来館・成約

式場見学では、二人を最後列のゲスト席に座らせて見え方を先に伝える

式場見学で、チャペルや披露宴会場に二人を案内したとき、二人はどこに立っているでしょうか。たいていは、バージンロードの入口か、新郎新婦の席の近くだと思います。担当者が「ここで入場されて、ここで誓いを」と説明する、あの位置です。

僕の考えは、見学の途中で一度、二人を最後列のゲスト席に座らせて、そこからの見え方を見てもらうほうがいい、というものです。目的は演出ではありません。ゲストの席から見えにくい場所があることを、契約の前に二人と一緒に確かめておくためです。

この記事に出典の数字はありません。見学中にゲスト席に座らせた式場とそうでない式場の成約率を比べた調査は、今回の検索では見つかりませんでした。後半に出てくる数字は、僕が置いた仮のものです。業界の平均ではないので、判断の条件と段取りの話として読んでください。

二人は主役の位置から会場を見ている

見学に来た二人は、自分たちが主役の場所から会場を見ます。入口に立てば、扉が開いて、バージンロードの先に祭壇がある景色です。披露宴会場なら、高砂の席からゲスト席全体を見渡す景色です。写真で見てきた会場の景色も、ほとんどはこの向きで撮られています。

ところが、挙式の当日に会場を埋めるのは、ゲストです。ゲストが見るのは、祭壇を斜めに見る景色や、前の人の頭の向こうにある新婦の背中、柱の陰から覗く高砂です。二人は自分たちの式を、ゲストの目で見ることはできません。見られるのは、見学のときだけです。

この差が、成約のあとに問題になります。打ち合わせが進んで、友人や親族の席順を考え始めたところで、二人が気づくのです。「この席、祭壇が見えなくない?」「奥の席のゲストには、新婦の入場は見えるのかな」。契約してから出てくる不安は、式場にとっては追加の対応になります。契約前に出てくる不安なら、他の式場との比較の材料になります。

だとすれば、どちらも、見学のうちに出してしまうほうが得です。契約のあとに出る不安は、契約の前に出しておけます。

座らせる席は3か所に絞る

全部の席に座ってもらう必要はありません。見学の時間は限られているので、座る席は3か所に絞ります。

  1. 最後列の、通路から一番遠い席。ゲストの席の中で、祭壇まで一番遠い場所です。遠さと、前の人の頭の高さが、ここで一番よく分かります
  2. 柱や壁、装飾で視線が切れる席。会場ごとに、見えにくい席は決まっています。担当者なら、どの席かをすぐ言えるはずです。言えないなら、一度全席に座って確かめておくところから始めます
  3. 家族席の端。親族が座る席は、二人にとって一番気になる席です。ここから見て、両親の顔と祭壇が同時に視界に入るかどうかを確かめます

披露宴会場でも、同じ考え方でやります。高砂から遠い円卓、スクリーンに斜めに向かう席、出入口に近くて人の出入りが目に入る席。この3つの中から、会場の弱い席を選びます。

大事なのは、「いい席」ではなく「見えにくい席」から先に座らせることです。見えにくい席の見え方を、先に二人の目で確かめてもらう。この順番が、見学の信頼につながると僕は考えています。

座ったときに、何を言うか

座ってもらったら、担当者の言葉は少なくします。最初の一言は、説明ではなく質問にします。

「ここからだと、祭壇はどう見えますか」

この質問には、二人が自分の言葉で答えます。「ちょっと遠いですね」「でも、思ったより顔は分かります」。どちらの答えが出ても、それが二人の判断です。担当者は、その答えを受けて、次の一言を足します。

  • 遠い、と言われたら:「ここから見えにくいときのために、こういう工夫ができます」と、席の並べ替え、スクリーンの併用、親族席の配置換えなど、実際にできる対応を言います
  • 思ったより見える、と言われたら:「ここが一番遠い席なので、他の席はもっと近いです」と返します

ここで、できない対応を、できると言ってはいけません。席の並べ替えが実際には難しい会場なら、そう言います。見学の場で正直に言ったことは、契約のあとに効きます。成約のあとに「聞いていなかった」と言われるより、見学で「ここは見えにくい」と伝えて、それでも選んでくれた二人のほうが、満足度は上がるはずです。

担当者が先に全席に座っておく

見学で座ってもらう前に、担当者自身が全席に座った経験を持っておく必要があります。「この席は見えにくいです」と言えるのは、実際に座ったことがある人だけです。座ったことがないと、二人に「どうですか」と聞かれても、答えられません。

やり方は簡単です。定休日や見学の合間に、チャペルと披露宴会場の全席を、プランナーが一人ずつ順に座って回ります。1席ごとに、祭壇や高砂がどう見えるかを、「よく見える/少し切れる/見えにくい」の3段階でメモします。会場が変わらなければ、このメモは何年も使えます。改装や席の配置換えをしたときだけ、取り直します。

このメモがあると、見学の場で担当者が迷いません。「一番見えにくいのは、この列のこの席です。ここにはお年を召した方を座らせず、こちらの席をおすすめしています」と、具体的に言えます。この具体性が、二人にとっては、会場を使い慣れた担当者に見えます。

弱みを先に見せると、他の式場との比べ方が変わる

二人は、複数の式場を見学します。他の式場の担当者が、ゲスト席からの見え方まで一緒に確かめてくれるかどうかは、会場によります。たぶん、やらない式場のほうが多いでしょう。

やらない式場に行ったあと、二人はこう考えます。「あの式場は、ゲスト席のことは何も言わなかった。見えにくい席は、なかったのかな」。何も言われなかったからといって、見えにくい席が無いわけではありません。ただ、二人には、それが分かりません。

ゲスト席に座らせた式場だけが、弱い席の存在を二人に見せています。二人の頭の中では、こう整理されます。「この式場は、見えにくい席を、自分から教えてくれた」。この印象は、会場の広さや料理の味とは別の場所で、比較の材料になります。

もちろん、ゲスト席から見える景色が良ければ、それが一番です。その場合も、最後列に座ってもらう意味はあります。「一番遠い席でも、ここまで見えます」は、会場の強みを証拠つきで伝えられる場面です。

仮の数字で、やる価値を計算する

ここから先は、数字を仮に置いた計算です。実際の式場のデータではありません。

見学が月に100組あって、成約率が30%だとします。成約は30組です。ゲスト席に座らせる段取りを入れたことで、成約率が3ポイント上がって33%になったとすると、成約は月に3組増えます。5ポイントなら5組です。

この3ポイントや5ポイントが、実際に起きるかどうかは、僕は知りません。この記事の数字で唯一確かなのは、計算の部分です。見学100組に対して、成約率が1ポイント動けば、成約は1組動きます。

見学1組あたりにかかる時間は、座って質問して戻るまでで、5分前後を見込みます。見学が月に100組なら、500分、約8時間です。月に8時間を、成約が1組動くかどうかの賭けに使う。この賭けが割に合うかどうかは、式場の1組あたりの粗利によります。粗利が大きい式場ほど、割に合いやすいです。

やるかどうかを決めるときは、成約率の上がり幅を予想するより、先に1か月だけ試す期間を決めます。試す期間の見学数と、そのうち座ってもらった組数、成約に至った組数を数えます。1か月だと数が少なすぎて、結論は出ないかもしれません。その場合でも、二人の反応は記録に残せます。「遠い」と言われた席の数と、そう言われた二人が成約したかどうかを、見学ごとに一行だけメモしておくと、あとで見返せます。

やらないほうがいい場面

ゲスト席に座らせる段取りは、どの見学でもやるべきものではありません。やらないほうがいい場面が、いくつかあります。

  • 見学の時間が短い日。繁忙日に見学が詰まっていて、前の組が押している日は、省略して構いません。座らせるのを急ぐと、二人が席の見え方を確かめる前に次へ進んでしまい、逆効果になります
  • 会場に見えにくい席が多く、対応策もほとんど無いとき。見えにくさを見せるだけになって、二人の不安だけが残ります。この場合は、座らせる前に対応策を整えるほうが先です
  • 二人が、会場の雰囲気だけを見に来た段階のとき。見学の最初の会話で、「まだ日取りも人数も決まっていません」と言われたら、席の見え方まで入る段階ではありません。この段階で細かい話をすると、重く感じられます
  • ゲストが10人以下の少人数婚のとき。全員が近くに座るので、見えにくい席の話は、あまり意味を持ちません

やる・やらないは、見学の最初の10分の会話で決めます。人数の目安、日取りの決まり具合、誰を呼ぶかを聞いていれば、座らせるかどうかは、その場で判断できます。

見学のあとに残す一言

座ってもらったあとは、その場の会話だけで終わらせず、見学後の連絡に一行足します。たとえば、見学後に送る連絡の中に、次のように書きます。

本日、最後列の席からご覧いただいたとき、「祭壇が少し遠い」とおっしゃっていた点について、席の配置の例を2つ添えます。

二人が口にした言葉を、そのまま書きます。見学で出た不安が、そのまま持ち帰る材料になり、二人の話し合いの中で扱えます。不安を言わないまま持ち帰られると、他の式場の見学のあとで、新しい不安として出てきます。見学のうちに出た不安なら、二人が他の式場を見に行くときの、確認のポイントにもなります。

ここで書くのは、見えにくさへの対応案です。「ご契約いただければ」と続けて、契約を促す文は書きません。見学で二人が自分で見て、自分で言ったことを、担当者が覚えている。それだけで、連絡の意味は十分にあります。

まとめ

  • 見学で二人が立つのは主役の位置で、ゲストの席からの見え方は、見学のうちに体験してもらわないと分からない
  • 契約のあとに出る席の不安は、追加の対応になる。契約の前に出る不安は、比較の材料になる
  • 座らせるのは3か所まで。最後列、視線が切れる席、家族席の端。「いい席」より「見えにくい席」から先に座らせる
  • 座ったら、説明より先に質問する。「ここからだと、祭壇はどう見えますか」。できない対応を、できると言わない
  • 計算で確かなのは、見学100組に対して成約率が1ポイント動けば、成約が1組動くということだけ。上がり幅は仮の数字で、まず1か月だけ試して記録する
  • 時間が詰まった日、見えにくい席が多く対応策が無い会場、日取りも人数も未定の二人、少人数婚では、省略していい
  • 見学のあとの連絡に、二人が言った言葉をそのまま一行書く。契約を促す文は添えない