
返信の文面は、聞く順番がそのまま構成になる
問い合わせへの返信に、この順番を入れてみます。例として、文面の骨組みだけ書きます。
お問い合わせありがとうございます。日程のご相談の前に、2点だけ教えてください。 入籍のご予定は、すでに決まっていますか。 手続きの準備は、いまどのあたりでしょうか。 手続きの状況によって、日程の組み方が変わります。見通しが立っていない部分があっても大丈夫です。分かる範囲でお知らせください。
ポイントは3つあります。
日程の前に聞く理由を、一言で説明する。 理由が書いてあると、二人は「確認されている」ではなく「配慮されている」と受け取ります。
見通しが立っていなくてもよい、と書く。 国際結婚の二人は、「まだ決まっていません」と答えにくい立場にいることがあります。答えにくさを先に消しておきます。
質問は2つまでにする。 先に挙げた3つのうち、3つ目の「日程を動かせるか」は、見学のときに口頭で聞けば十分です。最初の返信で3つ聞くと、二人は書類の宿題を出された気分になります。
返信が遅れる二人への、待ち方
聞いたあとに、返事が来ない場合があります。手続きが忙しい時期には、よくあることだと思います。
ここで追客の間隔を普通の組と同じにすると、せっついているように見えます。僕なら、返信が来ない二人には、最初の質問から2週間ほど空けて、1通だけ送ります。内容は催促ではなく、「日程の空き状況は、いつでも出せます」という窓口の再提示です。
仮押さえは、二人から入籍と書類の見通しが返ってくるまで入れません。ここは式場側の決めごとにして、二人には「見通しが立ってから仮押さえに進みます」と先に伝えておきます。仮押さえを入れない理由が見えていれば、二人は冷たくされたとは感じません。
見学の日は、日取りの話から入らない
二人が見学に来たら、会場の説明のあとの打ち合わせでも、日取りは最後に回します。先に聞くのは、次の2点です。
- 海外から来るゲストは何人くらいで、どこから来るか
- 通訳が要る場面はあるか(挙式の進行、食事の説明、スピーチ)
ゲストの来る場所と人数は、日取りと予算の両方に効きます。遠くから来るゲストが多いなら、宿泊の手配や、前後の日程の余裕が要ります。式場の側から見れば、日取りを決めるために必要な情報が、ここで揃います。
通訳が要る場面を先に聞く意味は、見積もりにあります。通訳の手配や、案内の多言語の資料は、後から費用として出てくると二人にとって驚きになります。見学の段階で「ここに費用がかかる可能性があります」と伝えておけば、契約のあとで揉めません。費用の額は、式場ごとの条件で決まるので、ここでは書きません。
公式サイトには、聞く順番を先に書いておく
問い合わせが来てから聞くのでは、二人はもう一度待つことになります。公式サイトの問い合わせフォームの備考欄の近くに、一文を置いておく手もあります。
例として「国籍の違う二人のご相談も受けています。入籍の予定や手続きの状況が決まっていなくても、そのままお書きください」。たった一文ですが、これを読んだ二人は、問い合わせる前の不安が一つ減ります。
この一文が効く理由は、国際結婚の二人が「受けてもらえるのか」を最初に気にするからです。断られるかもしれないと思って問い合わせを諦める二人は、式場側には見えません。見えないところで抜けている二人を拾えるのが、事前に書いておく一文の役目です。
書くときの注意は2つです。「国際結婚専用プランあり」のような言い方にしないこと。専用でないものを専用と書くと、受け入れの実態と合わなくなります。もう1つは、書類の手続きの案内を式場のサイトに載せないこと。制度は変わりますし、間違った情報が残ると、式場の責任になります。
入籍の前か後かで、返信の中身が変わる
最初の質問への答えは、おおむね3つに分かれます。それぞれで、次の一手が違います。
- 入籍済み:普通の組と同じ流れでよい。ゲストの来る場所だけ早めに聞く
- 入籍の日が決まっている:その日を基準に、挙式をその前にするか後にするかを二人に聞く。式場が勧める必要はない
- 入籍はこれから:仮押さえは入れず、空き状況の目安だけ伝える。見学は先に進めてよい
見学を止める必要はありません。会場を見て気持ちが固まることもありますし、見学の段階で二人が式場に信頼を持てば、書類が整ったあとに戻ってきてくれます。止めるのは、仮押さえだけです。
これは「特別扱い」ではなく、聞く順番の違い
国際結婚の二人に専用の窓口をつくる、という話ではありません。専用にするほどの件数ではないことは、最初の計算で見ました。
違うのは、聞く順番だけです。普通の組は「日取り、見学、仮押さえ」の順で、国際結婚の二人は「現在地、日取り、見学、仮押さえ」の順になります。先頭に1つ足すだけです。
この1つを足しておくと、仮押さえの外れが減ります。外れた日を、次の組に出せるようになります。何より、二人が「ここの式場は、うちの事情を先に聞いてくれた」と感じます。二人は何軒も見て比べているので、問い合わせの返信の1通目で受ける印象は、思っている以上に残ります。
最後に注意点を1つ。先に書いたとおり、この記事の数字は、割合以外は僕の置いた前提です。国籍の組み合わせで、手続きにかかる期間は大きく違います。式場が期間の見込みを口にするのは避けて、二人から聞く側に徹してください。
まとめ
- 夫婦の一方が外国籍の組は、2022年の婚姻で約3.5%(国立社会保障・人口問題研究所の統計表)。仮に年間1,200組の問い合わせなら、約42組、月3〜4組の想定
- 件数は専用窓口をつくるほどではない。毎月どこかで来るので、聞く順番だけ決めておく
- 日取りを先に固定すると、書類の都合で外れたときに、仮押さえと見学がまとめて無駄になる
- 最初に聞くのは、入籍の予定と、手続きの進み具合の感触。書類の中身には式場が踏み込まない
- 返信は質問を2つまでにして、「見通しが立っていなくてもよい」と書く
- 返信が来ない二人には、2週間ほど空けて1通、窓口の再提示だけ送る
- 仮押さえは、見通しが返ってきてから。理由は先に二人へ伝えておく
- 見学では、日取りの前にゲストの来る場所・人数と、通訳が要る場面を聞く
