星1つの口コミで平均が下がる幅は件数で決まり、元に戻すのに要る5つ星の数は平均点で決まる。平均4.5なら7件、4.8なら19件
「星1つが付いてしまって、平均が下がりました」。口コミを見ている式場の方から、こういう話を聞くことがあります。ここで多くの人が考えるのは、「1つの悪い口コミが全体にどれだけ響くか」です。ただ、計算してみると、響き方には2種類あって、それぞれ決まる要因が別でした。
先に結論を書きます。星1つが平均を下げる幅は、口コミの件数で決まります。件数が少ないほど大きく下がります。一方、下がった平均を元に戻すのに必要な5つ星の数は、件数ではなく、もともとの平均点だけで決まります。平均4.5なら7件、4.8なら19件です。平均が高い式場ほど、1件の傷を直すのに高くつきます。
この記事に調査データは出てきません。口コミの平均は足し算と割り算でできているので、前提を置けば計算だけで言えることが多いからです。式場の実績や業界の傾向として書くのではなく、「仮にこうだとすると」という計算として読んでください。
平均点は何でできているか
口コミの平均は、星の合計を件数で割った数です。星の数は1から5までで、平均が4.5の式場に40件の口コミがあれば、星の合計は180です。
ここに星1つが1件入ると、合計は181、件数は41になります。平均は4.415です。下がった幅は0.085になります。
この幅は、次の式で出せます。
(いまの平均 − 1) ÷ (件数 + 1)
平均が4.5のとき、分子は3.5で固定です。分母の件数が大きくなるほど、下がる幅は小さくなります。計算結果を並べると次のとおりです。
- 10件:4.5 → 4.182(0.318下がる)
- 20件:4.5 → 4.333(0.167下がる)
- 40件:4.5 → 4.415(0.085下がる)
- 80件:4.5 → 4.457(0.043下がる)
- 160件:4.5 → 4.478(0.022下がる)
- 320件:4.5 → 4.489(0.011下がる)
件数が2倍になると、下がる幅はほぼ半分になります。10件の式場と320件の式場では、同じ星1つの傷が約29倍違います。
ここまでは、直感と合っていると思います。件数が多いほど1件の影響は薄まる、という話です。面白いのは、この次です。
元に戻すのに要る5つ星は、件数と関係ない
星1つが付いた後、平均を元の4.5まで戻すには、5つ星が何件要るでしょうか。
件数が20件でも160件でも、答えは同じ7件です。式で書くと、必要な5つ星の数は次のようになります。
(いまの平均 − 1) ÷ (5 − いまの平均)
平均が4.5なら 3.5 ÷ 0.5 で、ちょうど7です。件数がどこにも出てきません。件数が多い式場は、下がる幅が小さい代わりに、戻すのに必要な数は変わらない、ということです。
つまり、件数が多い式場は、傷が浅くて済みます。でも、傷が浅いからといって、治りが早いわけではありません。浅い傷を治すにも、深い傷を治すにも、同じ数の5つ星が要ります。
平均点を変えて計算すると、次のようになります。
- 平均4.0:3件
- 平均4.3:5件(4.71を切り上げ)
- 平均4.5:7件
- 平均4.6:9件
- 平均4.7:13件(12.3を切り上げ)
- 平均4.8:19件
- 平均4.9:40件
平均が4.9に近づくほど、1件の星1つを取り返すのに要る5つ星が急に増えます。上限の5.0に近い場所では、5つ星1件の貢献が小さくなるためです。平均4.9の式場では、5つ星を1件足しても、平均はほとんど上がりません。
ここから、運営の側で言えることがあります。平均が高い式場ほど、星1つが付いた後の回復に時間がかかります。逆に言えば、平均4.0の式場にとって、星1つの傷は、5つ星3件で消せる軽いものです。
星2つと星3つなら、どれくらい違うか
星1つだけを特別視する必要はないので、星2つと星3つも計算しました。平均4.5の式場に1件付いたときに、平均が下がる幅です。
- 20件:星1で0.167、星2で0.119、星3で0.071
- 40件:星1で0.085、星2で0.061、星3で0.037
- 80件:星1で0.043、星2で0.031、星3で0.019
- 160件:星1で0.022、星2で0.016、星3で0.009
星3つの影響は、星1つの約43%です。星1つが付くのは目立ちますが、星3つが数件続く方が、合計の傷は大きくなる場合があります。たとえば40件の式場で、星3つが2件続くと、平均は約0.07下がります。これは星1つ1件の0.085に近い数字です。
星1つは強い言葉が付いていることが多いので、気持ちの上では重く感じます。ただ、平均点の算術だけで見れば、星1つ1件は星3つ2件より少し重い程度の差です。目立つ1件の対応に時間をかけすぎて、静かに付いた星3つの理由を読み落とす方が、損かもしれません。
年72組の式場で、回復は何か月かかるか
次に、時間の話をします。仮の式場を置きます。
- 年に72組が挙式する(月平均6組)
- 口コミの平均は4.5
- 口コミの依頼を出すと、何割かの二人が書いてくれる
- 書いてくれた口コミは、すべて5つ星と仮定する
書いてくれる割合の実際の値は、僕は調べられていません。そのため、10%、20%、30%の3つを置いて、結果の幅を見ます。
星1つを取り返すのに要る5つ星は7件です。年72組のうち、書いてくれる割合ごとの、7件が集まるまでの期間は次のとおりです。
- 10%の場合:年7.2件。7件集まるまで約11.7か月
- 20%の場合:年14.4件。約5.8か月
- 30%の場合:年21.6件。約3.9か月
書いてくれる割合が10%から30%に上がると、回復の期間は約12か月から約4か月に縮みます。星1つが付く確率は変えられませんが、書いてくれる割合は、依頼の出し方で変えられます。
ここで注意が要るのは、「すべて5つ星」という仮定が甘いことです。現実には、書いてくれる口コミの中に星4つも混ざるはずです。星4つは、平均が4.5の式場にとっては、平均を下げる側に働きます。実際の回復は、ここで出した月数より長くなると考えてください。
星4つは、平均4.5の式場にとって「悪い口コミ」である
この点は、計算してみて僕自身が意外でした。平均が4.5のとき、星4つの口コミが1件入ると、平均は下がります。20件なら4.5が4.476になり、0.024下がります。
「満足している」と書いてくれた二人の星4つでも、平均4.5の式場には、わずかに傷になります。星4つが悪いわけではなく、平均を引き上げるのは5つ星だけだ、ということです。
平均4.5を、5つ星と星4つだけで作ると、5つ星が半数、星4つが半数です。5つ星と星1つだけで作るなら、5つ星が87.5%、星1つが12.5%になります。同じ平均4.5でも、中身はまったく違います。平均点だけを見て「良い式場」と判断するのは、実は粗い見方です。
僕は、運営の側でも、平均点より分布を見る方がいいと思っています。星4つと5つ星が半々の式場と、5つ星が大半で星1つが少し混ざる式場では、読んだ二人の受け取り方が変わるはずです。ただし、どちらが選ばれやすいかは、僕は確かめていません。ここは断定しません。
件数が少ない式場は、1件の影響が大きい
最後に、件数が少ない式場の場合を見ます。口コミを集め始めたばかりの式場では、件数が5件から20件のあたりです。
平均4.8の式場に星1つが付いたときの、下がる幅は次のとおりです。
- 5件:4.8 → 4.167(0.633下がる)
- 10件:4.8 → 4.455(0.345下がる)
- 20件:4.8 → 4.619(0.181下がる)
- 40件:4.8 → 4.707(0.093下がる)
5件の式場では、星1つ1件で、平均が0.6以上下がります。口コミの表示が小数第1位までだと仮定すると、4.8が4.2に見えます。一方、40件あれば、4.8が4.7になるだけです。
件数が少ない時期は、平均点そのものが不安定です。この時期に平均点を気にしすぎると、1件の入り方で一喜一憂することになります。件数が少ない間は、平均よりも、書かれた中身と、件数を増やす手を優先する方が、判断を誤りにくいと思います。
表示の丸めで見え方が変わる
もう1つ、見落としやすいことがあります。口コミの平均が小数第1位まで四捨五入して表示されるとすると、実際の平均が4.45以上なら「4.5」と表示されます。4.449なら「4.4」です。
実際の平均が4.52の式場を考えます。星1つが付いたとき、表示が「4.4」に落ちるまでに、何件の星1つが必要でしょうか。
- 20件:1件
- 40件:1件
- 80件:2件
- 160件:4件
20件と40件の式場では、星1つが1件付くだけで、表示が「4.5」から「4.4」に落ちます。逆に160件の式場は、4件まで耐えます。
もう一つの方向も見ます。20件で星1つが付いた後の4.333を、表示が「4.5」に戻るところまで直すには、5つ星が5件要ります。40件なら3件です。80件の式場は、星1つが付いても平均が4.457なので、表示は「4.5」のまま動きません。
表示の丸めは、件数が少ない式場ほど、星1つの影響を強く見せます。ただし、読む側が平均点の何を見て判断しているかは、僕は調べられていません。「4.5を下回ると候補から外す人がいる」というのも、確かめた事実ではなく、計算の都合で置いた仮定です。
運営の側でできること
計算から言えることを、運営の目線に直します。
星1つが付いたときの対応は、2つに分けて考えられます。1つは、その1件にどう答えるかです。もう1つは、平均を支える5つ星を、どのペースで増やすかです。前者は1件ごとの勝負ですが、後者は仕組みで動かせます。
仕組みで動かせる部分を整理します。
- 依頼を出すタイミング:二人の気持ちが高いのは、挙式の当日から数日の間です。ここを逃すと、書いてくれる割合が下がると考えられます(これは僕の推測で、確かめたデータはありません)
- 依頼を出す相手:全員に出すのか、満足度が高かった二人だけに出すのか。後者に偏ると、評価が不自然に高くなります。口コミの運営ルールに触れる可能性があるので、媒体の規約を確かめてください
- 依頼を出す手段:当日のカード、帰り際の声かけ、後日のメッセージ。どれが書いてくれる割合を上げるかは、式場ごとに試すしかありません
書いてくれる割合を10%から20%に上げると、星1つの傷が治る月数は、約12か月から約6か月に縮みます。月数が半分になるのは、依頼の出し方を変えるだけで動く部分です。
では、星1つが付いた口コミに返信するのはどうでしょうか。返信が平均点を直接動かすことはありません。ただ、これから見る二人にとって、返信は「この式場が問題にどう答える会場か」を読む材料になるはずです。返信の効果については、別の記事で扱っています。この記事で言えるのは、返信は平均点を戻す手ではなく、読んだ人の受け取り方を整える手だ、というところまでです。
計算の限界
ここまでの計算には、いくつか前提があります。
- 口コミは星の平均点だけで、媒体ごとの重み付けや、新しい口コミを優先する並べ方は考えていません。媒体によっては、平均点の出し方が単純平均ではない可能性があります
- 星1つの口コミが、読んだ二人の来館や成約をどれだけ減らすかは、計算に入れていません。ここは、式場ごとに違うはずです
- 書いてくれる割合の10%、20%、30%は、置いた数字です。実績ではありません
- 年72組、平均4.5は、仮の式場の数字です
平均点の算術は、いつでも誰が計算しても同じ答えになります。だからこそ、自分の式場の件数と平均点を入れて、一度計算してみる価値があります。今の件数なら、星1つで平均がいくつ下がるのか。戻すのに5つ星が何件要るのか。年間でそれが何か月分なのか。この3つの数字が分かるだけで、口コミの対応に使う時間の配分が決めやすくなります。
まとめ
- 星1つが平均を下げる幅は、(平均 − 1) ÷ (件数 + 1) で決まる。平均4.5なら、20件で0.167、40件で0.085、160件で0.022下がる
- 下がった平均を戻すのに要る5つ星の数は、件数に関係なく、平均点だけで決まる。平均4.0で3件、4.5で7件、4.8で19件、4.9で40件
- 平均が高い式場ほど、星1つの傷は治りにくい。件数が多い式場は傷が浅いだけで、治るまでの数は変わらない
- 年72組の仮の式場で、書いてくれる割合が10%なら回復に約12か月、30%なら約4か月。星1つが付く確率は変えられないが、書いてくれる割合は依頼の出し方で動かせる
- 平均4.5の式場にとって、星4つは平均を下げる側に働く。平均点だけでなく、分布を見る方が判断を誤りにくい
- 件数が少ない間は、1件で平均が大きく動く。平均より、書かれた中身と、件数を増やす手を優先する
