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式場サイトのリニューアルは旧URLの行き先表から始める

式場の公式サイトをリニューアルするとき、最初に決めるのは何でしょうか。デザイン、写真、見学予約ボタンの位置。ここから会議を始める式場がほとんどだと思います。

結論から書きます。URLが変わるリニューアルなら、最初に作るのは「旧URLの行き先表」です。古いページ1枚ずつに、新しいサイトのどのページへ飛ばすかを書いた表です。これを作らずに公開すると、検索やブックマークから来ていた二人が、見たいページに着けなくなります。見た目の出来がどれだけ良くても、入口が潰れた状態で公開することになります。

この記事では、行き先表を作る理由と作り方、前提を置いた損失の計算、旧URLをいつまで残すかを順に整理します。出典のある内容はGoogleの公式ガイドラインだけです。数字は、僕が置いた仮の前提で計算したもので、実績ではありません。自社の数字に置き換えて読んでください。

リニューアルで切れるのは、見た目ではなく入口です

式場のサイトには、思っているより多くの入口があります。トップページだけではありません。去年のフェアの告知ページ、チャペルの紹介ページ、料理の紹介ページ、アクセスのページ、スタッフブログの記事。これらは検索結果に出たり、結婚情報サイトからリンクされたり、二人のスマホにブックマークされたり、親にLINEで送られたりしています。

リニューアルでサイトの作りが変わると、URLも変わることが多いです。たとえば、古いサイトで /chapel.html だったページが、新しいサイトでは /venue/chapel/ になる。この場合、何もしなければ、古いURLに来た人は「ページが見つかりません」の画面を見ます。

見つからない画面を見た二人は、探し直してくれる場合もありますが、他の式場の画面に移る場合のほうが多いと僕は考えています。式場探しは1か所に決め打ちで来るものではなく、複数の式場を並べて見ています。「ここは見られない」と思った一瞬で、次の候補のタブに移ります。

ここで大事なのは、ページが消えることよりも、検索結果に残っている古いURLが行き場を失うことです。検索エンジンは、新しいURLを覚えるまでに時間がかかります。その間、検索結果には古いURLが出続けます。古いURLに来た人を新しいURLに案内する仕組みがなければ、その期間ずっと入口が閉じたままになります。

Googleが示している、移転の基本

URLが変わるサイト移転について、Googleの検索セントラルは次のように説明しています(Site move with URL changes)。

  • 古いURLから新しいURLへは、サーバー側の恒久的なリダイレクト(301または308)を使う。ブラウザ側の転送は最後の手段にする
  • 古いURLは、最終的な行き先に直接つなぐ。転送を何段もつなげない
  • 多数の古いURLを、無関係なページ(たとえば新しいトップページ)にまとめて飛ばさない。Googleがそれをソフト404として扱うことがある
  • 古いURLと新しいURLの対応表を、すべてのURLについて作る。サイトマップ、サーバーのログ、アクセス解析、CMS、Search Consoleのリンクレポートから古いURLを集める
  • リダイレクトは、できるだけ長く、一般的には少なくとも1年は残す
  • 移転中は、順位が一時的に揺れることを見込んでおく。中規模のサイトで、新しいURLが検索に切り替わるまで数週間以上かかることがある

この中で、式場のリニューアルでいちばん起きやすい失敗は、3つ目です。「古いページは全部、新しいトップに飛ばせばいいだろう」という判断です。作業は楽ですが、Googleが示している避けるべきやり方に当たります。

行き先表は、3つの列で作ります

行き先表は、表計算ソフトで作れます。列は多くなくて構いません。

  1. 古いURL
  2. 新しいURL(対応するページがあるとき)
  3. 対応するページがないときの行き先と理由

古いURLの集め方は、先ほどのGoogleの説明にあるとおり、いくつかの場所から重ねます。サイトマップを見て、アクセス解析で1年間に1回でも見られたページを拾い、Search Consoleで検索結果に出ていたページを拾います。結婚情報サイトや地元メディアからリンクされているURLも、リンクレポートに出てきます。どれか1つだけで集めると、必ず漏れます。

次に、行き先を決める基準です。僕は、ページを3つの種類に分けて考えるのがよいと思います。

新しいサイトに同じ内容のページがあるもの

チャペル、料理、アクセス、料金、フェア一覧のように、新しいサイトにも同じ内容のページがあるものです。これは1対1で新しいURLに飛ばします。ここは迷う余地がありません。

内容が統合されたもの

古いサイトでは別のページだった内容が、新しいサイトでは1ページにまとまることがあります。たとえば、古いサイトにあった「チャペルA」「チャペルB」「チャペルC」の3ページが、新しいサイトでは「挙式会場」の1ページになる場合です。この場合は、3つとも「挙式会場」ページに飛ばします。ただし、新しいページの中で、チャペルAの部分に飛べる位置(ページ内リンク)を作っておくと、二人は見たかった情報に着けます。

内容が終わったもの

去年のフェアの告知ページのように、内容がもう終わっているページです。ここが、行き先表でいちばん考える場所です。トップページに飛ばすのは簡単ですが、前述のとおり、まとめてトップに飛ばすのは避けるべきやり方です。

僕は、終わったフェアのページは「現在のフェア一覧」に飛ばすのがよいと考えます。そのページを探していた二人は、フェアを探していたからです。トップに飛ばすより、探していたものに近い場所に着けます。同じ考え方で、終わったプランのページは「現在のプラン一覧」に、退職したスタッフの紹介ページは「スタッフ紹介の一覧」に飛ばします。

この「近い場所に飛ばす」判断を、1枚ずつ人間が決めるのが行き先表の中身です。ここは自動化できません。リニューアルを依頼した制作会社に丸投げされやすい作業ですが、どのページが二人の入口になっているかを知っているのは式場側です。行き先の最終判断は、式場側で持つ必要があります。

作業の量を、前提を置いて見積もります

行き先表の作成には、どれくらいの手間がかかるのでしょうか。出典のある数字はないので、仮の前提で見積もります。

古いサイトに、120ページあるとします。1ページの行き先を決めるのに、確認と判断で平均5分かかるとします。120 × 5分で600分、つまり10時間です。1人で2日に分ければ終わる量です。

しかも、120ページすべてを同じ丁寧さで見る必要はありません。アクセス解析で、1年間のアクセスが多い上位20ページを先に決めて、残りは種類ごとにまとめて決めます。上位20ページは、1枚ずつ新しいページと見比べて決めます。残りの100ページは、種類(ブログ記事、終わったフェア、過去のニュースなど)ごとに行き先を1つ決めるほうが速いです。

この作業を省いたときの損失は、次の計算で見てみます。

省いたときの損失を、仮の数字で計算します

前提を置きます。すべて仮の数字です。

  • 公式サイトの月間訪問が8,000
  • そのうち検索経由が6割で、4,800
  • 検索経由の訪問のうち、1.5%が見学予約をする。月72件
  • 見学予約のうち、成約する割合が30%
  • 1組あたりの粗利が100万円

ここで、リニューアル後に古いURLをまとめてトップに飛ばし、検索経由の訪問が3か月かけて1割減ったとします。72件の1割は7.2件で、成約30%をかけると月2.16組です。粗利100万円をかけると、月216万円の差です。

もし3割減ったなら、72件の3割で21.6件、成約30%で6.48組、粗利は月648万円になります。

この計算の強い点は、リニューアル費用との比較ができることです。リニューアルに数百万円かけたサイトで、公開直後に月に数百万円の粗利が漏れる可能性があるなら、行き先表の10時間は小さい作業です。

一方で、注意も書いておきます。1割減るか3割減るかは、僕の想定にすぎません。Googleは、移転中に順位が一時的に揺れることを見込むように言っています。行き先表を丁寧に作っても、揺れはゼロにはなりません。行き先表で変わるのは、揺れの大きさと、元に戻るまでの長さだと考えるのが現実的です。

公開の前に、確認することがあります

行き先表ができたら、制作会社に渡して設定してもらいます。公開前には、次の確認を僕はおすすめします。

上位20ページの古いURLを、実際にブラウザに入力して、新しいサイトの狙ったページに着くか確かめます。1本ずつ手で確かめる作業ですが、ここで間違いが見つかることは、珍しくありません。特に、転送が2段になっていないか(古いURLから中間のURLを経由して新しいURLに行っていないか)を見ます。Googleは、転送を何段もつなげないように言っています。

もう1つ、新しいサイトの中のリンクが、古いURLを指したままになっていないかを確かめます。内部リンクが古いURLを向いていると、リダイレクトがあっても1回余計に経由することになります。Googleも、内部リンクを新しいURLに直すよう説明しています。

そして、公開した当日から数週間は、Search Consoleで検索結果のクリック数と、古いURLと新しいURLそれぞれの表示回数を見ます。古いURLの表示が減り、新しいURLの表示が増えていく動きになっていれば、移転は順調です。

旧URLを残す期間は、1年を最低線にします

行き先表で決めたリダイレクトは、いつまで残すのでしょうか。Googleは、できるだけ長く、一般的には少なくとも1年は残すように説明しています。

式場の場合、1年という期間は特に意味があります。二人の式場探しは、検討期間が数か月のことが多く、ブックマークしたURLを半年後に開くことがあります。親に送ったLINEのURLを、親が1か月後に開くこともあります。結婚情報サイトにも、古いURLのリンクがそのまま残り続けます。それらがすべて切れるのが、リダイレクトを外した日です。

運用としては、リダイレクトの設定一覧に「設定した日」と「外してよい日(1年後以降)」を書き込んでおくのがよいと思います。制作会社との契約が終わるときに、リダイレクトの設定が一緒に消えてしまう事故も、起こりえます。設定の置き場所(サーバーか、制作会社の管理画面か)も、一覧に書いておきます。

まとめ

  • URLが変わるリニューアルでは、デザインより先に、旧URLの行き先表を作る
  • 古いURLは、サイトマップ、アクセス解析、Search Console、リンクレポートを重ねて集める
  • 旧URLを全部新しいトップに飛ばすのは避ける。対応するページ、または探していたものに近いページへ1枚ずつ飛ばす
  • 内容が終わったページは、現在のフェア一覧やプラン一覧のような、探していたものに近い場所に飛ばす
  • 上位20ページは1枚ずつ決め、残りは種類ごとにまとめて決めると、10時間ほどで終わる計算になる(仮の前提)
  • 公開前に、上位ページの古いURLを手で開き、転送が2段になっていないか確かめる
  • リダイレクトは最低1年は残し、設定した日と外してよい日を一覧に書いておく

行き先表は、地味な表です。ただ、リニューアルの成否は、きれいな新サイトの出来よりも、古いサイトに来ていた二人をどれだけ取りこぼさずに連れて行けるかで決まります。