媒体の掲載費を月40万円から100万円に上げても、平均の成約単価は25万円。追加した60万円分の成約単価は60万円になる
結婚情報媒体の掲載プランを上げるかどうかを、平均の成約単価で決めていると、判断を誤りやすくなります。平均は、最初の1件から最後の1件までを全部ならした数字です。上位プランに変えて増える問い合わせは、最後に足した分だけです。その分だけで単価を出すと、平均よりずっと高くなるのが普通です。
この記事の数字はすべて、僕が置いた仮の式場の前提で計算したものです。どこかの調査や実在の式場の実績ではありません。掲載プランの料金も、問い合わせの増え方も、自分の媒体の数字に置き換えて読んでください。
仮の式場の前提
媒体の名前や料金表は式場によって違うので、次のように置きます。
- 掲載プランは3段階。月40万円(A)、月70万円(B)、月100万円(C)
- 問い合わせ件数は、Aで月20件、Bで月26件、Cで月30件。上のプランほど掲載位置や枠が増えて、問い合わせが増える想定です
- Aの20件は、来館率50%、来館からの成約率30%。つまり問い合わせ1件あたりの成約は0.15組です
- AからB、BからCで増える問い合わせは、質が少し落ちると想定します。来館率40%、成約率25%で、問い合わせ1件あたり0.10組です
- 追加で成約した1組から得られる貢献利益(売上から変動費を引いた額)は、仮に120万円とします
増え方が逓減するのは、掲載枠の上位に出るほど、すでに見てくれている層に重ねて見せる割合が増えるからだと考えています。ただし、実際にどれだけ逓減するかは媒体と地域で違います。ここは数字を置いただけの部分です。
平均で見るとプランは割安に見える
3つのプランを、平均の単価で並べます。
| プラン | 月額 | 問い合わせ | 成約(月) | 問い合わせ単価 | 成約単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 40万円 | 20件 | 3.0組 | 2.0万円 | 13.3万円 |
| B | 70万円 | 26件 | 3.6組 | 2.7万円 | 19.4万円 |
| C | 100万円 | 30件 | 4.0組 | 3.3万円 | 25.0万円 |
Aの成約単価が13.3万円で、Cでも25.0万円です。追加の貢献利益が120万円の組を取れるなら、成約単価25万円は、どう見ても安い買い物に見えます。媒体の営業担当者が見せるのも、たいていこの形の表です。平均で見る限り、上のプランに上げない理由が見つかりません。
追加分だけで見ると景色が変わる
同じ数字を、プランを上げたことで増えた分だけで出し直します。
- AからBに上げる:費用は月30万円増、問い合わせは6件増、成約は0.6組増。追加分の成約単価は50万円
- BからCに上げる:費用は月30万円増、問い合わせは4件増、成約は0.4組増。追加分の成約単価は75万円
- AからCにまとめて上げる:費用は月60万円増、成約は1.0組増。追加分の成約単価は60万円
平均の25万円に対して、Cに上げた60万円分だけで見ると、1成約あたり60万円です。
要点は、同じプランの話で、平均が25万円、追加分が60〜75万円と、2.5倍から3倍の開きがあることです。意思決定の対象は「今のプランを続けるか」ではなく「いまのプランに足す分を買うか」なので、後者の数字で見るのが筋です。
追加の単価が合うかは、貢献利益で決まる
追加分の成約単価が50万円や75万円だとして、それが高いのか安いのかは、貢献利益との比較でしか決まりません。貢献利益を3通りに置いて、増分の損益を出します。
| 追加成約1組の貢献利益 | A→Bの月次損益 | B→Cの月次損益 |
|---|---|---|
| 60万円 | +6万円 | −6万円 |
| 90万円 | +24万円 | +6万円 |
| 120万円 | +42万円 | +18万円 |
貢献利益が120万円なら、CまでBも上げて利益が出ます。90万円でも一応は出ます。60万円まで下げると、Cは赤字に回ります。
ここで確かめたいのは、自分の式場で追加成約1組の貢献利益がいくらか、という一点です。平均の客単価ではなく、変動費(衣装、料理、装花、プランナーの残業、外部への支払い)を引いたあとに残る額で考えます。値引きで取った組なら、さらに下がります。
損益分岐になる追加問い合わせ件数も出せます。貢献利益120万円で、追加分の問い合わせ1件あたりの成約が0.10組なら、月額30万円の追加を回収するのに必要な追加問い合わせは2.5件です。貢献利益が60万円に下がれば、5件です。プランを上げる前に「追加で何件増えれば回収できるか」を先に決めておけば、あとで増えたのか増えなかったのかを判断できます。
追加分の質が下がる場合
先ほどの計算は、追加分の問い合わせが問い合わせ1件あたり0.10組の成約になる、という置き方でした。基準のAは0.15組でしたから、すでに3分の2に下げてあります。もっと下がる場合を見ます。
追加分の問い合わせ1件あたりの成約を変えて、B→C(月30万円増、追加4件)の成約単価を出します。
- 0.15組(Aと同じ質):追加成約0.6組、成約単価50万円
- 0.10組:追加成約0.4組、成約単価75万円
- 0.075組:追加成約0.3組、成約単価100万円
- 0.05組:追加成約0.2組、成約単価150万円
貢献利益120万円なら、0.075組までは回収できます。0.05組になると、150万円使って120万円しか戻らない計算です。
追加分の質が下がりやすい理由を、仕組みで3つ挙げます。1つ目は、上位のプランで新しく見てもらえる層は、すでに他の媒体や検索で知っていて、迷っている程度の人が多いこと。2つ目は、掲載位置が上がって増える問い合わせは、比較のために連絡する人の割合が高いこと。3つ目は、同じ人が別の経路でも問い合わせてくるため、媒体の件数としては増えても、式場にとっての新規は増えていないことです。3つとも、僕が仕組みとして考えているだけで、数字で確かめた話ではありません。自分の式場でどれが起きているかは、追加分の内訳を見ないと分かりません。
追加分の成約が入る枠があるか
もう一つ、数字の外にある条件があります。追加で成約した組に、挙式日の空きがあるかどうかです。
別の記事でも書きましたが、人気日は埋まり、閑散期に空きが残る構造の式場が多いです。繁忙期に媒体の費用を上げて問い合わせを増やしても、希望される日がすでに埋まっていれば、追加の問い合わせは成約になりません。成約しても、閑散期の日に回ってもらうために値引きが入れば、貢献利益は120万円から下がります。
目安として、プランを上げる前に確かめるのは次の2点です。
- 追加の問い合わせが希望しそうな日(人気日、土日)に、残り枠が何組あるか
- その枠が、プラン変更の効果が出る時期(掲載から来館まで、来館から契約まで、おおむね1〜2か月)に、まだ空いているか
枠が少ないなら、掲載費を上げる前に、枠を空けるか、閑散期の日を魅力的に見せるほうが先です。
追加分を測る方法
追加分は、媒体の管理画面の件数だけでは分かりません。プラン変更の前後で、次の数字を並べます。
- 変更前の4週間と、変更後の4週間の、媒体経由の問い合わせ件数
- 同じ期間の、公式サイト、検索、SNS、紹介経由の件数(媒体を変えていない経路)
- 来館時のヒアリングで「いつから知っていたか」「他に何を見たか」
媒体経由が6件増えて、他の経路が3件減っていたら、純粋な追加は3件です。経路が減っていなければ6件です。この差で、追加分の成約単価は倍変わります。
期間は最低でも4週間、できれば8週間が望ましいです。問い合わせは季節で動くので、前年の同じ時期との比較も付けます。ただし、前年に別の変更があった場合は参考程度にします。測れる範囲は限られていて、1回の変更だけで結論を出さないほうが安全です。
逆に、平均が高く見えても上げてよい場合
ここまでは、平均が安く見えて追加分が高い、という形でした。逆の形もあります。
掲載したばかりで、プロフィールや写真が整っていない最初の1〜2か月は、平均の問い合わせ単価が高く見えます。この期間の数字で「この媒体は高い」と見切ると、改善後に出るはずだった成果も含めて捨てることになります。見るべきなのは、掲載内容を整えたあとの追加分です。
もう一つは、プランを上げた分が、他の媒体を減らす費用の置き換えになる場合です。たとえばCに上げて100万円にする代わりに、別の媒体を月40万円分止めるなら、増える費用は60万円ではなく20万円です。この場合は、止めた媒体の追加分の単価と、新しく足す媒体の追加分の単価を比べます。媒体を止めたときの問い合わせの減り方は読みにくい、という話は別の記事で扱いました。
プランを変える前に決める3つの数字
プラン変更の稟議を出す前に、次の3つを紙に書いておくと、あとで検証しやすくなります。
- 追加成約1組の貢献利益。変動費を引いた額で、値引きの組は下げる
- 回収に必要な追加問い合わせ件数。月額の増分を、貢献利益と、追加分の問い合わせ1件あたりの成約で割った数
- 見直す日。変更から8週間後に、追加分の件数と成約を見る日付
3つとも、掲載を決める営業の場に出せる数字ではないので、営業担当者は教えてくれません。自分で置くしかありません。置いた数字が当たっているかどうかは、見直す日に分かります。外れていたら、プランを下げて構いません。契約の縛り(最低掲載期間)があるなら、その期間分の費用は、変更前に損失の上限として数えておきます。
まとめ
- 掲載プランを上げる判断は、平均の成約単価ではなく、上げた分だけの成約単価で見る
- 仮の式場では、月40万円から100万円に上げても平均は25万円。追加した60万円分は、1成約あたり60万円になる
- 追加分が回収できるかは、追加成約1組の貢献利益で決まる。120万円なら黒字、60万円なら赤字になる場合がある
- 追加分の問い合わせは質が下がりやすい。追加分の成約率が半分になると、成約単価は倍になる
- 人気日の枠が埋まっている時期は、問い合わせが増えても成約に変わらない
- 変更前に、貢献利益、回収に必要な追加件数、見直す日の3つを決めておく
