ブライダルフェアの直前の空き枠は、資料請求済みの二人に先に知らせる
ブライダルフェアの前々日になって、土曜の午前枠が6組中3組しか埋まっていない。式場の予約を見ている人なら、一度は経験があるはずです。そのとき最初に出てくる手は、媒体の掲載を直前割にする、特典を足す、といった「条件を足す」方向の対策ではないでしょうか。
先に結論を書きます。直前に空き枠が出たら、条件を足す前に、すでに接点がある二人へ先に知らせる。具体的には、資料請求をしたのにフェアの予約をまだしていない二人です。この順番にすると、特典の原価を使わずに空き枠を埋められる可能性があり、埋まらなかったときに初めて条件を足す判断ができます。
この記事では、その順番の理屈、知らせる相手と時間の決め方、文面の条件、仮の数字を置いたモデル計算、1か月で試す手順をまとめます。数字はすべて僕が置いた仮定で、調査の結果ではありません。自分の式場の数字に置き換えて読んでください。
直前の空き枠で、条件を足す前に起きていること
フェアの枠が空いたとき、式場側には大きく3つの手があります。
- 媒体の掲載内容を変える(直前割、来場特典の上乗せ)
- 広告を足す(検索広告の予算を増やす、SNSで告知する)
- すでに接点がある二人に知らせる
1と2は、まだ式場を知らない二人、または知っていても動いていない二人に届けるための手です。成果が出るまでに時間がかかり、直前の2日では間に合わないことも多い。それに、特典を足せば、足した分は予約した全員に効きます。もともと来る予定だった二人にも原価が発生します。
3は逆です。すでにこちらを知っていて、資料も取り寄せていて、まだ見学の予約に進んでいない二人。この人たちは、式場を探していて、こちらも候補に入っていて、あとは動くきっかけを待っているだけかもしれない。きっかけが「今週末にまだ空きがあります」という一通なら、費用はほとんどかかりません。
ここで大事なのは、3が1と2の代わりになるという話ではないことです。順番の話です。費用がかからない手から先に使い、それで足りなかったときだけ費用がかかる手を足す。これだけで、直前の特典を出す回数は減らせます。
知らせる相手は3つの層に分ける
「接点がある二人」と言っても、状態はばらばらです。同じ文面を全員に送ると、反応しない人のほうが多くなり、配信停止や見落としを増やします。僕なら、次の3層に分けます。
第1層:資料請求済みで、フェアの予約がない二人。 いちばん優先して知らせる層です。式場の名前を知っていて、資料も手元にある。ただ、見学の予約という次の一歩が出ていません。
第2層:過去にフェアへ来たが、契約に至っていない二人。 すでに見学を終えているので、「また来てください」と言うと、押し売りに聞こえます。この層には、フェアの案内ではなく、前回と違う中身があるときだけ知らせます。たとえば、前回は見られなかった時間帯の試食や、別のチャペルの見学ができるとき。中身が同じなら送りません。
第3層:公式サイトやSNSから問い合わせがあったが、返信後に止まった二人。 返信が止まった理由は分かりません。この層は、第1層の反応を見てから、残った枠があるときだけ足します。
3層をまとめて送るより、第1層から順に送って反応を見たほうが、無駄な通知が減ります。第1層だけで埋まれば、第2層と第3層には送らなくて済みます。送らなかった相手の目に、不要な通知が積み上がらない。これは、あとで本命の案内を送るときに、読んでもらえる確率を守ることにもなります。
いつ知らせるか:前々日の午前と、前日の昼
直前の通知は、遅すぎると意味がありません。二人にも予定があります。前日の夜に「明日の午前が空いています」と届いても、動けるのは身軽な人だけです。
僕なら、通知を2回に分けます。
- 前々日の午前:第1層に1回目。空き枠が出ているとき、この時点で予約を決めてもらえれば、二人は翌日の準備ができる
- 前日の昼:まだ空いていれば、第1層のうち未反応の人と、第2層の「前回と違う中身がある人」に2回目
前日の夜以降は送りません。理由は2つあります。ひとつは、夜の通知は「断られた」感覚を生みやすいこと。もうひとつは、式場側の準備です。前日の夜に予約が入ると、試食の数、席、説明の宛先が揃わないまま当日を迎えることになります。接客の質を落としてまで枠を埋めるのは、成約率を下げる恐れがあります。
締め切りも決めておきます。「前日の15時までの予約で、準備を整えてお迎えします」のように、式場側の都合として書く。二人を急がせる期限ではなく、準備のための線だと分かる言い方にします。煽りにならないようにするには、ここが重要です。
どの手段で知らせるか
手段は、その二人とどこで接点ができたかで決めます。
- 資料請求のとき、メールアドレスしか取っていない:メール
- LINEで友だちになっている:LINE
- 電話番号しか分からない:SMSか電話。ただし、事前に連絡の許可を取っていなければ使わない
大事なのは、相手が受け取ると思っていた手段で送ることです。資料請求のときにメールを書いたなら、そのメールに届くのは自然です。一方、フェアの予約をしていないのに電話が来ると、二人は驚きます。
もうひとつ、通知の配信を許可していない二人に送ってはいけません。特定電子メール法や個人情報の取り扱いの観点でも、資料請求のときに「今後、フェアなどのご案内をお送りする場合があります」と同意を取っているかを、送る前に確認します。同意の文言がなければ、通知の前に文言を整えるほうが先です。この確認が取れない式場では、この記事の方法は使えません。
文面は、枠の事実だけを書く
通知の文面で守るのは、次の4つです。
- 何の枠が空いているか:日付、時間帯、フェアの名前。「このあと」「ぜひ」で始めず、事実から書く
- その枠でできること:試食の有無、見学の順番など。すでに決まっている中身だけ
- 予約の方法:リンクを1つ。複数のリンクを並べない
- 締め切りの理由:「準備のため、前日15時までにお知らせください」
書かないものも決めます。「残りわずか」「今だけ」のような言葉は使わない。実際に残りが3枠なら「あと3組まで」と数字で書きます。数字は事実です。形容詞は、煽りになります。
もうひとつ、第1層に送る文には、資料請求のお礼や自己紹介を長く書かないこと。二人は資料を請求した覚えがあります。書き出しで説明すると、読む前に離れる人が増えます。
例として、第1層向けの文面の骨組みを置きます(会場名や日付は仮のものです)。
〇〇会場です。今週土曜の10時台のフェア(模擬挙式と試食)に、あと3組分の空きがあります。ご希望の場合は下のリンクから、金曜の15時までにご予約ください。準備を整えてお迎えします。
これで十分です。長くしても、予約率は上がりません。
モデル計算:この通知で、どれくらいの利益が残るか
ここから、数字を置いて考えます。すべて仮定です。式場ごとに値は違うので、自分のデータに置き換えてください。
仮定
- フェア1回あたり、空き枠が2組分ある
- 来館した二人の成約率は30%
- 成約1組あたりの粗利は120万円
- 第1層は100組。通知を見て予約する割合は2%
- 予約した二人のうち、実際に来館する割合は80%
計算
- 来館1組あたりの期待粗利:30% × 120万円 = 36万円
- 通知で予約が入る組数:100組 × 2% = 2組
- 実際に来館する組数:2組 × 80% = 1.6組
- 1回の通知で増える期待粗利:1.6組 × 36万円 = 約57.6万円
通知にかかる費用は、メールやLINEの配信費と、文面を作る手間くらいです。仮に空き枠が出るフェアが月に2回あるとすると、月の期待粗利は約115万円になります(57.6万円 × 2回)。
この計算で見てほしいのは、予約率2%という低い仮定でも、期待粗利は小さくないことです。もし予約率が0.5%なら、同じ式で約14万円になります。ここまで下がっても、費用との比較では黒字になる可能性があります。逆に言えば、通知の効果は「何組埋まったか」だけで測ると見落とします。埋まった枠から先の成約まで含めて測るのが、この計算の趣旨です。
注意も書いておきます。期待粗利は平均の話で、1回ごとの結果はぶれます。1回の通知で1組も来ない回もあるはずです。判断は、1回の結果ではなく、1か月以上を通して見ます。
条件を足すのは、通知で埋まらなかったときだけ
通知を出しても埋まらなかった枠が残ったら、ここで初めて条件を足す判断をします。判断の基準は、1組あたりの特典の原価と、期待粗利の比較です。
特典の原価が、来館1組あたり期待粗利(仮定では36万円)より大きいことは、まずありません。ただ、特典は予約した全員に効くので、もともと来る予定だった二人の分も払います。たとえば、特典の原価が1組1万円で、その回の来館が6組なら、6万円がかかる。これを、増えた2組から得る期待粗利と比べます。
- 増えた2組の期待粗利:2組 × 36万円 = 72万円(来館した場合)
- 特典の総額:6万円
この仮定なら、特典を出す価値はあります。ただし、「枠が埋まった」ではなく、「特典を足さなかった場合に比べて、何組増えたか」で測らないと、判断を誤ります。通知の段階で3組埋まっていて、特典でさらに1組増えたなら、特典の効果は1組分です。
もうひとつ、特典を直前に出す回数が増えると、二人のほうが「直前になれば特典が出る」と覚えます。早い時期の予約を待つ二人が増えると、通常の予約が減ります。この副作用は、特典を出す回数を数えて、増えすぎていないか月ごとに見ます。
通知を出さないほうがいいとき
この方法が向かない場面もあります。
- 通知先の第1層が少ないとき:資料請求の件数が月に数十件しかない式場では、100組に送る前提が成り立ちません。この場合は、広告や掲載の見直しのほうが先です
- 空き枠が、そもそも需要が低い枠のとき:平日の夕方や、閑散期の悪天候の日など。空き枠の理由が、時間帯の人気の低さなら、通知を出しても動かない可能性があります。枠を減らす判断のほうが合います
- 接客の人員が足りないとき:直前に増えた予約を、準備なしで受けると、成約率を下げます。受け入れの人数に余裕がない回は、通知を出さない
「全部の空き枠に通知を出す」と決めるのではなく、出す条件を先に決めておくのが安全です。
1か月の試し方
次の手順で、1か月試します。
- 対象を決める:第1層だけ。第2層と第3層は、最初は使わない
- 同意を確認する:資料請求のとき、フェアの案内を送る旨の文言があるかを見る
- 出す条件を決める:前々日の午前時点で、定員の4割以上が空いているフェアだけ
- 文面を1つ決める:上の4点を守った骨組みを使う
- 記録する:通知を送った人数、予約になった組数、来館した組数、のちに成約した組数
- 月末に比べる:通知を出した回と出さなかった回で、埋まった枠の数を比べる
記録は、4つ目の「成約した組数」まで追うことが大事です。通知で埋まった枠に来た二人は、もともとの来館者に比べて成約率が低いかもしれません。低ければ、仮定の30%を直して、計算をやり直します。これを怠ると、「埋まったから成功」と誤解して、成約しない来館を増やしてしまいます。
比べる回は、曜日や季節が似ているものにします。繁忙期と閑散期を比べても、通知の効果かどうか分かりません。
まとめ
- 直前に空き枠が出たら、条件を足す前に、すでに接点がある二人へ先に知らせる。順番は、費用がかからない手から
- 相手は3層に分け、資料請求済みで予約がない二人を最優先にする。送る前に、同意の文言を確認する
- 通知は前々日の午前と前日の昼の2回。前日の夜以降は、準備の質を落とすので送らない
- 文面は、枠の事実、できること、予約の方法、準備のための締め切りの4つだけ。「残りわずか」のような形容詞は使わない
- 仮の数字では、予約率2%で1回あたり約57.6万円の期待粗利になる。予約率0.5%でも約14万円で、成約まで測らないと効果を見誤る
- 条件を足すのは、通知で埋まらなかったときだけ。特典の効果は「足さなかった場合より何組増えたか」で測る
- 通知先が少ない、人気のない枠、受け入れ人員の不足、のときは出さない。出す条件は先に決めておく
