来館・成約

挙式まで半年未満の問い合わせは、空き日より準備の順番を先に返す

「半年以内に挙げたいのですが、空いている日はありますか」。こういう問い合わせに、空き日を並べて返している式場は多いと思います。僕は、挙式まで半年を切った二人には、空き日より先に「間に合う準備の順番」を返したほうが、見学予約と成約につながりやすいと考えています。

準備期間が短い二人は、日が空いているかどうかよりも、「この日程で本当に準備が回るのか」を心配しています。空き日の一覧は、その心配に答えていません。今日は、短い準備期間の問い合わせに何を先に返すか、その中身をどう作るかを、仮の前提を置いた計算と一緒に書きます。

先に断っておくと、この記事に出てくる日数は調査の数字ではありません。式場ごとに違う締め切りを、わかりやすく並べるための仮の値です。自分の式場の数字に置き換えて使ってください。

空き日を返すだけでは足りない理由

挙式まで半年を切った二人は、時間に余裕がありません。会場探しの段階で、すでに何社かを見ていることも多く、問い合わせの文面には「急いでいます」「間に合いますか」といった言葉が入ります。

ここで式場が返すのは、たいてい次の二つです。

  • 希望の時期に空いている日の一覧
  • 見学できる日時の候補

どちらも必要な情報ですが、二人の本当の疑問は別にあります。「契約したあと、何をいつまでにやれば間に合うのか」です。結婚式の準備には、招待状、衣装、ゲストの確定、料理や演出の打ち合わせなど、日数のかかる作業が並んでいます。準備期間が長ければ気にならなかった締め切りが、短いと一気に目に見えてきます。

空き日だけを返された二人は、この疑問を自分で調べるか、別の式場に聞くことになります。聞かれて先に答えた式場が、見学の予約を取りやすくなります。逆に、答えを後回しにすると、見学の席で初めて「実は日程がきつくて」と言われ、その場で説明を始めることになります。

契約日から逆算した「余白」を見せる

準備の順番を返すといっても、長い手順書を送る必要はありません。二人が知りたいのは、「契約が遅れるほど、どの作業の余裕が削られるか」です。これは、挙式日から逆算した期限と、契約日の差で決まります。

仮に、ある式場の締め切りが次のようだったとします。挙式の何日前までに終えるか、という数字です。

  • 衣装を決める:90日前
  • ゲストリストを固める:84日前
  • 招待状のデザインを決める:77日前
  • 招待状を発送する:56日前
  • 料理と演出の最終確認:30日前

この前提で、契約日が挙式の何日前かによって、各作業に残る日数(余白)を計算します。余白は、契約日から期限までの日数です。

契約日(挙式の何日前) 衣装 ゲストリスト 招待状デザイン 招待状発送 料理・演出の最終確認
180日前 90日 96日 103日 124日 150日
150日前 60日 66日 73日 94日 120日
120日前 30日 36日 43日 64日 90日
100日前 10日 16日 23日 44日 70日
90日前 0日 6日 13日 34日 60日

契約が挙式の180日前なら、衣装にも90日の余白があります。150日前でも60日あります。ところが120日前になると、衣装の余白は30日です。100日前では10日、90日前では0日で、契約した日が衣装を決める期限になります。

この表から読み取れることは二つあります。

一つは、余白が先に削られるのは、期限が早い作業だということです。上の仮定では衣装です。半年を切った二人にとって、いちばん最初の壁は衣装で、料理や演出ではありません。もう一つは、契約が数週間遅れるだけで、余白が一気に小さくなるということです。150日前から120日前まで、30日の違いで、衣装の余白は60日から30日に半分になります。

つまり、短い準備期間の二人に対しては、「契約を急がせる」のではなく、「契約を1週間決めかねると、衣装の余白がこれだけ減る」と事実で見せる形が向いています。期限で追うCTAにならないよう、あくまで二人が自分で判断するための材料として出します。

返信に入れるものは3つに絞る

準備の順番を返すといっても、返信が長くなりすぎると読まれません。短い準備期間の二人に返す内容は、次の3つで足ります。

  1. 希望の時期の空き日(これは今まで通り)
  2. その空き日で契約した場合に、最初に期限が来る作業とその日
  3. 見学の日に決めておいてほしいこと

2番がこの記事の中心です。たとえば「この日で契約いただく場合、最初のご判断は衣装で、挙式の90日前までです。ご契約から数えて約2か月の余裕があります」と書きます。表をそのまま送る必要はなく、最初に来る期限を1つだけ伝えます。

3番は、見学の質を上げるためのものです。短い準備期間の二人は、見学の回数を増やせません。1回の見学で、ほぼ決めるつもりで来ます。そこで見学の前に「当日は、人数のおおよそと、衣装を式場で選ぶか持ち込むかの方向だけ決めてお越しいただけるとスムーズです」のように伝えておきます。当日の質問が絞られ、案内の時間を準備の説明に回せます。

返信に入れないほうがいいものもあります。他の式場との比較、割引の期限、「今月中なら」といった煽りです。準備期間が短い二人は、もともと急いでいます。そこに期限を重ねると、決めかねている二人ほど不安になり、返信が止まります。

見学の席で、準備の順番をどう説明するか

見学の席では、返信で伝えた最初の期限を、実際の作業に置き換えて説明します。ここでの考え方は、「短い準備期間の二人は、全部をやる必要がない」という前提を、式場が先に示すことです。

準備期間が長い二人は、すべての項目を自分たちで選べます。短い二人に同じ流れを示すと、項目の多さに圧倒されます。そこで、次の順に整理します。

  • 期限が早く、変えにくいもの:衣装、招待状、ゲストリスト
  • 期限が遅く、直前まで調整できるもの:料理の細部、演出、席次
  • 式場が標準のプランで用意できて、二人が選ばなくてもよいもの

3つ目が、短い準備期間では特に効きます。たとえば招待状は、式場が用意するデザインから選ぶ形にすれば、デザイン決めの期限が実質的に消えます。上の仮定の表で、招待状デザインの余白が小さい契約日でも、選択肢を絞れば間に合います。

ここで気をつけたいのは、標準プランに寄せることが、二人にとって妥協に見えないようにすることです。「時間が足りないから簡単なものにします」ではなく、「この日程の方は、ここを式場にお任せいただくことで、料理や演出に時間を使えます」と、時間の使い道を二人の側に残す言い方にします。

式場の側で先に決めておくこと

短い準備期間の問い合わせに安定して答えるには、式場の中で次のことを決めておく必要があります。これは接客の話というより、締め切りの設計の話です。

  • 作業ごとの最短の期限を、式場として何日前に置くか(外注先の納期を含む)
  • 期限を過ぎた場合の扱い(追加費用がかかるのか、標準品に替えるのか、断るのか)
  • 半年未満の契約を、何日前まで受けるか

特に3つ目は、現場の担当者が個別に判断すると、毎回答えが変わります。仮に、衣装の期限が挙式の90日前だとして、91日前に契約した二人と89日前に契約した二人で、扱いが違えば不公平になります。期限を過ぎる契約でも受けるのなら、受けるための条件(衣装は式場の提携品から選ぶ、など)を決めておきます。

もう一つ、外注先の納期は式場が知っているのに、二人には見えていません。招待状の印刷、衣装のサイズ調整、引き出物の手配には、それぞれ最短の日数があります。この日数を一覧にして社内で共有しておけば、問い合わせの返信は数分で作れます。表を作る手間は一度で済み、以後は日数を当てはめるだけになります。

計算を自分の式場の数字に置き換える

上の表は、仮の値で作ったものです。自分の式場で使うときは、次の手順で作り直します。

  1. 作業ごとの期限を、挙式の何日前かで書き出す。外注の納期は、発注先に確認した最短の日数を入れる
  2. 契約日が挙式の何日前になるかを、30日刻みで並べる(例:180、150、120、90日前)
  3. 「契約日の日数 − 期限の日数」を、作業ごとに計算する
  4. 余白が30日を切る作業に印をつける

余白の基準の30日は、僕が仮に置いた値です。実際には、打ち合わせの回数や、二人の返事の速さで変わります。式場の過去の契約を見て、「余白が何日を切ると、打ち合わせが遅れがちになったか」を確かめ、基準を置き直します。ここは数字を推測で決めず、自社の記録で決めるところです。

計算はスプレッドシートで足ります。作業の数が5〜8個、契約日のパターンが4〜5個なら、表は1枚に収まります。これを接客用のメモとして持ち、問い合わせの返信にも使います。

この返信で動く数字

この考え方を入れて、動かせる数字は二つあります。

一つは、半年未満の問い合わせから見学予約に進む割合です。空き日だけの返信と、最初の期限を1つ添えた返信を、一定期間ずつ試して比べます。件数が少ないうちは、差が偶然かどうか判断しにくいので、数か月は同じ型を使い続けて見ます。

もう一つは、見学後の成約率です。見学の前に最初の期限を伝えてあれば、見学の席で説明に使う時間が減り、決めるための話に時間を使えます。見学の時間は変わらなくても、案内の中身が変わります。

いずれも、僕が実際に試した結果ではなく、仕組みから考えた見立てです。短い準備期間の二人に何を返すかで、見学予約と成約がどれだけ動くかは、式場ごとの記録で確かめてください。

まとめ

  • 挙式まで半年を切った二人が知りたいのは、空き日より「この日程で準備が間に合うか」
  • 契約日が遅れるほど、期限の早い作業から余白が削られる。仮の前提では、衣装がいちばん先に詰まる
  • 返信に入れるのは、空き日、最初の期限1つ、見学日に決めておくことの3つ
  • 煽りや割引の期限は入れず、期限は二人が判断する材料として事実で見せる
  • 見学の席では、期限が早いもの、直前まで調整できるもの、式場が用意できるものの順に整理する
  • 作業ごとの最短期限と、期限を過ぎた契約の扱いを、式場の中で先に決めておく
  • 表の日数は仮の値。自社の外注納期と過去の契約記録で作り直す