宴会場が1室の式場が人気日に3組目を入れるには、転換を80分以内に収める必要がある。披露宴が30分延びると、その上限は50分になる
人気日に問い合わせが重なると、「もう1組入れられないか」という話が現場から出ます。1日2組の会場なら、3組目の枠です。
ただ、3組目を入れられるかどうかは、需要があるかどうかより先に、時間が足りるかどうかで決まります。そして時間を決めているのは、転換の速さより、披露宴の長さのほうが大きいというのが、今日の話です。
結論を先に書きます。宴会場が1室で、宴会場を使える時間が600分の仮の式場では、披露宴が120分なら、3組を入れられる転換時間の上限は1回あたり80分です。披露宴が150分に延びると、上限は50分まで下がります。披露宴を30分延ばすと、転換に使える時間が30分削られる計算です。
出典のある統計に頼る記事ではありません。数字はすべて僕が置いた仮のもので、本文に前提を書きます。自分の会場の時間割と費用に置き換えて読んでください。
3組目の枠は、3つの時間の足し算で決まる
宴会場が1室の会場が1日に入れられる組数は、次の式で決まります。
組数 × (披露宴の長さ + 転換の長さ) ≦ 宴会場を使える時間
右辺の「使える時間」は、営業時間そのものではありません。朝一番に宴会場に入れる時刻と、夜に撤収を終えなければいけない時刻の間です。近隣への音や、スタッフの勤務時間、片付けの終わる時刻で決まっている会場が多いと思います。ここでは仮に、10時30分から20時30分までの600分を置きます。
左辺の「披露宴の長さ」は、開宴から閉宴までです。会場の標準プランで決まっていて、新郎新婦の希望で延びることもあります。
もうひとつの「転換の長さ」は、前の組の閉宴から、次の組の開宴までに使う時間です。ゲストの退出、片付け、清掃、セット替え、次の組のゲストの入場と着席が含まれます。
この式に、仮の数字を入れます。
- 使える時間は600分
- 披露宴は120分
- 転換は、いまの運用で90分と仮置き
2組なら、2×(120+90)=420分です。600分に収まり、180分の余裕があります。3組だと、3×(120+90)=630分で、30分足りません。つまり、いまの運用のままでは、3組目は時間の上で入りません。
転換の上限は、披露宴の長さで変わる
3組入れるための条件を、式を変形して出します。
転換の上限 = (使える時間 − 組数 × 披露宴の長さ) ÷ 組数
600分で3組なら、(600 − 3×披露宴) ÷ 3です。披露宴の長さを変えて並べると、次のようになります。
| 披露宴の長さ | 2組のときの転換の上限 | 3組のときの転換の上限 |
|---|---|---|
| 90分 | 210分 | 110分 |
| 105分 | 195分 | 95分 |
| 120分 | 180分 | 80分 |
| 135分 | 165分 | 65分 |
| 150分 | 150分 | 50分 |
見てほしいのは、3組のときの右の列です。披露宴が15分延びるごとに、転換の上限は15分ずつ下がります。披露宴を90分にできれば転換は110分まで使えますが、150分だと50分しか使えません。
現場の改善は、転換を速くする方向に目が行きがちです。片付けの手順を見直す、スタッフの人数を増やす、セット替えを簡素にする、といったことです。でも、転換を90分から80分に10分縮めるより、披露宴の長さを調整するほうが、同じ時間を作るのは簡単な場合があります。
たとえば、余興や中座の時間、ケーキ入刀から歓談に入るまでの間のように、組ごとに伸び縮みしやすい部分があります。標準の進行を120分と決めても、実際には130分、140分で終わる組が出ます。この「実際の長さ」を数えているかどうかが、3組目を検討するときの最初の確認になります。
実測の披露宴の長さを数える
確認の方法は単純です。過去1年の人気日の披露宴について、開宴時刻と閉宴時刻を拾って、長さの分布を作ります。
見るのは平均ではなく、長い側のばらつきです。転換の上限は、前の組が長引いたときに崩れます。120分の標準進行でも、3割の組が140分を超えるなら、その日の2組目の閉宴が20分後ろにずれて、3組目の開宴が遅れます。
仮に、標準が120分で、実測の長さが次の分布だったとします。これも僕が置いた仮の数字です。
- 120分以内に終わる組が5割
- 120〜135分が3割
- 135〜150分が2割
この会場が、すべての組が135分以内に終わる前提で3組を組むと、全体の2割の組では、後ろの組の開宴が最大15分遅れます。3組目の開宴が遅れると、閉宴が営業時間の終わりを超えます。つまり、枠を作るときは、標準の120分で組むのではなく、長い側に合わせた余裕を転換の時間に足しておく必要があります。
3組目の枠が埋まる量と、費用の分かれ目
次に、3組目の枠を作ると、どれだけの粗利が増えるのかを置きます。前提は次のとおりです。
- 人気日は年40日。3組目の枠をつくれるのは、この40日だけ
- 1組あたりの総額は300万円。粗利率は30%で、1組の粗利は90万円
- 3組目の枠は朝一番か夜の端の時間帯になる。希望する人は限られるので、20万円の割引を前提にして、粗利は70万円と仮置き
- 3組の日は、スタッフの追加配置、厨房の増員、清掃の外注などで、1日あたり8万円の追加費用がかかる。40日で320万円
まず、枠がどれだけ埋まるかを置いて、粗利を計算します。
| 3組目の枠の埋まり方 | 年の組数 | 粗利(割引後70万円) | 追加費用を引いた増分 |
|---|---|---|---|
| 40日のうち1割 | 4組 | 280万円 | −40万円 |
| 2割 | 8組 | 560万円 | 240万円 |
| 3割 | 12組 | 840万円 | 520万円 |
| 5割 | 20組 | 1,400万円 | 1,080万円 |
追加費用が320万円、1組の粗利が70万円なので、損益分岐は320÷70で約4.6組です。40日のうち約1割強が埋まれば、費用は回収できます。思ったより低い数字に見えると思います。
ただし、ここで止めてはいけません。4.6組という分岐は、3組目を入れても、既存の2組には何も起きないという前提です。次の節で、この前提を外します。
既存の2組に起きることを、費用に入れる
3組を入れるということは、既存の2組の動きも変わります。時間が詰まるからです。起きうることを、費用の側に入れて数えます。
- 前の組との間隔が短くなり、ゲストの待ち時間や、案内の慌ただしさが増える
- 進行を押さえるために、司会やスタッフから「そろそろお願いします」と声をかける場面が増える
- 厨房が3組分を同時に回し、料理の出しが遅れる
これらは、金額で見えにくい費用です。新郎新婦の満足度に影響して、その後の紹介や口コミ、再来館のなかに出てくるかもしれません。ここは出典のない領域なので、数字を断定せずに、分岐の側から書きます。
人気日40日の既存2組は、年80組です。この80組のうち何組が「3組になったことで契約をやめた、または後で不満を言った」場合に、3組目の増分が消えるかを、先ほどの表の3割(増分520万円)で数えます。
既存の1組の粗利は、割引なしで90万円です。増分520万円を消すには、520÷90で約5.8組です。80組のうち約7%に相当します。
つまり、3組目の枠で年12組を埋めても、既存の2組のうち5〜6組(7%)が離れると、増分は消えます。逆にいえば、7%を下回る影響で済むなら、3組目は黒字です。この7%という線は、3組目が埋まる量によって動きます。
- 3組目が年8組なら、増分は240万円。消える線は240÷90で約2.7組(80組の3.3%)
- 3組目が年20組なら、増分は1,080万円。消える線は1,080÷90で12組(80組の15%)
枠が少ししか埋まらないのに、既存の組への影響のリスクだけを抱えるのが、いちばん割に合わない形です。
3組目の前に、先に確かめること
ここまでの計算から、3組目の枠を作る前に確かめる順番は、次のようになると思います。
- 披露宴の長さの実測 過去1年の人気日の開宴・閉宴を拾い、長い側のばらつきまで見ます。標準の進行ではなく、実際の長さで転換の上限を出します。
- いまの転換にかかる時間 前の組の閉宴から次の組の開宴まで、実際に何分かかっているかを数えます。90分と思っていても、実測は100分を超えている会場もあります。
- 希望の有無 3組目の枠は、朝一番や夜の端になります。その時間帯を希望する組が、見学の段階でどれくらいいるかを、見学記録から数えます。年4.6組を下回る見込みなら、費用を回収できません。
- 追加費用の中身 1日8万円は仮の数字です。スタッフの勤務時間、厨房の人員、清掃の外注の単価を、自社の数字で置き換えます。
- 既存の組への影響の線 増分の額を既存1組の粗利で割ると、「何組離れたら消えるか」が出ます。この数が、現場の感覚で多すぎると思えるなら、枠を作る価値は薄いです。
この5つを全部数えてから、試しに人気日のうち数日だけ、3組目を入れてみる。運用は、その結果を見て広げるかどうか決めるのが現実的だと僕は考えています。
3組にしない選択と、枠を増やす別の道
3組目を入れる以外にも、人気日の売上を増やす方法はあります。時間の使い方を変える方法として、次のようなものが考えられます。
- 披露宴の標準進行を、120分から105分に短縮したプランを用意する。短縮プランは少人数や、二次会がある組に向く
- 午前の挙式と昼の披露宴を、会場の貸し出し(フォトウェディングや食事会)に切り替える。1組の枠を減らす代わりに、2つの枠を作る
- 宴会場を仕切って、2つに分けられるようにする。投資額が大きいので、本稿の計算とは別に、回収年数を置いて考える必要があります
どれも、本稿の枠組みで比較できます。「枠を増やすために何分作る必要があるか」「その分で何組増えるか」「追加の費用はいくらか」を、同じ表に並べるだけです。
まとめ
- 宴会場が1室の会場が1日に入れられる組数は、組数×(披露宴の長さ+転換の長さ)が、宴会場を使える時間に収まるかで決まる
- 仮の式場(600分)で3組を入れる転換の上限は、披露宴120分なら80分、150分なら50分。披露宴が30分延びると上限は30分下がる
- 転換を速くするより、披露宴の長い側の実測を数えるほうが、3組目の検討の最初の確認になる
- 3組目の枠が年4.6組以上埋まれば、仮の前提(追加費用320万円、割引後の粗利70万円)では費用を回収できる
- ただし既存の2組(年80組)が7%前後離れると、年12組を埋めた増分も消える。影響の線は、枠が埋まる量で動く
- 枠を作る前に、披露宴の実測、転換の実測、希望の有無、追加費用、影響の線の5つを数える
