お色直しの2回目を受けると、仮の式場では年117万円の粗利が出る。止める理由は金額ではなく、165分の持ち時間に入るかどうかだ
「お色直しを2回したいです」と言われたとき、式場は何を見て答えるでしょうか。衣装の在庫、ヘアメイクの手配、料理の出し方。いろいろ頭に浮かびますが、僕が見てきた範囲では、いちばん最初に引っかかるのは披露宴の持ち時間です。金額の話は、あとから付いてきます。
先に結論を言います。2回目のお色直しは、金額だけで見れば受けたほうが得です。仮の式場で計算すると、年に100万円を超える粗利が残ります。それでも断る式場があるのは、損するからではなく、165分の枠に入らなくなるからです。だから判断の順番は、金額より前に、時間の予算表を作ることになります。
この記事の数字は、調査から取ったものではありません。お色直しの希望率や衣装の粗利を公開データで探しましたが、式場の計算に使える数字は見つかりませんでした。なので全部を仮置きの前提で計算し、最後に自分の会場の数字へ置き換える手順を書きます。
仮の式場の前提
計算に使う前提を、先に全部並べます。どれも僕が置いた仮の数字です。
- 年間の披露宴は150組
- 披露宴の枠は165分(開宴から退場まで)
- お色直しは1回目が標準で、2回目を希望する組は全体の1割(15組)
- 衣装の追加粗利は、1着あたり12万円
- 介添スタッフ2人が1時間つき、時給は2,000円
- ヘアメイクの追加は、1回8,000円
- 枠を30分延ばす場合の実費(残るスタッフの人件費と光熱費)は3万円
これを2回目のお色直し1組に当てはめます。
粗利12万円から、介添の人件費4,000円(2人 × 1時間 × 2,000円)とヘアメイク8,000円を引くと、残りは10万8,000円です。ここから枠の延長が必要になった場合の実費3万円を引くと、7万8,000円。15組なら年117万円になります。延長が要らなければ、年162万円です。
つまり、金額の面だけを見れば、2回目を受けない理由は見当たりません。仮に希望した二人が不満を持って、1件ごとに5万円を返すとしても、7万8,000円の粗利を消すには、1組あたり1.5件以上の返金が要ります。15組の全員が不満を持っても、利益が残る計算です。
希望する組の割合を変えると、年の粗利は次のように動きます。1組あたり、延長なしで10万8,000円、延長ありで7万8,000円という前提は同じです。
- 希望が5%(7.5組):延長なしで年81万円、延長ありで年58万5,000円
- 希望が10%(15組):延長なしで年162万円、延長ありで年117万円
- 希望が20%(30組):延長なしで年324万円、延長ありで年234万円
どの行も、赤字にはなりません。希望率が上がるほど、粗利は素直に増えます。ただ、20%になると30組が2回目の中座を使うことになり、進行表の側が先に苦しくなります。金額は右肩上がりなのに、現場の負担は同じ比率では増えない、というのがこの計算の落とし穴です。1組ごとの負担は軽くても、30組が積み上がると、土曜の夕方の枠に2回目の中座が重なる日が必ず出てきます。
2回目を頼む二人は、何を求めているのか
時間の話に入る前に、もうひとつ見ておきたいのが、頼む側の事情です。「2回目をやりたい」と言う二人の中身は、実は一様ではないと僕は考えています。
ひとつは、衣装そのものを楽しみたい人です。ドレスを2着、3着と着たい。これは衣装の粗利に直結しますが、時間の使い方は柔軟で、中座の長さより着る着数のほうにこだわりがあります。
もうひとつは、ゲストの席を回りたい人です。中座のあとに再入場して、各テーブルで写真を撮ったり、話したりする時間が欲しい。こちらは衣装より再入場後の時間を求めているので、2回目の中座を15分に絞っても満足してもらえる余地があります。
どちらなのかは、「2回目で、いちばん大事にしたいのはどんな場面ですか」と聞けば分かります。この質問は、受けるか断るかを決める前に、ヒアリングの一行として入れておけます。衣装を楽しみたい人には30分の中座を、席を回りたい人には15分の中座と再入場後の時間を、と分けて案内できるからです。
これは僕が現場で聞いてきた範囲の分類で、割合を調べた数字はありません。ただ、二人の希望を「回数」ではなく「場面」で聞き直すだけで、持ち時間との折り合いがつけやすくなる場面は、何度も見てきました。
中座の間に、料理をどう出すか
もうひとつ、時間の予算に効く点があります。中座の間の料理の出し方です。
二人が席を外している30分は、ゲストにとっては歓談の時間です。ただ、厨房の側から見ると、料理を止めるわけにはいかない時間でもあります。一品ずつ出していくコース料理では、メインの出し始めを中座に合わせるか、再入場のあとに合わせるかで、ゲストの待ち時間が変わります。
僕がよく見る進行は2種類あります。
- 中座の開始直後にメインを出し切る:ゲストは二人がいない間に食べ終わり、再入場のときには手が空いている。写真やスピーチに集中しやすい
- 再入場の直前にメインを出す:二人が戻ったとき、ゲストの前に料理が並んでいる。写真を撮りながら食べる形になり、再入場後の時間が散らかりやすい
2回目の中座を入れる場合、前者の進行を選ぶほうが安全です。理由は単純で、中座が2回あると、料理の提供が2回止まる可能性があるからです。メインを1回目の中座に寄せておけば、2回目の中座の間は、デザートとコーヒーだけで済みます。厨房の負担も減り、介添の動きも軽くなる。
この調整は、2回目を受けるかどうかとは別に、進行表の段階で決めておくことです。決めておくと、2回目の希望が出たときに「料理の段取りはすでに組んでありますので、中座の長さだけ相談させてください」と話を進められます。
本当の分かれ目は165分
では、なぜ現場では2回目の話が出ると空気が重くなるのか。時間の予算が、すでに埋まっているからです。
披露宴の165分を、標準的な進行で割ってみます。これも仮置きですが、会場の進行表を見ながら当てはめてください。
- 入場から乾杯まで:20分
- 歓談と料理:50分
- ケーキ入刀と写真:15分
- 中座(1回目のお色直し):30分
- 再入場から余興・スピーチ:25分
- 花束贈呈と謝辞:15分
- 退場とお見送りの準備:10分
合計で165分です。この表のどこにも、2回目の中座を30分入れる余白はありません。
2回目を入れるには、3つの方法があります。ひとつは枠を延ばすこと。ひとつは他の項目を縮めること。もうひとつは、2回目の中座そのものを短くすることです。
枠を延ばす
いちばん分かりやすい方法です。30分延ばせば、上の計算どおり実費は3万円で収まります。ただし、延ばせるのは、その日の次に使う予定がない会場だけです。
同じ宴会場を昼と夜の2回使う会場では、30分の延長は次の組の準備を押します。ここで効いてくるのは、延長の実費ではなく、次の組の入場が遅れる影響です。転換時間が足りなくなる話は、別の記事で扱っているので深入りしませんが、1回の押しがその日の全部の組に連鎖する点だけは頭に置いておく必要があります。
つまり、枠を延ばせるかどうかは、会場の使い方で決まります。1日1組の会場なら延ばせる。1日2組以上なら、延ばせない日のほうが多いはずです。
他の項目を縮める
歓談と料理の50分を削れば、時間は作れます。ただ、ここを削ると、料理の提供が詰まります。中座の間にも料理は出ているので、ゲストは食べ終える前に二人が戻ってきて、また席を立つことになる。
縮めやすいのは、余興やスピーチの枠です。一方で、二人が一番聞きたいのもそこだったりします。「お色直しを増やしたいから、友人のスピーチを減らしましょう」と、式場から言い出すのは難しい。
中座を短くする
僕がいちばん現実的だと思うのは、2回目の中座を15分に絞ることです。1回目と同じ30分を使わず、ドレスから着物への着替えではなく、ヘアはそのままで羽織りやブーケを変える、という内容に変える。これなら着替えの時間が短くて済みます。
ただ、この方法には代償があります。着替えが簡単になるぶん、衣装の粗利も下がる。12万円の粗利が取れるのは、ドレスを丸ごと替えるときです。小物だけなら、その何分の一かになります。
この3つを比べると、どれを選んでも何かを手放すことになります。手放すものが「次の組の準備」なのか、「スピーチの時間」なのか、「衣装の粗利」なのか。それを選ぶのが、2回目のお色直しへの答えです。
断るなら、希望を聞く前に決めておく
ここまでの話を踏まえて、僕が現場で勧めるのは、希望を聞かれてから考えるのではなく、契約の前に基準を決めておくことです。
基準は、次の3つに分けて書いておけば足ります。
- 受けられる日:1日1組の日、または次の枠までの余白が60分以上ある日
- 受けられる内容:衣装を丸ごと替える中座は1回まで。2回目は15分以内に収まる内容
- 追加でいただく費用:衣装の追加料金に、延長が出た場合の実費を乗せる
3つ目の費用は、延長の実費3万円を「延長料金」として別立てで請求すると、見積もりの印象が悪くなります。僕は、衣装の追加料金の中に含めて見せるほうが、揉めにくいと考えています。ただ、これは僕の見てきた範囲での感触で、確かめた数字はありません。
基準を先に決めておく理由は、現場の担当者が一人で断る場面を作らないためです。「うちはできません」と言う側は、断る理由を毎回説明しなければなりません。基準が文章になっていれば、「この日は1回までです。2回目をご希望なら、こちらの日が空いています」と、日付を使って案内できます。
自分の会場の数字に置き換える手順
最後に、仮の前提を自分の会場の数字に変える手順を書きます。必要なのは、直近1年の進行表と、衣装の売上です。
- 直近の披露宴から10組を選び、進行表の中座の長さを実測で書き出します。「30分の予定」と書いてあっても、実際は何分かかったかを見ます
- 披露宴の枠(開宴から退場まで)を分単位で確認し、中座に使った時間の合計を引いて、残りの余白を出します
- 衣装の売上から、1着あたりの粗利を出します。レンタル原価、クリーニング代、ヘアメイクを引いた後の数字です
- 2回目を希望した組が、直近1年で何組いたかを数えます。断った組があれば、その組数も別に数えます
- 余白が30分を超える日と、超えない日を分けて、日数を数えます
5番の数字が、基準を決めるときの材料になります。余白が30分を超える日が年の半分以上あれば、「受けられる日」の条件は緩くできる。2割以下なら、2回目を受けるのは例外扱いにして、日を選んでもらう形が現実的です。
実測で出した数字が僕の仮置きと大きく違っていたら、その差こそが自分の会場の特徴です。中座が30分より長く、余白が10分もないなら、問題は2回目ではなく、1回目の中座のほうにあるのかもしれません。
まとめ
- 2回目のお色直しは、仮の式場で年117万円の粗利。金額だけでは、受けない理由が出てこない
- 止めるかどうかは、披露宴の165分に収まるかで決まる
- 収める方法は、枠を延ばす、他を縮める、2回目を15分に絞るの3つで、どれも何かを手放す
- 受けられる日、内容、追加費用を契約前に文章にしておくと、現場が一人で断らずに済む
- 自分の会場では、まず10組分の中座の実測時間から始める
