来館・成約

1日3軒目の見学に来た二人には、見せる場所を絞って持ち帰る1枚を渡す

休日に式場を3軒回る二人がいます。午前に1軒目、昼食をはさんで2軒目、そして午後の遅い時間に、うちの式場が3軒目として入っている。予約表にそういう枠が並んでいる式場は多いはずです。

僕は、この3軒目の枠は、1軒目と同じ見学をしてはいけないと考えています。会場を全部見せるのをやめて、見せる場所を3つに絞り、帰りは「持ち帰る1枚」で締める。このほうが、二人の頭に式場が残ります。

この記事では、3軒目に着いた二人がどういう状態なのか、見せる場所をどう絞るか、1枚に何を書くか、効いたかどうかをどう確かめるかを整理します。先に断っておくと、この記事に出典のある数字はありません。調査の引用ではなく、仕組みと段取りの話です。数字が出てくる箇所は、すべて「仮に〜とすると」の想定です。

3軒目に着いた二人の状態

3軒目に来た二人は、朝から他の式場の説明を2回聞いています。どちらも、チャペルを見て、宴会場を見て、試食をして、見積もりをもらう流れだったと考えるのが自然です。式場の見学は、どこも似た順番で組まれているからです。

そうなると、二人の頭の中では、チャペルの印象が混ざります。どの式場の階段が広かったか、どこで料理の説明を受けたか、見積もりの総額がどの紙の数字だったか。夜に家に帰って、思い出そうとしても、つながらなくなります。

これは二人の集中力が足りないという話ではありません。同じ形の情報を短い間に何度も受け取れば、誰でも区別がつきにくくなります。式場の側からすれば、3軒目に当たった時点で、すでに「似た情報の3つ目」になっているということです。

もう一つ、時間の問題があります。午後の遅い枠だと、見学を始めた時点で、二人の予定の終わりが見えています。夕食の予約があったり、帰りの電車の時間が決まっていたりします。2時間かかる見学を、いつもの順番で最後まで案内しても、二人は後半を聞いていません。

僕がここで引っかかるのは、式場の側が「どの枠でも同じ見学」を出していることです。1軒目に来た二人と3軒目に来た二人では、受け取れる量が違います。同じ内容を同じ量で出すのは、親切に見えて、二人に必要な量を見ていません。

3軒目だと分かる手がかり

そもそも、3軒目だと式場の側が知らなければ、この話は始まりません。分かる場面は三つあります。

一つ目は予約の時点です。見学予約のフォームで、同じ日に他の式場も見るかを聞く欄を置きます。答えたくない人もいるので、必須にはしません。「今日は他にも回る予定がありますか」のように、任意で1問だけ聞きます。

二つ目は到着したときの会話です。受付で「今日はここが何軒目ですか」と聞けば、たいていは自然に答えてもらえます。聞き方は、探るのではなく、時間の配分を決めるためだと添えます。「今日はこのあと予定はありますか。時間に合わせて見る場所を決めます」と言えば、二人にとっても得になる質問になります。

三つ目は、来館の時刻そのものです。午後の遅い枠に来る二人は、3軒目の可能性が高いと見ておけます。ただし、これは推測です。思い込みで案内を変えず、受付の一言で確かめてから決めます。

この確認をしないまま案内を短くすると、1軒目として来た二人に「雑に扱われた」と感じさせます。だから、短くする前に必ず聞きます。

見せる場所を3つに絞る

3軒目と分かったら、見せる場所を3つに絞ります。いつもの案内が、挙式会場、披露宴会場、控室、写真の撮影場所、試食、見積もりまで含む長い順路だとすると、その中から3つだけ選びます。

選び方の基準は、二人が他の式場と見比べるときに、差が出る場所かどうかです。どの式場にもあるものを丁寧に見せても、差は伝わりません。二人が2軒目までで見ていない、うちの式場にしかないものを先に出します。

具体的には、予約のときに二人が書いてくれた希望と、受付での会話から決めます。たとえば、二人が「人数は少なめで、食事を大事にしたい」と書いていたなら、披露宴会場と、その会場で実際に出す料理を見せる。「親族との距離が近い式にしたい」と書いていたなら、座席の配置が分かる場所を見せる。基準は、二人が自分の言葉で書いた希望に答えられるかどうかです。

残りの場所は、見せないのではなく、後回しにします。「ほかの場所は、写真と動画をあとでお送りします」と先に伝えておけば、二人は見落としたという不安を持ちません。見せない場所の写真を、あとから送る前提にしておくことが大事です。

3つに絞る理由は、数字に根拠があるからではありません。1軒あたり、二人が覚えて帰れる場所の数には限りがあり、朝からの2軒でその枠はすでに使われているはずだ、という見立てです。2つでも4つでもかまいません。大切なのは、いつもの順路をそのまま回さないことです。

試食をどうするか

試食つきの見学の場合、3軒目の二人は、すでに昼食を食べています。2軒目で試食をしているなら、胃は満たされています。ここで通常の量を出すと、料理の印象が「もう食べられない」で終わってしまいます。

僕なら、3軒目の枠では、試食を一皿に絞るか、味見の量に切り替えるかを、見学の最初に二人へ聞きます。「今日は何軒目ですか」と同じ場面で、「お料理は、量を少なめにして、その分いろいろな皿を少しずつにもできます」と選んでもらいます。

ここでも、決めるのは二人です。式場の側が勝手に量を減らすと、手を抜いたと受け取られるおそれがあります。選択肢として出せば、二人は自分の体調に合わせて決められます。

仮に、試食1名分の原価が1,500円で、3軒目の二人だけ量を半分にしたとします。二人分で1,500円の差です。この差が大きな損になるかどうかは、後で試算します。先に言えるのは、削る金額より、食べ切れずに残された皿の印象のほうが、式場には痛いということです。

持ち帰る1枚の中身

見学の終わりに、紙を1枚渡します。パンフレットの束ではなく、1枚です。3軒目の二人は、すでに他の式場から資料をたくさん受け取っているはずだからです。

その1枚に書くのは、四つだけです。

  • 今日見た3か所と、そこで二人が言った感想(本人の言葉をそのまま書く)
  • 二人が書いた希望に、うちの式場がどう答えられるか(1〜2行)
  • 見せなかった場所の写真を、いつ、どの方法で送るか
  • 見積もりの総額と、その中に含まれる項目、含まれない項目

最初の項目が肝です。二人の感想を、二人の言葉で残します。夜に家で比べるとき、3つの式場の紙が並びます。その中で、自分たちの言葉が書いてある紙は、うちの1枚だけになります。

僕が避けたいのは、1枚が「式場の自慢」で埋まることです。受賞歴や設備の説明は、パンフレットにすでにあります。3軒目の二人に必要なのは、見たものを思い出す手がかりと、判断に要る数字です。

見積もりの総額は、必ず入れます。夜に比べるときに数字がなければ、比べられないからです。含まれない項目を一緒に書くのは、他の式場の見積もりと並べたときに、あとから「あれも別料金だった」と気づかれないようにするためです。

二人に先に見た2軒を聞く

見学の途中で、1回だけ質問を入れます。「今日見た2軒で、良かったところはどこですか」と聞きます。

この質問は、二人の本音を聞くためのものではありません。二人の中で、すでに決まっている基準を知るためです。前の2軒の良かった点が、うちの式場で見せている3つと違うなら、案内の順番を変える余地があります。

他の式場をほめられると、複雑な気持ちになる人もいるはずです。でも、ここでは聞くだけです。比べるのは二人で、式場の側が否定も反論もしない。この線を守れば、質問は失礼になりません。

聞いた内容は、持ち帰る1枚の最初の項目に反映します。「前の式場では階段の広さが良かったと言っていた二人に、当館の段差のない動線を見てもらった」という形で、二人の言葉とうちの特徴がつながります。

仮の試算

効果がどのくらいになりうるかを、仮の数字で確かめます。実際の式場の数字ではありません。

仮に、ある式場に月40組の「午後の遅い枠」の来館があり、そのうち3軒目として来た二人が半分の20組だとします。この20組の成約率が、いつもの案内で10%だったとします。成約は月2組です。

見学を絞って、持ち帰る1枚を渡すことで、この成約率が10%から15%に上がったとします。成約は月3組になり、1組増えます。この5ポイントという数字は、僕が実測したものではなく、計算を回すための置き方です。

では、必要な条件を逆算します。たとえば、1組の成約で得られる粗利を、仮に90万円とします。1枚を作るのと、写真を送る手間にかかる費用が月に合計3万円とすると、増えた1組の粗利90万円は、3万円の30倍です。月に1組増えれば足りる、ということです。逆に言えば、20組のうち1組も増えなければ、3万円の持ち出しになります。

python3 で確認した計算
成約率10%:20組 × 0.10 = 2.0組
成約率15%:20組 × 0.15 = 3.0組
差:1.0組 × 粗利90万円 = 90万円
手間と費用:月3万円

つまり、この施策の勝負は、月に20組の3軒目の二人のうち、成約が1組増えるかどうかです。5ポイントが大きすぎると感じるなら、2.5ポイントでも、20組なら増える成約は0.5組です。2か月で1組になります。それでも3万円の費用は回収できます。

この計算で一番大切なのは、成約が増えるかどうかではなく、「3軒目の二人が月に何組いるか」の数え方です。それを数えていない式場が、この施策を始めても、効いたかどうかを見分けられません。

効いたかどうかの測り方

測るために、まず予約の時点で「同じ日に他の式場も見るか」を聞いておきます。答えが「はい」の二人と、そうでない二人を、来館記録の段階で分けます。

分けたあとで、見るのは成約率だけです。ただし、件数が少ないうちは、月ごとの数字は大きく揺れます。20組の中の1組の違いは、5ポイントです。だから、1か月で判断せず、3か月分をまとめて比べます。

比べ方は二つあります。一つは、絞った案内に切り替える前の3か月と、後の3か月です。もう一つは、同じ時期に、担当者によって案内を絞る人と絞らない人がいるなら、その差です。ただし、担当者の違いは、接客の上手さの違いと混ざります。この比較は参考程度にとどめます。

数字のほかに、もう一つ見るものがあります。持ち帰る1枚を渡した二人が、再来館のときに、その紙を持ってくるかどうかです。紙を持ってくる二人が増えるなら、1枚が二人の手元に残っているということです。成約の数字より早く出る手がかりです。

この進め方が向かない場面

向かないのは、二人がそもそも1軒しか見ていない場合です。1軒目で来た二人に、見せる場所を絞ると、見学が薄いと感じられます。だから、最初の質問で「何軒目か」を必ず聞きます。

もう一つは、二人が「全部見たい」と言ったときです。絞るのは式場の都合ではなく、二人の受け取れる量に合わせるためです。二人が全部見たいと言うなら、全部を案内します。そのとき、持ち帰る1枚は、同じように渡します。

最後に、写真を後で送ると約束したなら、必ず約束の期日に送ります。約束を破ると、絞った見学が、ただの手抜きになります。これは見学を短くする施策の、一番の落とし穴だと考えています。

まとめ

  • 休日の午後遅くに来る二人は、3軒目の可能性がある。ただし推測なので、受付で「今日は何軒目ですか」と聞いてから案内を決める
  • 3軒目の二人には、朝からの2軒と同じ形の情報が重なっている。同じ順路を同じ量で回しても、後半は残らない
  • 見せる場所は3つに絞る。基準は、二人が自分の言葉で書いた希望に答えられる場所。見せない場所は、写真をあとで送ると先に伝える
  • 試食は、量を減らす選択肢を二人に出す。式場が黙って減らさない
  • 持ち帰る1枚には、二人の感想、希望への答え、写真を送る約束、見積もりの総額と含まれない項目を書く
  • 効果は、3軒目の二人を予約時点で分けて、3か月分の成約率で見る。仮の試算では、月20組のうち1組増えれば、月3万円の手間は回収できる