来館・成約

ほかの式場と何が違うのかと聞かれたら、違いを1つに絞って答える

見学の終盤に、二人から「ほかの式場と何が違うんですか」と聞かれることがあります。比較している最中の二人にとっては自然な質問で、答え方しだいで、その日の印象も、持ち帰ったあとの比べ方も変わります。

結論から言うと、違いは並べず、二人が譲れない条件に当たる1つに絞って答えます。式場の強みを3つ4つ並べると、誠実に聞こえる一方で、二人の手元には何も残りません。この記事では、そのための準備と答え方を順に整理します。

なお、この記事の中身は、現場の段取りと判断の考え方です。出典のある調査の数字は使っていません。試算は、すべて仮の前提を置いた計算で、数字はそのまま自社の実績ではありません。

「何が違うか」という質問の中身

この質問は、字面どおりに「違いを教えてください」と聞いているとは限りません。僕が現場の話から整理すると、大きく3種類に分かれます。

  • 判断材料がほしい。複数の式場を見て、差が分からなくなっている
  • 確認したい。気に入ってはいるが、ほかを見る前にもう一押しの理由がほしい
  • 断る前の儀礼。すでに気持ちは別の式場に傾いていて、一応聞いている

どれなのかは、声だけでは分かりません。ただ、3種類とも、二人が知りたいのは「この式場の自慢」ではなく「自分たちが選ぶ理由になるか」です。ここがずれると、特徴の一覧を話し終えても、手応えが残りません。

特徴を並べると、なぜ薄まるのか

よくある答えは、チャペルの広さ、料理の評判、立地、担当者の経験といった強みを順に挙げる形です。話している側は、全部本当のことを言っています。それでも薄まる理由が2つあります。

1つ目は、聞く側が覚えられないことです。人が一度に持ち帰れるのは、せいぜい1つか2つです。4つ聞いたうち、帰りの電車で残っているのは、最後に聞いたものか、一番分かりやすいものです。式場が一番言いたかったものとは限りません。

2つ目は、ほかの式場も同じことを言うことです。「料理に自信があります」「スタッフがあたたかいです」は、どの式場も言います。二人は2軒目、3軒目で同じ言葉を聞き、結局は価格か立地で決めることになります。

つまり、並べた強みの数は、そのまま「説得力の薄め方」になります。

違いを3つに仕分ける

答えを絞る前に、まず自分たちの「違い」を棚卸しします。会議室で1時間あれば足ります。出てきたものを、次の3つに分けます。

  • どこでもある:ほかの式場にも当たり前にあるもの。チャペルがある、料理が選べる、など
  • ほかではしない:やろうと思えばほかでもできるが、実際にはあまりやっていないもの。見学後の見積もりを当日に出す、打ち合わせの回数を契約前に明示する、など
  • ほかではできない:立地、建物、歴史、敷地の広さ、提携先など、真似しようとしても簡単にはできないもの

二人に答えるときに使えるのは、下の2つです。「どこでもある」は、違いとして話しても二人には届きません。ただ、無いと減点されるので、聞かれたら短く答えられるようにしておきます。

ここで大事なのは、「ほかではできない」だけが強いわけではないということです。立地や建物は、二人の優先順位に合わなければ、ただの特徴です。「ほかではしない」は、運用の工夫なので、二人の悩みに合わせて見せやすく、その場で見て確かめてもらいやすいのが利点です。

二人の優先順位に当てる

仕分けた「違い」は、二人の話に当ててはじめて使えます。当てるための材料は、見学の冒頭で聞いておく「譲れない条件」です。

見学の最初に、二人に「今日いちばん確かめたいことは何ですか」と1問聞いておきます(これに近い話は、別の記事で「見学の冒頭で譲れない1つを聞く」として整理しています)。そこで出た答えが、「何が違うか」と聞かれたときの答えの軸になります。

当て方は3ステップです。

  1. 冒頭で聞いた「譲れない条件」を思い出す。メモに書いておく
  2. 自分たちの「ほかではしない/ほかではできない」から、その条件に効くものを1つ選ぶ
  3. 「〇〇を大事にされたいとのことでしたので」と前置きして、1つだけ答える

たとえば、二人が「親族の移動の負担を減らしたい」と言っていたなら、答えは立地や送迎の話になります。「料理を重視している」なら、試食の組み立てや、アレルギー対応の運用です。同じ式場でも、二人が違えば答えは変わります。これが、並べない答え方の中身です。

答えの型

実際に口にする文は、短くします。型は次の3文です。

  • 1文目:二人の条件を言い直す
  • 2文目:式場の違いを1つ、事実で言う
  • 3文目:それが二人の条件で何を変えるかを言う

例を作ってみます。冒頭で「当日の天気が一番の不安」と聞いていたとします。

「天気を一番心配されていましたよね。うちは挙式と披露宴を屋内で完結する動線にしてあります。雨でも、ゲストが濡れずに移動できる点は、ほかとは違うところだと思っています」

これだけで、答えとしては十分です。もう少し説明したくなりますが、そこは我慢します。二人が続きを聞きたければ、質問が返ってきます。

言わないほうがいいこと

違いを話すとき、避けたい言い方があります。

  • ほかの式場の名前を出して下げる:比較の中身が正しくても、聞いている側には不信感が残ります。「ほかは〜ですが、うちは〜」という文型は、そもそも使いません
  • 見ていないものを断定する:ほかの式場の細かい運用は、外から見て分かる範囲が限られます。知らないものについては語りません
  • 強みを足して証明しようとする:1つの違いに説得力がないと感じて、2つ目、3つ目を足したくなります。足した分だけ、最初の1つが弱くなります
  • 「うちは丁寧です」のような言い方:確かめようがない言葉は、違いとして残りません。事実で言えるもの(回数、時間、見られるもの)に置き換えます

違いを事実で言えるようにしておく

選んだ「違い」が事実で言えないと、答えは弱くなります。そこで、1つの違いについて、次の3点を用意しておきます。

  • 見せられるもの:その場で見られる場所、見せられる写真、資料
  • 言い切れる数字:自社で数えられるもの。例:見学当日に見積もりを出す割合、打ち合わせの回数
  • 二人の何が変わるか:その違いで、二人の準備や当日がどう楽になるか

この3点が揃わない違いは、使いません。数字は自社で数えたものだけにします。数えていなければ、数字を言わず、見せられるものと、変わることで答えます。

前提つきの試算:1つに絞ると何が変わるか

効果は、仮の前提で試算してみます。数字はすべて仮定で、実績ではありません。

  • 月に「違いを聞かれる」見学が30組あるとします
  • 特徴を並べて答えると、そのうち成約につながるのが4組だとします
  • 1つに絞って答えると、成約が5組に増えるとします

この仮定だと、月に1組、成約が増える計算です。1組あたりの売上を仮に300万円とすると、月に300万円、年に3,600万円の差になります。

ただ、これはあくまで仮の話です。実際にどれだけ変わるかは、式場の客層や、聞かれる頻度によって大きく違います。月に30組という頻度が過大なら、差はもっと小さくなりますし、1組の差も出ないかもしれません。逆に、もともと絞って答えている式場なら、変わりません。

だからこの試算は、「やる価値があるか」を考えるときの目安として使い、効果は自社のデータで確かめます。

自社で確かめる方法

やり方は簡単です。見学の記録に、次の2行を足します。

  • 「違いを聞かれたか」(はい/いいえ)
  • 「何で答えたか」(1つに絞った/並べた/答えなかった)

そのうえで、月末に、答え方別の成約率を並べます。件数が少ない月は、数組の増減でぶれるので、2〜3か月分をまとめて見ます。

見るのは、成約率の差が、絞って答えた場合に出ているかどうかです。出ていなければ、準備した「違い」が二人の優先順位に当たっていないか、事実で言えていないか、のどちらかを疑います。

担当者ごとに答えがばらけるのを防ぐ

複数の担当者がいる式場では、「違い」の言い方が人によって変わります。ある人は立地、別の人は料理、というふうに。それ自体は悪くないのですが、事実がずれると困ります。

そこで、全員で次の2つだけ揃えます。

  • 「ほかではしない/ほかではできない」の一覧(棚卸しの結果)
  • 事実の言い方(数字、写真、見せる場所)

どの違いで答えるかは、二人の優先順位に合わせて各自が選びます。揃えるのは材料で、台詞は揃えません。

年に一度は見直す

「違い」は、時間がたつと違いではなくなります。ほかの式場が同じことを始めたり、自分たちの運用が変わったりするからです。年に一度、棚卸しをやり直します。そのとき、「ほかではしない」に入れていたものが「どこでもある」に移っていないかを確かめます。

見直しのきっかけは、見学での二人の反応も使えます。同じ違いを何度も話しているのに、反応が薄くなってきたら、もう違いとして効いていない合図です。

まとめ

  • 「ほかと何が違うか」は、判断材料の要求、確認、断る前の儀礼の3つが混ざった質問。どれでも、二人が知りたいのは自分たちが選ぶ理由になるか
  • 特徴を並べると、覚えられず、ほかの式場の言葉とも重なって薄まる
  • 自社の違いは「どこでもある」「ほかではしない」「ほかではできない」に仕分け、二人に使うのは後ろの2つ
  • 見学の冒頭で聞いた譲れない条件に当たる違いを1つだけ選び、条件を言い直す、事実を言う、条件で何が変わるかを言う、の3文で答える
  • ほかの式場を下げる言い方、見ていないものの断定、確かめられない言葉は使わない
  • 違いは「見せられるもの」「言い切れる数字」「二人の何が変わるか」の3点が揃ったものだけ使う
  • 効果は仮の前提の試算でしか言えないので、「聞かれたか」「何で答えたか」を記録し、2〜3か月分で成約率を比べる
  • 棚卸しは年に一度やり直す