来館・成約

式場の見学案内には、最後の曲がり角と入口の写真を添える

式場の見学案内メールには、住所と地図のリンクと駐車場の台数が書いてあります。それでも、初めて来る二人が入口を見つけられず、敷地の外をぐるりと一周してしまうことがあります。

結論から書きます。見学の案内には、駅や駐車場から入口までの最後の100mについて、一言と写真を足したほうがいいです。地図アプリは建物の場所までは連れてきてくれますが、どこから入ればいいかは教えてくれません。そこで迷った数分は、見学の時間から引かれ、二人の最初の印象からも引かれます。

この記事の数字は、出典のある統計ではありません。入口で迷う二人が何割いるかを示す調査を、僕は見つけられていません。以下の数字は全部、僕が置いた前提です。自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。

地図アプリが連れてくる場所と、入口の場所は違う

地図アプリのピンは、多くの場合、敷地の中心か、登記上の住所の位置に立っています。会場が大きいほど、ピンと入口は離れます。

たとえば、ホテル併設の会場なら、ピンはホテルの正面玄関に立っています。ところが見学の集合場所は、裏手のブライダルサロンです。二人はホテルの玄関に着いて、フロントで聞いて、サロンの場所を教わる、という遠回りをします。

敷地が広い一軒家型の会場も同じです。ピンは敷地のまんなかに立っていて、車で入る門は道路の反対側にある、ということがよくあります。駐車場の入口が、会場の入口と別の道に面している会場もあります。

運営している側は、毎日その入口を使っています。だから、迷うという状態が想像しにくくなります。看板が見えているし、スタッフの出入りが見えるからです。初めて来る二人には、そのどれも見えていません。

迷った数分で、何が削られるか

入口で迷って、予約の時刻に数分遅れて着いたとします。二人が失うものは、時間だけではありません。

まず、気持ちです。遅れたことを謝る二人は、着席した時点で少し縮こまっています。迷ったのは会場側の案内が足りなかったせいなのに、謝るのは二人のほうです。この順番は、よくありません。

次に、見学の時間です。1組あたりの枠が固定されている会場では、遅れた分は、見学のどこかが削られます。削られるのは、たいてい最後の、チャペルや庭を見せる部分か、見積もりの説明です。成約に近い部分から短くなります。

三つめは、次の組への連鎖です。前の組が遅れると、次の組を待たせることになります。ここは、前の見学が押して二人を待たせる場面として、別の記事で扱いました。この記事では、押す原因を一つ減らす話に絞ります。

月60組で置く、モデル計算

ここから先は、全部仮置きの数字です。

月に60組の見学があるとします。そのうち、入口か駐車場で迷って、見学の開始が遅れる組が15%いると置きます。9組です。

迷った組は、見学のどこかが短くなる。その結果、成約率が、迷わなかった組より8ポイント低くなると置きます。成約1組あたりの粗利は120万円と置きます。

計算すると、9組 × 8ポイント = 0.72組、つまり月に約0.7組の成約が減ります。粗利にすると、0.72 × 120万円 = 約86万円です。

差が半分の4ポイントなら、約43万円。迷う組の割合が8%なら、約46万円です。差が12ポイントで割合が15%なら、約130万円になります。

この数字が正しいと言いたいわけではありません。言いたいのは、構造です。入口で迷う組が一定数いる会場では、案内メールに一枚の写真を足すだけで、月に数十万円の幅で動く可能性があります。足すのに必要なのは、写真を撮る30分と、メールの文面を直す30分です。

そして、迷う組の割合が0%の会場では、この計算は意味を持ちません。自分の会場がどちらなのかは、後ろの節で確かめる方法を書きます。

案内に足す内容は、3つに絞る

最後の100mについて、案内に足すものを、書きたくなるぶんだけ書くと長くなります。読まれなくなるので、絞ります。

一つめは、入口の写真です。会場の外観ではなく、二人が実際に入るドアの写真を一枚。ドアの前に立って、二人が最初に目にする角度で撮ります。外観の写真は、パンフレットに載っているきれいな角度のものではなく、地図アプリのストリートビューに近い、道路から見える姿にします。きれいな写真だと、実際に着いたときに同じ建物だと気づけないからです。

二つめは、最後の曲がり角の目印です。「コンビニの角を右」のように、道路から見える固有のものを一つ書きます。駅から歩く場合と、車で来る場合で、目印は別になります。両方書く必要はありません。見学予約の際に聞いた来館手段のほうだけを書きます。

三つめは、迷ったときの連絡先です。「着いたけれど入口が分からない」と言える電話番号を、メールの冒頭の近くに書きます。折り返しの電話をかける、という種類の番号ではなく、当日の受付に直接つながる番号です。

この3つ以外は、足さなくていいです。「お気をつけてお越しください」のような一文は、読まれても何も動きません。

来館手段は、予約のときに聞いておく

目印を車用と徒歩用に分けるには、来館手段を知っている必要があります。見学予約のフォームに、車、電車、タクシー、のどれで来るかを聞く欄を一つ足します。必須にしなくていいです。

車で来る二人には、駐車場の入口の写真が一番役に立ちます。会場の入口より、駐車場の入口で迷う組のほうが多い会場もあります。電車で来る二人には、改札を出てからの最初の一歩、たとえば東口か西口か、を書きます。

タクシーで来る二人は、運転手が場所を知っているかどうかが分かれ目です。会場名だけで通じない場合は、運転手に伝える一文、たとえば「○○交差点の○○ビルの隣」を添えておきます。この一文は、二人でなく運転手に向けて書くものです。

前日に送るか、予約確認のメールに入れるか

最後の100mの案内を、いつ送るかも決めます。選択肢は二つです。

予約が入った直後の確認メールに入れる方法は、一度で済みます。ただし、見学の日が2週間先なら、当日までにメールが埋もれます。二人が当日の朝にメールを探す手間を、増やしてしまいます。

見学の前日か当日の朝に、別に一通送る方法は、探す手間が要りません。ただし、送る作業が増えます。予約システムで自動送信にしていないと、現場の負担になります。

僕は、確認メールに一度入れて、前日にもう一度、写真と目印だけを短く送る形を勧めます。前日のメールは、3行で足ります。入口の写真、最後の曲がり角、当日の連絡先です。見学の日が近いほど読まれるので、一番大事な情報を前日に寄せます。

なお、見学の日が前日までに変わる可能性があるなら、前日のメールは日時の確認も兼ねることになります。日時を変更した二人に、次の候補日を出す段取りは、別の記事にあります。

足さなくていい会場の条件

すべての会場に必要なわけではありません。次の条件に当てはまる会場では、書かなくていいです。

  • 駅から徒歩で、迷う分岐が無い
  • 建物が道路に面していて、入口が外から見える
  • 駐車場の入口が、会場の入口と同じ道に面している
  • 過去の見学で、入口が分からないという連絡が、ほぼ無い

反対に、ホテル併設、複数の施設が入る敷地、一軒家型で敷地が広い、駐車場が別の道、のどれか一つでも当てはまる会場は、書いたほうがいいです。

判断に迷うなら、過去1か月の見学で、当日に電話がかかってきた件数を数えます。「着いたけれど」「入口が」の電話です。0件なら書かなくていいし、月に数件あるなら、電話をかけなかった組はその何倍かいる、と考えたほうが自然です。電話をかけるのは、迷った組のなかでも、かける気になった組だけです。

効果の測り方

効果は、成約率では測れません。成約は半年先に決まることもあるし、1か月分の見学では組数が少なすぎます。

見るのは、二つの数字です。

一つめは、開始時刻に遅れて着いた組の割合です。受付で、予約時刻と実際に着席した時刻を、1行記録します。案内を直す前の1か月と、直した後の1か月で並べます。前は15%、後は8%、のような形で見えるはずです。数字は例です。

二つめは、当日の「着いたけれど」の電話の件数です。これは、記録の手間がほとんどかかりません。電話を受けた人が、受付ノートに線を一本引くだけで足ります。

どちらも動かないなら、案内が読まれていないか、そもそも迷う組が少なかったということです。読まれていないなら、写真の位置をメールの冒頭へ移します。迷う組が少なかったのなら、この施策に手をかけるのは、そこで止めます。

写真の更新も、年に一度の仕事になる

入口の写真は、古くなります。近くのコンビニが閉店して目印が変わる、工事で通路が変わる、駐車場のラインが引き直される、といったことが起きます。

案内の写真が実際の入口と違っていると、無いよりも悪くなります。写真を信じて来た二人が、写真と違う景色に戸惑うからです。年に一度、見学の案内を読み直す日を決めて、写真と目印を点検します。季節が変わると、木の葉の量で見え方が変わる会場もあるので、秋と春の2回がちょうどいいかもしれません。

まとめ

  • 地図アプリのピンは、入口でなく敷地の中心や住所の位置に立つ。ホテル併設、広い敷地、駐車場が別の道の会場では、最後の100mで迷う二人が出る
  • 迷った数分は、二人の気持ちと見学時間を削り、削られるのは成約に近い後半になりやすい
  • 月60組、迷う組15%、成約率の差8ポイント、粗利120万円と置くと、月に約86万円の損になる。数字はすべて仮置きで、差が4ポイントなら約43万円
  • 案内に足すのは3つに絞る。実際に入るドアの写真、最後の曲がり角の目印、当日つながる連絡先
  • 来館手段を予約のときに聞いて、車と徒歩で目印を分ける。送るのは確認メールで一度、前日に写真と目印だけでもう一度
  • 駅から徒歩で分岐が無い、入口が外から見える会場では、書かなくていい。当日の「着いたけれど」の電話が月に数件あるなら書く
  • 効果は、開始時刻に遅れた組の割合と、当日の電話の件数で見る。入口の写真は年に2回点検する