来館・成約

式場サイトの予約ボタンは、「フェア」でなく二人がすることで名づける

式場の公式サイトを開くと、画面の隅に目立つボタンがあります。「ブライダルフェア予約」「来館予約」「見学予約」。式場の側から見れば、どれも同じ意味です。ところが、これから式場を探し始めた二人にとっては、同じ意味ではありません。

僕の考えはこうです。予約ボタンの文言は、式場が使っている行事の名前ではなく、二人がその日にすることで書いたほうがいい。「ブライダルフェア予約」ではなく、「会場を見て、料理を食べる(約2時間)」のように書く。この記事では、なぜ名前だと押されにくいのか、どう書き直すのか、変えたあとにどう確かめるのかを整理します。数字は出典のあるものではなく、説明のために僕が置いた仮の前提です。

「フェア」は式場の言葉で、二人の言葉ではない

ブライダルフェアは、業界の内側ではごく普通の言葉です。試食があって、会場の見学があって、模擬挙式があって、最後に見積もりが出る。この一連の行事を、式場は「フェア」と呼んでいます。

一方、式場探しを始めたばかりの二人は、この言葉が何を指すのか分からないことがあります。僕はそう見ています。「フェア」と聞くと、展示即売会のような催しを想像するかもしれません。人が大勢いるのか、勧誘されるのか、予約したら断りにくいのか。ボタンを押す前に、こうした疑問が頭に浮かびます。

もうひとつあります。「予約」という言葉も重い。予約は、行くと決めた人が押すものです。まだ候補を比べている段階の二人は、「見るだけ」で押したい。ところがボタンは「予約」と言い切っていて、見るだけの人の居場所がありません。

つまり、ボタンの文言には2つの壁があります。何をするのか分からない壁と、決める前に押しにくい壁です。式場の言葉のままだと、この2つが同時に立ちます。

書き直すときの3つの型

直し方は、押したあとに起きることを、そのまま書くことです。

型1:二人がすることを動詞で書く

「ブライダルフェア予約」を、「会場を見て、料理を食べる」に変えます。動詞が2つ並ぶと、押したあとの時間が想像できます。ボタンは長くなりますが、スマホで2行に折れても読めれば十分です。

型2:所要時間を添える

「約2時間」と添えます。時間が分かると、予定を空けられるかどうかをその場で判断できます。所要時間の書き方については、別の記事で「幅と内訳」で書く案を整理しています。ここでは、ボタンの近くにも置くと迷いが減る、という点だけ押さえてください。

型3:決めなくていいことを一言添える

「見るだけでも大丈夫です」と補助の文を、ボタンの下に小さく置きます。ここで書くのは、式場が本当に守れる範囲だけです。たとえば、当日は契約を求めないと決めている式場なら書けます。契約を促す段取りがある式場なら、書いてはいけません。書いたことと違う接客をすれば、書かないより悪い結果になります。

全部を変えなくていい

予約ボタンは、サイトの中に何か所もあります。ヘッダー、ページの下の固定ボタン、フェアの詳細ページ、各ページの最後。全部を一度に書き換える必要はありません。

僕なら、最初は1か所だけ変えます。いちばん押されている場所、つまりスマホで画面の下に固定されているボタンです。ここは二人が最初に迷う場所で、文言の差が出やすい。ほかの場所は、結果を見てから揃えます。

もうひとつ。フェアという言葉そのものは、消さなくていいです。詳細ページの見出しに「ブライダルフェア」と書いてあれば、検索で来た二人は見つけられます。直すのは、押す瞬間のボタンの文言だけです。

変えたあとは、差が出るまで待つ

文言を変えたら、押された回数が増えたかを見たくなります。ここで落とし穴があります。サイトへの訪問数が少ない式場では、数週間見ても、増えたのか偶然なのか分かりません。

仮の数字で確かめます。予約ボタンの押される割合が、いまは5%だとします。

import math

p = 0.05
for visits in (400, 1200, 4000):
    se = math.sqrt(p * (1 - p) / visits)
    print(visits, round(visits * p), round(1.96 * se * 100, 2))

結果を整理すると、次のようになります。

  • 月の訪問が400なら、押されるのは20回前後。偶然のぶれは前後2.1ポイント程度(5%が3%にも7%にも見える)
  • 月の訪問が1,200なら、押されるのは60回前後。ぶれは前後1.2ポイント程度
  • 月の訪問が4,000なら、押されるのは200回前後。ぶれは前後0.7ポイント程度

押される割合が5%から7%に上がったとして、それを偶然ではないと言える目安は、1つの文言につき2,200訪問ほどです(一般的な統計の計算式による仮の目安です)。月の訪問が1,200の式場なら、2つの文言を並べて比べるだけで、4か月以上かかります。

だから、小さな式場では「並べて比べる」のをやめて、次のやり方にします。

  1. 変える前の4週間の「押された割合」を記録する
  2. 文言を変える
  3. 変えたあとの4週間の「押された割合」を記録する
  4. 差が±2ポイントに収まるなら「変化なし」と読む。収まらなければ、続ける

季節や広告の出し方で訪問の質が変わる月は、前後の比較がずれます。変更は広告を大きく動かさない週にしてください。

押される数より、来た二人の中身を見る

ボタンの文言を直すと、押される数は増えるかもしれません。それ自体はいい話ですが、僕は見る場所をもう1つ増やします。来館した二人のうち、当日に見積もりを持ち帰る割合と、契約に進む割合です。

文言をやさしくすると、見るだけの気持ちの二人が増えます。押された数は増えても、来館後に契約まで進む割合は下がるかもしれません。それが悪いわけではありません。見るだけの二人が3か月後に戻ってくるなら、それは次の契約の種です。ただ、集客と成約の数字を同時に見ておかないと、増えたのか薄まったのか分かりません。

仮に、月に40組が予約し、そのうち12組が契約するとします。成約率は30%です。文言を変えたあと、予約が50組に増え、契約が13組だったとします。成約率は26%に下がりましたが、契約の組数は1組増えています。この結果をどう読むかは、式場の接客の余力で決まります。10組増えた来館を、同じ品質で接客できているなら、増えたほうがいい。担当者が足りず、1組ごとの時間が短くなっているなら、増えた分は損かもしれません。

二人の段階で、書き分ける案

同じ式場でも、ボタンを押す二人の段階はそろっていません。僕は大きく3つに分けて考えます。

  1. まだ式場を比べ始めたばかりで、何をするのかも分からない二人
  2. 候補を数軒に絞っていて、日程と料理を確かめたい二人
  3. 資料請求や問い合わせを済ませ、あとは行く日を決めるだけの二人

1の二人には、「会場を見て、料理を食べる」のような、中身がそのまま分かる文言が合います。2の二人には、「試食つきの見学の空き日を見る」のように、日程を探している気持ちに寄せた文言が合います。3の二人には、「見学の日を決める」で足ります。

全部を同じボタンで済ませなくても、公式サイトの入口に近い場所は1向け、資料請求のお礼ページは3向け、というふうに場所ごとに書き分けられます。資料請求のお礼ページに「ブライダルフェア予約」と出すより、「資料の次は、会場を見てください」のほうが、次の一歩として自然です。

社内の言葉も、いっしょに揃える

もうひとつ見落としがちなのが、社内の呼び方です。サイトのボタンを「会場を見て、料理を食べる」に変えても、電話の受付が「フェアのご予約ですね」と答え、予約確認のメールの件名が「ブライダルフェアご予約完了」だと、二人は途中で別の言葉に出会います。

ボタン、予約完了のメール、リマインド、当日の受付の呼び方を、同じ言い回しにそろえておくと、押したあとの流れが一本につながります。全部を一気に直すのが大変なら、まずボタンと予約完了のメールの件名の2つだけで十分です。予約が入った二人が最初に読む文面は、ボタンの次にここだからです。

向かない式場の条件

この考え方が合わない式場もあります。

  • 見学の予約が埋まっていて、枠を増やせない式場。ボタンを押しやすくしても、受けきれません
  • 当日に契約を強く求める接客が前提の式場。「見るだけでも大丈夫」と書けないので、型3は使えません
  • すでに「予約」ボタンの押される割合が高く、問題が別にある式場。たとえば、予約フォームの入力で離脱している場合は、ボタンの文言を直しても効きません

どの場合も、先に調べるのはボタンを押したあとの流れです。ボタンの先の予約フォームやカレンダーで二人が止まっているなら、そちらを直すほうが先です。

書き直しの前に、自分の式場でやること

文言を考える前に、10分でできる確認があります。

  1. 公式サイトのスマホ表示を開き、予約に関するボタンが何か所あるか数える
  2. それぞれの文言が、式場の言葉か、二人がすることの言葉かを分類する
  3. 友人や家族など、ブライダル業界の外の人に「このボタンを押すと何が起きると思う?」と聞く

3つ目が、いちばん効きます。式場の中にいる人は、「フェア」が何かを知っているので、言葉の壁に気づけません。外の人が「えっと、イベントですか」「営業されそう」と答えたら、書き直す理由になります。

まとめ

  • 「ブライダルフェア予約」は式場の言葉で、探し始めた二人には、何をするのか分からず、決める前に押しにくい
  • ボタンは、二人がすることを動詞で書き、所要時間を添え、決めなくていいことを(守れる範囲で)一言添える
  • 書き直すのは、まずスマホで画面の下に固定されたボタン1か所。フェアという言葉は詳細ページの見出しに残す
  • 訪問が少ない式場は並べて比べず、変える前の4週間と変えたあとの4週間を記録して比べる。差が±2ポイントに収まれば「変化なし」と読む
  • 押された数だけでなく、来館後の契約の割合と、接客の余力を見る
  • 向かないのは、枠が埋まっている式場、当日に契約を強く求める式場、ボタンの先で離脱している式場