来館・成約

神前式を望む問い合わせに神殿がない式場が先に返す一言

「神前式がしたいのですが、できますか」という問い合わせが、館内に神殿のない式場に届くことがあります。チャペルと人前式しかない式場なら、答えは「できません」の一言で済みます。ただ、その一言を最初に返すと、二人はたいてい次の式場の予約ページに移ります。

僕の考えは、この問い合わせの文面を「神前式の可否」ではなく「二人が神前式に求めているものの確認」として読む、というものです。求めているものが分かれば、神殿がなくても返せる中身が見つかります。見つからなければ、そのときは断ってよいし、断り方にも順番があります。

この記事では、神殿のない式場が神前式の問い合わせにどう返すかを、返信の順番、できることの線引き、断ってよい条件に分けて整理します。数字は使わず、判断の分かれ目だけを書きます。例として出てくる件数は、すべて仮の数字です。

「神前式がしたい」は、少なくとも4つの意味に分かれる

同じ文面でも、二人の頭の中にあるものは違います。大きく分けると次の4つです。

1つ目は、和装を着たいという希望です。白無垢や色打掛を着ることが目的で、神前式はその衣装が一番似合う形だと考えている。

2つ目は、日本の伝統的な儀式をしたいという希望です。三三九度や玉串拝礼のように、形式のある儀式そのものに意味を感じている。

3つ目は、親や祖父母の意向です。本人たちよりも家族が神前を望んでいて、二人はそれに応えたい。

4つ目は、神社で挙げること自体への希望です。境内を歩く参進や、神職による祝詞を含めた、神社という場所の雰囲気を求めている。

神殿のない式場が応えやすいのは1つ目です。和装は式場の衣装室と提携先で用意でき、人前式でも着られます。2つ目と3つ目は、提携神社があれば部分的に応えられます。4つ目は、館内ではほぼ応えられません。

つまり「神前式ができますか」への答えは、どの意味で聞かれたかで変わります。最初の返信でそれを聞かずに「できません」と返すと、1つ目の二人にも、応えられる式場を探しに行かせてしまいます。

最初の返信は、可否の前に「何を大事にしたいか」を1つ聞く

返信の順番は、次のようにします。

  1. 神前式の希望を受け取ったことを書く
  2. 館内に神殿がないことを、はっきり書く
  3. そのうえで、和装を着る挙式や提携神社の案内ができることを書く
  4. 二人が大事にしたいのは、和装、儀式、ご家族の意向、神社という場所のどれに近いかを1つ聞く

ここで大事なのは2番目です。神殿がないことを後ろに隠して、見学に誘う流れにしない。二人は神殿がある前提で問い合わせている可能性があるので、見学当日に初めて知ると、来館が無駄足になります。来館が無駄足になった二人は、口コミにもそう書きます。

聞き方は、選択肢を並べるより、短い一文のほうが返ってきます。たとえば「お着物を着ることと、神社での儀式にすること、どちらをより大切にされたいですか」のように、二択に近い形で聞きます。4つ全部を並べると、返信の負担が大きくなります。

返ってきた答えごとに、返す中身を決めておく

二人の返事ごとに、何を返すかを式場の中で決めておきます。問い合わせのたびに考えるのではなく、返信の下書きをあらかじめ用意しておく形です。

和装を着たい二人には、人前式と和装の組み合わせを見せる

和装が目的なら、館内で和装の人前式ができることを写真つきで返します。ここで見せるのは、和装の二人が写っている実際の写真です。洋装の写真しかないなら、先に和装の撮影をして用意します。

返信には、和装で行える演出も書きます。たとえば、日本酒を使った儀式や、親への挨拶、和傘を使った入場などです。伝統の形式を完全には再現できなくても、「和の雰囲気で挙げる」という希望には応えられます。

和装のプランがあるなら、衣装代の目安も添えます。ただし金額は式場ごとの価格表の数字を使い、他社の相場を引いたり、確認していない平均値を書いたりしません。

儀式そのものをしたい二人には、提携神社と式場の披露宴の組み合わせを見せる

儀式を重視する二人は、館内での再現では満足しません。この二人には、近隣の神社で挙式をして、披露宴は館内で行う形を案内します。提携神社があるなら、神社名、挙式の所要時間、神社から式場への移動方法を書きます。

提携がない場合は、神社と提携していないと正直に書きます。そのうえで、二人が自分たちで神社を押さえたときに、披露宴の時間をどう組めるかを一緒に考える、という返し方ができます。神社の挙式が午前に終わるのか、午後になるのかで、披露宴の開始時刻が変わるからです。

ここでの式場の役割は、神社の予約代行ではありません。神社の挙式と自分たちの披露宴を、1日の流れとしてつなぐところです。

ご家族の意向が強い二人には、一緒に話す場を提案する

3つ目の、親や祖父母の意向で神前式を望む二人には、返信の中で対応を決めきらないほうがいい場合があります。ご家族が何を望んでいるのかは、二人にも正確に分かっていないことが多いからです。

この場合は、ご家族が見学に同席して、和装と神社の案内を一緒に聞く場を提案します。見学の予約フォームで「誰と来るか」を聞いておけば、ご家族の同席を前提にした案内に変えられます。

ご家族が望んでいるのが「神社での挙式」なのか、「和装の姿を見ること」なのかは、見学の場で聞くと分かります。僕は、ご家族への確認を二人に任せきりにせず、式場が一緒に聞く場を作ることを勧めます。

神社という場所を求める二人には、断ってよい

4つ目の、神社の境内で挙げたい二人には、式場としては応えられません。無理に引き止めようとして、館内の庭を境内に見立てた提案をすると、二人の希望とずれます。

この二人には、館内に神殿がなく、神社の雰囲気は再現できないと伝えて、丁寧に終えます。断ったことを残念がられても、それでかまいません。断った二人が、あとで披露宴だけを探す段階で戻ってくることもあります。その可能性を残すために、断り方は丁寧にします。

断ってよい線は、あらかじめ決めておく

すべての問い合わせに粘る必要はありません。断る線を決めておくと、担当者の時間を使い切らずに済みます。

線の引き方の一つは、返信への反応です。大事にしたいことを聞いても返信がない二人、または神社でなければ意味がないと答えた二人には、これ以上こちらから案内を重ねません。返信がある二人にだけ、見学の候補日を出します。

もう一つは、館内でできる範囲の説明を1回で終える、という決め方です。和装の人前式と提携神社の案内を一度書いて、それでも違うと返ってきたら、そこで終えます。同じ案内を言い換えて何度も送ると、押し売りになります。

仮の数字で、どこまで粘ると割に合うかを考える

数字の例を、前提を置いて計算してみます。これは僕が置いた仮の数字で、実際の式場の実績ではありません。

仮に、1年間に神前式の希望を書いた問い合わせが20件届く式場があるとします。神殿がないことを最初に伝えず、そのまま見学に誘った場合、見学に来るのが10組、成約が2組だったとします。一方で、最初の返信で神殿がないことを書き、和装の人前式と提携神社を案内した場合、見学に来るのが6組に減り、成約は2組のままだったとします。

この仮定のもとでは、見学の件数は減りますが、成約は変わりません。減った4組は、神殿がないことを知って来なかった二人です。来館すればたぶん断られていた二人なので、担当者の見学の時間を4組分、他の二人に回せたことになります。

仮に1組の見学に1時間半かかり、案内の準備を含めて2時間使うとします。4組で8時間です。この時間が、成約しそうな別の二人の見学に回れば、全体の成約率は上がる可能性があります。

もちろん、これは仮定の話です。実際に自分の式場で効くかは、神前式を希望した問い合わせの数と、その後の来館・成約を記録して確かめます。記録は、問い合わせの管理表に「神前式希望」の印を付けるだけで始められます。

返信で気をつけたい言い方

神殿のない式場が書きがちな言い方で、避けたいものが3つあります。

1つ目は「神前式に近い雰囲気で」という言い方です。近いか近くないかは二人が判断することで、式場が先に言うと、二人は神前式との違いを探し始めます。

2つ目は「当会場では対応しておりません」の一文だけで終わる返信です。可否の答えにはなっても、二人が次にどうすればよいかが書かれていません。

3つ目は、他の式場を名指しで勧めることです。親切に見えても、集客の記事としては逆効果です。二人が戻ってくる場所を自分で閉じてしまうことになります。

神殿を作るかどうかは、別の話

「神前式の問い合わせがこれだけ来るなら、神殿を作ったほうがいいのでは」と考える経営者もいるでしょう。この判断は、集客の記事で結論を出せるものではありません。設備投資の話になり、館内の空間、神職の手配、使用頻度、投資の回収が関わります。

ここで言えるのは、判断の材料になる数字を自社で持つことです。神前式を希望した問い合わせが年に何件あり、そのうち何組が見学に来て、何組が他の式場を選んだか。この3つを1年分たどれば、神殿という設備に二人がどれだけ引かれているかが見えます。数字がないまま設備の議論を始めると、声の大きい人の意見で決まってしまいます。

まとめ

  • 「神前式がしたい」は、和装、儀式、ご家族の意向、神社という場所の4つの意味に分かれる
  • 神殿がないことは、最初の返信ではっきり書く。見学当日に初めて知らせると、来館が無駄足になる
  • 最初の返信では、可否の前に「何を大事にしたいか」を二択に近い形で1つ聞く
  • 和装なら人前式との組み合わせ、儀式なら提携神社と披露宴の組み合わせ、ご家族の意向なら同席の見学を案内する
  • 神社の境内を求める二人には、丁寧に断ってよい。案内は1回で終え、言い換えて何度も送らない
  • 仮の数字では、神殿がないと先に伝えると見学は減っても成約は変わらず、担当者の時間が他の二人に回る
  • 神殿を作るかどうかは別の話で、神前式を希望した問い合わせの数と、その後の来館・成約を1年分記録してから考える