式場の広告効果は、問い合わせから来館までの日数を測ってから判断する
広告費を上げた月に問い合わせは増えたのに、同じ月の来館数はほとんど動いていない。この数字を見て媒体の掲載を打ち切ると、判断が早すぎることがあります。問い合わせの増減は、来館の増減として少し遅れて現れるからです。何日遅れるかは式場ごとに違うので、予約台帳から自分で測るしかありません。
この記事では、問い合わせから来館までの日数を測る手順と、測った日数を広告の判断・フェア枠の出し方・月次報告の見方にどう使うかを書きます。数字は出典のあるものではなく、前提を置いた試算です。自社の台帳に置き換えて読んでください。
問い合わせと来館のあいだには3つの待ち時間がある
問い合わせが入った日と二人が来館した日のあいだは、一続きの時間に見えて、中身は3つに分かれます。
1つ目は、返信して見学の日取りが決まるまでです。二人が返信を読む時刻、候補日の相談、パートナーとの予定合わせが入ります。平日の夜に届いた問い合わせは、翌朝に返信しても、二人が読むのはその日の夜になることがあります。
2つ目は、日取りが決まってから来館日までです。ここがいちばん長くなります。二人は土日の昼に来館したいと考えるのが普通で、人気の時間帯は数週間先まで埋まります。式場側の空き枠が先まで埋まっているほど、決まった日取りは遠くなります。
3つ目は、日程の変更とキャンセルです。一度決めた日取りが雨や仕事で動くと、その分だけ来館が後ろにずれます。予約が流れて来館に至らないものも、ここで抜けます。
この3つは、広告をいじっても短くならない部分が多いです。返信の速さは式場の努力で縮まりますが、空き枠の先送りと二人の予定は動かせません。だから問い合わせと来館のあいだの日数は、広告の成績というより、式場の予約の仕組みが決めている数字だと考えたほうが扱いやすくなります。
同じ月で問い合わせと来館を比べると判断を誤る
どのくらいずれるのか、前提を置いて試算します。数字はすべて仮のものです。
- 毎週100件の問い合わせが入っている式場が、5週目から広告を増やして毎週130件になる
- 問い合わせのうち来館に至るのは60%
- 来館する二人の来館日は、問い合わせの週から数えて、同じ週が20%、1週後が35%、2週後が25%、3週後が15%、4週後が5%
この前提で、来館数が週ごとにどう動くかを計算しました。広告を増やす前は、来館が毎週60組で落ち着いています。
| 広告を増やしてからの週 | 問い合わせ | 来館 |
|---|---|---|
| 1週目 | 130件 | 63.6組 |
| 2週目 | 130件 | 69.9組 |
| 3週目 | 130件 | 74.4組 |
| 4週目 | 130件 | 77.1組 |
| 5週目以降 | 130件 | 78.0組 |
広告を増やした最初の4週間で見ると、問い合わせは1月あたり400件から520件に、30%増えます。来館は240組から285組で、増えたのは19%です。5週目以降の来館は月312組で、30%増になって初めて問い合わせと並びます。
つまり、広告を増やした翌月の締め日に問い合わせと来館を並べると、問い合わせが30%増なのに来館は19%増にとどまって見えます。広告の効きが弱いのではなく、効きが来館に届く途中の数字を見ているだけです。もっと極端なのは最初の1週間で、問い合わせは30%増えたのに来館は6%しか増えていません。この週だけ見て打ち切ると、効いている広告を止めることになります。
逆の失敗もあります。広告を止めた月に来館がまだ減っていないのを見て、止めても大丈夫だったと判断するケースです。止めた分の来館の減少は、数週間遅れて出てきます。出たときには、広告を止めたことと結びつけて考える人がいなくなっています。
日数は予約台帳から3つの列で測る
測るのは難しくありません。予約台帳か問い合わせの管理表に、次の3つの日付が入っていれば足ります。
- 問い合わせを受けた日
- 見学の日取りが確定した日
- 実際に来館した日
この3列から、次の2つの日数を出します。
- 問い合わせから日取り確定までの日数
- 日取り確定から来館までの日数
足すと、問い合わせから来館までの日数になります。2つに分けて持っておく理由は、縮められる部分が違うからです。前者は返信の速さと内容で変わります。後者は空き枠の先送りで変わります。
集計の手順は次のとおりです。
- 直近の半年ぶんで、来館まで至った件だけを取り出す
- 問い合わせから来館までの日数を出して、小さい順に並べる
- 真ん中の値(中央値)と、全体の4分の3が収まる日数を読む
- 問い合わせの入口(電話、フォーム、LINE、媒体)ごとに分けて、同じ表を作る
見るのは平均ではなく中央値と4分の3の日数です。1件だけ半年先に来館した二人がいると平均が大きく引っ張られますが、中央値は動きません。4分の3の日数が分かれば、問い合わせから何日待てば、来館のおよそ4分の3が出そろうかが読めます。
件数が少ないうちは、中央値を1つの数字で言い切らず、幅で持つのが安全です。たとえば来館まで至った件が20件しかないなら、小さいほうの5件と大きいほうの5件を除いた範囲を、日数の幅として記録しておきます。
入口別に分けるのは、日数が入口によって変わることが多いからです。電話の問い合わせはその場で日取りが決まりやすく、媒体のフォームは返信を挟むぶん日取り確定が遅れる、という並びになる式場もあります。一方で、LINEは返信が早い分、日取りも早く決まる式場もあります。どちらの並びになるかは台帳を見るまで分かりません。この差が見えると、媒体ごとの効果を比べるときに、日数の差を織り込めます。
15件の台帳で読み方を練習する
測り方の感覚をつかむために、仮の台帳で読んでみます。来館まで至った15件の、問い合わせから来館までの日数を小さい順に並べると、次のようになったとします。
3、5、6、8、9、10、12、13、14、15、17、19、22、26、41(日)
平均は14.7日です。ただ、41日かかった1件が平均を押し上げていて、実際には15件のうち8件目にあたる13日が真ん中です。これが中央値です。小さいほうから数えて4分の3にあたる点は18日前後で、15件中11件は18日以内に来館しています。
この式場の人が広告を変えたら、18日たってから、来館の数字を見ればよいことになります。たとえば月初に媒体の掲載を増やしたなら、その月の20日ごろに来館を見れば、効果の大半はもう出ています。同じ月の月末まで待つ必要はありませんし、逆に、変えた翌週に来館を見ても意味はありません。
41日の1件は、日程が一度流れて組み直された二人かもしれません。こうした外れ値は消さずに、理由を台帳のメモ欄に一言残しておきます。外れ値が月に何件も出るようなら、日程変更が多いという別の課題が見えてきます。
もう1つ、この日数は広告の費用の持ち方にも関わります。掲載費は先に払い、来館と成約は数週間あとに出てきます。日数が長い式場ほど、掲載費を払ってから成果が見えるまで資金を持ちこたえる期間が長くなります。月末の資金繰りで掲載を絞りたくなったときも、この日数を知っていれば、絞った効果が来館に出るのは何週間先かを前もって見積もれます。
測った日数を使う場面は3つある
広告の効果を判断する日を決める
いちばん大きな使い道です。媒体の掲載を増やしたり止めたりしたとき、判断する日を問い合わせ側の日数と来館側の日数の合計で決めます。台帳で4分の3の日数が28日と出た式場なら、広告を変えた日から28日たつまでは、来館の数字で良し悪しを決めません。それまでは問い合わせ数、予約確定数など、先に動く数字で様子を見ます。
判断の日をあらかじめ決めておくと、月末の数字を見て気持ちが揺れることが減ります。数字を見る前に決めたルールのほうが、結果を見てから決めるルールより、都合のよい解釈が入りにくいです。
フェアの枠を出す時期を決める
日取り確定から来館までの日数が長い式場は、空き枠が先まで埋まっているということです。この日数が毎年同じ時期に伸びるなら、その時期のフェア枠は少し早めに公開したほうが、二人が予定を入れやすくなります。逆に日数が短い時期は、直前に枠を足しても埋まります。台帳の日数を月別に並べると、枠を出す時期の見当がつきます。
月次報告の並べ方を直す
月次の報告で、問い合わせ数と来館数を同じ月の列に並べると、先ほどの試算のように、広告を増やした月は来館が劣って見えます。報告の表は、問い合わせを受けた月ごとに束ねて、その月の問い合わせのうち何組が最終的に来館したかを後から埋めていく形にします。
4月に受けた問い合わせの来館数は、5月末にならないと確定しません。確定前の月は、途中経過であることが分かる書き方にしておきます。この形にすると、4月の問い合わせが多かったのか少なかったのかを、来館の数字と同じ月の話として読めるようになります。
日数を測るときに気をつけること
季節で分ける必要があります。繁忙期は来館日が先まで埋まるので、日取り確定から来館までの日数が伸びます。閑散期に測った中央値を、繁忙期の判断にそのまま使うと短く見積もります。半年ぶんを一まとめにせず、繁忙期と閑散期で別々に出してください。
来館に至らなかった問い合わせをどう扱うかも決めておきます。見学の日取りが決まらないまま止まった件と、決まったのに来なかった件では、意味が違います。後者は日程のずれやキャンセルで、前者は二人が検討の途中でやめた可能性があります。日数の集計は来館した件だけを対象にして、来館に至らなかった件は別の表で数えると、混ざりません。
問い合わせの日付が実際の問い合わせ日になっているかも、一度確かめます。媒体から転送されたメールを担当者が拾った日を問い合わせ日として入力している台帳だと、実際より日数が短く出ます。媒体の管理画面に残っている受付日と突き合わせて、数件ずつでもずれを見ておくと安心です。
まとめ
- 問い合わせの増減は、来館の増減として数週間遅れて現れる
- 遅れの中身は、日取りが決まるまで、日取りが決まってから来館まで、変更とキャンセルの3つ
- 広告を増やした最初の月は、前提を置いた試算で問い合わせが30%増えても来館は19%増にとどまり、効いていないように見えやすい
- 予約台帳の3つの日付から、問い合わせから来館までの中央値と、4分の3が収まる日数を出す
- 広告の判断は、その日数が過ぎてから来館の数字で行う
- 月次報告は、問い合わせを受けた月ごとに来館数を後から埋める形にする
- 繁忙期と閑散期は別々に測る
