式場の検索広告は予約完了でなく来館を成果に登録し直す
式場の検索広告の管理画面で、成果(コンバージョン)の欄に何が入っているか。確かめてみると、多くの場合は「見学予約フォームの送信完了」ではないでしょうか。電話タップが並んでいる会場もあると思います。広告は、そこに数字が増える方向へ配信を寄せていきます。
結論を先に書きます。成果が「予約完了」のままだと、広告は予約を安く取れる言葉に予算を寄せます。ところが、予約が安い言葉の二人が、来館するとは限りません。成果を「来館」に登録し直すと、予約単価では勝っていたキーワードが、来館単価では並ぶか負ける。順位が入れ替わることがあります。
この記事の数字は、すべて僕が置いた仮のものです。調査や統計は使っていません。自分の会場の台帳の数字に置き換えて読んでください。仕組みの部分だけは出典があります。Google Ads API のドキュメント「オフライン コンバージョンを管理する」には、電話や営業担当者経由など、オンライン以外で売上につながった広告を追跡するために、オフラインで起きた成果を Google 広告へ取り込む方法が書かれています。
予約完了を成果にすると、広告は何を学ぶのか
自動入札は、成果が出やすそうな検索の条件を探して、そこにお金を寄せます。成果の定義が「フォームの送信完了」なら、フォームを送りやすい人を探します。
フォームを送りやすい人と、実際に来館する人は、同じではありません。
- 「安い」「口コミ」のような言葉で調べている二人は、まず予約だけ入れて、他の式場と並べてから決めがちです
- 「チャペル」「会場名+見学」のように、見る場所を絞って調べている二人は、予約の数こそ少なくても、予約したら来館する率が高いことがあります
あくまで「あることがある」という話で、すべての会場に当てはまるとは言いません。大事なのは、自分の会場がどちらなのかを、予約完了の数字だけでは見分けられないことです。見分けるには、予約のあとに何が起きたかを広告側に返す必要があります。
仮の数字で見る:予約単価が安い言葉が、勝っているとは限らない
計算のために、2つのキーワードの束を置きます。どちらも検索広告の中の、別々の言葉の束です。
| A:「地名 結婚式場 安い」系 | B:「地名 結婚式場 チャペル」系 | |
|---|---|---|
| 見学予約1件あたりの広告費 | 8,000円 | 12,000円 |
| 予約が来館になる割合 | 50% | 75% |
| 来館が成約になる割合 | 10% | 25% |
どれも僕が置いた数字です。ここから、100件の予約を取ったときの様子を出します。
| A | B | |
|---|---|---|
| 広告費 | 80万円 | 120万円 |
| 来館 | 50組 | 75組 |
| 成約 | 5組 | 18.75組 |
| 来館1組あたりの広告費 | 16,000円 | 16,000円 |
| 成約1組あたりの広告費 | 16万円 | 6.4万円 |
予約単価で並べると、Aは8,000円、Bは12,000円。管理画面の成果が「予約完了」なら、Aが3割以上も優秀に見えます。広告は、Aに予算を寄せます。
ところが、来館単価で並べると、AもBも16,000円で同じです。予約単価の差は、来館する率の差で、きれいに消えました。
もう一段進めて、成約1組あたりで見ると、Aは16万円、Bは6.4万円で、Bのほうが2.5分の1の費用で成約が取れています。
つまり、成果を予約完了のままにしておくと、いちばん上の数字だけを見て、Aに寄せ続けることになります。成果を来館に登録し直すと、AとBは同じに見える段階まで進めます。ここで広告が「Aに寄せる理由」はなくなります。
ここで注意が1つあります。来館までで見ると同じに見えるのは、この仮の数字の組み合わせだからです。来館率と成約率の置き方を変えれば、来館単価の段階で順位が入れ替わることもあれば、変わらないこともあります。大事なのは、予約単価の順位が、そのまま成果の順位ではない、と確かめる手順を持つことです。
来館を Google 広告に返す仕組み
では、来館をどうやって広告に返すのか。Google Ads API のドキュメントが説明しているのは、広告をクリックした人のクリックIDと、そのあとオフラインで起きた成果を結びつけて、取り込む方法です。電話や営業担当者を経由して売上になった場合を想定した仕組みで、式場の来館や成約にも同じ考え方を当てはめられます。流れは次のようになります。
- 広告をクリックした人が公式サイトに来たとき、URL に付くクリックID(GCLID)をフォームの隠し項目に入れて保存する
- 予約フォームが送信されたとき、予約の情報と一緒にクリックIDを受付台帳に残す
- 来館した日に、台帳の「来館」の欄を埋める
- 来館した予約の行だけを取り出して、クリックID・来館日・成果の種類を CSV にまとめる
- 広告の管理画面から、CSV を「オフラインコンバージョン」として取り込む
取り込み後は、「来館」が成果として広告に認識されます。成果の欄に「来館」を主として設定すれば、自動入札も来館の多そうな条件を探すようになります。
必要なのは3つです。公式サイトの予約フォームが、クリックIDを保存できること。受付台帳に、クリックIDを入れる列を足せること。来館日を、台帳に毎回記録していること。3つ目が、いちばん抜けやすいです。
台帳側でやること
広告の設定より、台帳のほうが手間のかかる作業になります。
- 予約の行にクリックIDの列を足す。フォームの隠し項目から自動で入るのが理想ですが、手で貼る運用でも最初は構いません。ただし、貼り忘れの行が増えると、取り込める件数が減ります
- 来館日の列を、その日のうちに埋める。月末にまとめて埋めると、取り込む日が遅れます。何を来館とするかも決めておきます。たとえば「予約した日に実際に会場へ来た」だけを来館とし、キャンセルと無断欠席は除く
- 電話予約の行にはクリックIDが無い。電話予約を含む会場では、広告経由の電話は別の仕組みで数えることになります。電話を足した途端に媒体別の順位が変わることがある、という話は、別の記事で書きました。ここでは、クリックIDが取れる分だけを返す、と割り切ります
- 同じ二人の二重予約は除く。同じ二人が別の日に2回予約すると、来館を2回返してしまいます。二人1組につき、来館は1回だけ返します
氏名や電話番号をそのまま広告側へ送る必要は、この方法ではありません。クリックIDと来館日があれば取り込めます。個人を特定できる情報を足す方法もドキュメントには出てきますが、その場合はサイトのプライバシーポリシーに書く内容や同意の取り方を整える必要があります。まずは足さないほうを選ぶのが、手堅いと僕は考えています。
成約まで返すか、来館で止めるか
ここまで読むと、来館より成約まで返したほうがよい、と思えるかもしれません。僕は、まず来館で止めることを勧めます。理由は2つです。
1つ目は、成約の件数が少ないことです。 月に取り込める成約が数件では、広告が学ぶ材料になりにくいです。来館のほうが件数は多く、材料として足ります。成約の件数がどのくらいあれば足りるか、という基準は、僕は公式の数字を確認できていません。なので「来館のほうが件数が多い」という点だけを理由にします。
2つ目は、成約までに時間がかかることです。 来館から成約までは、数日で決まる二人もいれば、1か月以上かかる二人もいます。成約を返すのが遅れるほど、広告の学習も遅れます。来館なら、翌日には返せます。
成約は、広告に返さなくても、台帳側で見れば足ります。上の計算のように、キーワードの束ごとに来館率と成約率を出しておけば、来館で並んだあとに成約でも並べられます。広告に返す成果は来館、予算を動かす最後の判断は成約1組あたり。この二段にしておくと、迷いが減ります。
向かない会場と、先にやること
すべての会場に、この手順が向くわけではありません。
- 月の予約が数件しかない会場。来館を返しても、件数が少なすぎて広告の配信は変わらないかもしれません。この場合は、キーワードの束ごとに予約→来館→成約を台帳で数えるだけで十分です
- 広告運用を代理店に任せている会場。クリックIDの保存や、取り込みの作業は、運用担当と台帳の担当が別々だと止まりがちです。誰が何を、いつまでにやるか、先に決めてください
- フォームがクリックIDを保存できない会場。公式サイトの作りによっては、フォームの改修が先になります。この場合は、フォーム改修の費用と、月の広告費を並べて、割に合うかを見ます
先にやることは、広告の設定ではなく、台帳の点検です。直近3か月の予約のうち、来館日が記録されているのは何割か。ここが半分に満たないなら、広告に返す以前に、台帳を埋める運用が先になります。
最初の1か月でやること
順番を決めておくと、動かしやすくなります。
- 今の成果の定義を確認する。予約完了だけか、電話も入っているか
- キーワードの束を2〜4つに分けて、束ごとに直近3か月の予約数・来館数を台帳から数える
- 束ごとに、予約単価・来館単価を出す。予約単価の順位と、来館単価の順位が違うかを見る
- 違うなら、フォームにクリックIDを保存する仕組みを入れる
- 1か月分の来館を取り込み、成果の欄に「来館」を足す。最初は参考として表示し、入札の目標にはまだ使わない
- 取り込んだ来館の件数と、台帳の件数が一致するかを確かめる
4の段階でフォームの改修が要るなら、そこで止まってもよいです。3までやるだけでも、予算の寄せ先を見直す材料になります。
まとめ
- 検索広告の成果を「予約完了」のままにすると、広告は予約を安く取れる言葉に予算を寄せる
- 仮の数字では、予約単価はAが8,000円、Bが12,000円でAが有利に見えたが、来館単価はどちらも16,000円で並び、成約単価はBがAの2.5分の1になった
- 来館を広告に返す仕組みは、クリックIDの保存、台帳の来館日、オフラインコンバージョンの取り込みの3点で成り立つ(Google Ads API のドキュメントが説明している)
- 最初は来館までを返し、成約は台帳側で束ごとに比べる。成約は件数が少なく、時間もかかる
- 台帳の来館日が埋まっていないなら、広告の設定より先に、台帳を埋める運用を作る
- 予約単価の順位が、そのまま成果の順位とは限らない。広告費を動かす前に、来館で並べ直す
