式場の見学後の追客は、帰り際に聞いた5段階で連絡を分ける
式場の見学を終えた二人に、追客のメールを送る。その文面が、どの二人にもほぼ同じになっていないでしょうか。「本日はありがとうございました。ご不明な点があればお知らせください」。丁寧ですが、見学で心が動いた二人にも、まだ迷っている二人にも、同じ文章が届きます。
僕の提案は、見学の帰り際に「今日の気持ちを5段階で教えてください」と一度だけ聞くことです。その数字で、追客の連絡の厚みと中身を分けます。点数を聞くのは、二人の本音を測るためではありません。連絡を分けるための仕分けの札として使います。
この記事では、点数を聞くことが向く式場と向かない式場の分かれ目、聞き方、点数ごとの連絡、追客の人手を前提つきで計算した結果を整理します。数字の出典はありません。説明のために僕が置いた仮の前提で、「どこの式場でもこうなる」という話ではないです。仕組みとして、こうなりうるという範囲で書きます。
全員に同じ連絡を送ると、どこで取りこぼすのか
見学後の追客が全員同じ文面になる式場は、珍しくないと僕は見ています。理由は単純で、見学の時点で二人の温度が記録に残っていないからです。担当者の頭の中には「あの二人は手応えがあった」「あの二人は表情が硬かった」という印象があります。ただ、その印象は予約管理の画面には載りません。連絡を送る段になると、記録に残っている情報、つまり氏名・日時・人数だけで文面を作ることになります。
全員に同じ連絡を送ると、取りこぼしが出る場所は二つあります。
- 手応えのあった二人に対して、連絡が薄い。当日の夜に「ここに決めたい」と思っていた二人に、定型文が届くと、熱が少し冷めます。迷いが小さいうちに次の一歩を示せれば進んだはずの二人です
- 迷っている二人に対して、迷いの中身に触れない。「ご不明な点があれば」と書いても、何が不明なのかを本人が言葉にできていないことが多いです。返事がないまま、他の式場の見学に進みます
どちらも、担当者が怠けているから起きるのではありません。見学の終わりに二人の状態を取る手段がないから起きます。
点数を聞くと、何が手に入るのか
帰り際に5段階で聞くと、手に入るものは三つあります。
- 仕分けの札:連絡の厚みを決める根拠になる
- 迷いの入口:点数の理由を一言聞けば、迷いの中身が分かる
- 変化の記録:同じ二人に2回目の見学で聞くと、動いた方向が分かる
ここで大事なのは、点数そのものの正確さを追わないことです。5段階の「4」が、人によって実際に何を意味するかは違います。控えめな二人の「3」が、言い切る二人の「5」と同じ温度ということもあります。点数を比べるのは「二人どうし」ではなく「同じ二人の前後」と「自分の式場の中での傾向」だけにします。
聞く条件:向く式場と、向かない式場
点数を聞くかどうかは、式場の性格ではなく、追客に割ける人手で決まります。判断の分かれ目を4つ挙げます。
1. 見学の組数に対して、追客に使える時間があるか
聞いても、点数ごとに連絡を変える時間がなければ、聞く意味がありません。後で計算しますが、月の見学が30組前後で、追客に毎月6時間ほど割けるなら、点数で分けたほうが時間の使い方に無理がありません。見学が月に100組を超えて、追客が自動配信中心になっているなら、手で分ける前に、まず自動配信の分岐を2〜3本に増やすほうが先です。
2. 見学の担当者と追客の担当者が同じか
点数を聞いた人と、連絡を送る人が別だと、点数が連絡に届きません。見学の担当者がその場で予約管理の画面に点数を入れる。この一手間が入らないなら、聞いても使われません。入力に30秒以上かかる仕組みなら、続きません。点数だけなら、予約ごとのメモ欄に「4」と打つだけで足ります。
3. 二人が聞かれて嫌な思いをしない場面か
帰り際に点数を聞くのは、営業の押しに見えることがあります。向かないのは、見学の後半で契約を勧めてしまった場面です。その直後に点数を聞くと、「高い点数を言わないと帰れない」空気になります。聞くのは、契約の話を何もしていない帰り際だけです。
4. 点数を「評価」ではなく「連絡の希望」として使えるか
担当者の成績に点数を結びつけた瞬間、点数は歪みます。高い点数が出るように聞き方が丸くなり、点数が仕分けの役に立たなくなります。点数は担当者の評価に使わない、と式場のなかで先に決めておきます。
4つのうち、2つ以上が当てはまらないなら、点数を聞くのは後回しにしてください。先に、見学メモの書式を揃えるほうが効きます。
聞き方:一度だけ、短く、理由は任意にする
聞き方のコツは三つです。
1. 見学の最後、玄関に向かう途中で一度だけ聞く
席に座っている最中ではなく、立って歩き出したところが自然です。例はこうです。
「今日はありがとうございました。最後に一つだけ、今日の気持ちを1から5で教えてもらえますか。5が『かなり前向き』、1が『今日は見てみただけ』です。連絡の仕方を、お二人に合わせて変えるために聞いています」
「連絡の仕方を変えるために聞いている」と、目的を言い切ります。目的を言わずに点数だけ聞くと、二人は採点されている気分になります。
2. 点数の選択肢に、断る余地を作る
1が「今日は見てみただけ」だと、低い点数を言うことが断りではなくなります。「1と言っても、ご連絡が減るだけで、嫌な連絡は増えません」と一言添えます。低い点数を出せる空気を作るほうが、点数が役に立ちます。
3. 理由は聞いてもいいが、答えなくていい形にする
「差し支えなければ、その点数の理由を一言だけ」と添えます。答えが返ってきたら、一言でメモに残します。答えが返ってこなくても、点数だけで仕分けはできます。理由を必須にすると、二人は点数を下げて答えを避けるようになります。
二人で別の点数になったとき
二人の点数が割れることがあります。「新婦は5、新郎は3」のような場面です。これは外れ値ではなく、一番役に立つ情報です。低いほうの点数を採用して、連絡の文面に「お二人で気になる点が違うかもしれないので」と書き、迷いを片方に寄せずに両方へ渡します。1人にしか聞けなかったときは、そのことをメモに書いておきます。
点数ごとの連絡:仕分けの札の使い方
点数を、3つの帯にまとめて連絡を変えます。5段階を5本の文面にすると、手が回りません。
4〜5:当日の夜までに、次の一歩を1つだけ示す
手応えのあった二人には、連絡を速く、中身を具体的にします。「ありがとうございました」で終わらせず、次に確かめることを1つだけ書きます。
- 日程の候補:「次は、ご両親と来られる日を押さえておきましょうか」
- 見積もりの話:「お二人の希望の人数で、概算を1枚作っておきます」
次の一歩を1つに絞るのがポイントです。選択肢を3つ並べると、決める作業が二人に戻ります。手応えのあった二人は、迷っていないのではなく、決める力が残っている状態です。その力を、連絡の中で使い切らせないようにします。
3:迷いの中身を聞く質問を1つだけ送る
真ん中の点数は、迷っている二人です。「ご不明な点があれば」ではなく、迷いの候補を2〜3個に絞った質問を送ります。
「見学の中で、まだ確かめたいことが残っているとしたら、次のどれに近いですか。①総額と人数 ②日程 ③料理や雰囲気 ④ほかの式場との比較」
選ぶだけで返信できる形にします。自由な文章での返事を求めると、書く負担が重くて、返事が止まります。選択肢に当てはまらない場合を考えて「どれでもなければ、そのまま『まだ分からない』でも大丈夫です」と添えます。
1〜2:連絡は減らして、情報が必要になったときの入口だけ残す
低い点数の二人に、追客を重ねても効きません。連絡は1通にとどめて、必要になったときの入口を渡します。
- 見学の後に二人が確認したくなりそうな資料のリンク
- 空き日程を見られるページ
- 希望があれば連絡をもらう、と一行
1〜2点の二人は、断ったわけではなく、今は急がない二人かもしれません。連絡を減らすのは、あきらめることではなく、次の連絡が来たときに嫌われない状態を残すことです。数か月後に、日程や季節の都合で再検討する二人に、また式場を思い出してもらえる状態を守ります。
追客の人手を計算する:前提を置いたモデル
点数で分けると、時間の使い方がどう変わるかを、仮の前提で計算します。出典のある数字ではなく、説明のためのモデルです。
前提
- 月の見学:30組
- 追客に使える時間:月6時間(360分)
- 点数の分布(仮):4〜5が8組、3が12組、1〜2が10組
全員に同じ連絡をする場合
360分を30組で割ると、1組あたり12分です。全員に同じ文面と時間をかけることになります。手応えのあった8組にも、迷いの中身を探る必要のある12組にも、同じ12分です。実際は、12分もかけずに定型文を送る式場が多いはずなので、時間が余っても使い道がありません。
点数で分ける場合(時間の割り当ては仮)
- 4〜5(8組):1組20分(個別の連絡と次の一歩の用意)→ 160分
- 3(12組):1組10分(質問を送り、返信を確認)→ 120分
- 1〜2(10組):1組3分(情報を1通送る)→ 30分
合計は310分で、360分の枠に収まります。余った50分は、3の帯で返信のあった二人への2回目の連絡に回せます。
同じ時間でも、手応えのあった二人に20分かける形になりました。分布を変えると結果は変わります。たとえば、4〜5が3組しかいない月なら、ここに時間をかける必要はなく、3の帯の質問を丁寧にする形に寄せます。この計算で分かるのは、時間を分けると使い道が見える、ということです。点数が実際に成約率を上げるかどうかは、この計算では分かりません。
点数の取り方で起きやすい失敗
失敗1:点数を成約率の予測に使いすぎる
「4以上は成約する」と決めつけると、見立てが外れたときに連絡を怠ります。点数は連絡の厚みを決める札であって、成約の予言ではありません。点数の帯ごとに、実際の成約が何組あったかを、自分の式場のなかで数えてください。最初の3か月は、点数と成約の関係を信じすぎない運用にします。
失敗2:見学のたびに聞いて、二人を疲れさせる
2回目、3回目の見学で、毎回同じ質問をすると、二人は「また聞かれる」と身構えます。2回目以降は、前回の点数を見せて「前回は3でしたが、今日はどうですか」と聞き方を変えます。点数が上がっていたら、何が変わったかを一言聞くだけで、次の連絡の材料になります。
失敗3:点数の記録が人ごとにばらばらになる
担当者ごとに、「4」と書く人、「4点」と書く人、「まあまあ」と書く人がいると、後で集計できません。書式を揃えます。予約管理のメモ欄の先頭に「点:4」と書く、といった一行の決まりで足ります。
失敗4:低い点数を、担当者が気にしすぎる
低い点数が出たときに、担当者が落ち込んだり、次の見学で聞くのをやめたりする。これでは点数が役に立たなくなります。低い点数が出た日は、「連絡を減らす仕分けができた日」と扱います。点数が低い二人を失った、のではなく、連絡の手間を3分に減らせた、と数えます。
始め方:最初の1か月でやること
いきなり全部の見学で始める必要はありません。次の順番で始めます。
- 1週目:見学の担当者全員に、聞き方の文面を共有する。誰が聞いても同じ言い方にする
- 1か月目:点数をメモ欄に残すだけにする。連絡はまだ変えない。点数が取れるかどうかだけ確かめる
- 2か月目:3つの帯で連絡の文面を作り、試す
- 3か月目:点数の帯ごとに、成約が何組あったかを数える。ここで初めて、点数が連絡の仕分けとして役に立ったかを見る
1か月目に連絡を変えないのは、点数が取れているかどうかと、連絡が効いたかどうかを、混ぜないためです。点数の記録が抜けている日が多いなら、連絡を変える前に、聞く場面を直します。
やめる条件を先に決めておく
3か月続けて、点数の帯ごとの成約に差が見えないなら、点数の聞き方か連絡の分け方のどちらかが外れています。そのときは、聞く場面を見直すか、点数をやめて見学メモの書式の改善に戻します。点数を取ることが目的になって、連絡が変わらないまま続くのが、いちばん手間に見合いません。
また、見学のあとに二人から「点数を聞かれるのは落ち着かない」という反応が複数あった場合も、やめどきです。連絡を分けるための手段なので、二人に負担をかけてまで続けるものではありません。
まとめ
- 見学後の追客が全員同じ文面になるのは、見学の終わりに二人の状態を取る手段がないから
- 帰り際に「今日の気持ちを5段階で」と一度だけ聞き、点数は連絡を分ける札として使う
- 聞くかどうかは、追客に割ける時間・点数を入れる担当者・聞く場面・評価に使わない約束の4つで決まる
- 4〜5は当日の夜までに次の一歩を1つ、3は迷いの質問を1つ、1〜2は連絡を減らして入口だけ残す
- 月30組・追客6時間という仮の前提では、点数で分けると手応えのあった二人に20分かけられる
- 最初の1か月は連絡を変えず、点数を取れるかだけ確かめる。3か月で成約の差が見えなければやめる
