式場見学で答えられない質問は、返事の期限を決めて持ち帰る
式場見学の途中で、「この日に入れる業者さんって、持ち込みはどこまで大丈夫ですか」と聞かれて、担当者の手が止まる。プランナーをしていれば、誰でも一度はあると思います。
そのとき返す言葉は、だいたい三つに分かれます。たぶん大丈夫だと思います、と曖昧に答える。分からないので後で連絡します、と言ってそのまま流れる。三つ目は、確認して何時までに返すかを決め、二人の前でメモを取る。
結論から書きます。答えられない質問が出たら、その場で期限を決めて持ち帰ります。曖昧な答えは、見学の場では助かった気がしても、契約のあとに「聞いていた話と違う」に変わりやすい。流れてしまった質問は、二人の頭の中で「聞いたのに返ってこなかった式場」という印象だけが残ります。
この記事の数字は、業界の平均ではなく、僕が置いた仮の数字です。見学が月に何組あるか、答えられない質問がどのくらい出るか、持ち帰りで成約率がどれだけ動くか。ここは自分の会場の数字に置き換えて読んでください。出典のある統計は使っていません。仕組みとして、こうなる、という整理です。
答えられない質問は、三つの種類に分かれる
持ち帰りの話に入る前に、「答えられない」の中身を分けておきます。同じ「分かりません」でも、原因が違えば後の動きが変わります。
一つ目は、担当者個人が知らないだけの質問です。持ち込みの規定の細かい条件、提携している業者の最新の料金、先月から変わった消防の運用など。社内の誰かに聞けば数分で分かります。見学の最中に確認できそうなら、席を立って聞きに行ってもいいくらいです。
二つ目は、会場として決まっていない質問です。「この日にキャンドルサービスの火を使えますか」「ペットを連れて入れる控室はありますか」のように、規定がなく、判断の前例も少ない。担当者が決められる話ではなく、支配人や責任者の判断が要ります。時間がかかる種類です。
三つ目は、いまの時点では誰にも答えられない質問です。来年の春の料金改定がどうなるか、近くに新しい競合が開業したら人気日の埋まり方が変わるか。これは持ち帰っても確定した答えは出ません。正直に「未定です」と伝え、いつ決まるのか、決まったら連絡するのかを約束する場面です。
この三つを見分けておくと、持ち帰ったあとの返信が変わります。一つ目は早く、二つ目は期限つきで、三つ目は「決まる時期」を返す。全部を同じ「確認します」で片づけると、二人には区別がつかず、返事が遅れた時点でどれも同じ不信になります。
曖昧に答えると、何が起きるか
「たぶん大丈夫だと思います」は、聞いた二人にとって、ほぼ「大丈夫です」と同じ重さで届きます。担当者は「たぶん」と言ったつもりでも、二人の耳には結論だけが残ります。
見学の場では、これで話は前に進みます。二人も安心するし、担当者も流れを止めずに済む。問題が出るのは契約のあとです。打ち合わせで規定を確認したら「持ち込みは不可」だった。そのとき二人は、見学のときに聞いた答えとの違いに気づきます。
この場面で起きやすいことは二つです。一つは、キャンセルの相談が出ること。契約後でも、約款に基づく費用の扱いを巡って話がこじれやすいのは、「聞いていた話と違う」が出たときです。もう一つは、キャンセルにならなくても、口コミに「見学のときの説明と違った」と書かれることです。星の数よりも、この一行のほうが、見学前の二人には効きます。
見学の場で言葉を濁したことのコストは、その場では見えません。数週間後に、別の形で払うことになります。
持ち帰りのときに決めておく三つのこと
持ち帰ると決めたら、その場で三つを口に出します。順番に説明します。
一つ目は、何を確認するのかを復唱すること
「持ち込みの業者さんについて、この日に入れる範囲を確認する、ということで合っていますか」と、質問を言い直します。聞き間違いを防ぐためでもありますが、狙いは別にあります。二人に、質問がちゃんと受け取られたと分かってもらうことです。
メモは二人の前で取ります。手元の紙に書く姿が見えるだけで、「流されない」という感覚が生まれます。机の下でスマートフォンに打つのではなく、見える位置で書く。小さな動作ですが、持ち帰りの約束が本物に見えるかどうかは、ここで決まります。
二つ目は、いつまでに返すかを日時で言うこと
「後ほどご連絡します」は、期限ではありません。「明日の18時までに、お電話かLINEでお返事します」のように、日と時間で言います。手段も聞きます。二人は、仕事中に電話に出られないことが多いからです。
期限は、自分が守れる範囲で置きます。三つの種類に当てはめるとこうなります。
- 担当者が知らないだけの質問は、その日のうちか翌日の夕方まで
- 会場として決まっていない質問は、判断者の予定を見て、3営業日から1週間以内
- 誰にも答えられない質問は、「決まる時期」を返す日。それも日付で置く
大事なのは、短い期限をむりに約束しないことです。守れない期限は、期限がないよりも悪い結果になります。二人は、約束の時刻を過ぎた時点から、その式場を「約束を守らない会場」として見はじめるからです。
三つ目は、期限までに答えが出なくても連絡することを伝えること
判断者がつかまらない、規定が決まらない。期限までに答えが出ない日は、必ず来ます。そのときのために、「もし期限までに確認が終わらなければ、その時点の状況だけでも必ずお伝えします」と、最初に言っておきます。
こう伝えておくと、答えが出ていなくても連絡する理由ができます。連絡しやすくなるのは二人ではなく、担当者のほうです。答えを持たないまま連絡するのは気が重く、後回しにしがちです。事前に「そのときも連絡します」と宣言してあれば、中間報告が約束の一部になります。
返信の中身は、答えと次の一歩を一緒に置く
期限までに返す連絡は、答えだけを送るのではなく、次の一歩を一緒に置きます。
たとえば持ち込みの質問なら、こうなります。
「ご質問いただいた持ち込み業者の件、確認が取れました。ご希望の日は、フォトとヘアメイクが持ち込み可、花は式場の提携業者のみ、という扱いになります。規定の該当ページを添付します。花の持ち込みをご希望の場合は、契約前でしたら、例外にできるかを改めて確認できますので、ご希望を教えてください」
答え、根拠、できない部分の代わりに何ができるか。この三つが入っていると、「できません」の答えでも、二人は次の判断に進めます。できない回答は、持ち帰ったからこそ、できる範囲まで確認して返せます。その場で曖昧に答えていたら出せなかった中身です。
逆に、期限どおりに返したのに、答えが一行だけで根拠がないと、持ち帰った意味が薄れます。「大丈夫でした」だけの返信は、見学のときの「たぶん大丈夫」と、二人の側から見て違いがありません。
仮の数字で、持ち帰りの損益を置いてみる
ここから、僕が置いた仮の数字で考えます。実際の会場の数字に置き換えて読んでください。
- 月の見学組数は60組
- そのうち、見学中に即答できない質問が出る組は3割、つまり18組
- 全体の成約率は30%(質問が出なかった42組が30%)
- 質問が出た18組のうち、その場で曖昧に答えた場合の成約率は20%、期限つきで持ち帰って返した場合は27%
この前提で計算すると、曖昧に答えた場合の月の成約は、質問が出なかった42組から12.6組、質問が出た18組から3.6組で、合わせて16.2組です。期限つきの持ち帰りに変えた場合は、18組から4.86組になるので、合計で17.46組。差は月に1.26組です。
この差は、成約率の差を7ポイントと置いたから出た数字です。7ポイントは仮の値で、根拠のある数字ではありません。そこで、差の置き方を変えてみます。差が4ポイントなら月に0.72組、10ポイントなら1.8組です。どの置き方でも、月に1組前後の動きになります。1組の挙式が持つ売上の大きさは会場ごとに違いますが、広告費をかけずに月に1組動くなら、検討する価値はあります。
もう一つ、仮に持ち帰りの期限を破った場合も考えます。期限を破ると、成約率は曖昧に答えた場合より下がりうる。たとえば、期限を守れなかった組の成約率を15%と置くと、5ポイント低くなります。期限を守れる割合が7割を切ると、持ち帰りの効果は消えて、逆に出る目が増えます。
要するに、持ち帰りは「期限を守れる仕組み」とセットで初めて効く打ち手です。期限を守る仕組みが先で、持ち帰りの方針はあとから付いてきます。
期限を守る仕組みは、見学の記録に一行足すだけでいい
期限を守る仕組みと言っても、大がかりなものは要りません。見学の記録のフォーマットに、一行足します。
- 持ち帰った質問
- 約束した期限(日と時刻)
- 返信の手段(電話かLINEか、メールか)
- 返信済みかどうか
これを、見学の当日に書くことにします。翌朝の朝礼で、持ち帰りの未返信分を読み上げる。それだけで、期限を過ぎる件数は減ります。個人の記憶に頼らず、チームの朝のルーティンに乗せることが大切です。
もう一つ、同じ質問が月に3回以上出るなら、それは持ち帰りではなく、資料やサイトに載せる話です。持ち帰りの記録は、よく聞かれる質問の在庫にもなります。月末に一度、記録を見返して、同じ質問を数えます。持ち込み、ペット、火気、駐車場、遠方の親族の宿泊。回数が多いものから、見学の冒頭の説明やFAQに回す。記録は、持ち帰りの数を減らすための材料にもなります。
持ち帰りが向かない場面もある
持ち帰りが、いつも最善とは限りません。向かない場面が二つあります。
一つ目は、確認すれば数分で分かることを、わざわざ持ち帰る場面です。同じ建物の別の部署に内線で聞けるなら、席を外して聞くほうが早い。二人も、その場で答えが出たほうが安心します。持ち帰りは、その場で確認できないときの手段であって、手間を避けるための手段ではありません。
二つ目は、その日のうちに決めたい二人です。来週には別の式場の見学が控えていて、今日の答えで決めようとしている。この場合、期限が1週間先だと、検討の土俵から外れる可能性があります。期限を短くできるかを、判断者に確認する価値があります。見学の途中で支配人に電話をかけて答えをもらう、という選択肢も出てきます。そのときも、二人の前で電話をかけます。後ろでこっそり動くより、見える形で動いたほうが、約束は信用されます。
どちらの場面でも、判断の軸は同じです。二人が次の判断をするときに、この答えが間に合うか。間に合うように動けるかどうかです。
まとめ
- 見学で答えられない質問は、担当者が知らないだけ、会場として未決、誰にも答えられない、の三種類に分けて扱う
- 曖昧な答えは、見学の場では助かっても、契約後の「聞いていた話と違う」に変わりやすい
- 持ち帰るときは、質問の復唱、日時での期限、期限までに答えが出なくても連絡する宣言、の三つを口に出す
- 返信は、答えと根拠と次の一歩を一緒に置く。「大丈夫でした」の一行にしない
- 仮の数字では、成約率の差の置き方を4〜10ポイントに振っても、月に1組前後の動き。ただし期限を守れる割合が低いと効果は消える
- 期限を守る仕組みは、見学の記録に4つの項目を足し、翌朝の朝礼で未返信を読み上げるだけでよい
- 同じ質問が月に3回以上出たら、持ち帰りではなく資料とサイトに載せる
