雪の降る地域の式場は、見学予約ページに雪の日の来館ルールを書く
冬の見学予約が入っていた日に、朝から雪が降る。そういう日の式場には、毎年同じことが起きています。二人から連絡が来ないまま、予約の時間を過ぎる。電話をしても出ない。夕方になって「雪だったので行けませんでした」とだけ届く。あるいは、何も届かない。
結論から書きます。雪の降る地域の式場は、見学の予約ページに「雪の日の来館ルール」を書いておくと、雪で流れた予約の一部を取り戻せます。書く中身は2つだけです。いつまでに、誰が、来館できるかどうかを決めるか。そして、振替は何度でも無料か。この2つが書いてあるだけで、二人は「行けなくなった」と連絡しやすくなり、式場は「また来てくれる二人」として数えられます。
この記事の数字のほとんどは、僕が置いた前提です。雪で見学予約がどれだけ流れるかを示す調査を、僕は見つけられていません。出典があるのは、雪の降る地域が日本のどれくらいを占めるかという1点だけです。ほかは、自分の会場の数字に入れ替えて読んでください。
雪の降る地域は、思っているより広い
まず、雪の話が一部の地域の話ではないことを確認します。国土交通省の資料によると、豪雪地帯対策特別措置法で指定された豪雪地帯は、面積で全国の50.7%を占めます。人口は約1,963万人で、総人口の15.3%にあたります。平成22年10月1日現在の数字なので、いまとは少しずれます。同じ国土交通省の別の資料では、平成12年の国勢調査をもとにした人口の割合が16.1%と書かれていて、資料の時期で値は動きます。
ここで押さえたいのは、国土の半分が豪雪地帯の指定を受けている一方で、人口では1割強から1割半にとどまる、という点です。雪の降る地域は広いのに、人は少ない。そこにある式場は、遠くから来る二人と、雪の中を車で来る二人の両方を相手にしています。
もうひとつ。この指定は、毎年の大雪の日を数えたものではありません。積雪の度合いなどで決まる行政上の区分です。自分の式場が指定地域にあるかどうかより、「冬に、予約の日の朝に雪が降って、来館が危うくなる日が年に何日あるか」のほうが、式場の数字には効きます。これは自分の会場の記録から数えられます。
雪の日に、二人は何を迷っているのか
見学の予約を入れた二人が、雪の朝に考えていることを順番に並べます。
- 運転して行けるのか。道路は大丈夫か
- 式場に電話すると、断りにくい雰囲気にならないか
- キャンセル扱いになって、次の予約が取りにくくならないか
- 見学の特典(フェア限定の特典など)は、日をずらしても使えるのか
- 待たせるのは悪いが、連絡のしかたが分からない
並べてみると、二人を止めているのは雪そのものではなく、連絡したあとに起きることへの不安です。予約ページに何も書いていなければ、二人は最悪の場合を想像します。無断で行かないほうが、断りの電話を入れるよりも気楽です。だから連絡が来ない。
式場の側にとっても、連絡が来ないのは都合が悪いことです。席を押さえ、担当者の時間を空け、会場を温めて待っています。来ない二人に、あとから連絡しても、返事はなかなか来ません。気まずいからです。
書くことは2つだけ
雪の日の来館ルールで、ページに書くことを2つに絞ります。
1つ目:いつまでに、誰が、可否を決めるか
「当日の朝に判断してください」とだけ書くと、二人は朝になって悩みます。そのかわり、式場が決める時刻を書きます。たとえば次のような形です。
- 前日の夕方までに、天気と道路の状況を見て、式場から二人に連絡します
- 当日の朝は、二人が来られないと思った時点で、LINEか電話でひとこと送ってもらえれば大丈夫です
大事なのは、判断の主語に式場を置くことです。二人に「行きますか、やめますか」と聞くと、二人は断る側に回ります。式場から「この天気なので、日をずらしませんか」と持ちかけるなら、二人は断らずに済みます。断る気まずさを、式場が先に引き受ける形です。
注意点があります。式場が前日に連絡できるのは、天気予報で雪が見込めるときだけです。急に降る雪は、前日には分かりません。そのため、当日朝の連絡先と受付開始時刻を一緒に書いておく必要があります。連絡先がLINEなら、見学予約の完了画面に、友だち追加の案内を置いておくと、当日の連絡が1通で済みます。
2つ目:振替は何度でも無料か
もうひとつは、日をずらすときのルールです。ここを曖昧にしておくと、二人は「一度ずらしたら、もうずらせないのでは」と考えて、連絡をためらいます。次の3点を書きます。
- 雪による振替は、何度でも無料です
- 振替でも、予約時の特典(フェア限定の特典など)は、そのまま使えます
- 振替先の候補日は、式場から3つ出します
3つ目の「候補日を式場から出す」が、実は効きます。日をずらす連絡は、二人にとって「次の日を自分で探して送る」作業になります。この作業が重いと、振替の連絡自体が先延ばしになります。式場が3つ出しておけば、二人は選ぶだけです。
特典を維持するかどうかは、式場ごとに事情が違います。期間限定の特典を出しているなら、「振替の場合に限り、特典の期限を2週間延ばす」のような書き方もできます。何を守るかは、特典の原価と、その特典で何組が来館しているかを見て決めます。
仮に月30組なら、どれくらい戻せるのか
ここからは、僕が置いた前提のモデル計算です。実績ではありません。
前提は次のとおりです。
- 見学予約は月30組。冬の3か月(12月から2月)で90組
- 雪で来館が流れる予約の割合は10%と20%の2通り。冬の3か月で、それぞれ9組と18組
- 来館が流れた二人のうち、ルールがあれば振替で戻る割合は、30%と50%の2通り
- 戻った二人の来館後の成約率は40%
- 1組の成約あたりの粗利は120万円
この前提で計算すると、次の表になります。
| 雪で流れる割合 | 流れる組数(3か月) | 戻る組数(30%〜50%) | 成約の増加(40%) | 粗利の増加 |
|---|---|---|---|---|
| 10% | 9組 | 2.7〜4.5組 | 1.1〜1.8組 | 約130万〜216万円 |
| 20% | 18組 | 5.4〜9.0組 | 2.2〜3.6組 | 約259万〜432万円 |
最も控えめな組み合わせでも、冬の3か月で成約が1組強ふえます。最も大きい組み合わせで、3組半です。月60組の式場なら、この数字は約2倍になります。
見てほしいのは、表の大きさではなく、表を動かす2つの数字です。1つは、雪で流れる割合。もう1つは、振替で戻る割合です。前者は、会場の過去の予約記録から数えられます。後者は、ルールを書いたあとに初めて測れます。
逆に言うと、ルールを書いても戻る割合が0に近いなら、この施策の効果は小さい、ということです。それも測れます。冬のあいだ、雪の日に流れた予約を「連絡あり」「連絡なし」「振替成立」の3つに分けて数えれば、3か月で答えが出ます。
書いておくべきでない言葉
雪の日のルールを書くとき、避けたほうがいい書き方があります。
「安全のため、無理をなさらないでください」だけで終える
気持ちはあっても、二人は「だったら、何をすればいいのか」が分かりません。やさしい言葉だけでは、連絡のしかたも、振替の条件も伝わりません。ルールに書くのは、手順と条件です。
「悪天候の場合はキャンセル扱いとなります」
この一文は、式場の側の事情です。二人から見れば、雪が降ったら予約が消えるという意味になります。「キャンセル」という言葉が入っているだけで、連絡をためらう理由が増えます。使うなら「振替」です。
「ご来館が難しい場合は、お早めにお知らせください」
「お早めに」は、いつまでなのかが分かりません。二人は、前日の夜なのか、当日の朝なのか、迷います。時刻を書いてください。「前日18時までに式場から連絡します」「当日は9時から受付します」のように、式場が決められる範囲の時刻を置きます。
書いたあとに、現場でそろえること
ページに書いただけでは、約束にはなりません。現場で次のことをそろえてください。
- 前日の連絡は誰がするか。担当者が休みの日でも連絡できるか
- 雪の日に来館した二人への案内は、どうするか。駐車場の除雪が終わっていない時間帯は、入口まで何分かかるか
- 振替の候補日を、その場で3つ出せるか。見学の枠の空きを見られる状態か
- 振替になった二人の記録を、どこに残すか。「雪で振替」と分かる印を、予約の台帳につけておくか
4つ目が、いちばん大事です。印をつけないと、あとで数えられません。数えられなければ、ルールを書いた効果は分かりません。印は1つで足ります。予約の台帳に、備考欄に「雪振替」とだけ書く。それで、冬が終わったあとに、何組が振替になって、そのうち何組が成約したかが分かります。
来館が危ない日に式場が無理に開けるのは、危険を二人に押しつけます。見学の可否を式場の側が決めるのは、二人の安全を守るためでもあります。判断の基準は、天気予報と道路の状況です。基準を前もって社内で決めておけば、当日の朝に迷う時間が減ります。
雪の地域でなくても使える部分
雪の降らない地域の式場にも、使える考え方があります。台風、大雨、猛暑、電車の運休。見学の日に、二人が来館できなくなる理由は、雪のほかにもあります。共通するのは、二人が「連絡したあとに何が起きるか」を恐れている、という点です。
だから、書くことは同じです。式場が判断する時刻。振替が何度でも無料であること。式場が出す候補日。この3つが予約ページにあれば、天候の理由が何であれ、二人は連絡しやすくなります。
雪の降る地域では、とくに効果が出やすいと僕は考えています。理由は、雪は毎年必ず来て、事前に分かる日が多く、予約の記録を見れば流れた数が数えられるからです。台風のように年に数回ではなく、冬のあいだに何度も起きます。試す機会が多く、結果が早く出ます。
まとめ
- 雪の日に見学の予約が流れるのは、雪よりも「連絡したあとに起きること」への不安が大きい
- 予約ページに書くのは2つ。式場が可否を決める時刻と、振替が何度でも無料であること
- 判断の主語は式場に置く。二人に断らせず、式場から日をずらす提案をする
- 振替の候補日は、式場が3つ出す。選ぶだけにすると、連絡が先延ばしにならない
- 「キャンセル扱い」と書かない。「振替」と書く。「お早めに」ではなく時刻を書く
- 月30組の仮置きモデルでは、冬の3か月で成約が約1〜3.5組ふえる。前提は雪で流れる割合と、戻る割合の2つで、どちらも自分の会場の記録で入れ替えられる
- 台帳に「雪振替」の印を1つつけておけば、冬が終わったあとに効果が数えられる
- 国土交通省の資料では、豪雪地帯は国土の50.7%、人口の15.3%(平成22年)。雪の予約は一部の地域だけの話ではない
