来館・成約

予約が1組のブライダルフェアは、中止にすると損をしやすい

ブライダルフェアの前々日になって、予約画面を開くと1組しか入っていない。こういう場面は、どの式場でも一度は経験しているのではないでしょうか。試食の仕込みも、司式者の手配も、チャペルの準備も、通常の回と同じ段取りで動いています。それが1組のためだと思うと、「今回は中止にして、来る方には別の日を案内しようか」という考えが頭をよぎります。

僕は、この判断は多くの式場で「中止」に傾きすぎていると考えています。理由は、中止で失うものが見えにくく、開催で増える費用は目の前の請求書として見えるからです。見えやすいほうに判断が寄る。それだけの話だと思います。

この記事は、予約が少ないフェアを中止にするか、開催するかを、数字で比べる話です。先にお断りすると、数字はすべて僕が置いた仮の前提で、実在の式場の数字ではありません。フェアを予約不足で中止したときの来館率や成約率を調べた公開データは、探しましたが見つけられていません。そのため、断定は「仕組みとしてこうなる」と言える範囲に留めます。自社の数字を当てはめて使ってください。

中止で失うのは「その日の1組」ではない

中止を考えるとき、頭の中の損失は「今日来るはずだった1組ぶんの接客時間」くらいに見積もられがちです。実際に失うのは、その1組が最終的に契約してくれる確率です。

フェアを予約した二人は、他の式場のフェアも同じ週末に予約していることがあります(割合は調べられていません)。そこに前日や前々日に「中止になりました。別の日はいかがですか」と連絡が入ります。二人の予定表は、すでに他の式場の見学で埋まっています。別の日を案内されても、そこまで待たずに、予約が取れた別の式場のほうへ気持ちが移ります。

つまり中止の連絡は、二人に「別の候補を探す理由」を式場から渡す行為になります。ここで失うのは、見学の1回ではなく、その二人が候補に残る可能性そのものです。

仮の式場で、中止と開催を並べて計算する

数字を置いて確かめます。前提は次のとおりです。

  • 来館後の成約率は25%(来館した組のうち4組に1組が契約する)
  • 1組が契約したときの粗利は100万円
  • 開催で追加でかかる費用は、試食の原価と案内にかかる時間の費用を合わせて1.5万円
  • 中止を連絡した組のうち、別日に実際に来館してくれる組の割合を「振替率」と呼び、ここを変えて見る

予約が1組の回を中止にすると、振替で戻ってこなかった分が失われます。失う期待粗利は「1組 × (1 − 振替率) × 成約率 × 粗利」で計算できます。

振替率 戻らない割合 失う期待粗利 開催費用1.5万円との比
80% 20% 5万円 約3.3倍
50% 50% 12.5万円 約8.3倍
20% 80% 20万円 約13.3倍

振替率が80%と高く見積もっても、中止で失う期待粗利は5万円で、開催費用の3倍以上です。振替率が50%なら8倍強になります。

中止が得になる境目も計算できます。開催費用1.5万円を、成約率25%と粗利100万円で割ると、約6%になります。つまり、中止で戻らない割合が6%を下回るとき、言いかえれば、中止を連絡した組の94%が別日に来てくれるときだけ、中止が開催と同じ価値になります。94%の振替が見込める式場は、ほとんど無いと考えてよいです。

費用が大きい回は話が変わる

ここまでは、開催の追加費用を1.5万円と置きました。試食は仕込みの余りで足り、案内は当日出勤しているプランナーが行う、という前提です。

では、その回に外部の司式者の派遣や、生演奏、ヘアメイクの体験のように、回ごとに外注費が固定でかかる演出が入っていたらどうでしょう。外注費が5万円かかる回で、同じ計算をします。

振替率 失う期待粗利 開催費用5万円との比
80% 5万円 1.0倍
50% 12.5万円 2.5倍
20% 20万円 4.0倍

振替率が80%のとき、失う期待粗利と開催費用が同じになります。境目は20%で、中止を連絡した組の8割が戻る見込みがあれば、中止にしても損得は変わりません。ここまで来ると、中止が選択肢に入ります。

読み取れるのは、「予約が少ない」こと自体が中止の理由にはならないということです。中止の理由になるのは、その回にだけ固定でかかる費用が大きいことと、その費用を外せないことです。そこで次の手が出てきます。

中止の前に、費用を外す手がある

外注費が重いなら、中止の前に、その費用を外せないかを確認します。

  • 司式者や生演奏の演者に、組数が少ない回は演出を簡略にできるか、事前に決めておく。契約書に「前々日の正午までは予約組数が2組以下の場合に内容を変更できる」と書いておくのが、いちばん揉めない
  • 模擬挙式は、予約が少ない回だけ「ご希望の方のみ」に切り替える。全員参加の演出ではなく、希望者に見せる形にすれば、人手と外注の準備が減る
  • ヘアメイク体験のような回ごとの予約制の体験は、予約が入っていなければ外し、入っている組にだけ案内する

これで開催の追加費用を1.5万円〜2万円の水準に戻せれば、先の表の上のほうの数字に近づきます。中止は、外せない固定費が残ったときに、はじめて検討する手です。

1組の回は「フェア」を個別見学に変えて開く

費用の問題が片づいたら、次は当日の中身です。1組しか来ない回を、通常のフェアと同じ進行で行うと、二人が居心地悪く感じることがあります。会場にスタッフが何人もいて、他に来館者がいない。広い会場に二人だけがいて、案内が整いすぎている。そういう空気になりやすいです。

そこで、1組の回は進行を「個別見学」に切り替えます。具体的には次の形です。

  1. 前日までに「今回のフェアはご予約が少ないため、お二人のご希望に合わせてゆっくりご案内できます」と、式場から連絡する。中止ではなく、ゆっくり見られる回になったという言い方にする
  2. 冒頭の質問を増やす。誰と来るか、譲れない1点は何か、他にどこを見たかを先に聞き、そのあとの見学の順番を二人に合わせる
  3. 試食は決まったコースを出すのではなく、二人が選んだ料理の方向に近いものを出す
  4. 決定権のある人(二人、または二人と親)が揃っているかを確認し、見積もりは当日に出して、その場で説明する

通常のフェアは、複数の組を同じ流れで案内するため、どうしても進行を揃えます。1組なら、進行を二人に合わせられます。これは、人数の多い回ではできない接客です。

仕組みとして言えるのは、接客の自由度が上がるぶん、二人の疑問に当日中に答えられる範囲が広がるということです。成約率が実際に上がるかどうかは、式場ごとの数字で確かめるしかありません。ただ、1組の回の成約率が通常の回より下がる理由は、僕は見つけられていません。

予約が0組なら中止にしてよい

ここまで1組の回の話をしてきましたが、予約が0組なら、迷わず中止にしてよいです。連絡する相手がいないので、二人に中止の連絡で候補から外れる理由を渡すことがありません。開催しても誰も来ないので、追加費用は無駄になります。

ただし、0組の日が続くようなら、それは「中止にするか」の問題ではなく、その日にフェアを置く判断の問題です。曜日や時間帯、掲載の見え方を見直す話になります。0組の回を中止にする判断と、その枠自体を残すかの判断は、別に考えてください。

判断のための記録を3か月つける

この記事の数字は仮のものです。自社の数字で判断するために、次の4つを記録しておくと、中止か開催かを毎回迷わずに決められるようになります。

  1. 予約組数が1〜2組だった回の来館後の成約率(通常の回と分けて数える)
  2. 中止を連絡した組が、実際に別日に来館した割合(振替率)
  3. 回ごとの追加費用(試食の原価、外注費、人件費の増加分)
  4. 中止になった回の組が、その後どの式場に決めたか(聞ける範囲で)

3か月で数組分でも、傾向は見えてきます。数が少なくて判断できないときは、成約率を通常の回より低く、振替率を高めに仮置きして、先の計算を回してみてください。それでも開催が上回るなら、その式場は中止にしないほうがよい、ということです。

中止の連絡を出すなら、出し方で戻る割合が変わる

それでも中止にする回が出ることはあります。外注費が外せない、スタッフが急に足りなくなった、悪天候で来館そのものが難しい、といった場合です。このときは、連絡の出し方で振替率が変わります。

  • 前日の夜ではなく、判断した時点ですぐに連絡する。遅くなるほど、二人はもう別の予定を入れています
  • 連絡のときに、代わりの日を2つ、式場のほうから具体的に出す。「別の日はいかがですか」では、二人が予定を調べる手間が残ります
  • 代わりの日は、元の日から近い順に出す。二人の予定が空いている確率が高いのは、近い日です
  • 中止の理由は、短く正直に書く。「ご予約が少ないため」とは書かず、「当日の内容を十分にご用意できないため」のように、二人の側の不利益として伝える

こうして中止を出しても、振替率は上がりきりません。それでも、振替率を上げる努力は、中止より開催が得になる境目を少しだけ動かします。

まとめ

  • 予約が1組のフェアを中止にすると、失うのは1回の接客ではなく、その二人が候補に残る可能性です
  • 仮の前提(成約率25%、粗利100万円、開催費用1.5万円)では、中止で失う期待粗利は、振替率80%でも開催費用の3倍以上です
  • 中止が開催と同じ価値になるのは、中止を連絡した組の94%が別日に来るときだけです
  • 中止の理由になるのは「予約が少ない」ことではなく、その回にだけ固定でかかる外注費が大きく、外せないことです
  • 外注費は、組数が少ない回の内容変更を契約に書いておく、体験は希望者のみにする、で先に外せます
  • 1組の回は、フェアを個別見学に変え、二人の希望に合わせた順番と試食で開きます
  • 予約0組の回は中止にしてかまいません。ただし、0組が続くなら枠そのものを見直します
  • 自社の数字で決めるために、少組数の回の成約率と、中止後の振替率を3か月記録します