見学したきり契約しなかった二人へ、式場は半年後に何を送るか
見学に来てくれたのに契約に至らなかった二人は、追客のメールを数通送ったところで、台帳の「失注」に移ります。その後、その二人に式場から連絡が行くことは、あまりありません。
僕は、ここに取りこぼしがあると考えています。ただし「半年たったので、その後いかがですか」と全員に送れば取り戻せる、という話ではありません。見学したきり契約しなかった二人の大半は、すでに他の式場で決めています。そこに送る連絡は、迷惑になるだけです。
この記事では、契約しなかった二人を状態で分けて、連絡する意味のある二人だけを選ぶ方法を整理します。そのうえで、半年後に何を送るのか、台帳に何を残しておくのか、効果をどう測るのかを書きます。出てくる数字は、説明のために僕が置いた仮の前提です。調査から引いた数字ではないので、自社の数字に置き換えて読んでください。
契約しなかった二人は、4つの状態に分かれる
見学後に契約がなかった二人を、ひとまとめに「失注」と呼ぶと、打ち手が見えなくなります。実際には、少なくとも次の4つの状態に分かれます。
- 他の式場で決めた
- 結婚式の時期を延期した、または保留にしている
- まだ式場を探している
- 状態が分からない
この4つで、連絡する意味がまったく違います。
1つ目は、連絡しても何も起きません。決めた式場があるので、こちらの新しい情報は届いても使われません。むしろ「まだ連絡が来る」ことで、式場の印象を下げるおそれがあります。
2つ目は、延期や保留の理由が消えたときに動きます。転勤の行き先が決まった、ボーナスが出た、親の体調が落ち着いた、入籍の時期が決まった、といった理由です。理由が消える日は、二人の側にしか分かりません。だから、理由を聞いておいた式場だけが、動き出す時期に連絡できます。
3つ目は、まだ決めていない二人です。見学から半年たっても探している二人は、探し方がうまくいっていないか、決め手に欠けている状態です。ここに「前回の見学のあとで、変わったこと」を渡すと、比べる材料が1つ増えます。
4つ目は、台帳に何も残っていない二人です。見学のメモが「検討中」だけだと、ここに入ります。この二人には、半年後の連絡を送らないほうが安全です。理由は、後で書きます。
つまり、半年後に連絡する対象は、2つ目と3つ目だけです。全員に送る一斉配信とは、考え方が逆になります。
仮に見学300組なら、連絡する相手は70組弱になる
数字で見てみます。ここから先は、全部が仮の前提です。
仮に、過去1年に見学へ来た二人が300組、そのうち成約が35%の105組だったとします。契約しなかった二人は195組です。
この195組の状態を、仮に次の割合で見ます。
- 他の式場で決めた:55%(約107組)
- 延期・保留:20%(39組)
- まだ探している:15%(約29組)
- 状態が分からない:10%(約20組)
連絡する意味があるのは、延期・保留とまだ探している二人で、合わせて約68組です。195組の35%にあたります。195組すべてに送るのと比べると、送る数は3分の1ほどになります。
この68組に、1通あたり5分で個別の文面を整えて送ると、工数は約5.7時間です。一斉配信の手間と比べても、重くはありません。
そのうえで、見込みを置いてみます。68組のうち、返信か来館予約に至る二人が5%から10%だとすると、3組から7組です。そこから成約に至るのが2割から3割なら、成約は0.7組から2組です。
この数字は、仮の前提どおりに置いただけです。大きく見えるか小さく見えるかは、式場の客単価と、この作業に使う時間で決まります。1組増えれば十分に元が取れる式場もあれば、そうでない式場もあります。大事なのは、連絡する数を先に絞ったうえで、期待値を前提つきで見積もっておくことです。見積もりがないまま始めると、続けるか止めるかが決められません。
半年後に送るのは、挨拶ではなく「変わったこと」
半年後の連絡が失敗するのは、中身が「その後いかがですか」だけのときです。二人にとっては、返す理由がありません。返信するには、まず状況を説明しなければならず、手間のほうが大きくなります。
連絡を受け取る側にとって意味があるのは、見学のときから変わったことです。たとえば次のようなものです。
- 希望していた時期や曜日に、新しく空きが出た
- 見学のとき迷っていた点(料理、広さ、アクセス、料金の内訳)に関わる変更があった
- 同じ人数帯の実例が、新しく公開された
- 見学のときになかった設備や、プランの改定があった
- 公式サイトに、見学のとき聞かれた質問への答えが載った
どれも、「見学のとき、あなたは何に迷っていたか」と結びつけられるものです。迷っていた点を台帳に残していなければ、結びつけられません。ここが、半年後の連絡の成否を分けます。
変わったことがない二人には、送りません。送る理由がないからです。月に1回、台帳を見て「今月変わったことと、迷っていた点が重なる二人」だけに送る。そう決めておくと、一斉配信ではなく、1組ずつの連絡になります。
台帳に残す項目は5つで足りる
半年後の連絡に必要なのは、見学のときのメモのうち、次の5つです。
- 見学した日
- 希望していた挙式の時期(月か季節の幅でよい)
- 迷っていた点を1つ(二人の言葉のまま)
- 契約しなかった理由として聞いた言葉(聞けた場合)
- 今後の連絡を受けてよい手段(メール、LINE、電話、不要)
特に3と5が大事です。3があれば、変わったことと結びつけられます。5がなければ、連絡そのものができません。
5について補足します。見学の申し込みのとき、追客の連絡を受けることには同意していても、半年後の連絡まで同意しているとは限りません。見学の最後に「もし、あとで空きや変更が出たら、お知らせしてもいいですか」と聞いて、手段を選んでもらう。この一言を台帳に残すだけで、半年後の連絡が堂々と送れます。メールで送るなら、配信を止められる入口も必ずつけます。
聞けなかった二人は、4つ目の「状態が分からない」に入ります。送らないほうが安全だと書いたのは、このためです。連絡してよいかが分からない二人に、新しい情報を送るのは、リスクのほうが大きくなります。
文面は3つの型で足りる
半年後の連絡は、長くしないほうが返事を受け取りやすくなります。型は3つあります。
型1:変わったことを1つだけ伝える
以前、〇月に見学にお越しいただきました。そのとき、料理の量が気になる、とおっしゃっていたのを覚えています。先月から、コース内容を見直しました。変更点は下のとおりです。お急ぎでなければ、ご覧ください。
迷っていた点と、変わったことを、1通に1つだけ書きます。複数書くと、どれも印象に残りません。
型2:空きが出たことを伝える
以前、〇〇の時期でご検討と伺っていました。その時期の土曜日に、新しく空きが出ましたので、お知らせします。
希望時期が台帳にあるから書ける文面です。期限で急かす書き方はしません。空きがあることを、事実として伝えます。
型3:延期の理由を前提にした確認
以前、転勤の行き先が決まるのを待ってご検討、と伺っていました。もし日程が見えてきた頃でしたら、改めて空きをお伝えします。必要なければ、このまま何も返信いただかなくて大丈夫です。
延期の理由を聞いていた二人に向けて送ります。返信を求めすぎず、「必要なければ返信しなくてよい」と書いておくと、受け取る側の負担が軽くなります。
どの型でも、締めは「お知らせしました」「ご覧ください」にとどめます。「ぜひもう一度お越しください」のような誘いは書きません。誘うかどうかは、二人が決めることだからです。
連絡してはいけない二人と、やめどき
連絡しない二人を、先に決めておきます。
- 他の式場で決めたと、はっきり言った二人
- 連絡を不要と選んだ二人
- 契約の条件や対応で、強い不満を示した二人
- 連絡してよいかが分からない二人
他で決めた二人に、変わったことを送り続けても、成約は起きません。そのうえ、式場への印象だけが落ちます。結婚式は、友人や親族に話題が回りやすい買い物です。決めなかった式場の印象が悪いと、その二人から周りに伝わる評判にも影響します。
やめどきも、先に決めます。半年後の連絡を1回送り、反応がなければ、その二人にはもう送りません。次に送るのは、台帳の項目に当てはまる大きな変化があったときだけで、多くても年に1回です。追客を何通で止めるかを決めるのと同じ考え方で、半年後の連絡にも上限を置きます。
もう1つ大事なのは、返信が来た二人への対応です。「その後も探している」と返ってきたなら、見学の予約を取る前に、前回の見学で迷っていた点を、もう一度こちらから確認します。同じ説明を最初からやり直すと、二人は「前と同じことを言われた」と感じます。台帳に残した迷いの内容を、そのまま使います。
効果の測り方は3つだけ
続けるか止めるかを決めるには、測る数字が要ります。3つに絞ります。
- 送った組数に対する、返信か来館予約の割合
- そのうち、成約した組数
- 配信を止めた、または不快と返信してきた組数
3つ目は、止めるときの判断に使います。成約が増えても、配信停止が目立って多いなら、送る相手の絞り方を見直します。逆に、返信が少なくても配信停止がほとんどなく、成約が1組でも出ているなら、そのまま続ける価値があります。
ここで大事なのは、返信や来館の件数だけで判断しないことです。半年後の連絡は、件数を取りにいく施策ではありません。成約に至る可能性のある二人を、取りこぼさないための仕組みです。送った数が少なくても、1組の成約が出れば、式場にとっては十分な成果になります。
測るために、送るときに「半年後の連絡」という印を台帳につけておきます。来館予約が入ったとき、予約の入口がどこだったかを聞く式場は多いと思いますが、その回答に「前に見学した」という選択肢がなければ、半年後の連絡の効果は、広告や検索の成果に混ざって見えなくなります。選択肢を1つ足すだけで、測れるようになります。
始めるなら、直近3か月の見学者だけでいい
過去1年の見学者を全部掘り起こそうとすると、台帳に迷いのメモが残っていない二人が大半になり、手が止まります。
始めるなら、直近3か月の見学者から、迷っていた点が台帳に残っている二人だけを選びます。その二人に、型1か型2で1通ずつ送る。ここまでなら、数時間で終わります。
結果が見えたら、対象を広げるかどうかを決めます。広げるときも、台帳に迷いのメモがない二人は対象にしません。メモを残す習慣のほうを先に作ります。見学のたびに、迷っていた点を1行書く。この習慣が、半年後の連絡の材料になります。
まとめ
- 見学したきり契約しなかった二人の多くは、他で決めている。全員に半年後の連絡を送らない
- 契約しなかった二人は「他で決めた」「延期・保留」「まだ探している」「状態が分からない」に分かれ、連絡する意味があるのは延期・保留とまだ探している二人だけ
- 仮に見学300組・成約35%なら、未契約195組のうち連絡の対象は約68組。送る数は3分の1ほどに絞れる
- 半年後に送るのは挨拶ではなく、見学のとき迷っていた点に結びつく「変わったこと」
- 台帳には、見学日・希望時期・迷っていた点・契約しなかった理由・連絡してよい手段の5つを残す
- 文面は、変わったことを1つ伝える型、空きを伝える型、延期の理由を前提にした確認の型で足りる
- 連絡は1回で止め、反応がなければ次は年に1回まで。他で決めた二人と、連絡の可否が分からない二人には送らない
- 測るのは、返信・来館の割合、成約数、配信停止の数の3つ。始めるなら直近3か月の見学者から
