集客

式場の紹介料は、媒体費と同じ成約1組で上限を決める

宝飾店、ドレスショップ、写真館、美容室。結婚が決まった二人が、式場より先に足を運ぶ場所はいくつもあります。そういう店から「うちのお客様を式場に紹介したいのですが、紹介料はどうなりますか」と持ちかけられる式場は少なくないはずです。逆に、式場のほうから「紹介してもらえませんか」とお願いに行く場合もあります。

このとき、紹介料の額を「相場がこのくらいだから」「先方がこう言っているから」で決めると、あとで媒体費と比べたときに高かったのか安かったのかが分からなくなります。僕の提案は、紹介料も媒体費と同じ物差し、つまり「成約1組あたりいくらか」に直してから上限を決めることです。この記事では、その計算のしかたと、紹介の質を確かめるために見ておく数字を整理します。

数字はすべて、説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではありません。自社の実績に置き換えて使ってください。

紹介料は、広告費とは別の財布で考えられがち

媒体への掲載費は、月ごとの固定費として予算に載ります。担当者はそれを来館数や成約数で割って、高いか安いかを見ています。

一方、紹介料は「成約したら払う」型のことが多く、毎月の予算表にはあまり載りません。成約が出たときに、経理に請求書が回ってくる形です。固定費でないぶん、気づかないうちに増えます。気づいたときには、どの店からの紹介が何組成約して、トータルでいくら払ったのかが、誰にも分からなくなっています。

ここで困るのは、紹介料が安く見えることです。1組あたり数万円という金額は、媒体の掲載費の月額に比べると小さく見えます。けれど、見るべきは額面ではなく、その1組を獲得するのにかかった費用の合計です。

成約1組あたりに直す計算

まず、媒体の側を「成約1組あたり」に直します。仮の前提を置きます。

  • ある媒体の掲載費は月60万円
  • その媒体から来館する二人は月30組
  • 来館から成約までの率は25%
  • 来館1組に対応する人件費を、仮に6,000円とする(案内1.5時間、時給換算で4,000円)

この場合、成約は30組の25%で7.5組です。費用は掲載費60万円に、来館対応の人件費30組分の18万円を足した78万円。78万円を7.5組で割ると、成約1組あたり10.4万円になります。

人件費まで足すのは、紹介も同じように来館対応の手間がかかるからです。比べるときは、両方に同じ条件で足します。

fee = 600000        # 媒体の月額掲載費(仮)
visits = 30         # 月の来館組数(仮)
rate = 0.25         # 来館から成約までの率(仮)
staff = 6000        # 来館1組の対応人件費(仮)

contracts = visits * rate
media_cost = (fee + visits * staff) / contracts
print(contracts)    # 7.5
print(media_cost)   # 104000.0

これが、紹介料の上限を決めるときの基準になります。紹介料の上限は、媒体の成約1組あたりの費用と同じか、それより低くなければ、紹介に回す意味が薄くなります。

紹介の成約率で、払える額が変わる

次に、紹介のほうを計算します。紹介された二人が来館したとき、成約率は媒体経由より高いかもしれませんし、同じかもしれません。ここは、実際に紹介を始めて組数を集めるまで分からないので、場合分けで見ます。

紹介料を「成約したら1組あたりX円」とします。紹介された二人が来館したとき、来館対応の人件費は媒体経由と同じ6,000円かかります。成約しなかった来館の人件費も、紹介料とは別に式場が持ちます。

成約率をrとすると、紹介の成約1組あたりの費用は「X + 6,000 ÷ r」です。これが媒体の10.4万円と同じになるXが、払える上限です。

media_cost = 104000
staff = 6000

for r in (0.15, 0.25, 0.40):
    cap = media_cost - staff / r
    print(r, round(cap))
#→ 0.15 64000
#→ 0.25 80000
#→ 0.4 89000

成約率が25%なら、上限は8万円。40%なら8.9万円。15%なら6.4万円です。成約率が高いほど上限は上がりますが、上がり方は緩やかです。成約率が15%から40%へ2倍以上になっても、上限は2.5万円ほどしか動きません。人件費が小さい前提だからです。

この結果から言えるのは、紹介の成約率が媒体より少し高いくらいでは、紹介料を媒体より大きく上げる余地は小さい、ということです。「紹介のお客様は成約しやすいから、紹介料を厚くしてもいい」という考え方は、人件費の水準によっては成り立ちません。

紹介料の形は、成約払いか来館払いか

紹介料の払い方は、大きく2つに分かれます。

1つ目は成約払いです。二人が契約したときにだけ払います。式場にとっては、成約しなければ費用がかからないので、リスクが小さい形です。先方の店にとっては、紹介しても入金が遅く、成約するかどうかは式場の接客次第なので、熱心に紹介する理由が薄くなりがちです。

2つ目は来館払いです。紹介した二人が来館した時点で払います。先方の店は、紹介してすぐに対価が入るので、積極的に紹介しやすくなります。式場にとっては、成約しなかった来館にも支払いが発生します。

この2つは、どちらが正しいというものではありません。成約率が高く、式場が接客に自信を持っているなら成約払いが合います。まだ紹介の成約率が分からない段階では、来館払いは成約率が低かったときに費用が膨らみます。

来館払いの上限も、同じ物差しで出せます。来館払いの金額をYとすると、成約1組あたりの費用は「(Y + 6,000) ÷ r」です。媒体の10.4万円と同じになるYは、「10.4万円 × r − 6,000円」です。成約率が25%なら2万円、40%なら3.56万円、15%なら約1万円。来館払いの金額は、成約払いの上限のおよそ7分の1から5分の2に収まります。

media_cost = 104000
staff = 6000

for r in (0.15, 0.25, 0.40):
    cap = media_cost * r - staff
    print(r, round(cap))
#→ 0.15 9600
#→ 0.25 20000
#→ 0.4 35600

来館払いにするなら、成約率が読めないうちは、上限を低く置いたほうが安全です。

紹介の質を確かめる3つの数字

紹介料を決める前後で、見ておくと役に立つ数字が3つあります。どれも、式場の予約管理に「どこから来たか」を1項目足せば出せます。

紹介元ごとの来館組数

まず、紹介元の店ごとに、月に何組が来館したかを数えます。1つの店から月に1組か2組なら、紹介料の上限を細かく詰めても、全体への影響は小さいです。逆に、特定の1店から月に10組が来るなら、その店との条件は慎重に決める価値があります。

紹介元ごとの成約率

次に、紹介元ごとの成約率です。ただし、組数が少ないうちは、1組の成約の有無で率が大きく動きます。10組未満のうちは、率を比べて順位をつけるのではなく、組数と成約数をそのまま並べて見るほうが、判断を誤りにくくなります。

紹介された二人の日取りと予算の幅

最後が見落とされやすい点です。紹介元の店が扱う客層によって、二人の日取りや予算の幅が偏ることがあります。たとえば、ドレスショップは挙式の日取りがある程度決まった二人が多く、宝飾店は婚約の段階で来る二人が多い、といった違いです。僕は、そういう偏りがあり得ると見ています。ただし、これは店の客層によって変わるので、自社の予約データで確かめる項目です。

挙式まで時間のある二人は、来館から成約までの日数が長くなる傾向があります。成約率を測る期間が短いと、紹介の効果を低く見積もってしまいます。測る期間は、紹介元ごとに、来館から成約までの日数を見て決めます。

紹介元が増えたときに崩れるもの

紹介元が2店、3店と増えてくると、いくつか問題が出ます。

1つは、どの紹介元から来たのかが、二人に聞かないと分からなくなることです。紹介状や専用の予約ページを渡していれば記録が残りますが、口頭で「あの店で聞いて」と来た二人は、予約フォームの「何で知りましたか」の欄にSNSや媒体名を書いてしまうことがあります。見学の冒頭で一言聞いておくと、後から紹介料を精算するときに揉めにくくなります。

もう1つは、紹介元の間で条件に差が出ることです。先に始めた店には高めの紹介料、後から来た店には低めの紹介料を提示すると、店同士の付き合いの中で知られていきます。条件を変えるなら、変える基準(組数、成約率、契約の時期)を、最初から全店に同じ言葉で伝えておきます。

3つ目は、紹介元の店が、自分の客に「ここで決めたほうがいい」と強く勧めてしまうことです。二人にとっては、信頼している店の勧めなので、式場の中身を比べる前に決めてしまうことがあります。それで契約した二人は、契約後に「思っていたのと違う」と感じたとき、式場と紹介元の両方に不信を持ちかねません。成約率が高く見えても、後のキャンセルや口コミで返ってくることがあります。契約後のキャンセルまで追って数えるのが、紹介の質を見る本当の指標です。

向かない式場、先に整えたほうがいい式場

紹介料の仕組みが向かない式場もあります。

  • 予約の記録に、紹介元の欄がなく、あとから集計できない式場。まず記録の欄を作るのが先です
  • 来館から成約までの日数が長く、紹介元が成約の結果を数か月待たされる式場。支払いの遅れが関係の悪化につながります
  • 紹介元に頼らなくても、検索や媒体で枠が埋まっている式場。紹介料を払って埋めるより、枠が余る日を狙った別の施策のほうが効くことがあります

逆に、空き枠が特定の曜日や時期に偏っている式場は、紹介元に「この時期の見学を優先して紹介してほしい」と頼めます。紹介料の額を上げる前に、紹介してほしい日を絞るほうが、式場にとって費用対効果が上がりやすい場面があります。

試し方

いきなり複数の店と契約するのではなく、1店と3か月だけ試します。決めておくことは次の4つです。

  1. 紹介料の払い方(成約払いか来館払いか)と、上限額。上の計算で出した額を超えない
  2. 紹介の記録のしかた。専用のURLか、紹介状か、見学の冒頭の一言か
  3. 3か月後に見る数字。来館組数、成約数、契約後のキャンセル数
  4. 続けるか止めるかの線。たとえば、3か月で来館が3組に届かなければ見直す、のように、試す前に決める

3か月後、紹介の成約1組あたりの費用を、媒体と同じ式で計算し直します。仮に上限を超えていたら、紹介料を下げるか、払い方を変えるか、止めるかを判断します。上限を下回っていたら、同じ条件で別の店にも広げます。

まとめ

  • 紹介料は、固定費の媒体費と違って予算に載りにくく、気づかないうちに増えます。媒体と同じ「成約1組あたり」に直して比べます
  • 成約払いの上限は「媒体の成約1組あたり費用 − 来館対応の人件費 ÷ 紹介の成約率」で出せます。仮の前提では、成約率25%で8万円でした
  • 来館払いは、成約率が読めないうちは低めに置きます。同じ前提で、成約率25%なら2万円が上限です
  • 見る数字は、紹介元ごとの来館組数、成約率(10組未満は組数を並べて見る)、二人の日取りと予算の幅の3つです
  • 紹介元が増えたら、紹介元の記録、条件の差、契約後のキャンセルを見ます
  • 試すなら1店と3か月。払い方、上限、記録、止める線を、始める前に決めておきます