海外在住の二人の一時帰国見学は、出国後に決めることを期限つきで渡す
海外で暮らす二人が一時帰国のあいだに式場を探すとき、式場がやるべきことは見学の枠を多く出すことではありません。見学の日に決めきれなかった二人が、日本を発ったあとも話を進められるように、「出国後に決めること」と、その期限を先に渡しておくことです。
一時帰国は、二人にとって一度きりの機会に近いものです。滞在は1週間から2週間ほどで、その間に親族との食事、役所の手続き、友人との約束も入ります。式場の見学に使える日は、思っているよりずっと少ない。そこで式場が「次の週末にまた来てください」と言っても、二人は次の週末に日本にいません。
この記事の結論は、一時帰国の二人には、滞在中に契約を迫るより、出国後の連絡で何を決めるかの一覧と期限を、見学の最後に1枚で渡したほうがいい、ということです。理由と、その1枚に何を書くか、仮の会場で計算するとどうなるか、落とし穴を順に書きます。
この記事に出典の数字はありません。以下の数字は、計算しやすいように僕が置いた仮のものです。業界の平均ではないので、自分の会場の数字に置き換えて読んでください。
一時帰国の二人が置かれている条件
まず、国内で暮らす二人との違いを並べます。違いは3つだけです。
1つ目は、日本にいる日数が決まっていること。航空券を取った時点で、帰国日と出国日が固定されています。滞在が10日なら、見学できる日は多くて3日か4日。しかも到着直後は時差で動けず、出国前日は荷造りで動けません。実際に動ける日は、さらに減ります。
2つ目は、見学を重ねて比べる、という普通の進め方ができないこと。国内の二人なら、1軒目を見て、1週間後に2軒目を見て、3軒目で決める、という順番が取れます。一時帰国の二人は、同じ日に3軒回るか、1軒も見ずに終わるかになりやすい。
3つ目は、帰ったあとの連絡手段が限られること。時差があるので電話は繋がりにくい。メールやLINEは返せても、会場の空気が分からないまま判断することになります。
この3つを合わせると、一時帰国の二人は「見る機会が少なく、決める時間も少なく、決めたあとに確かめる手段も少ない」状態です。式場から見ると、成約までの距離が長いお客さまに見えます。でも二人の側から見れば、決めるために必要な材料が足りないだけです。
滞在中に決めるものと決めなくていいもの
見学で全部を決めようとすると、二人にも式場にも無理が出ます。僕なら、決めるものを2つの箱に分けて渡します。
滞在中に決めたほうがいいのは、会場を実際に見ないと判断できないことです。チャペルの広さと雰囲気、披露宴会場の天井の高さ、親族の動線、料理の味。これは写真や動画では埋まらない部分なので、日本にいる間に見てもらいます。
出国後でも決められるのは、書類とやり取りで進むことです。見積もりの細かい項目、衣装の選定、招待状の文面、日取りの最終確定。ここは、オンラインで進められます。
この線引きを、式場の側が先に言わないと、二人は「ここで決めないと終わる」と思い込みます。思い込んだ二人は、2つの行動のどちらかを取ります。焦って決めて、あとで不安になるか、決められないまま帰って連絡が止まるか。どちらも式場には良くありません。前者は契約後の不安がキャンセルの種になり、後者は追客の対象になるだけで返事が来ない。
だから見学の最後に、二人の滞在日程を聞いたうえで、次の2行を書いた紙を渡します。
- 日本にいる間に見てもらうこと(残りの日程で見る場所を書く)
- 出国後に一緒に決めること(期限つきで書く)
渡す1枚に書くこと
この紙は、立派なものでなくていいと思います。A4を1枚、手書きでも構いません。書く項目は次の5つです。
1つ目は、二人の出国日。聞いたその日付を、そのまま書きます。式場が二人の予定を覚えていることが、それだけで伝わります。
2つ目は、出国までに見てほしいもの。たとえば「チャペルの夕方の光は、明日の17時に見られます」のように、日付と時刻まで書きます。「ご都合のよいときに」は書きません。滞在の短い二人には、選ぶ手間が負担になるからです。
3つ目は、出国後に決めること。見積もりの再提示、日取りの仮押さえの延長、衣装の下見。項目ごとに、いつまでに誰が何を送るかを書きます。
4つ目は、仮押さえの期限。ここが最も大事です。国内の二人と同じ期限、たとえば1週間で切ると、二人は出国した直後に期限が来ます。滞在が10日で、出国後に家族と相談する時間を見込むなら、期限は出国日から数えて何日かを決めて書くほうが自然です。
5つ目は、オンライン面談の候補日時。時差があるので、二人の現地時間と日本時間を両方書きます。時差の計算を二人にさせないためです。
仮の会場で計算してみる
数字を置いて、どれくらい効くのかを見てみます。前提はすべて仮です。
月に一時帰国の二人が5組来館する会場があるとします。この5組のうち、見学した滞在中に契約する組が1組、出国後に連絡を取り続けて契約する組が1組、連絡が途切れて終わる組が3組、とします。成約は2組、取りこぼしが3組です。
ここで、紙を渡すようにしたことで、連絡が途切れる3組のうち1組が出国後の面談まで進むと仮定します。面談まで進んだ組が全員契約するとは限らないので、その半分、つまり0.5組が契約するとします。月の成約は2.5組になります。
平均単価を350万円と置くと、0.5組の差は175万円です。これは1か月の話で、半年続けば1,050万円。紙1枚と面談の時間を足しても、釣り合いは悪くなさそうです。
ただ、ここには置きすぎた前提があります。「1組が面談まで進む」という部分は、僕の想定であって、実績ではありません。実際には0組かもしれないし、2組かもしれない。だから、自分の会場でやるなら、最初の3か月は一時帰国の二人の数と、出国後の面談に進んだ数だけを記録します。成約まで見るのは、その後でいい。
計算の中で動かしているのは、「連絡が途切れた組が、面談に戻る確率」ひとつです。この数字だけを見れば、紙が効いているかどうかは判断できます。
見学の順番を二人の日程に合わせる
滞在が短いと、見学を何日目に置くかでも結果が変わります。到着直後の見学は、時差で二人の頭が回っていません。説明を聞いても残らず、帰り道に「どこが良かったか分からない」となりやすい。かといって出国の前日に置くと、見たあとに考える日がありません。
僕なら、滞在の前半の後ろ寄りか、中盤に置くことを勧めます。見学のあとに2日か3日あれば、二人は親族に話し、自分たちの中で整理できます。そのうえで出国前に、見積もりの確認だけの短い再訪か、電話での確認を1回入れる。再訪は会場を見直す時間にせず、質問を持ち寄る時間にします。
予約を受けるとき、式場から滞在の日程を聞いておくと、この置き方が提案できます。「いつがご都合よいですか」と聞くより、「滞在が10日なら、見学は4日目あたりが落ち着いてご覧いただけます」と返すほうが、二人は決めやすい。選択肢を渡すのではなく、置き方を渡す、ということです。
国内の二人に同じ紙を渡してはいけない理由
この紙を、国内の二人全員に出す会場もあるかもしれません。僕は、一時帰国の二人に限ったほうがいいと考えています。
国内の二人は、次の週末にまた来られます。そこで出国後の期限を書いた紙を渡すと、「期限を切られた」と受け取られます。一時帰国の二人にとっての期限は、帰ったあとも話を続けるための目印です。同じ紙でも、受け取る側の事情で意味が逆になります。
また、紙に書く内容は、二人の滞在日程から作ります。日程を聞かずに配る紙は、ただの資料になります。見学の最初に滞在日程を聞き、最後にそれを紙にする。この順番が崩れると、効果は出ません。
落とし穴
やってみて起きやすいことを、先に挙げておきます。
まず、出国後の連絡が、担当者個人の頑張りに乗ってしまうこと。時差のある面談は、夜や早朝に入ります。担当者が1人で抱えると、続きません。面談の時間帯は、会場として「この曜日のこの時間」と決めて、担当が交代できるようにします。
次に、仮押さえの期限を延ばしすぎること。人気の日取りを、一時帰国の二人のために長く押さえると、国内の別の二人を断ることになります。延ばす日数は、その日取りが埋まりそうかどうかで決めます。繁忙日は短く、閑散日は長く。二人には、その理由も一緒に伝えます。「この日は他にも問い合わせが入りやすいので」と言えば、納得してもらいやすい。
もう1つは、オンライン面談で見積もりを出すとき、会場の様子が伝わらずに価格だけが目立つこと。出国後の面談では、見積もりの前に、見学で二人が反応した場所の写真を見せます。気に入った場所の記憶があるうちに価格を見てもらうほうが、判断が荒れません。
効いたかどうかの確かめ方
3か月続けて、次の3つの数字を見ます。
- 一時帰国の二人の見学数
- そのうち、出国後の面談に進んだ数
- 面談に進んだうち、契約した数
見学数に対して面談に進んだ数が増えていれば、紙が機能しています。面談に進んでも契約が増えないなら、問題は紙ではなく、面談の中身です。その場合は、面談で何を話しているかを見直します。
もう1つ見るのは、出国後に連絡が止まった二人が、止まる直前に何を受け取っていたかです。多くが見積もりの送付直後なら、価格を見てから動けなくなっています。そのときは、見積もりの送り方を変えます。
まとめ
- 一時帰国の二人は、滞在日数が決まっていて、見学を重ねて比べられず、帰ったあとの手段も限られる
- 滞在中に決めるのは会場を見ないと分からないこと、出国後に決めるのは書類とやり取りで進むこと。この線を式場が先に引く
- 見学の最後に、二人の出国日、見てほしいもの、出国後に決めること、仮押さえの期限、面談候補日時(現地時間と日本時間)を1枚で渡す
- 仮の計算では、連絡が途切れた組が面談に戻る確率ひとつで成約が動く。自分の会場の数字で3か月記録する
- 国内の二人には同じ紙を出さない。期限の意味が逆になるため
- 面談は担当個人に任せず、会場として時間帯を決める。仮押さえの延長は日取りの埋まりやすさで決める
