経営・組織

式場のテーブルリネンはレンタルか自前か|分かれ目は検品の手間

披露宴で使うテーブルクロスとナプキンを、毎回リネンサプライ会社から借りている式場は多いと思います。月末に請求書が届き、洗濯も数量管理も向こう任せです。一方で「年に100組以上やっているなら、買い取って自分たちで回したほうが安いのではないか」という疑問も、経営の側からはよく出ます。

結論を先に書きます。単価の計算だけなら、自前のほうが1組あたり数千円安くなります。ただ、その差は検品と仕分けにかかる時間と、シミや紛失で捨てる枚数でほぼ消えます。僕が置いた仮の式場(年120組)では、検品に1組あたり1時間以上かかるなら、自前に切り替えても得になりません。そして、年間の組数が90組を下回ると、初期投資を3年で割った分だけで負けます。

この記事に出典つきの数字はありません。リネンサプライの料金や外注クリーニングの単価は、地域と契約の中身で変わるはずですが、僕は業界の相場を確かめられていません。以下の数字はすべて僕が置いた仮の前提です。自分の会場の見積書の数字に置き換えて読んでください。

仮の式場を置く

計算の土台になる前提を並べます。

  • 年間の挙式は120組。1組70人、8人卓で9卓くらいの披露宴です
  • 1組で使うテーブルクロスは12枚。ゲスト卓9卓に、高砂、ケーキ卓、受付などを足した枚数です
  • ナプキンは80枚。70人分に予備を10枚足します
  • レンタルは、クロス1枚600円、ナプキン1枚60円の1回払い。1組あたり12,000円です(クロス7,200円とナプキン4,800円)
  • 自前の場合、クロスは1枚8,000円、ナプキンは1枚500円で買います
  • 使える回数の寿命は、クロスが60回、ナプキンが80回です
  • 外注クリーニングは、クロス1回250円、ナプキン1回40円
  • 在庫は3セット持ちます。クリーニングの往復に数日かかるので、土日が続いても足りるようにするためです

まず、1組あたりの費用を材料と洗いだけで出します。クロスは寿命で割ると1回あたり133円、洗いが250円で383円。12枚で4,600円です。ナプキンは1回あたり6円と洗い40円で46円。80枚で3,700円。合計8,300円になります。

レンタルは12,000円ですから、ここだけ見ると、自前のほうが3,700円安い計算です。年120組なら44万円です。

見落としやすい3つの費用

ここから、帳面に出にくい費用を足していきます。

検品と仕分け。 自前で回すと、戻ってきたリネンの枚数を数え、シミや破れを見て、セットに組み直す作業が発生します。レンタルでは、この作業を向こうが引き受けています。1組あたり1時間、時給1,500円で置くと、1,500円。これで差は2,200円に縮みます。

シミと紛失の廃棄。 寿命の60回に届く前に、ワインやソースのシミが落ちなくなる、持ち出されて戻らない、という廃棄が出ます。使うたびに購入価格の0.5%分が廃棄になると置きます。クロスと合わせて1組あたり680円です。差は1,520円まで縮みます。

初期投資。 3セット分の購入費は、クロス12枚×3セット×8,000円と、ナプキン80枚×3セット×500円で、合計40.8万円です。3年で使い切る前提で割ると、年13.6万円。1組あたりで1,133円になります。

ここまで足すと、自前の1組あたりの費用は、材料と洗いで8,300円、検品で1,500円、廃棄で680円、初期投資の償却で1,133円。合計11,613円です。レンタルの12,000円との差は、387円まで縮みます。

最初に見えていた3,700円の差が、387円になりました。年120組でも、年間4.6万円です。これだけの差のために、倉庫の場所と検品の担当者を持つのかどうかが、本当の論点になります。

検品の1時間が、境目になる

この計算で、いちばん効くのは検品の工数です。ほかの数字は見積書で確かめられますが、検品の時間は、やってみないと分かりません。

廃棄が0.5%、初期投資を3年償却と置いたとき、自前が得になる検品時間の上限は、1組あたり約1.3時間です。それを超えると、レンタルのほうが安くなります。

検品・仕分け(1組あたり) 自前の費用 レンタルとの差
0.5時間 10,863円 1,137円安い
1時間 11,613円 387円安い
2時間 13,113円 1,113円高い

検品が30分で終わる会場と、2時間かかる会場とでは、結論が逆になります。リネンの数を数えるだけなら30分で足りますが、シミを一枚ずつ確認して、クリーニング業者に再洗いを頼む手順まで含めると、1時間を超えやすいと思います。このあたりは、実際に1か月ほど記録を取らないと、僕は見積もれません。

年間の組数で見る

組数が変わると、初期投資の償却が効いてきます。検品は1時間、廃棄は0.5%のまま、年間の組数を変えて比べます。

年間の組数 レンタル 自前(償却込み)
30組 36万円 45万円
60組 72万円 76万円
120組 144万円 139万円
200組 240万円 223万円

自前が得になる境目は、年に約90組です。90組を下回る会場は、自前の初期投資を払うだけ損になります。

ただ、これも在庫を3セットで固定した前提です。組数が増えれば、土日の重なりが増えて、必要なセットが4セット、5セットと増えるかもしれません。その場合は初期投資が膨らむので、境目はもっと右にずれます。

レンタル単価が動くと

レンタルの単価も、結論を動かします。1組12,000円の前提を、3割安い8,400円と、5割高い18,000円で並べます。検品は1時間、廃棄は0.5%、償却込みで自前は11,613円のままです。

  • 8,400円のとき:自前のほうが1組あたり3,200円高い。年120組で38万円の損です。切り替える理由はありません
  • 12,000円のとき:差は387円。ほぼ同じです
  • 18,000円のとき:自前のほうが6,400円安い。年120組で77万円の得になります

今のレンタルが1組18,000円に近いなら、自前を本気で検討する価値があります。8,400円に近いなら、検討する前に終わる話です。

自前への切り替えを考える前に、まず手元の請求書で「1組あたりいくらか」を出してみるのが先です。クロスとナプキンのほかに、チェアカバーや高砂のクロスが別料金になっていないか、数量の端数に請求される最低枚数がないかも確認できます。

寿命の回数が半分だったら

もうひとつ、仮置きのなかで怪しいのが寿命です。クロスは60回、ナプキンは80回と置きましたが、これは新品が白いまま使える回数ではなく、僕が「このくらいは使えるだろう」と置いた数字です。

クロスの寿命が30回だったらどうなるか。クロス1枚の購入費8,000円を30回で割ると267円で、洗い250円と足して517円。12枚で6,200円になり、基本の4,600円から1,600円増えます。1組あたりの自前の費用は11,613円から13,213円に上がり、レンタルより1,213円高くなります。つまり、寿命が半分になっただけで、他の条件が同じでも、自前は負けます。

ここは購入前に確かめられます。購入先に「何回洗えるか」を聞き、できればサンプルを数枚借りて、3か月だけ実際の披露宴で使ってみるのが確実です。寿命の回数と検品の時間は、どちらも使ってみないと分からない数字で、この2つが結論をほぼ決めます。

レンタルにしか無い価値

ここまで費用だけを見てきましたが、レンタルには、帳面に出にくい利点もあります。

ひとつは、数量の増減に強いことです。披露宴の人数が直前に70人から85人に増えたとき、ナプキンを15枚足すのは、レンタルなら電話1本です。自前だと、予備が足りなければ当日に困ります。予備を多めに持てば、その分の初期投資が増えます。

もうひとつは、洗いの品質と納期を向こうが負うことです。外注クリーニングの納期が遅れて、土曜の朝にクロスが足りない、という事故が自前では起きえます。レンタルなら、足りない責任は契約の相手にあります。この「責任の置き場所」を、年に数万円の差と引き換えに手放してよいかどうかは、式場ごとに考えが分かれるところだと思います。

僕の見立てでは、差が年に数万円から十数万円のうちは、レンタルのままで困りません。差が年に50万円を超えてきたら、そのときに検品の担当者と置き場所を決める、という順番で足ります。

切り替えるときの段取り

それでも自前に寄せたいときは、いきなり全部を替えないほうが安全です。

最初は、ナプキンだけを自前にします。ナプキンは1枚500円と安く、初期投資が小さいうえに、枚数が多いので、レンタルの請求額のうち4,800円(40%)を占めています。クロスは1枚8,000円と高く、シミが落ちなかったときの損も大きいので、後に回します。

次に、1か月だけ検品の時間を記録します。誰が、何組分を、何分で終えたか。これが取れると、先ほどの表の「検品の時間」の行が、仮の数字から実測の数字に替わります。

最後に、レンタル契約の解約条件を確認します。年間の最低利用量や、解約の予告期間が契約書に入っていることがあります。自前に切り替えても、契約が残っていて二重払いになる、という事態は避けたいところです。

まとめ

  • 材料と洗いだけで比べると、自前は1組あたり3,700円安く見える(仮の式場の計算)
  • 検品、廃棄、初期投資の償却を足すと、差は387円まで縮む
  • 分かれ目は検品の時間で、1組あたり約1.3時間が上限になる
  • 年間の組数は、約90組を下回ると自前は初期投資の償却で負ける
  • レンタルが1組18,000円に近い会場だけが、自前に切り替える価値が大きい
  • 先にやるのは、請求書から1組あたりの単価を出すことと、検品の時間を1か月記録すること