式場見学にドレス試着を入れるか、1時間あたりの組数で決める
式場見学にドレス試着を組み込むと、成約率は上がるのか。上がると言う人は多いですし、実際に試着の写真をきっかけに話が進む二人もいます。
ただ、僕が気になるのは成約率の「上がり方」より、先に出ていく「時間」のほうです。試着を入れた見学は、入れない見学より長くなります。長くなった分、同じ日に迎えられる組数は減ります。
この記事では、試着つきの見学が元を取るために必要な成約率を、前提を置いた計算で出します。そのうえで、入れてよい条件と、外したほうがいい条件を整理します。
先に断っておくこと:数字はすべて想定です
この記事の数字は、調査や自社の実績ではありません。計算の仕組みを見せるために置いた仮の値です。見学の所要時間も、成約率も、会場によって大きく違います。
だから、本文の数字をそのまま自分の会場に当てはめないでください。見てほしいのは、数字の大きさではなく「何と何を割り算しているか」です。
試着の効果は「成約率」で語られがち
試着を入れるかどうかの議論は、たいてい「入れたら成約率が上がるか」で止まります。上がるなら入れる、上がらないなら入れない、という整理です。
この整理には、抜けている変数があります。同じスタッフの時間で、何組を迎えられるかです。
見学の担当者が1日に使える時間は決まっています。1組あたりの所要時間が延びれば、その日に迎えられる組数が減ります。成約率が上がっても、迎える組数が減れば、成約の件数は増えない場合があります。
見るべきなのは、成約率ではなく「接客1時間あたりの成約件数」です。
仮の計算:試着で見学が60分延びる場合
前提を置きます。すべて仮です。
- 通常の見学は90分
- 試着つきの見学は150分(試着の案内と着替え、写真、感想を聞く時間で60分延びる)
- 通常の見学の成約率は30%
- 接客に使える時間は、合計100時間とする
通常の見学では、100時間は6,000分です。6,000÷90で、約66.7組を迎えられます。成約率30%なら、成約は約20件です。
試着つきでは、6,000÷150で、迎えられるのは40組です。同じ20件の成約を出すには、成約率が50%必要になります。40組×50%で20件だからです。
つまり、見学が90分から150分に延びる会場では、試着によって成約率が30%から50%まで上がらないと、成約件数は通常の見学に追いつきません。
30%が50%になる。これは、1.67倍です。試着の効果としては、かなり大きな期待です。
通常の成約率が違うと、必要な上がり幅も変わる
同じ計算を、通常の成約率を変えてやってみます。見学が90分から150分に延びる前提は、そのままです。
- 通常の成約率が20%なら、試着つきで約33%(1.67倍)
- 通常の成約率が30%なら、試着つきで50%(1.67倍)
- 通常の成約率が40%なら、試着つきで約67%(1.67倍)
倍率は、所要時間の比である150÷90で決まります。成約率の水準は関係ありません。
試着で延びる時間が60分でなく30分なら、所要時間は120分です。必要な倍率は120÷90で約1.33倍になります。通常30%なら、試着つきで40%です。
ここから言えるのは、試着を入れるかどうかの境目は、延びる時間の長さに強く左右される、ということです。30分で済む試着と、60分かかる試着では、元を取るハードルが倍近く違います。
この計算が当てはまらない会場がある
ここまでの計算は、見学の担当者の時間が足りない会場の話です。逆に、時間が余っている会場なら、話が変わります。
平日の見学枠が埋まっていない会場を考えます。担当者は空いていて、迎える組数が予約の数で決まっています。この場合、見学が延びても、迎えられる組数は減りません。時間の「損」が出ないので、成約率が少しでも上がるなら入れる価値があります。
見るべきなのは、見学枠の埋まり具合です。
- 見学枠がほぼ埋まっている(特に土日):延びた分だけ、断る予約が出ます。計算どおり、元を取るハードルが高い
- 見学枠に空きがある(平日など):延びた時間のコストが小さい。成約率の上がり幅が小さくても入れられる
土日は埋まっていて、平日は空いている会場なら、試着は平日の見学にだけ付ける、という分け方ができます。
制約は担当者でなく、試着の部屋や衣裳担当にある場合
もう一つ、見落としやすい制約があります。試着の部屋と、着付けを手伝う人の数です。
試着ができる部屋が1つだけで、1回の試着に60分かかるなら、その部屋で受けられる試着は、1日8時間で最大8組です。見学の予約が10組入る日には、全員に試着を付けられません。
この場合、試着は「全員に付ける」ものでなく「付ける組を選ぶ」ものになります。選び方を決めておかないと、先に来た組から順に埋まり、後から来る本命の二人に付けられなくなります。
選ぶ基準の候補は、次のようなものです。
- 見学の冒頭で聞いた優先順位に、衣裳や写真が入っている二人
- 母親や友人など、試着の様子を見る同伴者がいる二人
- 挙式日が近く、決める時期が迫っている二人
どれも、見学の冒頭で聞き取れる情報です。聞いたうえで、試着の案内を出す組と、出さない組を分けます。
試着が向かない二人もいる
試着が逆効果になる場合もあります。
衣裳を着る前から、「ドレスは外部の店で選ぶ」と決めている二人がいます。この二人に試着を勧めると、時間が延びるだけでなく、「会場の衣裳は選択肢が少ない」と感じる機会を増やすことになりかねません。
また、試着の予定を組むと、見学の最後に残る時間が短くなります。見積もりの説明や、決める条件の確認に使いたい時間を、試着が削る場合があります。
成約に近づくのは、試着をしたときではなく、二人が「決める条件」を言葉にしたときです。試着がその助けになる二人もいれば、ならない二人もいます。
試着のあとに、見積もりの話へ戻れるか
試着には、もう一つ注意点があります。二人の気持ちが高まった直後に、見積もりの説明へ移れるかどうかです。
ドレスを着て、写真を撮って、同伴者が「素敵」と言う。この場面の熱は、会場の席に戻って見積もりの数字を見た瞬間に、急に下がることがあります。熱が上がった分だけ、金額との落差が大きく見えるからです。
試着を入れるなら、順番を決めておく必要があります。
- 試着の前に、見積もりの大枠(総額のおおよその幅)を伝えておく。試着の後に初めて金額を見せると、落差が最大になる
- 試着の直後に感想を聞き、その言葉を見積もりの説明の最初に使う。「さっき、この形がいちばんしっくりくるとおっしゃっていたので」という入り方なら、衣裳の費用が見積もりに入っている理由も説明しやすい
- 試着で選んだドレスの追加料金は、その場で口頭でも伝える。後から見積もりに上乗せされると、金額への不信につながる
この3つが決まっていないなら、試着で上がった熱が、成約でなく「持ち帰って考えます」につながる危険があります。その場合、延びた60分は、成約率に何も足さないまま使われることになります。
1時間を何に使うかで比べる
最後に、延びる60分の使い道を、他の選択肢と並べておきます。試着が、その60分の最善の使い道とは限りません。
同じ60分で、次のようなことができます。
- 見学を1組ぶん追加して迎える(枠が埋まっている曜日なら、この機会損失が最も大きい)
- 持ち帰った二人への追客を、丁寧に5組分やる
- 見学後に、迷っている点の資料を作って渡す
試着の効果は、この3つのどれと比べても高いと言えるでしょうか。会場ごとに答えは違います。ただ、試着だけを単独で評価せず、「同じ60分の別の使い道」と並べて見る習慣があれば、入れる判断も外す判断も、納得して決められます。
入れるかどうかを決める手順
自分の会場で判断するときの手順を、順に並べます。
- 通常の見学の所要時間を、受付から見送りまで測る。10組分の平均でよい
- 試着で延びる時間を測る。着替え、写真、感想を聞く時間を含める
- 延びた時間の比を出す(試着つき÷通常)。これが、成約率に必要な倍率になる
- 見学枠の埋まり具合を、曜日別に見る。埋まっている曜日は、この倍率がそのまま当てはまる
- 試着の部屋と着付け担当の数から、1日に受けられる試着の上限を出す
- 上限を超える日は、付ける組を選ぶ基準を決めておく
この6つを出せば、「入れる」「入れない」「平日だけ入れる」「選んだ組にだけ入れる」の4つから選べます。
入れてみて確かめる方法
計算で入れると決めたら、全員に付ける前に、一定期間だけ試すのが安全です。
方法は単純で、試着を付けた見学と付けなかった見学を、数週間並べて記録します。記録するのは3つです。
- 見学の所要時間
- 見学後の一定期間内の成約の有無
- 試着を付けた理由(二人が希望した、会場が勧めた、など)
ここで注意したいのは、「二人が希望した」組は、もともと熱が高い二人だという点です。希望した組の成約率が高くても、試着の効果とは言い切れません。
効果を見るなら、会場が勧めた組同士で比べるのが、いちばん公平です。それでも組数が少ないうちは、差が偶然で出ている可能性が残ります。数週間で結論を出さず、数か月ぶんを積んでから判断するほうが安全です。
試着の代わりに、短く済ませる方法
試着の効果は欲しいが、60分は出せない。そういう会場は、試着を軽くする方法があります。
- ドレスを着ずに、衣裳室で好みの型を見てもらうだけにする(15分程度)
- 試着は1着だけにして、その場で写真を1枚撮る
- 見学の時間内でなく、別の日の衣裳相談に誘う
最後の方法は、二度目の来館を作ります。見学が終わった時点で、次の約束が1つある状態になるので、持ち帰られた後の追客にも使えます。ただし、二度目の来館が実際に来る割合は、会場によって違います。ここも自分の記録で確かめてください。
まとめ
- 試着を入れるかどうかは、成約率でなく「接客1時間あたりの成約件数」で見る
- 見学が90分から150分に延びる場合、成約率は1.67倍に上がらないと、成約件数は通常の見学に追いつかない。必要な倍率は所要時間の比で決まる
- 見学枠が埋まっている曜日は延びた分が機会損失になる。空いている曜日はコストが小さい
- 制約が担当者でなく試着の部屋にある会場は、全員に付けず、付ける組を冒頭の聞き取りで選ぶ
- 数字はすべて仮の値。自分の会場の所要時間、枠の埋まり具合、成約の記録で置き直す
