来館・成約

相談カウンター経由の二人には、見学の最初に先に見た式場を聞く

相談カウンターから紹介された二人が見学に来たとき、最初に何を聞いていますか。会場の説明から入る式場もあれば、予算を聞く式場もあります。僕は、その前に聞くことが2つあると考えています。先に見た式場と、カウンターで言われたことです。

この記事の結論は単純です。カウンター経由の二人は、白紙で来ていません。すでに比べ始めていて、頭の中に物差しが一本あります。その物差しを聞かないまま案内すると、式場が見せたいものと二人が見たいものがずれます。ずれたまま終わった見学は、「良かったです、検討します」で帰られやすい。聞き取りを先に置くだけで、案内の順番と見積もりの出し方が変わります。

出典のある数字は一つだけです。それ以外の計算は、すべて僕が仮に置いた前提です。

カウンター経由の二人は、すでに比べ始めている

ゼクシィ結婚トレンド調査2024(全国推計値)によると、結婚式を検討中でブライダルフェアに参加したカップルは7割を超え、平均すると2.6軒の会場を訪れています。つまり、フェアや見学に来る二人は、自分の式場だけを見に来ていません。平均で2軒半は回る前提の人たちです。

この数字は、相談カウンターを使った二人に限った数字ではありません。カウンター経由の二人が平均より多く回るのか少なく回るのか、これを調べた公開データは、僕は見つけられていません。ただ、カウンターの仕組みを考えると、方向は想像がつきます。

相談カウンターは、二人の希望を聞いて、複数の式場から候補を挙げる場所です。二人はそこで、少なくとも一度は「この条件ならこの式場とこの式場」という比較の前提を渡されています。自分で検索して一社ずつ予約した二人より、最初から複数社を見る気持ちで来ている可能性が高い。これは仕組みから言えることで、実績の数字ではありません。

だから、カウンター経由の見学で式場がやるべきことは、魅力を並べることより先に、二人の比較の物差しを知ることです。

最初に聞く2つの質問

聞くのは次の2つです。聞き方は後で書きます。

1つ目は、先に見た式場、または今日この後に見る式場です。式場の名前そのものでなくても構いません。「どんなタイプの会場でしたか」「ホテルでしたか、専門式場でしたか」で十分です。

2つ目は、カウンターで言われたことです。カウンターのスタッフが二人に何を勧め、この式場について何を言ったか。「この会場は料理が評判です」と言われて来た二人と、「予算内に収まります」と言われて来た二人では、見学で確かめたいことがまるで違います。

この2つから、二人の比較の軸が分かります。軸が分かれば、案内の順番を組み替えられます。

質問を予算より前に置く理由

見学の冒頭で予算を聞くか、という論点は別の記事で扱いました。ここでは、予算を聞く前に何を聞くかだけを書きます。

予算は、二人にとって最も答えにくい質問です。相談カウンターでは、予算を伝えてから会場を紹介されるのが普通なので、二人はこの式場にも同じ数字が伝わっているのではと思っています。伝わっていないと分かると、もう一度言わされる感じが出ます。

先に見た式場を聞く質問は、答えやすい。見たものを思い出して話すだけで、評価を求められていません。ここで二人が話し始めれば、その後の質問にも答えてくれます。入り口の質問は、答えやすさで選ぶのが基本です。

聞き方の実際

文面にすると、こうなります。

今日は、相談カウンターからのご紹介でお越しいただいたんですよね。ありがとうございます。差し支えなければ、もうご覧になった会場はありますか。タイプだけでも教えてもらえると、そこと違うところを中心にご案内できます。

ポイントは3つあります。

1つ目は、聞く理由を一緒に言うことです。「どこを見たか教えてください」だけだと、探りを入れられているように聞こえます。「そこと違うところを中心に案内するため」と目的を添えます。二人にとっても得になる理由で、実際に案内を組み替えるので、嘘になりません。

2つ目は、答えたくない人の逃げ道を残すことです。「差し支えなければ」の一言で、答えたくない二人は答えなくて済みます。無理に聞き出すと、その後の接客がずっと硬くなります。

3つ目は、答えが返ってきたら、メモを取りながら繰り返すことです。「ホテルのガーデンで、料理が良かったんですね」と返す。聞き流されていないと分かれば、二人はその後の質問に答えやすくなります。

カウンターで言われたことは、こう聞きます。

カウンターの方からは、うちの会場について何かお話はありましたか。

ここで出てくる言葉は、二人がこの式場に期待していること、そのものです。「写真映えすると聞いて」「駅から近いと聞いて」「予算に合うと聞いて」。どれも、見学で確かめたい点の宣言になっています。

答えが「特にありません」だったとき

カウンターから紹介されたのに、何も聞いていない二人もいます。その場合は、深追いしません。「では、今日は全体をご覧いただいて、気になったところで止めてください」と案内に移ります。聞き取りを失敗させないためには、答えが無い場合の逃げ道を用意しておくことです。

聞いたあとの案内の組み替え

聞き取りは、案内を組み替えるためにやります。聞いただけで案内が変わらなければ、二人には「聞かれただけ」の見学になります。

組み替えの考え方は2つあります。

1つ目は、先に見た式場と同じ強みで勝負しないことです。先に見た会場がホテルで、料理を褒めていた。こちらも料理を前に出して勝負すると、比べられるだけです。それなら、先の会場にない強みを最初に見せます。たとえば、貸切の自由度、日程の選択肢、担当者との距離感。二人が比べる棚の外に、見せる材料を持ってきます。

2つ目は、カウンターで聞いてきた期待を最初に確かめさせることです。「写真映えすると聞いて来た」と言う二人には、一番光が入る時間帯の、一番見栄えのする場所から案内する。二人は期待が裏切られるかどうかを、最初の5分で判断します。期待が確認できれば、その後の説明も聞いてくれます。

案内の組み替えは、他社の悪口を言うことではありません。先に見た会場について、評価はしない。二人が良かったと言った点は、そのまま受け止める。その上で、こちらの別の強みを見せる。これだけで十分です。

組み替えを現場に任せる条件

案内の組み替えは、人によって差が出ます。新人は、決まった順路をそのまま回ってしまう。ベテランは、聞き取りの内容で順路を変える。この差を埋めるために、順路のパターンを2つか3つ用意しておくことを勧めます。

  • 料理や雰囲気で比べている二人向けの順路
  • 予算や日程で比べている二人向けの順路
  • どれにも当てはまらない二人向けの標準の順路

パターンは多くても3つです。それ以上にすると、現場が覚えられません。聞き取りで二人がどれに近いかを決めて、順路を選ぶ。判断は5秒で足ります。

聞いてはいけないこと

聞き取りには、避けたほうがいい質問もあります。

  • 紹介料や契約条件に関わること:カウンターと式場の契約の話を、二人に持ち出さない
  • カウンターの評価:カウンターについての感想を二人に求めない
  • 「他社と比べてどうですか」:比べるのは二人の仕事で、式場から聞くと迫られているように感じる
  • 候補の絞り込みを迫る質問:「ここが第一候補ですか」は、見学の冒頭で聞いても答えは出ない

特に、カウンターの評価を聞くのは避けます。カウンターの悪口が出てくると、聞いている式場側も判断に迷います。紹介を受けている立場で、相手を評価する会話に乗らない。聞くのは二人が受け取った情報だけです。

前提を置いたモデル計算

聞き取りを足すと、どれくらいの効果があれば釣り合うかを、仮の数字で確かめます。出典のある数字ではなく、すべて僕が置いた前提です。

前提は次のとおりです。

  • 月のカウンター経由の来館:10組
  • 現在の成約率:25%(月2.5組)
  • 聞き取りを足すための時間:1組あたり3分
  • カウンターの紹介料:成約1組あたり20万円(成約課金)

聞き取りで成約率が2ポイント上がったとします。25%が27%になるので、月の成約は2.5組から2.7組、差は0.2組です。月で見ると誤差のようですが、年にすると約2.4組です。紹介料は成約課金なので、成約が増えれば紹介料も増えます。追加の成約は粗利から紹介料を引いた残りが増えるので、粗利が紹介料より大きいかを見ます。

もう一つ、見落とされやすい側面があります。紹介料が来館課金の場合、成約率が上がると1成約あたりの紹介料負担が下がります。たとえば1来館あたり1万円とすると、成約率25%なら1成約あたり4万円、27%なら約3.7万円です。聞き取りの時間は3分です。人件費を高めに見て1分100円としても、1組あたり300円。10組で3,000円です。

要するに、聞き取りに必要な追加コストは小さい。成約率が0.1ポイントでも動けば、元は取れる水準です。測るべきなのは、成約率の変化よりも、聞き取りをやった組とやらなかった組の差です。

効果を測る記録の残し方

聞き取りをやっても、記録が残らなければ、効果は分かりません。記録は次の3項目を、見学メモの1行にまとめれば足ります。

  • 先に見た式場のタイプ(ホテル、専門式場、ゲストハウス、その他)
  • カウンターで言われたこと(一言)
  • 案内で組み替えたこと(一言)

これを1か月分ためて、成約した組と、しなかった組を並べます。たとえば、「ホテルを先に見た二人」の成約率と、「専門式場を先に見た二人」の成約率を比べる。10組程度では差の理由までは言えませんが、「ホテルを先に見た二人は、料理の話から入ると止まりやすい」のような傾向は、現場の感覚として見えてきます。

見学メモそのものの残し方は、別の記事で書きました。ここで足すのは、カウンター経由の二人だけ、この3項目を必ず書くという点です。

現場で起きやすい失敗

最後に、僕が起きやすいと考えている失敗を挙げておきます。

1つ目は、聞き取りが尋問になることです。矢継ぎ早に聞くと、二人は守りに入ります。聞くのは最初の2つだけで、残りは案内の途中で自然に出てくるのを待ちます。

2つ目は、聞いた内容を案内に反映しないことです。聞いておいて同じ順路を回ると、「聞かれたけど、何も変わらなかった」という印象になります。聞いたら、必ず1か所は順路を変える。

3つ目は、カウンター経由の二人を、他の経路と同じ扱いにすることです。予約ページの経由で来た二人と、カウンターから来た二人では、見学前に持っている情報が違います。経路ごとに聞き取りを変える必要はありませんが、カウンター経由では「すでに比べている」前提で始めるほうが、外れにくい。

まとめ

  • ブライダルフェアに参加するカップルは7割超、平均2.6軒を回る(ゼクシィ結婚トレンド調査2024)。カウンター経由の二人は、すでに比べ始めている前提で迎える
  • 見学の冒頭で聞くのは、先に見た式場と、カウンターで言われたことの2つ。予算より先に置く
  • 聞く理由を添える、答えない逃げ道を残す、返事を繰り返す。この3点で尋問に聞こえなくなる
  • 聞いたら案内を1か所は組み替える。先に見た式場と同じ強みで勝負せず、比べられない強みを先に見せる
  • 紹介料や他社の評価は聞かない。聞くのは二人が受け取った情報だけ
  • 聞き取りの追加コストは1組3分程度で小さい。効果は、聞き取りをやった組とやらなかった組の記録で確かめる