式場の問い合わせが重なった日は、二人の期限が近い順に返す
問い合わせが一度に何件も届く日があります。週明けの朝、連休の翌日、媒体の掲載が切り替わった直後、SNSの投稿が見られた翌日。こういう日に、返信を届いた順に片づけている式場は多いと思います。公平ですし、迷わなくて済みますから。
僕の考えは、問い合わせが重なった日は、届いた順ではなく「二人が自分で言っている日付が近い順」に返したほうがいい、というものです。理由は単純で、期限の近い二人ほど、返信が遅れたときに他の式場へ流れる速さが違うからです。この記事では、何を期限とみなすか、どう並べるか、並べ替えが逆効果になるのはどんなときかを、判断の条件として整理します。
なお、出てくる件数や分数はすべて説明のために僕が置いた仮の前提で、調査から引いた数字ではありません。業界全体の傾向を言い切る記事でもありません。自社の問い合わせの中身に置き換えて使ってください。
届いた順は公平ですが、二人の事情は公平ではありません
届いた順に返すやり方は、式場側の都合で見ると筋が通っています。先に連絡をくれた二人を先に扱う。誰も文句は言いにくい。担当者も判断に迷いません。
ただ、二人の側から見ると事情が違います。同じ「問い合わせ」でも、中身の切迫度はまるで違うからです。
たとえば、同じ朝に届いた次の三件を考えてみます。
- A:「今週末、2軒目の見学を探しています。土日どちらか空いていますか」
- B:「来年の秋ごろに考えています。まず資料を送ってほしいです」
- C:「親族の顔合わせが再来週なので、その前に一度見ておきたいです」
届いた順で言えば、Bが一番早かったかもしれません。でも、返信が半日遅れて困るのはAとCです。Aは週末まで数日しかありません。返信が遅れれば、別の式場の枠に先に埋まります。Cも、再来週の顔合わせまでに日程を調整する時間が減っていきます。Bは半日遅れても、秋ごろの話は何も変わりません。
つまり、届いた順は「式場に連絡が来た順」でしかなくて、「二人が待てなくなる順」ではないんですよね。重ならない日はそれで困りません。重なった日にだけ、このずれが効いてきます。
何を「期限」とみなすか
並べ替えようとして最初につまずくのは、「何を基準にするか」です。難しく考えなくて大丈夫で、二人が文面の中で自分から言っている日付だけを使います。式場側で「この二人は本気度が高そう」と推測して順位をつけるのは、やめておいたほうがいいです。外れたときに、静かな二人を後回しにしてしまうからです。
使える手がかりは、おおむね次の四つです。
- 見学・来館の希望日が近い:「今週末」「来週の平日」のように、数日から2週間以内を指しているもの
- 家族や関係者との予定が先に決まっている:親族の顔合わせ、親の帰省、上司への報告など、二人が動かせない日付があるもの
- 他の式場の予定に触れている:「ほかにも見に行く」「明日、別の式場に行く」と書いてあるもの
- 日取りが近い:挙式希望日が半年以内など、決めるまでの時間が短いもの
1から3は「次の行動の日付」で、4は「最終的な日付」です。重なった日に並べ替えるなら、1から3を先に見ます。4は大事ですが、挙式が近いこと自体は、返信が数時間遅れて失われるものではないからです。挙式まで半年未満の二人には、準備の順番を伝える返信そのものを手厚くする話で、返す順番とは別の問題です。
どれにも当てはまらない問い合わせは、届いた順のままで構いません。全員を並べ替える必要はなくて、「先に返す人」を数人抜き出すだけです。
前提つきの計算:返信1件15分、8件が重なった朝
どれくらい効くのかを、仮の前提で計算してみます。
- 朝の時点で、返信待ちの問い合わせが8件ある
- 返信は1件あたり15分で、担当者は1人。つまり全部返すと2時間かかる
- 8件のうち3件は、数日から2週間以内の予定を二人が書いている(さきほどのAやCのような件)
- 3件がどの順番で届いていたかは、特にわからない(届いた順のどこに混じるかはランダム)
届いた順に返す場合、期限の近い3件が返信を受け取るまでの平均は、シミュレーションで約68分でした。8件全体の平均(67.5分)とほとんど同じです。当たり前ですよね。届いた順では、切迫度に関係なく全員が同じ待ち時間になります。
期限の近い3件を先に抜き出して返す場合は、1件目が15分、2件目が30分、3件目が45分で、平均30分です。期限の近い二人の待ち時間が、約68分から30分に縮まります。
一方、残りの5件はどうなるかというと、平均の待ち時間が少し延びます。先に3件を返す分、全体で15分×3=45分ぶんが後ろにずれるので、おおむね、平均で数十分ほどの遅れです。急ぎではない二人の返信が、数十分遅れても、失うものはほとんどありません。
全員の合計時間は変わりません。2時間は2時間のままです。変わるのは、誰がその2時間のどこに入るかだけです。ここがこの話のいちばん大事なところで、人を増やさず、システムも入れずに、順番だけで差がつきます。
ただし、この計算は前提次第です。「3件は急ぎ」と判断できること自体が前提なので、判断の材料になる日付が文面に書かれていない問い合わせが多いなら、効きは小さくなります。
並べ替えが逆効果になるとき
この考え方が合わない式場や場面もあります。
1. 問い合わせが重なる日がほとんどない
一日に数件しか届かない式場なら、届いた順でも待ち時間はほとんど変わりません。並べ替えの手間のほうが重くなります。重なる日があるとしても、年に数回なら、その日だけ使えば十分です。
2. 並べ替えの作業自体に時間がかかる
8件を読んで急ぎ度を判断するのに、30分かかってしまっては元も子もありません。見るのは件名と冒頭の数行だけ、日付の言葉を探すだけにします。1件10秒で拾える範囲に留めるのが条件です。自動で判定する仕組みを作る必要もありません。まず手で試せば十分です。
3. 「急ぎの人だけ優先する」が、社内で不公平に見える
届いた順なら、誰かに文句を言われても説明が簡単です。並べ替えをすると、「なぜあの人を先にしたのか」を説明する必要が出てきます。そのため、基準を事前に決めて、書いて共有しておくことが前提です。「二人が書いた日付が近い順」という基準は、客観的な基準なので、説明がしやすいはずです。
4. 急ぎの二人が、実は急いでいない
「今週末」と書いてあっても、実は様子見の二人かもしれません。外れることはあります。ただ、外れたときの損が小さいのが、この基準のいいところです。数十分早く返しても、式場が失うものは何もありません。一方、本当に急いでいる二人を見逃したときの損は大きい。損の大きさが非対称なので、多少外れても、急ぎ寄りに並べるほうが期待値は上です。
返す順番を決めたあと、返信の中身で気をつけること
順番を決めても、返信の中身が追いつかなければ意味がありません。急ぎの二人に返す文面は、通常より短く、具体的にします。
- 最初の一文で、二人が書いた日付に触れる:「今週末の見学をご希望とのことで、土曜と日曜の空き枠をお送りします」のように、相手の言葉をそのまま受けます
- 空き枠を、そのまま見せる:「ご希望の日時をお知らせください」と聞き返すと、もう1往復かかります。この往復が、期限の近い二人にとっては一番長い待ち時間です
- ここで出し切れない情報は、後ろに回す:料金の詳細や、会場の沿革は、見学が決まってからで間に合います
反対に、急ぎではない二人への返信は、いつもの手厚い内容で構いません。順番を後ろにずらした分、中身で丁寧に返すほうが、全体のバランスが取れます。
返信待ちの二人への「受け取りました」だけを先に送るか
もう一つ、現場で迷いやすい論点があります。後ろに回す二人に、「届いています。本日中にお返事します」とだけ先に送るべきかどうかです。
判断の分かれ目は、自動返信メールがすでにあるかどうかです。
- 自動返信がある:二人の側では「受け取られた」ことはすでにわかっています。担当者が手で「受け取りました」を足す必要はありません
- 自動返信がない、または問い合わせが電話・SNSのDMなど別の入口から来た:受け取りの一文を先に送る価値があります。何も返ってこない時間が、二人にとっていちばん不安な時間だからです
ただし、この一文を書くのに15分かかっては本末転倒です。定型を一つ用意して、日付と担当者名だけ入れて送れるようにします。受け取りの一文は、返信の順番を変えない範囲での補助です。急ぎの二人が先にいるのは変わりません。
重なった日を、あとから見直す
最後に、記録を一つだけ残すことをおすすめします。重なった日に、「何件届いて、何件を先に返して、何時間で全員に返し終えたか」です。数字は紙に書くだけで構いません。
これを数回続けると、次のことがわかってきます。
- 一日に何件を超えると、1人では2時間以内に返しきれなくなるか
- 急ぎの二人は、全体のうちどれくらいの割合か
- 急ぎの二人から見学予約に進んだ件数は、そうでない二人と比べて多いか少ないか
最後の項目は、数が少ないうちは結論を出せません。数件の記録で「急ぎのほうが成約しやすい」と言い切ると、外れます。数か月分たまるまでは、「記録しているだけ」の状態で十分です。この記事の内容は、記録がたまる前でも、順番を変えるだけで使えるようにしてあります。
まとめ
- 問い合わせが重なった日に、届いた順で返すと、期限の近い二人も、そうでない二人も、同じ長さだけ待たされます
- 並べ替えの基準は、二人が文面の中で自分から言っている日付だけにします。見学の希望日、家族の予定、他の式場の予定を先に見て、挙式の日取りは後にします
- 仮に8件が重なり、返信1件15分、そのうち3件が急ぎだとすると、急ぎの二人の待ち時間は、届いた順の約68分から約30分に縮まります。全体の所要時間は変わりません
- 並べ替えが効かないのは、重なる日が少ない式場、判断に時間がかかる運用、基準が共有されていない現場です。見るのは件名と冒頭だけ、1件10秒の範囲で行います
- 急ぎの二人への返信は、相手の日付に触れ、空き枠をそのまま見せます。聞き返す1往復が、いちばん長い待ち時間になります
- 順番を変えても、一日の合計時間は変わりません。変わるのは、誰が先に返事を受け取るかだけです
