来館・成約

式場見学に片方しか来ない日は、来られなかった側に渡す1枚を用意する

見学の予約は二人の名前で入っているのに、受付に立っているのは一人だけ。「彼は仕事で来られなくて」「彼女は今日、体調が悪くて」。式場にいると、こういう日が月に何度かあると思います。

この日の見学を、どう受けるか。僕の結論は、見学の出来を上げようとするより、来られなかった側に渡す1枚を用意して、その1枚が持ち帰られるところまで段取りに入れておく、です。

この記事に出典の数字はありません。一人で来る見学の割合を調べた調査は、今回の検索では見つかりませんでした。なので、後半の数字は僕が置いた仮のもので、業界の平均ではありません。判断の条件と段取りの話として読んでください。

一人で来た日に、成約が止まる場所

一人で見学に来た人は、たいてい熱心です。時間をつくって、予約をして、会場まで来ています。見学の出来が悪くて断られる、ということは、実はそれほど多くないと僕は見ています。止まるのは、帰宅してからです。

帰ってきた人は、来られなかった側にこう話します。「すごく良かったよ。料理もおいしかった」。聞いた側は、こう返します。「で、いくらくらいなの?」「日取りは空いてた?」。ここで話す側が答えられないと、会話は「また今度二人で行こうか」で終わります。

二人で来ていれば、疑問はその場で出て、その場で担当者に聞けます。一人で来た場合、疑問は不在の側が帰宅後に思いつくので、答えられる人がいません。見学で受けた説明が、そのまま伝言ゲームの材料になります。

伝言ゲームでは、数字と条件が先に落ちます。「良かった」という感想は伝わりますが、総額の帯、日取りの空き、仮予約の期限は、メモを取っていなければ曖昧になります。曖昧な情報は、聞いた側にとって判断材料になりません。判断材料にならないまま、他の式場の見学が先に入ります。

渡す1枚に入れるもの

渡す1枚は、パンフレットではありません。パンフレットは会場の魅力を伝えるもので、すでに持ち帰り用の資料として渡している式場がほとんどだと思います。ここで言う1枚は、見学に来られなかった側が最初に聞きたくなる質問に、先回りして答えるものです。

入れる項目は5つに絞ります。

  1. 今日見た中で、来られなかった側が一番気にしそうな場所の写真。誰が何を気にするかは、見学の最初の会話で分かることが多いです。仕事の都合で来られなかったのが新郎側なら、料理の写真より、駐車場から会場までの動線や、二人で来るときの所要時間のほうが先に聞かれるかもしれません。ここは決め打ちせず、その場で来た人に聞きます
  2. 総額の帯と、その帯に含まれるもの。「だいたいこのくらいです」という口頭の説明は、持ち帰ると消えます。人数の目安とセットで、帯で書きます。ここは公式サイトや見積書の表記と食い違わないようにします
  3. 希望の日取りの空き状況と、仮押さえの期限。見学に来た人が気に入った日が埋まるのかどうかは、不在の側が最初に聞く話です。期限は、持ち帰って相談する日数に収まる長さにします
  4. 次に二人で来る場合の見学枠。一人で来た日の次の一歩は、成約ではなく、二人での再訪です。日にちの候補をその場で2つ出しておくと、帰宅後の会話が「行く/行かない」から「どっちの日にする」に変わります
  5. 今日の担当者の名前と連絡先。質問を持ったのは来られなかった側なので、担当者に直接聞ける窓口を書いておきます

この5つを、A4の裏表、スマホで見るなら縦スクロール1画面に収めます。長くなると、読まれません。

1枚の文面は、こんな形にします

実際に書くときの形を、一つ置いておきます。会場名や金額は仮のものです。

〇〇さんへ(本日ご見学のお二人のうち、お越しいただけなかった方向けのメモです)

今日ご覧いただいたもの:チャペル、披露宴会場、試食 ご予算の目安:ゲスト〇名の場合、総額〇〇万〜〇〇万円(含まれるもの:料理・会場費・装花) ご希望の〇月〇日:本日時点で空きあり。仮押さえは〇月〇日まで 次のご見学:〇月〇日 午前/〇月〇日 午後(お二人で、所要約2時間) ご質問は、担当〇〇まで(LINE/電話)

見出しを付けすぎず、スマホの1画面で読み切れる量にします。「お越しいただけなかった方向け」と書くのは、来た人が転送するときに、誰に向けた文章かが一目で分かるからです。

渡し方は、紙とLINEのどちらでもいいが、その場で終える

紙で渡すか、スマホに送るか。どちらでもよいと思いますが、条件が2つあります。

ひとつは、見学の最後の5分で、その場で渡すこと。後日メールで送ります、と言うと、送る側も受け取る側も後回しにします。来た人が帰りの電車の中で、そのまま来られなかった側に転送できる形がいちばん確実です。

もうひとつは、来た人がそのまま転送しやすい形にしておくこと。LINEで見学後の連絡を取っている式場なら、画像1枚か短い文章で送ります。紙で渡す場合は、持ち帰ってスマホで撮れば共有できる大きさと文字量にします。

ここで、来た人に一言添えます。「彼(彼女)が気になりそうなところを、ここに書いておきました。もし聞かれて答えに困ったら、そのまま私に質問してもらって大丈夫です」。この一言は、来た人が不在の側に説明する負担を軽くします。説明を任された人は、うまく伝えられるか不安に思っていることが多いからです。

やらないほうがいいこと

一人で来た日の対応で、避けたほうがいいことが3つあります。

その場で契約を迫らない

「お一人でも決められますよね」は、言わないほうがいいです。決める権限があるかどうかを聞かれたと受け取られて、見学全体の印象が悪くなります。仮に決められる人だったとしても、不在の側が納得していない契約は、後でキャンセル相談になります。

不在の側の事情を詮索しない

来られなかった理由は、仕事、体調、気が進まない、のどれでもあり得ます。理由を聞き出そうとせず、「次はご一緒にぜひ」と、再訪の話に自然に進めます。気が進まない場合は、別の記事で書いたように、乗り気でない側の心配を先に聞く場面が来るのは、二人で再訪した日です。

一人の好みで会場の説明を絞りすぎない

来た人が「ここが好き」と言った場所だけを熱心に説明すると、二人目が来たときに別の関心を持っていて、説明をやり直すことになります。一人で来た日は、来た人の関心を中心にしつつ、不在の側の関心を聞いてメモしておきます。聞く質問はひとつで足ります。「彼(彼女)が一番こだわりそうなのは、どんなところですか」。

仮の数字で、1枚を用意する損得を見る

ここからは、僕が置いた仮の数字です。実際の式場の数字に置き換えて使ってください。

  • 月に、どちらか一人だけで来る見学が20組あるとします
  • 現状、その20組の成約率が15%(3組)だとします
  • 渡す1枚で、二人での再訪が増えて、成約率が18%(3.6組)に上がったとします。差は月に0.6組です
  • 1組の粗利を100万円とすると、月に60万円分の差です

一方、1枚の用意にかかる手間はこうです。

  • 見学ごとに、日取りの空きと見積もりの帯を差し込んで作るのに5分かかるとします
  • 20組分で、月に約1.7時間です
  • 時間の価値を時給3,000円とすると、月に約5,000円です

粗利100万円なら、月に0.005組、つまり200か月に1組増えれば手間の費用は戻る計算です。20組のうち1組でも再訪が早まれば、十分に元が取れます。

この計算で大事なのは、18%という数字が当たるかどうかではありません。手間が小さいので、少し効くだけで割に合う施策だと分かることです。ただし、「手間が小さいから全部やる」とは限りません。見学の最後の5分を使うので、満枠の日は、次の組の案内に影響します。そこは次の節で扱います。

満枠の日と、余裕のある日で分ける

土日の昼の見学枠が詰まっている日は、見学の終わりに5分を足すと、次の組の開始が遅れます。それを避ける方法は2つあります。

ひとつは、1枚をあらかじめ作っておくこと。日取りの空きと見積もりの帯の部分以外は、全員共通の文章にして、差し込み欄だけを埋める形にします。差し込み欄が2つなら、1分で終わります。

もうひとつは、見学の途中で一人で来たと分かった時点で、案内の最後の説明を短くして、その分を1枚の説明に回すこと。会場の紹介は二人で再訪したときにもう一度できますが、1枚の説明は、一人で来たこの日しかできません。

平日の見学が中心の式場なら、時間の制約はそれほどありません。5分ではなく、10分かけて、来られなかった側の関心を聞き出すところまで入れてもいいと思います。

続けるときの確かめ方

1枚を用意して数か月たったら、確かめることが2つあります。

  • 一人で来た組のうち、二人で再訪した組の割合。1枚を渡す前と後を比べます。数が少なければ、決着しません。月に20組なら、3か月で60組ほどです。60組で割合を見るなら、数ポイントの差は誤差の範囲に入ります。大きな差が出たときだけ、効いたと言ってよいと思います
  • 再訪した組が、1枚のどの項目に触れたか。再訪の見学で、日取りの話から入った人が多いのか、料理の話から入った人が多いのかをメモします。人気のない項目は削って、1枚を軽くします

記録は、予約システムの備考欄に「一人来館」「1枚渡し済み」の2語を入れるだけで足ります。表計算を別に作ると、続きません。

まとめ

  • 一人で来た見学の成約が止まるのは、見学の最中ではなく、帰宅後の伝言のときです
  • 渡す1枚は、パンフレットではなく、来られなかった側が最初に聞きたくなる質問に先回りして答えるものにします
  • 入れるのは、気にしそうな場所の写真、総額の帯、希望日の空きと仮押さえの期限、再訪の候補日、担当者の連絡先の5つです
  • 渡すのは見学の最後の5分で、その場で。来た人がそのまま転送できる形にします
  • その場で契約を迫らない、不在の理由を詮索しない、来た人の好みだけで説明を絞らない
  • 仮の数字では、月に20組、手間は約1.7時間です。再訪が1組早まれば元が取れます。実際の数字は各式場で置き換えてください
  • 一人で来た見学の次の一歩は、成約ではなく、二人での再訪です