式場見学が2組重なる日は、動線を逆回りにして他の組を見せない
土曜の11時に見学の予約が入っている二人が、10時50分に着きます。ところが、その前の10時に始まった組の案内が押していて、担当者はまだ戻ってきません。受付の人は「少々お待ちください」と言うだけで、二人はロビーの椅子で、他の組の笑い声を聞いています。
見学が重なる日は、式場にとっては忙しい良い日です。ただ、後から着いた二人にとっては、その式場の最初の印象が「待たされた」になりやすい日でもあります。僕の考えでは、重なった日の成約率は、案内の上手さよりも、重なったときの段取りを事前に決めてあるかどうかで分かれます。
待たせる問題は別の記事で扱っているので、ここでは二人が同じ会場にいる間の動線と見せ方に絞ります。重なりを許すか防ぐかの判断、先に案内する組の決め方、動線のずらし方、他の組に見せてはいけないものを整理します。出典のある数字は使っていません。
重なりが起きる仕組み
見学の予約は、土日の午前11時と午後1時前後に集まりやすいと、僕は見ています。二人の側に事情があるからです。平日は仕事があり、日曜の午後は他の用事を入れたくない。午前に1軒、午後に1軒と回る予定を立てれば、式場の予約枠は自然と同じ時間に寄ります。
式場の側にも、重なりを作る事情があります。予約枠が「1時間に1組」でも、前の組の案内が押せば次の組と重なります。フェア当日は、フェアの参加者と個別見学の二人が同時に来ます。電話で受けた予約とWebで入った予約が別々に管理されていて、同じ時間に入ってしまうこともあります。
つまり重なりは、予約の取り方を直せば減らせる部分と、どうしても残る部分があります。まず分けて考えます。減らせる部分は予約枠の設計で、残る部分は当日の段取りで受けます。この記事は主に後者の話です。
重なりを許すか、枠で防ぐか
最初の判断は、重なりを許す枠設計にするか、防ぐ枠設計にするかです。
防ぐ設計は、見学の枠を「90分に1組」のように長めに取ることです。重なりはほぼ起きません。そのかわり、土日の見学の総数が減ります。担当者が1日に案内できるのは、午前2組、午後2組のような数になります。繁忙期に問い合わせが断られる日が出ます。
許す設計は、「1時間に2組まで」のように、同じ時間に複数組を受ける枠です。受けられる総数は増えます。そのかわり、案内役が足りなくなれば、先に挙げた待たせる問題が出ます。
分かれ目は、案内できる担当者が同じ時間に何人いるかです。ここで大事なのは、重なりの許容数と担当者の数を揃えることです。担当者が2人いるなら、1時間に2組まで許してもいい。担当者が1人なら、2組目は「待たせるか、断るか」のどちらかになります。担当者1人で2組を受けているのに「重なっても何とかなる」と運用しているなら、それは設計ではなく、現場の頑張りに預けている状態です。
もうひとつ、見学の質の問題があります。同じ会場、同じチャペルを2組が同時に見ると、それぞれの二人が「他の組がいる」ことを気にします。写真を撮りにくい、質問しにくい、見積もりの話を聞かれたくない。会場が広ければ問題は小さく、小さな会場ほど大きくなります。会場が狭い式場は、重なりを許す枠を増やすより、枠の間隔を空けるほうが、成約率の面では安全だと、僕は考えています。
先に案内する組の決め方
重なったとき、どちらを先に案内するか。決め方は3つ考えられますが、僕は予約時刻の順を基本にするのがいいと思っています。
予約の時刻が早い組を先にする。これが基本です。理由は説明しやすいからです。「ご予約の順にご案内しています」と言えば、後の組も、納得しやすい。先に着いた組を先に案内する方法もありますが、予約時刻より30分早く来た二人が、予約どおりに来た二人より先に案内されると、予約どおりに来た二人が待たされます。守った側が損をするルールは、あとから揉めます。
2つ目の例外として、遠方から来た二人は、予約順の中で少しだけ優先してもいい場合があります。帰りの新幹線の時刻が決まっているなど、二人が自分から事情を話した場合です。ただし、これを現場の判断に任せると、毎回違う基準になります。「帰りの時刻を聞いて、30分以内に出る必要がある場合だけ」のように、事前に線を引いておきます。
3つ目は、媒体や紹介の種類で優先順位をつけないことです。成果報酬型の媒体から来た二人を先にする、公式サイトから来た二人を後にする、といった運用です。待つ側の二人から見ると、理由が分からないまま待たされることになります。しかも、予約の経路は二人には見えません。基準が見えないと、不信感だけが残ります。
待っている二人に、何をしてもらうか
案内が押して、後から着いた二人が待つことになったとき、待ち時間を空白にしないことが大事です。待ち時間は、ただ待たされる時間か、会場を知る時間のどちらかになります。
ひとつ目は、待つ場所です。受付の横の椅子でなく、フェアのパネルや実例の写真を見られる席にします。ただし、他の組の見積もりや打ち合わせの書類が見える場所は避けます。
ふたつ目は、待ち時間の長さを先に伝えることです。「あと5分ほどです」「あと15分ほどかかります」と、時間の目安を言います。待たされる側が不快に感じるのは、待つこと自体より、いつまでか分からないことのほうが大きいと、僕は思っています。目安が言えないなら、「前の組の案内が長引いていて、戻りの時刻を確認してきます」と、確認に行きます。
みっつ目は、待ち時間にできることを一つだけ渡すことです。ウェルカムドリンクを出す。会場の資料を渡す。アンケートの記入を先に済ませてもらう。アンケートを待ち時間に書いてもらうのは、効くと僕は見ています。案内のあとに書く時間が短くなり、書く量も減って、二人の疲れが減るからです。
見せてはいけないものもあります。他の組の名前や日程が書かれた来館ボード、打ち合わせ卓に置かれた見積書、予約台帳が映った画面です。待つ二人は、見ようとしなくても目に入ります。入ったら、今度は自分たちの情報も同じように見られると思います。
同じ空間にいる二人が気にすること
重なった日の二人が気にするのは、待ち時間よりも、隣に別の組がいることです。僕はそう見ています。チャペルで写真を撮るとき、後ろに別の二人が立っている。披露宴会場の説明を聞いているとき、隣の組の笑い声が入る。質問したいことがあっても、金額の話は人に聞かれたくない。
だから重なる日の案内は、広い会場なら同じ部屋で別々の説明、小さな会場なら同じ部屋に同時に入らない、という分け方になります。金額に触れる説明は、必ず個室か打ち合わせ席に移ってからにします。会場の中で「ご予算はどのくらいですか」と聞くと、近くにいる組にも聞こえます。聞かれた側は答えにくく、答えた金額は本音より低くなりがちです。見積もりの精度が落ちるので、成約後の話が食い違う原因にもなります。
写真撮影の許可も、重なる日は先に決めておきます。他の組が写り込むと、お互いに気まずくなります。撮影は「ご案内の後半に、お二人だけの時間を取ります」と伝えて、他の組のいない時間帯に回します。
動線をずらして、2組が鉢合わせしないようにする
担当者が2人いて、同時に2組を案内できるときは、動線をずらします。
簡単なのは、逆回りにすることです。A組はチャペルから、B組は披露宴会場から見る。10分ほどで入れ替えれば、同じ場所に2組が重なる時間は短くなります。ただし、最後に見積もりを出す打ち合わせの席が1つしかなければ、結局そこで重なります。打ち合わせの席の数が、同時に受けられる組数の上限だと考えます。
試食のある見学は、もっと制約が強くなります。厨房から料理が出るタイミングは、2組ぶんが同時に来ると、遅れます。試食の席を別の部屋に分けるか、時間を15分ずらすかを、枠を決める時点で考えます。当日に現場で調整すると、料理が冷めたり、待たされたりします。
後から着いた二人への最初の一言
待たせた二人に、最初に何と言うか。ここが一番、成約に近い場所です。
「お待たせして申し訳ありません」だけだと、謝るだけで終わります。僕が良いと思う形は、次の3つを順に言うことです。待たせたことへの謝罪、待たせた理由の短い説明、これからの所要時間。
たとえば、「お待たせしました。前の方の案内が少し長引いてしまいました。今日はお二人の時間を、最後まで取ってあります」のように言います。理由を言うときに、前の組の個人的な事情は話しません。「長引いた」という事実だけで足ります。
言ってはいけないのは、「今日は混んでいまして」です。混んでいることは、人気の証拠にもなります。ただ、待たされた側には「うちは数をさばかれる客のひとりだ」と聞こえることがあります。数ではなく、二人のための時間だと伝えるほうが、見学の質は保てます。
そして、遅れた分を、案内の短縮で取り返さないことです。10分待たせて、その10分を案内の10分短縮で埋めると、二人は待たされたうえに、見られるものも減ります。見学の所要時間は、約束したとおりに取ります。取れないなら、会場の説明を減らして、見積もりの打ち合わせは別の日に分けてもいい。二人が何を一番見たいかを、先に聞いておくと、削る場所が決められます。
この段取りが向かない式場
この記事の整理が合わない式場もあります。
1日の見学が1組か2組で、そもそも重なりが起きない式場には、要りません。重なりは、年間の来館のうち2割もなければ、まず予約台帳の整備を優先してください。
もうひとつは、会場がいくつも独立していて、組ごとに別の棟を使える式場です。この場合は、重なりが起きても、お互いに見えません。枠を増やして構いません。
逆に、小さな会場で、担当者が1人しかいない式場は、重なりを許さない設計が合います。受けられる数が減るのは痛いですが、待たされて印象を落とす二人を作るより、枠の間隔を空けて、一組に集中するほうが、成約率の面では堅いはずです。これは僕の仮説で、検証はしていません。自社の会場のデータで、重なった日とそうでない日の成約率を比べて、確かめてください。
まとめ
- 重なりは、予約の取り方で減らせる部分と、当日の段取りで受ける部分に分けて考える
- 重なりを許す組数は、案内できる担当者の人数に合わせる。担当者1人で2組を受けるのは、設計ではなく頑張りへの預け方
- 先に案内する組は、予約時刻の順を基本にする。経路や媒体で優先順位をつけない
- 待つ二人には、待ち時間の目安を先に伝え、アンケートの記入のように一つだけできることを渡す。他の組の名前や見積書が目に入る場所は避ける
- 動線は逆回りにずらす。ただし打ち合わせの席の数が、同時に受けられる組数の上限になる
- 最初の一言は、謝罪、理由の短い説明、これからの所要時間の順。遅れた分を案内の短縮で取り返さない
- 重なった日とそうでない日の成約率は、自社の予約台帳で比べられる。これが、この記事の整理が合うかどうかのいちばん確かな根拠になる
